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Posted by ブクログ
儚い生命が病に手折られる哀しさ、二人の仲が引き裂かれる運命の残酷さ。悲運に悲運が重なる浪子が哀れ。
いわゆるお涙頂戴もので、全体的にひたすら浪子が可哀想なのですが、論理的な矛盾を指摘したりするのでなく(だって武雄にも情熱の足りなさを感じるし家制度も腹が立つし、何もここまで浪子に辛苦をなめさせなくてもと思う)、絶望に出会った人物達の心の動きや表現を鑑賞するべきです。
万一この後もし武雄が再婚してもいいんだよ!だって今のこの愛はまぎれもない本物で最高潮だったのだから。
手紙に「玉章とる手おそしとくりかえしくりかえしくりかえし拝し上げ」る浪子。さびしく微笑し妹の為に派手な着物を選ぶ浪子。
愛の情熱の激しさ、文章の格調高さ。浪子の無念はいかばかり!
Posted by ブクログ
何度も映画化された当時の大ベスト・セラー。いわゆる「難病モノ」であることはどこかで仄聞して知っていたのだが、今回はじめて読んだ。「難病モノ」であるという断片的な知識から、『世界の中心で、愛をさけぶ』のように、ヒロインが病魔に侵されて亡くなってしまう筋書を想像していて、じっさい浪子は最終的には亡くなってしまうのであるが、しかしメインの悲劇は死ぬことそれじたいではなく、病気のせいで2人の関係が引き裂かれてしまうことである。まさに「悲恋」という言葉がふさわしい展開に、当時の読者が熱狂したのも頷ける。想像と異なっていたぶん、純粋に物語を楽しむことができた。このような悲劇のウラには、千々岩や川島未亡人の憎らしさなども存分に描かれており、たんなる「病気モノ」では終わっていない点もよかった。また、コレも予想外であったのだが、物語にはなんと日清戦争まで登場する。病気に加えて戦争という悲劇も加わるわけである。さらには、同時に当時の時代背景を巧みに採り入れているということでもあり、同時代の読者の心を捕らえて離さなかったことにも納得である。「病気モノ」と聞いて読む前には軽く捉える気持もあったのだが、じつはさまざまなところに「仕掛」が張り巡らされていて、文学史上に残る傑作であることも理解できた。
Posted by ブクログ
1900(明治33)年刊。
明治期の日本文学の名作としてよく知られた作品ながら、地の文が文語調であるために私は敬遠してこれまで読まなかったようだ。
本作について、たぶん日本的な微妙な情緒のたゆたう芸術性の高いもの、と勝手に予想していたのだが、どうもそのニュアンスとは異なり、むしろ尾崎紅葉に近い、骨太なストーリー性の強い、ドラマチックな物語であった。
文章はもちろん今風のものと比べれば、文語体なだけに格調は高いようだが、さほど「芸術的」とも思えなかった。当時の読者にとっては平易な文章だったのではないか。完了の助動詞「つ」がやたら出てくるのが気になった。ただの過去形で良さそうなのだが・・・・・・。
本作のおおまかな筋は徳冨蘆花が人から聞いた話に由来するらしい。
女主人公浪子は、新婚ホヤホヤで配偶者と相思相愛のアツアツな関係にあって幸福だったのが、結核に罹患したことから、結核は家族にうつるから家を滅ぼす、という考えにより、悪者の讒言にそそのかされた夫の母親に、夫の不在時に勝手に離縁させられ、どん底に落ちて病が嵩じ、やがて死んでゆく、という悲劇である。
本作が明治期最大のベストセラーとなったのは、このようなメロドラマ的な大枠と、非常に分かりやすい(たぶんあまり深みの無い)心理描写とが相まって、多くの人びとの感涙を誘ったのだろう。
何と、数カ国語に訳されたらしい。が、海外での評価は結局どうであったのだろうか。本人たちの、独立した個人としての意志の自由を否定して、当時の家族制度の頑迷さに甘んじ、どんなに辛くても「仕方がない」となってしまう、あまりにも日本人的な不自由さは、欧米人に理解されたのだろうか。
あまりにも類型的な悪者が登場するなど非近代的な面もあったが、まあ、江戸の読本や坪内逍遙の『当世書生気質』(1885)に比べればはるかに写実的で近代小説らしくはあるし、とりあえず印象深い物語ではあった。
ただ、やはり芸術性ということで言うなら徳田秋声『あらくれ』(1915)のような情緒には劣っている(このコンポジションを欠いたような小説を日本的な美の良さと捉えるならば)と感じる。
本作の良さはほどよい通俗性・感傷性が多くの一般読者を魅了したことにみられるような「わかりやすさ」の点だろう。
ちなみに、この文庫本の巻末には作者の略年譜が載っている。カトリック信者だったようだが、1919(大正8)年に妻の愛子とともに「第二のアダムとイブであるとの自覚を得、新紀元第1年を宣言して世界一周の旅に出る」との記述がある。何だそれは。もしかしてアブナイ人?との疑問が湧いた。
Posted by ブクログ
大学の講義のために購入。
実は最近、初めて恋をして、失恋しちゃったんですよね。そんなセンチメンタルな私が浪子と武男の夫婦生活を見ててると、自由な恋愛を求めることができないことに心苦しさを感じましたね。
「不如帰」の時代は明治。新たな文化が欧米から入ってくる。それは思想も同じ。自由に恋愛して結婚できることなんて新しい価値観だった。当時は結婚は本人同士だけで決められるものじゃなかった。離婚もそう。こうした新しい価値観と古くからある日本の価値観とのズレが2人の仲を引き裂いてしまった。そして、女性の地位が低かった当時だからこそ最期の浪子の叫びは多くの女性の心を掴んだのではないだろうか。愛に飢えていた浪子はほんのひとときだけでも武男と愛しあえて幸せだったのかな。
こうして考えると今の恋愛結婚は幸せなのかもしれない。
「不如帰」って当時は暗く、悲しいイメージがもたれてました。悲しい愛の物語。そんな一冊。
恋愛って幸せだけじゃないんですね…。
Posted by ブクログ
『金色夜叉』よりも読みやすかった
「家を守る」ということを重んじる
今の感覚ではあまりピンとこないけれど、当時の読者はどうだったのでしょう
姑のあまりに強引なやりかたに憤りつつも、矢張り仕方がないと思い、引き裂かれた浪子・武男夫婦の不幸に涙したのでしょうか
当時、女性、それも家における子を持たない嫁の立場がどれほど低いものだったのかということ
いろいろなタイプの女性が出てきて面白かった
個人的には千々石が凄く好きだったんですけれど
子供時代の不幸な境遇という点では、彼も浪子に劣らずな感じなんですが
解りやすい悪人に書かれてたけれど、彼にも同情の余地はある、と思ってしまいます
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