小説 - 岩波文庫作品一覧

非表示の作品があります

  • 漱石文明論集
    4.5
    圧倒的な優位にたつ西洋文明を向うにまわし漱石は「自己本位」の立場を同時代のだれにもまして痛切に生きた。血のにじむようなその苦闘の跡を示す「現代日本の開化」「私の個人主義」など五篇の講演記録を中心に、かれの最も奥深いところから響いてくる肉声というべき日記・断片・書簡を抄録した。『漱石文芸論集』と対をなす。

    試し読み

    フォロー
  • 明暗
    4.2
    主人公津田とその妻お延の生き方を中心としてエゴイズムの問題に容赦なく光をあてた『明暗』は漱石が生涯の最後に到達した思想「則天去私」の文学的実践だった。作者の死によって未完に終ったが、想像力豊かに作品の構造を読みとくことで『明暗』の「その後」を考えることは必ずしも不可能ではない。 (解説 大江健三郎・注 三好行雄)

    試し読み

    フォロー
  • 渋江抽斎
    4.1
    1巻880円 (税込)
    渋江抽斎(1805-58)は弘前の医官で考証学者であった。「武鑑」収集の途上で抽斎の名に遭遇し、心を惹かれた鴎外は、その事跡から交友関係、趣味、性格、家庭生活、子孫、親戚にいたるまでを克明に調べ、生きいきと描きだす。抽斎への熱い思いを淡々と記す鴎外の文章は見事というほかない。鴎外史伝ものの代表作。改版。(注・解説=中野三敏)

    試し読み

    フォロー
  • プラテーロとわたし
    4.3
    真っ青な空と真っ白な家が目にいたいほど明るい、太陽の町モゲール。首都マドリードで健康をそこなったヒメーネス(1881-1958)は、アンダルシアの故郷の田園生活の中で、読書と瞑想と詩作に没頭した。月のように銀色の、やわらかい毛並みの驢馬プラテーロに優しく語りかけながら過ごした日々を、138編の散文詩に描き出す。

    試し読み

    フォロー
  • 夫婦善哉 正続 他十二篇
    3.9
    織田作之助(1913-47)の代表作「夫婦善哉」に、2007年に新たに発見された「続 夫婦善哉」をあわせて「正続」とし、そのほか、芥川賞候補作「俗臭」や自伝的作品「雨」、あるいは伝説の棋士坂田三吉を主人公にした「聴雨」「勝負師」など、おもに戦前・戦中期の代表的短篇14篇を収録。オダサク生誕百年記念の贈り物。(解説=佐藤秀明)

    試し読み

    フォロー
  • 六白金星・可能性の文学 他十一篇
    4.8
    楢雄は頭も悪く、鈍臭く、ただ一つ蠅を獲るのが巧かった──。ずる賢く冷淡な兄、心根は優しいが強情な弟、身勝手でエゴイスティックな父、年とともに気弱になる母の関係を描いた「六白金星」のほか、大阪の庶民のねばり強い人生を描きつづけた織田作之助(1913-47)の戦後発表の代表作。(解説=佐藤秀明)

    試し読み

    フォロー
  • 破戒
    4.3
    新しい思想を持ち、新しい人間主義の教育によって、不合理な社会を変えて行こうとする被差別部落出身の小学校教師瀬川丑松は、ついに父の戒めを破って公衆の前で自らの出自を告白する。周囲の因習と戦う丑松の烈しい苦悩を通して、藤村(1872-1943)は、四民平等は名目だけの明治文明に鋭く迫る。1906年刊。(解説=野間宏)

    試し読み

    フォロー
  • ドン・キホーテ 前篇一
    3.9
    1~6巻880~990円 (税込)
    騎士道物語を読み過ぎて妄想にとらわれた初老の紳士が、古ぼけた甲冑に身を固め、やせ馬ロシナンテにまたがって旅に出る。決定的な時代錯誤と肉体的脆弱さで、行く先々で嘲笑の的となるが…。主人公ドン・キホーテをはじめ登場する誰も彼もがとめどもなく饒舌な、おなじみセルバンテス(1547-1616)の代表作。新訳。(全6冊)

    試し読み

    フォロー
  • 三銃士 上
    3.9
    デュマは旺盛な筆力をもって生涯に小説だけでも二五七巻に及ぶ作品を書いたが、『三銃士』はなかでも世界中の人々にもっとも愛された小説である。個性豊かな四人の銃士と彼らを結ぶうらやましいまでの友情、危機にのぞんで男らしく颯爽と行動するそのさわやかさ。この若々しい男性的ロマンにはつきせぬ魅力がある。一八四四年。

    試し読み

    フォロー
  • 桜の森の満開の下・白痴 他12篇
    4.3
    桜の森の満開の下は怖ろしい。妖しいほどに美しい残酷な女は掻き消えて花びらとなり、冷たい虚空がはりつめているばかり──。女性とは何者か。肉体と魂。男と女。安吾にとってそれを問い続けることは自分を見つめることに他ならなかった。淫蕩、可憐、遊び、退屈……。すべてはただ〈悲しみ〉へと収斂する。(解説=七北数人)

    試し読み

    フォロー
  • 山月記・李陵 他九篇
    4.4
    1巻880円 (税込)
    三十三年余の短い一生に、珠玉の光を放つ典雅な作品を残した中島敦(一九〇九―四二)。近代精神の屈折が、祖父伝来の儒家に育ったその漢学の血脈のうちに昇華された表題作をはじめ、『西遊記』に材を取って自我の問題を掘り下げた「悟浄出世」「悟浄歎異」、南洋への夢を紡いだ「環礁」など彼の真面目を伝える作十一篇。(解説 氷上英廣)

    試し読み

    フォロー
  • 罪と罰 上
    3.8
    その年の夏は暑かった。大学を除籍になり、ぎりぎりの貧乏暮らしの青年に、郷里の母と妹の期待と犠牲が重くのしかかる。この悲惨な境遇から脱出しようと、彼はある「計画」を決行するが…閉塞した社会状況のなかでくすぶる人間性回復への強烈な願望を描いて世界文学史にドストエフスキーの名を刻みつけた不朽の作品。(全3冊)

    試し読み

    フォロー
  • シェフチェンコ詩集
    4.0
    「静けさにみちた世界 愛するふるさと/わたしのウクライナよ./母よ,あなたはなぜ/破壊され,滅びゆくのか.」理不尽な民族的抑圧への怒りと嘆きをうたい,ウクライナの国民的詩人と呼ばれるタラス・シェフチェンコ(1814-61).帝国ロシアに対する痛烈な批判,同郷人への訴え,弱者に寄せる限りない慈しみが胸に迫る一〇篇.

    試し読み

    フォロー
  • 小説の技法
    4.0
    セルバンテス,カフカ,プルーストなど,誰もが知っている名著名作の作者たちとその作品に言及しながら,「小説とは何か」「小説はどうあるべきか」を論じるクンデラ独自の小説論.2011年刊行の改訂版を底本とした新訳決定版.存命の,世界で最も著名な作家の一人,クンデラ(1929- )による知的刺激に満ちた文学入門.

    試し読み

    フォロー
  • 一寸法師・さるかに合戦・ 浦島太郎 日本の昔ばなしIII
    3.0
    1巻858円 (税込)
    日本各地で古くから語りつがれてきた昔ばなしの中から,『一寸法師』『うばすて山』『さるかに合戦』『兎と亀』『浦島太郎』『彦市ばなし』など,百数篇を選んでここに収める.すべて,私たちの幼いときから親しんできたなじみの深い話ばかりである.前二著と併せ,三冊で日本の代表的な「昔ばなし」が全部集録されている.※この電子書籍は「固定レイアウト型」で作成されており,タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています.また,文字だけを拡大すること,文字列のハイライト,検索,辞書の参照,引用などの機能は使用できません.

    試し読み

    フォロー
  • サラマンカの学生 他六篇
    -
    冷酷非情で,神の掟にも従わないドン・フェリックスは,スペイン文学史上,もっとも残忍非道,大胆不敵なドン・フアンである.陰鬱で不気味な霊界を舞台に,ドン・フェリックス=ドン・フアンの凄絶な死後の世界を描く長篇物語詩「サラマンカの学生」ほか,スペイン・ロマン主義を代表する詩人エスプロンセーダ(1808―42)の絶唱六篇を収録.

    試し読み

    フォロー
  • 雨月物語
    4.0
    雨そぼふる薄暗き午後,あるいは皓々たる月の夜,この世とあの世が交錯する.荒ぶる先帝の怨霊,命を賭した義兄弟の契り,帰らぬ夫を待つ妻の悲しき末路,男にとりついた蛇性の女の執念…….中国や日本の古典をさまざまに取り入れ,美しくも妖気ただよう作品に仕上げた上田秋成(1734-1809)の珠玉の短篇集.「白峰」ほか全九篇を,平明な注と解説で.八四年ぶりの新版.※この電子書籍は「固定レイアウト型」で作成されており,タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています.また,文字だけを拡大すること,文字列のハイライト,検索,辞書の参照,引用などの機能は使用できません.

    試し読み

    フォロー
  • 高慢と偏見 上
    4.0
    所はハーフォードシア。ベネット家には五人の娘がいる。その近所に、独身の資産家ビングリーが引越してきた。彼は美しくすなおな長女ジェーンに惹かれ、その友人ダーシーは聡明で溌刺とした次女エリザベスを好ましく思うが……。のどかな「田舎の村の家庭生活の絵」の中に、オースティン一流の精緻な人間観察とユーモアが光る。

    試し読み

    フォロー
  • 紋切型辞典
    3.3
    ここに編まれたおよそ1000の項目は、衣服、飲食物や動植物に関するもの、礼儀作法の規範、身体と病気についての俗説、芸術家、歴史的人物の逸話と彼らの評価など、多岐にわたる。フローベール(1821-80)はその記述に様々な手法を駆使して、当時流布していた偏見や言葉の惰性、硬直した紋切型の表現を揶揄し、諷刺してみせた。

    試し読み

    フォロー
  • パリ・ロンドン放浪記
    4.4
    インド帝国の警察官としてビルマに勤務したあとオーウェル(1903―50)は1927年から3年にわたって自らに窮乏生活を課す。その体験をもとにパリ貧民街のさまざまな人間模様やロンドンの浮浪者の世界を描いたのがこのデビュー作である。人間らしさとは何かと生涯問いつづけた作家の出発にふさわしいルポルタージュ文学の傑作。

    試し読み

    フォロー
  • 王子と乞食
    4.3
    ふとしたことから乞食のトムは宮殿の王子となり、ほんものの王子はトムのぼろ服を着たまま街へほうり出される。そこで二人が見たものは? 知ったことは? そしてどんな目にあったか? これはユーモア作家マーク・トウェーンの傑作で、哄笑と微苦笑と涙のうちに、読者をふしぎな楽しさに導いてゆく力をもっている。

    試し読み

    フォロー
  • 完訳 グリム童話集 1
    3.7
    1~5巻858~1,056円 (税込)
    比較言語学・説話学の分野に偉大な足跡しるすグリム兄弟が、ドイツ各地で口から耳へと伝えられた昔話の数々をあまねく採録。児童文学の一大宝庫であり、民間伝承研究に不可欠の文献である。名訳をもって知られるこの金田訳は、一八五七年刊の原著決定版から削除された昔話をも数多く収録する。KHM番号を付記した。

    試し読み

    フォロー
  • アポロドーロス ギリシア神話
    5.0
    従来紹介されてきたギリシア神話は、のちのヘレニズム時代の感傷主義の影響を受けた甘美な物語が多い。ここにアポロドーロスが伝える神話伝説は純粋に古いギリシアの著述を典拠とした、いわばギリシア神話の原典ともいうべきものである。西欧文化のすみずみにまでしみわたっているギリシア神話の系統的・包括的理解に絶好の書。

    試し読み

    フォロー
  • ロミオとジューリエット
    3.9
    舞台は中世イタリアのヴェローナ市。宿敵どうしの名家に生れた若者が知り合い、恋し合い、結ばれ、そして数日後には無惨な死をむかえる。――この悲劇が今もひとの心をうつのは、愛と死と運命という主題を扱って或る普遍的な、人間的な経験に達しているからであろう。『ウエスト・サイド物語』は構想をこの作品から得ている。

    試し読み

    フォロー
  • 新編 悪魔の辞典
    4.1
    恋愛-一時的の精神異常だが、結婚するか、あるいは、この病気の原因になった影響力から患者を遠ざけるかすれば、簡単に直る。…このような風刺と機知に富む社会批評で、19世紀末アメリカのジャーナリズムで辛辣な筆を揮ったビアス(1842-1914?)の箴言警句集。芥川龍之介の『侏儒の言葉』にも大きな影響を与えた。(解説=長田弘)

    試し読み

    フォロー
  • 嵐が丘 上
    4.1
    ブロンテ3姉妹は、イギリス北部ヨークシャーの一寒村に牧師の娘として生れ育った。本書はその一人エミリー(1818―48)が残した唯一の長篇小説で、ヒースの茂る荒涼たる自然を背景とした、二つの家族の3代にわたる愛憎の悲劇。浮浪児であった主人公ヒースクリフの悪魔的な性格造形が圧倒的な迫力を持つ。新訳。(全2冊)

    試し読み

    フォロー
  • 森の生活 (ウォールデン) 上
    3.9
    1~2巻858~924円 (税込)
    ソロー(一八一七―六二)は、ウォールデン湖畔の森の中に自らの手で小屋を建て、自給自足の生活を始めた。湖水と森の四季の佇まい、動植物の生態、読書と思索――自然と共に生きた著者の生活記録であると同時に「どう生きるべきか」という根本問題を探求した最も今日的・普遍的なアメリカ文学の古典。湖とその周辺の写真多数を収める新訳。

    試し読み

    フォロー
  • 漱石文芸論集
    4.3
    漱石の小説はおおかた読んでいるという人も、評論や講演となると十分目がとどきかねるのが実情ではあるまいか。本書は講演記録『文芸の哲学的基礎』『創作家の態度』などを主軸として、他に評論文・談話・初期の文章から文芸論にかかわる作品を選んで編成したもの。ここに尖鋭勁強な理論家としての漱石像がくっきりと浮かびあがる。

    試し読み

    フォロー
  • 漱石書簡集
    4.4
    漱石の手紙を読むとこの類まれな人物のあらゆる心の動きがその温もりとともに伝わって来るように感ずる。全集版におさめられた二二五六通の手紙から友人の正岡子規、妻の鏡子、弟子の寺田寅彦・小宮豊隆などに宛てた一五八通を選んで注解を付した。漱石を知るための基本資料であるばかりか、それ自身が見事な作品である。

    試し読み

    フォロー
  • 第七官界彷徨・琉璃玉の耳輪 他四篇
    4.0
    1巻836円 (税込)
    聴覚や嗅覚などの「感覚」の再編を通じて宇宙と内面を捉え直し、哀感とユーモア、静謐なエロティシズムをも湛える独特の表現世界を築いた尾崎翠(1896-1971)。昭和初期に書かれた奇跡のような作品群から代表作「第七官界彷徨」と緩やかに連なる四篇、没後発見の映画脚本草稿「琉璃玉の耳輪」を収録。(解説=川崎賢子)

    試し読み

    フォロー
  • モンテ・クリスト伯 1
    4.3
    二百年の長い間、世界各国で圧倒的な人気をあつめてきた『巌窟王』の完訳。全7冊のうち第1冊。

    試し読み

    フォロー
  • トリストラム・シャンディ 上
    3.7
    プルーストやジョイス等の“意識の流れ派”の源流とも先駆的作品ともいわれる本書だが、内容・形式ともに奇抜そのもので、話しは劈頭から脱線また脱線、独特の告白体を駆使して目まぐるしく移り変る連想の流れは、いつか一種不思議なユーモアの世界をつくり出し、我々はただ流れに身を任せ漂うばかりである。一七六〇―七年。

    試し読み

    フォロー
  • 石垣りん詩集
    4.5
    14歳で銀行に事務見習として就職し,定年まで家族の生活を一人で支えつづけた詩人,石垣りん.家と職場,生活と仕事の描写のうちに根源的な雄々しい力を潜ませた詩を書きつづけ,戦後の女性詩をリードした詩人のすべての詩業から,手書き原稿としてのみ遺された未発表詩や単行詩集未収録作品を含む,120篇を精選.

    試し読み

    フォロー
  • 久保田万太郎俳句集
    -
    芥川龍之介は万太郎の俳句を「「嘆かひ」の発句」と喝破した.万太郎は「俳句は余技」とした.その無防備を装って詠み上げられた余技は,日本語での詠嘆の美しさ,表現の自在さにおいて,他の俳句の追随を許さない.国民に広く愛唱されてきた.明治末年より亡くなる昭和38年までの半世紀間の全句8000句から900句を精選した.※この電子書籍は「固定レイアウト型」で作成されており,タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています.また,文字だけを拡大すること,文字列のハイライト,検索,辞書の参照,引用などの機能は使用できません.

    試し読み

    フォロー
  • 青年
    3.0
    1巻814円 (税込)
    現代社会を描きたいという希望をもって東京へ出た文学青年小泉純一が,初志に反して伝説に取材した小説を書こうと決意するまでの体験と知的成長を描く.作中に夏目漱石,木下杢太郎,正宗白鳥,森鴎外自身などをモデルとした作家が登場する.漱石の『三四郎』と並称される鴎外初の現代長篇小説.(改版)(解説=須田喜代次)

    試し読み

    フォロー
  • 不如帰
    3.7
    「ああ辛い! 辛い! もう――もう婦人(おんな)なんぞに,生まれはしませんよ.」日清戦争の時代,愛し合いながらも家族制度のしがらみに引き裂かれてゆく浪子と武男.明治31-32年発表,空前の反響をよんだ徳冨蘆花(1868-1927)の出世作は,数多くの演劇・映画の原作ともなり,今日なお読みつがれる.改版(解説=高橋修)

    試し読み

    フォロー
  • 自選 大岡信詩集
    3.5
    同時代と伝統、日本の古典とシュルレアリスムを架橋して、日本語の新しいイメージを織りなす詩人大岡信(1931― )。のびやかな感受性と、偏ることのない厖大な知を、自由自在に多方面に活動させることで日本語の現代詩に新たな展望を切り拓く詩人のエッセンスを、自選により集成する。全125篇。(解説=三浦雅士)

    試し読み

    フォロー
  • 吉野弘詩集
    4.5
    結婚式の祝辞としてよく引かれる「祝婚歌」、いのちの営みに静謐で温かい眼差しを投げかける「I was born」、現代における「受難」の意味を、心のやさしさに凝視める「夕焼け」‒‒‒‒。穏やかな語り口の、深い愛情に満ちた、鮮やかな抒情の音をひびかせる、吉野弘(1926―2014)のエッセンス。(解説=小池昌代・谷川俊太郎)

    試し読み

    フォロー
  • 暢気眼鏡 虫のいろいろ 他十三篇
    3.7
    洒脱で晴朗なおしゃべり。出世作となった「暢気眼鏡」以下一連の貧乏ユーモア小説から、身辺な虫の生態を観察した「虫のいろいろ」、そして老年の心境小説まで、尾崎一雄(1899-1983)の作品には一貫して、その生涯の大半を過した西相模の丘陵を思わせる爽やかな明るさがある。代表的な短篇15篇を編年順に収録。

    試し読み

    フォロー
  • 童話集 風の又三郎 他十八篇
    4.4
    「これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらってきたのです。」ここには「風の又三郎」をはじめ、「セロひきのゴーシュ」「猫の事務所」「ざしき童子のはなし」「なめとこ山の熊」「グスコープドリの伝説」など、ふるさとの山や川に深く結ばれた作品を中心に十九篇を収めた。

    試し読み

    フォロー
  • カフカ短篇集
    4.1
    1巻814円 (税込)
    実存主義、ユダヤ教、精神分析、――。カフカは様々な視点から論じられてきた。だが、意味を求めて解釈を急ぐ前に作品そのものに目を戻してみよう。難解とされるカフカの文学は何よりもまず、たぐい稀な想像力が生んだ読んで楽しい「現代のお伽噺」なのだ。語りの面白さを十二分に引きだした訳文でおくる短篇集。二十篇を収録。

    試し読み

    フォロー
  • 鷲か太陽か?
    NEW
    -
    ノーベル賞詩人オクタビオ・パス(1914-98)がパリに暮らした一九四〇年代後半に創作した散文詩と,イメージとリズムの法則に支配された,夢のような味わいをもつ短篇.シュルレアリスムの正統的・批判的継承者として知られる巨匠による,研ぎ澄まされた詩的直観が鮮烈な印象を残す初期の代表作.一九五一年刊.

    試し読み

    フォロー
  • 左川ちか詩集
    4.5
    左川ちか(1911-36)は昭和初期のモダニズムを駆け抜けた女性詩人.日本近代詩の隠された奇蹟とされた.「緑」「植物」「太陽」「海」から喚起する奔放自在なイメージ,「生」「性」「死」をめぐる意識は,清新で全く独自の詩として結実した.爽快な言葉のキーセンテンスは,読む者を捉えて離さない.初の文庫化.

    試し読み

    フォロー
  • ビアス短篇集
    4.3
    『悪魔の辞典』のビアス(1842-1914)はまた,芥川龍之介が「短編小説を組み立てさせれば彼ほど鋭い技巧家は少ない」と評した短篇小説の名手である.北軍の義勇兵として南北戦争の激戦地を転戦したビアスは,そこで人間の生死をつぶさに眺め,人間をみつめ,社会を知った.短篇集『いのちの半ばに』他から秀作15篇を収録.

    試し読み

    フォロー
  • 桃太郎・舌きり雀・花さか爺 日本の昔ばなしII
    3.3
    1巻792円 (税込)
    編者は,永年にわたって日本全国の村々を歩きまわり,民衆のあいだに古くから語り伝えられてきた昔ばなしの採集につとめてきた.その昔ばなしの中から,『桃太郎』『舌きり雀』『花さか爺』『三年寝太郎』『文福茶釜』『百合若大臣』『雪女房』など,七十数篇を選んでここにおさめる.※この電子書籍は「固定レイアウト型」で作成されており,タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています.また,文字だけを拡大すること,文字列のハイライト,検索,辞書の参照,引用などの機能は使用できません.

    試し読み

    フォロー
  • 月と篝火
    4.1
    イタリアの寒村に生まれ育った私生児の〈ぼく〉は,下男から身を起こし,アメリカを彷徨ったすえ,故郷の丘へ帰ってきた――.戦争の惨禍,ファシズムとレジスタンス,死んでいった人々,生き残った貧しい者たち……そこに繰り広げられる惨劇や痛ましい現実を描きながらも美しい,パヴェーゼ(1908-50)最後の長篇小説にして最高傑作.

    試し読み

    フォロー
  • オー・ヘンリー傑作選
    4.3
    絶妙のプロット、独特のユーモアとペーソス。この短篇の名手(一八六二―一九一〇)は、時代と国境をこえて今も読者の心を把えつづけている。それはしかし、単に秀抜な小説作法の故ではないであろう。彼の作品には、この世の辛酸を十分になめた生活者の、ずしりと重い体験がどこかで反響しているからである。傑作二○篇をえらんだ。

    試し読み

    フォロー
  • ポオ評論集
    -
    短篇小説の名手,詩人としても知られるポオ(1809-1849)だが,彼はすぐれた理論家・批評家としての顔も持っていた.その明確な方法意識を示す「詩作の哲学」「詩の原理」等の著名な評論,クーパー,ホーソーン,ロングフェロー,ディケンズ等を論じた同時代評を収録.ポオ一流の筆法で書かれた9篇から成るアンソロジー.

    試し読み

    フォロー
  • 二百十日・野分
    -
    圭さんと碌さんの軽妙な会話を軸に,夏目漱石(1917―66)の阿蘇山旅行に基づき書かれた「二百十日」.若き二人の文学士と文筆に生きる男が,流動する社会に三人三様に向き合う姿を多面的に切り取った「野分」.先鋭な社会批評を中軸に据えた,長篇作家漱石誕生への橋渡しとなる二篇.改版(解説=小宮豊隆・出原隆俊)

    試し読み

    フォロー
  • 獺祭書屋俳話・芭蕉雑談
    -
    近代俳句の創始者正岡子規の生誕150年が迫っている.「獺祭(だっさい)書屋俳話」は,26歳の子規による近代詩歌としての俳句の独立宣言書.書名のみ高名でありながら,内容は近世俳諧の評釈がほとんどのため,一般読者が味読出来るテキストは,整備されてこなかった.「芭蕉雑談(ぞうだん)」は,神聖視されてきた芭蕉を的確に批評することで,芭蕉の再評価を試みる.正岡子規,近世俳諧研究を両立,推進させてきた研究者による本格的な注解と解説を初めて付す.※この電子書籍は「固定レイアウト型」で作成されており,タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています.また,文字だけを拡大すること,文字列のハイライト,検索,辞書の参照,引用などの機能は使用できません.

    試し読み

    フォロー
  • 二十四の瞳
    4.5
    1巻770円 (税込)
    日本人に記憶され続ける反戦文学の名作。瀬戸内の一寒村に赴任した若い女性教師と十二人の生徒の交流を描く。昭和初期から戦後までの二十数年にわたり、時代に翻弄されながら必死に生きるその姿を通して、戦争への怒り、悲しみが素朴な言葉で表現される。戦争の悲劇を二度とくり返させたくないという著者の思いが込められている。(解説=鷺只雄)

    試し読み

    フォロー
  • 怪談 牡丹燈籠
    4.2
    美しい娘の死霊が、燈籠を提げ下駄を鳴らして恋人のもとに通う怪異談。改版。(解説=奥野信太郎/注=横山泰子)

    試し読み

    フォロー
  • デイヴィッド・コパフィールド 一
    4.2
    1~5巻770~880円 (税込)
    本書は、モームが世界の10大小説の1つに選び、ディケンズ(1812-1870)自身も「自分の作品中、最も好きなもの」と語っている作品。自伝的要素の濃い作品で、個性的な登場人物が多数登場し、ユーモアとペーソスが全篇にわたって満ちあふれている。物語は大らかにゆったりと展開し、読書の醍醐味が存分に味わえる。新訳。(全5冊)

    試し読み

    フォロー
  • 北原白秋詩集 (上)
    3.0
    1~2巻770円 (税込)
    明治から昭和の日本詩の世界において圧倒的な影響力を持ち、今も多くの人々に愛される巨人北原白秋(1885-1942)。上巻には若き白秋が鮮烈にデビューした初期の詩集──華麗な『邪宗門』と情感あふれる『思ひ出』を、下巻には清明な気品に満ちた『水墨集』『海豹の雲』を中心とする後半期の円熟白秋の詩集を収める。

    試し読み

    フォロー
  • 漱石紀行文集
    4.3
    漱石の満洲、ロンドン、京都を巡る紀行文「満韓ところどころ」「倫敦消息」「自転車日記」「京に着ける夕」をまとめる。漱石の人間、人事、自然を見詰める眼は的確であり、ユーモア溢れる溌剌とした文章で綴られている。近代日本の秀逸な紀行文となっている。小品5篇を併せて収載する。短文ながら文豪の素顔をよく伝えている佳品である。

    試し読み

    フォロー
  • 化鳥・三尺角 他六篇
    3.9
    1巻770円 (税込)
    「犬も猫も人間もおんなじだって。……いまに皆分るんだね」(「化鳥」)。思いや痛みが境界を溶かし、草木鳥獣、死者と人とが結びあう――鮮やかに目の前の世界を読み換える鏡花の物語たち。表題作の他「清心庵」「木霊」「朱日記」「第二菎蒻本」「皮鞄の怪」「茸の舞姫」を収録、詳細な注を付す。(注・解説=松村友視)

    試し読み

    フォロー
  • ランボオ詩集
    3.0
    ランボオ(1854―1891)と中原中也(1907―1937)。早熟早世の二人の詩人の個性がぶつかり合って生まれた〈化合物〉とも言うべき訳詩集。中也は自らの詩人としての嗅覚を頼りにランボオの詩を読み解き、いわば無手勝流に見事な〈中也節〉で訳し上げてみせた。本書は小林秀雄訳『地獄の季節』と好一対をなす。(解説=宇佐美斉)

    試し読み

    フォロー
  • 行人
    4.1
    妻お直と弟二郎の仲を疑う一郎は妻を試すために二郎にお直と二人で一つ所へ行って一つ宿に泊ってくれと頼む……。知性の孤独地獄に生き人を信じえぬ一郎は、やがて「死ぬか、気が違うか、それでなければ宗教に入るか」と言い出すのである。だが、宗教に入れぬことは当の一郎が誰よりもよく知っていた。 (解説・注 三好行雄)

    試し読み

    フォロー
  • 茨木のり子詩集
    4.4
    青春を戦争の渦中に過ごした若い女性の、くやしさと、それゆえの、未来への夢。スパッと歯切れのいい言葉が断言的に出てくる、主張のある詩、論理の詩。ときには初々しく震え、またときには凛として顔を上げる。素直な表現で、人を励まし奮い立たせてくれる、「現代詩の長女」茨木のり子のエッセンス。(対談=大岡信、解説=小池昌代)

    試し読み

    フォロー
  • 死者の書・口ぶえ
    3.8
    「した した した。」雫のつたう暗闇、生と死のあわいに目覚める「死者」。「おれはまだ、お前を思い続けて居たぞ。」古代世界に題材をとり、折口信夫(1887-1953)の比類ない言語感覚が織り上げる物語は、読む者の肌近く忍び寄り幻惑する。同題の未発表草稿「死者の書 続編」、少年の眼差しを瑞瑞しく描く小説第一作「口ぶえ」を併録。(注・解説=安藤礼二)

    試し読み

    フォロー
  • 自選 谷川俊太郎詩集
    4.3
    デビュー以来、半世紀を超えて人々に喜びと感動をあたえてきた谷川俊太郎(1931─)の二千数百篇におよぶ全詩から、作者自身が厳選した173篇を収録。子どもが読んで楽しめることばあそびから引用文だけで構成された実験的な長編詩まで、さまざまな文体で書き分けられたリズム感あふれることばの宇宙を俯瞰する。(解説=山田馨)

    試し読み

    フォロー
  • 出家とその弟子
    4.5
    1高在学中から西田幾多郎に傾倒し、宗教文学に一境地を拓いた劇作家倉田百三(1891-1943)の代表作。浄土真宗の開祖親鸞を主人公とし、生き方に悩む多くの若い人々の心を捉えた本書は、のち各国語に訳され、海外にも数多くの読者を得た。ロマン・ロランのフランス語版への序文を付す。改版。(解説=谷川徹三 注・年譜=鈴木範久)

    試し読み

    フォロー
  • アルプス登攀記 上
    -
    苦闘六年、たびかさなる敗退にもめげず、一八六五年ついに魔物の山マッターホルンは征服された。だが、その帰途、悲劇が起った。本書はウィンパー(一八四〇‐一九一一)が、その一部始終を、彼自身の手になる繊細華麗な木版画を豊富にちりばめつつ、イギリス風のユーモアを交えて淡々と語ったもの。山岳文学の古典としてあまりにも有名。

    試し読み

    フォロー
  • 黒猫・モルグ街の殺人事件 他五篇
    3.5
    美の錬金術師ポオ(一八〇九―四九)。その美への情熱は精確無比な計算と設計にもとづいてあらゆる作品に発揮されており、読者を怪奇な幻想世界、異常心理の世界へと抗いがたく引きずり込む。ポオの作に傾倒した若きヴァレリはあの「数学的アヘン」を決して忘れることはできぬ、と言った。表題作のほかに「裏切る心臓」「盗まれた手紙」など。

    試し読み

    フォロー
  • 柿の種
    4.3
    日常のなかの不思議を研究した物理学者で、随筆の名手としても知られる寺田寅彦の短文集。大正9年に始まる句誌「渋柿」への連載から病床での口授筆記までを含む176篇。「なるべく心の忙(せわ)しくない、ゆっくりした余裕のある時に、一節ずつ間をおいて読んでもらいたい」という著者の願いがこめられている。(解説=池内 了)

    試し読み

    フォロー
  • ハックルベリー・フィンの冒険 上
    4.1
    洋々たるミシシッピーの流れに乗って筏の旅を続ける浮浪児ハックと逃亡奴隷ジム。流域の町や村で二人が出会う冒険の数々。辺境時代のアメリカで、何ものにも捉われずに生きようとする少年と、必死に自由の境涯を求める黒人の姿に作者のヒューマニズムが脈打つ。「現代アメリカ文学の源泉」と言われた傑作。初版挿絵を収録。

    試し読み

    フォロー
  • から騒ぎ
    -
    「確かに私はあらゆる女性に愛される,あなたは別だが」──アラゴンの貴族クローディオーとメシーナの知事の娘ヒーローは,互いに好意を寄せる仲.ベアトリスとベネディックは,会えば必ず激しい舌戦.シェイクスピア喜劇,屈指の機知溢れるやりとりで,二つの対照的な恋を描く.その台詞の躍動感をいきいきと正確に伝える新訳.

    試し読み

    フォロー
  • 流刑
    4.3
    反ファシズム活動の理由で逮捕されたパヴェーゼ(1908-50)が南イタリアの僻村に流刑されたときの体験を色濃く映した自伝的小説.背後に峨々たる山々が聳え立ち,眼前には渺々たるイオニア海が広がる逃げ道なしの自然の牢獄.その中で築かれた村びとたちとの静かで穏やかな交流の日々を背景に,流刑囚の孤独な暗い心の裡を描き出す.

    試し読み

    フォロー
  • オルメードの騎士
    -
    セルバンテスとともに黄金世紀スペインの頂点に燦然と輝く不世出の劇作家ロペ・デ・ベガ(1562-1635)。新しい演劇「コメディア」を創出した「才知の不死鳥」は、生涯に2200編の作品を残した。本作は中でも屈指の名作。オルメードの騎士ドン・アロンソとドニャ・イネースとの悲恋の物語は、不気味で妖しい美しさをたたえる。

    試し読み

    フォロー
  • ヴェニスの商人
    3.7
    シェイクスピア(一五六四―一六一六)の喜劇精神が最も円熟した一五九○年代の初めに書かれ、古来最も多く脚光を浴びて来た作品の一つ。人肉裁判、筐選び、指輪の挿話等をたて糸とし、恋愛と友情、人情と金銭の価値の対照をよこ糸としているが、全編を巨人の如く一貫するシャイロックの性格像は余りにも有名である。

    試し読み

    フォロー
  • トルストイ民話集 イワンのばか 他八篇
    4.1
    ここに収められた「イワンのばかとそのふたりの兄弟」をはじめ九篇の民話には、愛すべきロシアの大地のにおいがする。そして民話の素朴な美しさの中に、厳しい試練に耐えぬいたトルストイの人生観・国家観・道徳観等その全思想の深みがのぞいている。ロマン・ロランはこの作品を「芸術以上の芸術」「永遠なるもの」と絶賛した。

    試し読み

    フォロー
  • 文学評論 上
    -
    1~2巻726~770円 (税込)
    英文学者・夏目漱石の仕事がもっと読まれてよいのではないか。本書はもと「十八世紀英文学」のテーマで行われた講義であって、漱石は日本人としての主体を鋭く自覚し、また堂々と貫きながら十八世紀イギリスの作家と作品に、その社会に切りこんでいった。外国文学に関心をもつあらゆる人の必読書。 (解説 平井正穂)

    試し読み

    フォロー
  • 坑夫
    -
    「本当の人間は妙に纏めにくいものだ。」 十九歳の家出青年が降りてゆく、荒くれ坑夫たちの飯場と「地獄」の鉱山、そしてとらえがたいこころの深み――明治41年、「虞美人草」と「三四郎」の間に著された、漱石文学の真の問題作。最新の校訂に基づく本文に、新聞連載時の挿絵を収録。(注・解説=紅野謙介)

    試し読み

    フォロー
  • 漱石日記
    3.9
    漱石は明治三十二、三年から大正五年の死の年まで断続的に日記やメモを書き残しており、それは全集版で八百ページを超す大部のものである。そのうちからここにはイギリス留学の日記、修善寺大患時の日記、明治の終焉時の日記など、漱石の生涯の節目となった時期の日記七篇を収録。行文から人間漱石の内奥の声が響いてくる。

    試し読み

    フォロー
  • 虞美人草
    4.0
    明治四十三年、朝日新聞に入社した漱石が職業作家として書いた第一作。我意と虚栄をつらぬくためには全てを犠牲にして悔ゆることを知らぬ女藤尾に超俗の哲学者甲野、道義の人宗近らを配してこのヒロインの自滅の悲劇を絢爛たる文体で描く。漱石は俳句を一句々々連らねていくように文章に苦心したという。 (解説・注 桶谷秀昭)

    試し読み

    フォロー
  • 車輪の下
    3.9
    誇りと喜びにあふれて首都の神学校に入学したハンスがそこで見いだしたものは、詰めこみ主義の教育と規則ずくめの寄宿舎生活であり、多感で反抗的な友人の放校であった。疲れ果てて父の家に戻った彼は機械工として再び人生を始めようとするが……。重い「車輪の下」にあえなく傷つく少年の魂を描くヘッセの永遠の青春小説。

    試し読み

    フォロー
  • 不思議な少年
    3.9
    16世紀のオーストリアの小村に、ある日忽然と美少年が現れた。名をサタンといった。村の3人の少年は、彼の巧みな語り口にのせられて不思議な世界へ入りこむ…作者は、アメリカの楽天主義を代表する作家だといわれるが、この作品は彼の全く別の一面-人間不信とペシミズムに彩られ、奇妙に人を惹きつける。(解説=亀井俊介)(改版)

    試し読み

    フォロー
  • ユートピア
    4.0
    表題の「ユートピア」とは「どこにも無い」という意味のトマス・モア(一四七八―一五三五)の造語である。モアが描き出したこの理想国は自由と規律をかねそなえた共和国で、国民は人間の自然な姿を愛し「戦争でえられた名誉ほど不名誉なものはない」と考えている。社会思想史上の第一級の古典であるだけでなく、読物としても十分に面白い。

    試し読み

    フォロー
  • 阿Q正伝・狂人日記 他十二篇-吶 喊
    3.9
    1巻726円 (税込)
    人が人を食うという妄想にとりつかれた「狂人日記」の「おれ」、貧しい日雇い農民でどんなに馬鹿にされても「精神的勝利法」によって意気軒昂たる阿Q。表題二作とも辛亥革命前後の時代を背景に、妄想者の意識・行動をたどりながら、中国社会の欺瞞性を鋭くえぐり出す。魯迅最初の作品集『吶喊』の全訳。

    試し読み

    フォロー
  • 蜘蛛の糸・杜子春・トロッコ 他十七篇
    4.2
    芥川が小説、随筆、童話、戯曲と、その才気にまかせて様々のジャンルで試みた作品の中から、広い意味で「子どもむき」と考えられる作品を選び収めた。この作品群から、機智や逆説や諷刺、そしてまた、そうした理智の鎧で固められた奥にひそんでいる作者の、少年のような純潔で素直な魂を感じとることができる。 (解説 中村真一郎)

    試し読み

    フォロー
  • カフカ寓話集
    4.0
    迷路のような巣穴を掘りつづけ、なお不安に苛まれる大モグラ。学会へやってきて、自分の来し方を報告する猿…。死の直前の作「歌姫ヨゼフィーネ」まで、カフカ(1883-1924)は憑かれたように奇妙な動物たちの話を書き続けた。多かれ少なかれ、作者にとっての分身の役割を担っていたに違いない、哀しく愛しい彼ら。

    試し読み

    フォロー
  • ペトラルカ 無知について
    4.3
    善良だが無知な人間、と同時代知識人に批判されたペトラルカ。アリストテレスこそが〈神〉、その自然哲学に暗いとは、と謗(そし)る敵陣を、人間主義・反権威主義で迎撃し、古典文献収集と言語研究の必要を説いた著者。雄弁の復権、プラトン再読などの基本構想を具体的包括的に述べたルネサンス人文主義(ユマニスム)最初の宣言書。晩年の主著。

    試し読み

    フォロー
  • 吾輩は猫である
    4.1
    猫を語り手として苦沙弥・迷亭ら太平の逸民たちに滑稽と諷刺を存分に演じさせ語らせたこの小説は『坊っちゃん』とあい通ずる特徴をもっている。それは溢れるような言語の湧出と歯切れのいい文体である。この豊かな小説言語の水脈を発見することで英文学者・漱石は小説家漱石となった。(解説 高橋英夫・注 斎藤恵子)

    試し読み

    フォロー
  • 童話集 銀河鉄道の夜 他十四篇
    4.1
    宮沢賢治の童話はその詩とともにきわめて特異なものである。「あなたのすきとおったほんとうのたべもの」になることを念じて書かれた心象的なこの童話の一つ一つは、故郷の土と、世界に対する絶えざる新鮮な驚きのなかから生まれたものである。どの一篇もそれぞれに不思議な魅力をたたえた傑作ぞろい。

    試し読み

    フォロー
  • 動物農場 ――おとぎばなし――
    4.2
    悪い人間を追い出してけものたちが築くユートピア。「すべての動物は平等である」と七戒を掲げ、革命歌のもと産声をあげた動物農場。だがやがて、ぶたたちの奇妙な振舞が始まる──ソビエト神話の実態を知らせ、スターリン体制の粛清を暴いた、『一九八四年』と並ぶオーウェル(一九〇三―一九五〇)の名高い寓話。

    試し読み

    フォロー
  • 侏儒の言葉 文芸的な,余りに文芸的な
    4.2
    「打ち下ろすハンマアのリズムを聞け」-芸術の永遠に滅びざることをこう表現した芥川は,死の前の4年間アフォリズムの刃を研ぎ澄まし「侏儒の言葉」を書きついだ.一方,谷崎との2度の論争に底深く覗いた文学の「極北」とは何であったか.死への傾斜をはらんだ,最晩年の双竜ともいうべき箴言集と文芸評論集.(解説=平出隆)

    試し読み

    フォロー
  • 山之口貘詩集
    4.0
    書籍問屋の荷造り人,ニキビ・ソバカス薬の通信販売員,職業紹介所職員など様々な職業を転々としながら,ユーモアにみちた,滋味掬すべき詩を書き続けた詩人山之口貘(1903-63)の詩152篇を精選.結婚願望や貧乏生活,あるいは故郷沖縄のなつかしい風景やビキニ核実験を描いたものなど,誰からも「貘さん」と親しげに呼ばれた詩人の精髄.

    試し読み

    フォロー
  • 次郎物語 一
    5.0
    1~5巻704~1,045円 (税込)
    次郎は生後まもなく里子にだされ,五、六歳になって実家に帰ってくるが,自分に対する家庭の空気が非常に冷たく感じられ,乳母が恋しくてたまらない.大人の愛に飢える次郎は,周囲に対して反感をいだいて,わざと嘘をついたり,乱暴をするようになる.つらい運命に耐えながら成長する次郎の姿を深く見つめて描く不朽の名作.

    試し読み

    フォロー
  • 地獄変・邪宗門・好色・藪の中 他七篇
    4.1
    地獄変の屏風を画くため、娘を火にかける異常の天才絵師を描いた「地獄変」、映画「羅生門」で一躍世界に名を馳せた「藪の中」など、古い物語の中の人物を見事に近代の中に蘇らせ得た、芥川王朝物の第二冊。他に「運」「道祖問答」「袈裟と盛遠」「竜」「往生絵巻」「六の宮の姫君」「二人小町」を収める。(解説=中村真一郎)

    試し読み

    フォロー
  • 新編 みなかみ紀行
    3.8
    幾山河越えさり行かば-歌人若山牧水(1885-1928)といえば、旅と酒。彼はしばしば旅に出た。旅先で歌を詠み、紀行文を書いて生活の資とした。信州から上州へ。旅は山道も厭わず実によく歩き、知友を訪ねては酒を飲む。1人旅を好んだが淋しがりやらしい。仄かなユーモアが好ましい上質の紀行文集。(解説=池内紀)

    試し読み

    フォロー
  • 富嶽百景・走れメロス 他八篇
    4.0
    1巻704円 (税込)
    太宰治が短篇の名手であることはひろく知られているが、ここに収めた作品は、いずれも様々な題材を、それぞれ素材に適わしい手法で描いていて、その手腕の確かさを今更のように思い起こさせる。表題作の他、『東京八景』『女生徒』『きりぎりす』『駈込み訴え』『魚服記』『ロマネスク』『満願』『八十八夜』を収録。 (解説 井伏鱒二)

    試し読み

    フォロー
  • 読書について 他二篇
    4.1
    前記『付録と補遺』の中から『思索』『著作と文体』『読書について』の三篇を収録。「読者とは他人にものを考えてもらうことである。一日を多読に費す勤勉な人間は次第に自分でものを考える力を失ってゆく。」――鋭利な寸言、痛烈なアフォリズムの数々は、山なす出版物に取り囲まれた現代のわれわれにとって驚くほど新鮮である。

    試し読み

    フォロー
  • シェイクスピアの記憶
    NEW
    3.3
    分身,夢,不死,記憶などのテーマが,先行諸作品とは異なるかたちで変奏される,端正で緊密な文体によるボルヘス最後の短篇集.本邦初訳の表題作のほか,「一九八三年八月二十五日」「青い虎」「パラケルススの薔薇」を収録.二十世紀文学の巨匠が後世にのこしてくれた,躊躇なく《ボルヘスの遺言》とよぶべき四つの珠玉.

    試し読み

    フォロー
  • 高村光太郎詩集
    4.2
    世俗的なものとの妥協を排し,不断の情熱をたぎらせて人生の意味を追求し続けた光太郎の詩は,美しいもの,真実なものに対する善意と愛に満ちている.その歩みの中から九十三の詩篇を精選し,「道程」より・「道程」以後・「智恵子抄」より,の三部に編んだ.作者が生前自ら校閲した最後の詩集である. (解説 奥平英雄)※この電子書籍は「固定レイアウト型」で作成されており,タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています.また,文字だけを拡大すること,文字列のハイライト,検索,辞書の参照,引用などの機能は使用できません.

    試し読み

    フォロー
  • 詩の誕生
    4.0
    詩とは何か,詩が生まれ死ぬとはどういうことか――.言語以前の詩について,刻々の詩を感じる人間の瞬間の意識について,あるいは七五調の呪縛力についてなど,詩をめぐる万古不易のトピックに,現代詩に大きな足跡を残すふたりが果敢に切りこむ,白熱の対話による詩論.日本的感受性,日本語,日本文化を根源から探る.

    試し読み

    フォロー
  • 詩人・菅原道真 うつしの美学
    4.0
    日本の文化伝統のなかには「うつしの美学」がきわめて深い根拠をもって生きている.「うつし」とは「移し」.すなわち,あるものを別のものに成り入らせ,その動勢と調和に美を見出す精神の活動である.菅原道真の詩は,その「うつし」が生んだ,最もめざましい古代的実例であった.和歌の詩情を述志の漢詩に詠んだ詩人を論じる.(解説=蜂飼 耳)

    試し読み

    フォロー
  • 人間とは何か
    3.9
    老人と青年の対話の形で書かれたマーク・トウェイン晩年の著作。人生に幻滅している老人は、青年に向かって、人間の自由意志を否定し、人間は完全に環境に支配されながら自己中心の欲望で動く機械にすぎないことを論証する。人間社会の理想と、現実の利己心とを対比させつつペシミスティックな人間観で読者をひきつけてゆく。

    試し読み

    フォロー
  • リチャード三世
    4.0
    15世紀後半のイギリス、ランカスター家とヨーク家の王位争奪を中心とする封建貴族間の内乱=薔薇戦争に取材した史劇。恐るべき残忍、知謀、豪胆-王位簒奪の野望を抱き、権謀術数の限りを尽くしたグロースター公リチャード(リチャード3世)は、しばしば名優たちの当たり役となった。1952-53年頃の作。

    試し読み

    フォロー
  • 道草
    3.9
    『道草』は漱石唯一の自伝小説だとする見方はほぼ定説だといってよい。すなわち、『猫』執筆前後の漱石自身の実体験を「直接に、赤裸々に表現」したものだというのである。だが実体験がどういう過程で作品化されているかを追究してゆくと、この作品が私小説系統の文学とは全く質を異にしていることが分る。 (解説・注 相原和邦)

    試し読み

    フォロー
  • 倫敦塔・幻影の盾 他五篇
    3.0
    留学体験に取材した『倫敦塔』、日露戦争にまつわる怪談『趣味の遺伝』、アーサー王時代の物語『幻影の盾』など七つの短篇。同時期の『猫』と全く異質なこれらの作品の世界はユーモアや諷刺の裏側にひそむ漱石の「低音部」であり、やがてそれは『それから』以後の彼の全作品に拡大されてゆく。 (解説 江藤淳・注 石井和夫)

    試し読み

    フォロー

最近チェックした本