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いっさいの自己愛を捨て、理性的意識に生きることによってのみ、人間は真の幸福を獲得することができる――人間いかに生きるべきか? 現世において人間をみちびく真理とは何か? 永年にわたる苦悩と煩悶のすえ、トルストイ自身のこの永遠の問いは、本書にみごとに結実した。誤ることのない鋭い観察力と、愛の直感と心の目で綴った、人生についての内面的、哲学的な考察。
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Posted by ブクログ
生命には、根本的な矛盾がある。それは、個人の幸福を追求していけば、奪い合いの世界になり、争いが起き勝った者と負けた者との世界となる。個人の追求は、全体の幸福を作らない。これを解決するためには、個人が自己中心的な欲求を解消することをやめ(自己中心的な、選り好みした愛、自分が良ければいいという考え)他人...続きを読むへの献身こそが、人間の心の志向であるということに気づかなければならない。人間の精神の根底にある真の心の志向は、万人が共通して持っているものである。万人が共通して持っている心の志向とは、他人を喜ばせること、他人を幸せにすることが自分の心を充足させることにつながるという精神である。
これまでずっと新しい定義に出会うたびに納得した風にして、でもどこか矛盾を感じていた疑問に対する答えを見つけられた一冊。これまで読んできた本の中で最も有益で有効で善良な一冊だと感じた。 生命とは何か、なぜ生きるのは苦しいのか、幸福とはないかというあまりに捉え難い抽象的だけど当事者であり過ぎるあらゆる生...続きを読むへの答えを、どこまでもロジカルに教えてくれた。
『人生論』トルストイ メモ ◯内容整理 ・「動物的個我」と「理性の法則」という考え方。動物的個我は、生命とは誕生から死までの期間である、その限られた生命の中で幸福は人生を達成しなければならない、みたいな考え方。目に見える(偽りの)生命。人間は目に見える人生こそが自分の人生という確信に陥ってしまった。...続きを読む →人間の幸福は、理性的意識の覚醒=動物的個我の幸福の否定によってはじまる。 ・動物的個我における時間的、空間的条件は、真の生命に影響を与えない。(限られた人生の中でどう生きるか、みたいなことは、真の幸福には影響しない。真の幸福ではない) →理性への従属を通じて幸福を志向する力は、向上させる力であって、時間的・空間的制約を持たぬ生命の力そのもの。(時間と空間がx,y軸なら、理性的意識はz軸のイメージ?) ・真の生命は時間と空間にかかわらない。 ・人間の幸福は、動物的個我を理性の法則に対して従属させること。 →動物的生存を生命とみなすのをやめたとき、はじめて真の生命が始まる。 p95「生命を維持する食物を作るためにある鍬を使い惜しむ人間は、使い惜しみすぎて、食物や生命まで失う」 ◯理性的意識とは ・動物的個我としての自分自身(この人生で何を達成すべきだろうか...みたいな)よりも、他の存在を愛するような状態を目指す。 ・これによって、それまで個我の幸福に向けられていた活動全てを、全世界の幸福の達成に向けた活動に変えられる。 ・真の愛は、動物的個我の幸福を否定する際にのみ可能。 ・愛とは、自分、すなわち自己の動物的個我よりも他の存在を好ましく思う感情。 ・他人に対しては悪意を抱くときに「わたしはどうでもいい、わたしは何もいらない」と言い、ほんのいっときにせよ、何一つ自分のために望まぬようにさせてみるとよい。 →そうすれば、それまで閉ざされていたすべての人に対する好意が心の奥から奔流となってほとばしりでるのを認識するだろう。 ・ここで言う他人は、家族や友人のような選ばれた人への愛(動物的個我の一時的な幸福を増大させる対象)のみならず、自分以外の全てに対する愛。 ・生命とは世界に対する関係であり、生命の運動とはより高度な新しい関係の確立であるから、死とは新しい関係に入ることである。 →(解釈)人との関係の中に自分の生命は存在し、新しい人や世界との出会いの中で新しい関係を築いていく、ということが生命の仕事。人(世界)との関係の中で、愛を増大させていく。 ・人は死んでも、大切な人の心の中に思い出として生き続ける。世界とその人との関係は、死後も強く残された人々の中に作用し続ける。 →自己の動物的個我を理性のうちに従属させ、愛の力を発揮した人は誰でも、自己の肉体的生存の消失後も他の人々の中に生きつづけ、現に生きている。 ・関係を確立することが、生命の仕事。 ◯感想 自分に引き寄せると、動物的に、エゴイスティックに自分の幸せだけを考えるのではなく、「わたしはどうでもいい、わたしは何もいらない」と唱えて、理性的に生きてみよう、と考えた。 また、新しい人々と出会って、関係を築いていくという点は、ストンと腹に落ちた。自分自身、人は接する人との関係の中で磨かれていく(作りかえられていく)ものだと思っているので、どんどん新しい出会いに向かって踏み出していく人生にしたいと思った。 椎名林檎&トータス松本『目抜き通り』の歌詞の、「あの世でもらう批評が本当なのさ」というフレーズを思い出した。自分が死んだときに、自分との思い出が生き続ける人をどれだけたくさん作っていけるか(たくさんの関係を確立していけるか) 「関係」という言葉は自分の人生にとってとても重要な考え方だと思う。どういう人と生きて、どういう関係を築いていくか。そこに人生の本質があると思う。そんなことを考えさせられた。
トルストイが小さな怪我から重い病気になり死を意識する。なぜ何ために死はあるの理性と感情が保てない、という見舞いの手紙に返事したのが元となりトルストイ思想を知る本にもなる。というものの中盤は難解至極で凹む。人は真の理性をもてば死は怖くない、誕生から死しても未来へ永遠に続くものそれはあなたの愛で、自分の...続きを読む幸せ願望は他人も同じ、戦争なぞ無い未来が来る。だけども、苦や痛みは人生に当然あるもの、その中に幸せがあると理解せよ。顕微鏡で覗いても宇宙へ行っても見つからない。つまり、快楽のみにボ〜っと生きるなということかな。
死に対する捉え方が印象的だった。これを執筆した時トルストイが死を覚悟していたからなのだろう。大抵ウンウンと同意しながら読めると思う。こんなに共感できると思っておらず、自分自身の感性に対しても新たな発見であった。
保育園時代、人がいずれ死ぬことがわかってから「どーせ死ぬのになんでみんな一生懸命生きてるの?自分も生きていかないとなの?」とたまに思うようになり、それを考えた日は一日中両親や先生がロボットに見えてました。 大人になるにつれトルストイの言う矛盾に当たり、ずっと悩み続け大学で哲学の授業をいくつかとってみ...続きを読むたりしましたが、答えは出せず。 と思ったらこの本でまず初めに自分のこの感覚についてこてんぱんにやられました笑 まだここに書かれている全てを肯定する気にはなれませんが、納得せざるを得ないことや完全に同意できる部分が多々あり、影響を受けたのでこれからもあーだこーだ考えながら生きていきます。 ちなみに普段は1〜2日に1冊読みますが、この薄い本に1週間かかりました。私の小さな脳みそで完全に理解しようとするならあと2回は読まないとです。
非常に難解な文章だった。人生論とあるが、幸福論としたほうが相応しいような気がする。 人間は動物的自我によって自分個人の為の生き方に疾走ろうとし、それこそが幸福であり生活の凡てだと思い込む。しかし、あらゆる人間が自分個人の為に生きると考えると、その為には他人を排除しようとする者が出てくる。とする...続きを読むと、自分個人の幸福とは容易に手に入るものではない。ましてや病気、衰え、死などが刻々と近づいているわけである。それを避けることはできないし、そうなると自分個人の幸福はまやかしのようなものであることに気づき、人生の矛盾にぶち当たる。 したがってほんとうの幸福の為には自らの動物的自我を理性的意識に従わせる必要がある。そこから発生するのが愛である。愛とは自分個人の幸福よりも他者への善、自己犠牲を伴う行為である。真の愛の為には死をも恐れなくなるのだ。 拙い要約としてはこういう内容であった。おしまい。
自分の理性 「理性は人を幸福に導く」自分を信じて、理性が意識するがまま生きることによって幸福を得ることができる。過去信仰がその理性を左右したが判断するのはあくまで自分自身であると。現代、「理性」とは道理によって物事を判断する心の働き、とある。人は様々なヒト・コト・モノによって心が動かされるが、より多...続きを読むくのヒト・コト・モノに遭遇できることはトルストイの生きた時代とは違い幸運だと思う。よって判断できる材料をできる限り集め、自分に快適、且つ心地よい道が許され、自信を持って前に進むべきなのだ。
他のために自身を捧げることで生命は永遠となる、ととりあえず理解。 後半少しだれたけど、動物的自我と理性の対比は勢いがあってよかった。
生命に係る哲学的テーマと難解な言い回しが多用されているものの、動物的幸福の達成を目標とする「生存」と動物的個我を理性的意識に従属させ永遠の「生命」を明確に区別し語る。「人の為に生きる」「歴史に名を残す」、人間のほか生物と一線を画す部分、連綿と続く人類の歴史の本質を捉えた視点といえよう。 ちなみに何...続きを読む気に初トルストイ。
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トルストイ
原卓也
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