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分身,夢,不死,記憶などのテーマが,先行諸作品とは異なるかたちで変奏される,端正で緊密な文体によるボルヘス最後の短篇集.本邦初訳の表題作のほか,「一九八三年八月二十五日」「青い虎」「パラケルススの薔薇」を収録.二十世紀文学の巨匠が後世にのこしてくれた,躊躇なく《ボルヘスの遺言》とよぶべき四つの珠玉.
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Posted by ブクログ
静謐な短編集。 ラテンアメリカの色やにおい、温度や湿度はほとんど感じない。 晩年の作品であり、死への近さがそうさせるのか。
20世紀ラテンアメリカの作家ボルヘス(1899-1986)最晩年の短篇集、1983年。 □ 自己への拘泥という依存からの解放を、精神からも肉体からも解放されるということを、精神と肉体から抜け出る秘密の抜け道としての何かを、求めていた。自己がどこともなく解消されて、喪失すべきものが実ははじめから喪...続きを読む失してしまっていたということになれば、喪失の前提条件が予め解消されてしまっていたということになれば、そもそも迷子になる布置そのものがなくなってしまっている、ということになる。 主/客、自/他、有/無、同一/差異、区別/混沌、、現/夢、生/死、実/虚、能動/受動、自由/運命、、始/終、先/後、因/果、内/外、上/下、左/右、天/地、遠/近、大/小、、真/贋、始源/模倣、原本/複製、根源/派生、作者/読者、、メタレベル/オブジェクトレベル…… ボルヘスの不思議な作品を読んでいると、これらの対立がくるりと反転して、そうした区別(秩序、同値類)と方向(序列、階層)が曖昧化され解消してしまう。彼の作品を通して、自分の、或いはもはや「自分」とは名指しできなくなるかもしれない何者かの、別のありようを、想像してみる。 □ 「外で私を待っていたのは、別の夢だった。」(p23「一九八三年八月二十五日」) 「作品はその描き手を必死になって救おうとする。」(p154「解説」) 「読み手の役割がもっとも重要なのだ。読み手であって、書き手ではない。ボルヘスさんは読み手が書き手の仕事を引き継ぐのだと信じている」(p156「解説」)
マジック・リアリズムと呼ばれるが、ガルシア・マルケスとはまた違う。日本文学より語り切る感じだが、シンプルな中に読み手に委ねてあるところが多く面白い。
ボルヘスの遺作が本邦初訳なのがびっくり。良くも悪くも枯れた感じは、昔からかも知れないが、渇き具合が一段と上がっている感じはする。懇切丁寧な解説が助かる。
「一九八三年八月二十五日」 唐突に読み終わって、あまりに痺れた。 自分で自分に対面し、未来を知り、今が終わり、唐突に次が開く?!。なんという物語だ。 「青い虎」 うわぁ!!!!ハッピーエンドじゃない。ハッピーそうで、この世の条理を背負う不条理がある。 「パラケルススの薔薇」 科学の失礼さ。物語の...続きを読む必定さ。楽しさ。 なんかこういうの読むとすごすぎてため息が出るわ。 「シェイクスピアの記憶」 そこまでして求めたものをそんな風に投げやりに明け渡してしまうのか。
160ページくらいの薄い本で、しかも3分の1は解説。 宮崎駿「君たちはどう生きるか」の感想で、セルフオマージュみたいでマンネリ、というものがあったが、 いやむしろ追い続けたモチーフがまたも登場することに業を見出して嬉しくなってしまった者としては、 最後の短篇集にまで「いつものあれら」が出てくるのは嬉...続きを読むしい限り。 一九八三年八月二十五日 青い虎 パラケルススの薔薇 シェイクスピアの記憶
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シェイクスピアの記憶
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ホルヘ・ルイス・ボルヘス
内田兆史
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