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「本当の人間は妙に纏めにくいものだ。」 十九歳の家出青年が降りてゆく、荒くれ坑夫たちの飯場と「地獄」の鉱山、そしてとらえがたいこころの深み――明治41年、「虞美人草」と「三四郎」の間に著された、漱石文学の真の問題作。最新の校訂に基づく本文に、新聞連載時の挿絵を収録。(注・解説=紅野謙介)
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Posted by ブクログ
小説の内容が云々よりも、当時の「蒸発」の一種をみたようで、おもしろかった。 東京の中流階級の家にうまれた男の手記の体裁をとる。女絡みの出来事をきっかけに自殺を考え、次いで世捨て人になろうと考えたやさきにポンビキに拐かされ、足尾銅山に連れられて坑道を体験したのち、坑夫になろうと決心したものの健康診断...続きを読むで気管支炎と診断され、帳簿管理の仕事をあてがわれて数年後に東京へ戻るとゆう筋書き。 前半から中盤は落ちこぼれた知識分子が頭脳を無駄遣いしているような、江戸時代の黄表紙本みたいな文章。最近漱石独特の宛て字があまり好きでないことに気がついた。 物語性に乏しいとゆうことで従来あまり注目されてこなかったどころか、不完全なカタワな作品とみられてきたらしい。個人的には、徳田秋声の『あらくれ』をすこし思い出させる。はじめの、さわりの部分とゆうか、放浪にでる動機は中々はっきりしているが、その後の放浪になるととりとめのない展開が続くところとか。 こんなやついるなーと思わせる一方で、一向に主人公や周辺人物の革新的性格や思考がつかめないところとか。結局、人間は物差しでは測れないものだと気づかされる。 ……ただ、『追われゆく坑夫たち』(岩波新書)を読んでいると、現実の坑夫はこの物語の中で描写されるよりも悲惨な生活を送っていたらしい。(尤も、同書の舞台は漱石よりもずっとあとの昭和年間の日本。)
良い意味で、夏目先生の作品の中で一番意味のわからないものでした。登場人物も途中で別れてしまいそれっきり、という人物が多かったです。ただ、いかにも「人生はいろいろ中途半端」ということを表しているような作品で、これはこれでアリだなと思います。
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