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Posted by ブクログ
20世紀ラテンアメリカの作家ボルヘス(1899-1986)が編んだ、古今東西の書物から引かれた幻想的な掌編のアンソロジー。
「文学が与える数多い楽しみのひとつは、物語の楽しみである。・・・。物語の精髄は本書の小品のうちにある、とわれわれは自負する」
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解説によると、ボルヘスの編むアンソロジーに収められた小品の中には、その典拠の存在が確認できないものもあり、実はボルヘスが創作したものを紛れ込ませている可能性があるらしい。何とも愉快なことだと思う。別の作品の中でこんなことを言っている。
「書物に署名するのはおかしなこと。剽窃の観念は存在しない。すなわち、あらゆる作品が非時間で無名の唯一の作者の作品であることが定められた」(『伝奇集』)
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夢/現、死/生、過去/現在/未来、原因/結果、裏/表・・・無限遠の始まりから無限遠の終わりへと走る両端なき直線が、くるっと捻じ曲げられて、ウロボロスの蛇よろしくその円環を閉じ、始まりも終わりもない無限循環がただそこにいつまでも残り続ける。掌編ゆえにその前後に感じられる余白は、却ってその物語が無限の円環の一部に過ぎないことを思わせて、自分が時間的にも空間的にもすーっと遠くに高まっていく感覚に襲われる。そのとき読み手である私は、卑近な不安や不機嫌をすべてどこかへ置き去りにして、透明になる。
この奇妙な「高度の感覚」について、澁澤龍彦の次の文章を目にしたとき、なるほどと思った。
「・・・、しかしボルヘスの死には奇妙な明るさがある。かつて稲垣足穂さんが亡くなったとき、すでに生きているうちから、とっくに永遠の世界に入ってしまった感のある稲垣さんが亡くなっても、それほど悲しみの気持ちは湧かないと書いたことがあるが、八十六歳のボルヘスの死に接しても、それと似たような気持ちを私はおぼえる」(「ボルヘス追悼」)
柳瀬尚紀は訳者あとがきで本書を「《反復》のアンソロジー」と呼んでいる。
Posted by ブクログ
ボルヘスが世界中から集めた92の掌編・短編が収録されている。怪奇というより幻想小説っぽいのが多いが、どれもとても面白い。とくに「汽車」か物語としても構成・文体としてもすごくよかった。
ちなみに、各話に典拠となる書名とその作者が明記されているが、それらがすべて本当かどうかは疑わしいらしい。どんなに調べても書名や作者名がここ以外で見つからないものがるそうで、もしかしたらボルヘス自身が書いたオリジナルかもしれないと。世界中から掌編・短編をあつめた、というそのこと自体がフィクションかもしれないわけで、いかにもボルヘスらしい感じがする。
なお、北村薫の短編「水に眠る」の元ネタと思しき短編をこの本で見つけた(エドガー・アラン・ポーの「水の島」)。水の層にナイフを入れるて分離する、というイメージが偶然似通うことはなさそうなので、まず間違い無いと思う’。調べた限り両者の関連について言及しているものは見当たらなかったが、実際どうなんだろう。
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