死者の書・口ぶえ

死者の書・口ぶえ

小説・文芸
880円 (税込)

4pt

開催中のキャンペーン

「した した した。」雫のつたう暗闇、生と死のあわいに目覚める「死者」。「おれはまだ、お前を思い続けて居たぞ。」古代世界に題材をとり、折口信夫(1887-1953)の比類ない言語感覚が織り上げる物語は、読む者の肌近く忍び寄り幻惑する。同題の未発表草稿「死者の書 続編」、少年の眼差しを瑞瑞しく描く小説第一作「口ぶえ」を併録。(注・解説=安藤礼二)

詳しい情報を見る

  • カテゴリ
    :
    小説・文芸
  • ジャンル
    :
    小説 / 国内小説
  • 出版社
    :
    岩波書店
  • 掲載誌・レーベル
    :
    岩波文庫
  • タイトル
    :
    死者の書・口ぶえ
  • タイトルID
    :
    259519
  • ページ数
    :
    328ページ
  • 電子版発売日
    :
    2014年04月25日
  • コンテンツ形式
    :
    EPUB
  • サイズ(目安)
    :
    3MB

閲覧環境

  • 【閲覧できる環境】
  • ・ブックライブ for Windows PC(アプリ)
  • ・ブックライブ for iOS(アプリ)
  • ・ブックライブ for Android(アプリ)
  • ・ブックライブ PLUS for Android(アプリ)
  • ・ブラウザビューア

※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。

死者の書・口ぶえ のユーザーレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    夢幻能のような小説である。

    折口信夫『死者の書』、1939年に書かれた幻想小説だ。長くはないが濃密な、この異色の傑作を読むにあたっては、いくらかの知識を事前に仕入れておいた方が良い。これから書くことは所謂ネタバレだが、古代史に相当詳しい人でない限り、この予備知識によって謎解きの楽しみを奪われたと感じることはないと思うので、このまま書き進める。独力で折口の仕掛けに挑んでみたいと思う人は、ここで引き返されたい。

    物語の舞台は奈良県葛城市、二上山(ふたかみやま)の麓にある当麻寺(たいまでら)である。七世紀に建立されたこの仏教寺院には、当麻曼荼羅(たいままんだら)と呼ばれる織物が保管されている。中将姫と呼ばれる藤原家ゆかりの女性が、蓮糸を用いて一夜で織り上げたという伝説のある織物だ。姫はこの功徳によって、生きながら極楽浄土へ召されたと伝承にある。

    この中将姫が『死者の書』のヒロインである。難解な語り口のため挫折率が高いといわれる作品だが、「中将姫(藤原南家郎女)がいかにして当麻曼荼羅を織り上げたか」を幻想味たっぷりに描きだした、いわば架空の縁起物語であるという大筋を押さえておけば、幾重にも錯綜する語りの中で迷子になることはないだろう。

    そしてもうひとつ、中将姫伝説と並んで、この作品には重要なモチーフがある。姫の誕生に先立つこと百年、天武天皇の子として生まれながら、謀反の罪で処刑され二上山に埋葬された、大津皇子(おおつのみこ)の悲劇がそれである。〈した した した〉という印象的な水滴の音とともに冒頭で目覚めるのは、大津皇子の魂だ。皇子の辞世の句とされる歌が万葉集に残されている。

      ももづたふ磐余(いわれ)の池に鳴く鴨を今日のみ見てや雲隠りなむ

    折口の想像力は、中将姫と大津皇子というふたつの傑出した魂を、藤原一族の血と、二上山というパワースポットを媒介としてめぐり逢わせた。それは別の言い方をすれば、百年の時を越えて成就する、スピリチュアルな恋の記録だったかもしれない。

    『死者の書』を読むにあたって知っておくべき最低限の予備知識は、このくらいだ。あとはただ、折口の魔術的な語りに身をゆだねていれば良い。古代人の魂魄が憑依したかのごとき、折口のほとばしる情念を感じとることができれば、それで良い。稀代の民俗学者にして歌人であった折口信夫が、自身の持てる全てを注ぎ込んだ作品。〈死〉を冠する題名とは裏腹に、これほど生き生きとした古代人の息吹が感じられる小説は、そうあるものではないのだから。

    0
    2022年09月06日

    Posted by ブクログ

    1943年(昭和18年)9月末に刊行されました。大東亜戦争宣戦布告から2年の秋、戦場や軍事工場へ多くかりだされていた若者が、戦地にただ一冊携えたといいます。折口が戒名にもした釈迢空の名で詠まれた壮行の詩は「生きて帰れ」というメッセージでした。折口信夫素晴らしい。

    0
    2014年09月06日

    Posted by ブクログ

    折口信夫文学忌 1887.2.11〜1953.9.3
    迢空忌 釈迢空(シャクチョウクウ) 歌号よ

    時折、立ち寄る博物館に 折口先生のコーナーが常設されており、再現された仕事部屋等もあり、身近なおじ様と思っていましたが、作品は遥かな感じでした。
    今回は、「死者の書」のみ。「口ぶえ」は、今月、他の作品集に収録されて新刊で出版されるようなので、是非そちらで。コミックにもなっているようです。

    柳田國男の高弟、民俗学の基礎を築き、国文学者で国語学者。

    1939年 日本評論初出
     上代に詳しい方なら、大丈夫かもしれないですが、一読では、理解できず、第一印象は夏目漱石の夢十夜を濃厚にしたような幻想小説でした。

    理解できそうなところまで、紐解いてみました。
    奈良県の當麻寺(たいまでら)に残る「当麻曼荼羅縁起」が、取り込まれているという事です。
    主人公は、中将姫 747~775 藤原鎌足のひ孫で
    藤原豊成の娘。才能ある美女。
    能にも「当麻」という作品があるようです。
    もうひとりの主人公は、大津皇子(亡霊)。663~686 天武天皇の第三皇子。学識、才能あるイケメン。謀反の疑いをかけられて処刑される。

    物語の中で 郎女(いらつめ)、姫と呼ばれるのは、中将姫です。郎女は、若い女性を親しんで呼ぶ時の古語。
    亡霊の皇子と中将姫の間に100年の時差があり、各章が時間の流れの通りに配置されていないので、
    パズルのように各章が収まった時が快感。
    オノマトペ的な音の表現があちこちにでてきます。
    私のイメージでは、語り部が、語りやすいようにするためなのですが、臨場感が上がるのは確かですね。
    以下は、覚書です。






    一.
    二上山に葬られていた大津皇子の目覚め。
    死の際にふと見た耳面刀自(美しさ女性・藤原鎌足の娘)を思い出す。着物は塵となり、裸のままだ。寒い着物を求める。
    したしたした 水の音
    ニ.
    目覚めた皇子の亡霊が見る景色。男達が、藤原南家の郎女を探している。
    こうこうこう 魂呼の声
    三.
    藤原南家の郎女は、結界破りの罪を償う為、万宝蔵院の庵室に匿われる。
    付き人の媼が藤原家の古物語を語り聞かせる。
    四.
    媼の語る大津皇子。耳面刀自への執心。その執心が、やはり美しい郎女をこの地に呼んだのではないかと。郎女は、金色の髪を持つ皇子の亡霊を見る。
    五.
    蘇った大津皇子の魂が記憶を取り戻す。
    妻(山辺皇女)も子も殺された。自分の名さえ残っていないだろうと嘆く。
    六.
    藤原南家の郎女の二上山へのいきさつ。奈良から藤原の里への許されぬ一人旅。
    郎女は写経に取り組む。遂に千部をなす。
    しとしと 雨
    七.
    郎女の神隠し(家出)の様子。
    西へ西へ二上山へ。
    女人禁制の地へ入ってしまう。僧侶に見つかる。
    八.
    奈良の都の様子。大友家持登場。昔を懐かしむ。
    遷都、火災と藤原家にも厳しい社会。
    東大寺四天王像開眼の話題。
    九.
    大友家持が気の向くままに朱雀大路から、五条、右京と都散歩。最後は、三条まで。藤原家の跡地。
    十.
    郎女は書物を得る。大切に育てられた郎女は、御簾の中で書物と出会い外の世界を知る。生きる糧として没頭していく。
    十一.
    ウグイス“法華経 ほけきょう”と鳴く。
    蓮の茎で糸を紡ぐ、付き人達。
    十二.
    女人結界を破り寺の浄域を汚してしまった郎女。その処遇は、本人の意思で、自分の咎は自分で償うとして二上山の麓の寺に。
    十三.
    郎女は、皇子の亡霊の魂の白い玉の幻想を見る。
    つたつたつた 亡霊の足音
    十四.
    大友家持と大師恵美押勝(藤原仲麻呂・姫の父の弟)との 語り。一族の長として気持ちが通じる。
    十五.
    当麻の里の郎女の謹慎生活。夜毎訪れる亡霊を心待ちにする。
    十六.
    当麻の里は春から夏へ。女達は蓮の糸を紡ぐ。
    種々、鳥達の変化。当時の使用人の様子。
    十七.
    秋分の日、嵐の中郎女が居なくなる。
    あっしあっし 弦打ち
    十八.
    蓮の糸で布を織る、郎女。切れては織り、織っては切れて。この布で皇子の素肌を覆いたい。
    十九.
    郎女は布を織り上げる。
    裁っては縫い、ほどいて、布は小さくなってしまう。天竺の僧侶のような衣を作る。
    二十.
    巨大な布に絵を描く。弔いの織物。これが曼荼羅のタペストリーとなる。

    0
    2023年09月03日

    Posted by ブクログ

    難解で、とりあえず読んだーという感じ。解説を読むと少しわかって面白い。謎解きのような、頭の片隅に置いておいて、少しずつ折に触れて、スッキリしていくといいな。
    口ぶえはどちらかというと読みやすかった。

    0
    2015年04月18日

    Posted by ブクログ

    表題作「死者の書」は奈良時代の称徳帝の世を舞台に作られた物語。

    かつて二上山に葬られた滋賀津彦(大津皇子)の魂は、自身の最後に見た耳面刀自(中臣鎌足の娘)の姿のその一点を、死してなお世への執着のように覚えていた。
    一方、藤原南家豊成の娘、郎女は、二上山に沈む夕日に立ちのぼる貴人の面影を追うようになり、とうとうそれを恋うて二上山元の當麻寺に這入ってしまう。
    滋賀津彦を思ううちに、彼の魂が傍へ添うようになり、彼女は蓮糸で衣を織り彼の肌に着せたいと願い始める。そして出来上がった衣に彼女は絵の具で、その姿を描いて見せ…。


    大津を恋う心はその身に流れる藤原の血に、大津が憑いたからなのか、それとも。

    中将姫から得た物語、よく練られていると思います。
    かの當麻曼陀羅を、大津へのラブレターにするとは…畏るべし折口信夫の創造力!

    0
    2012年09月09日

    Posted by ブクログ

    ●「死者の書」
     妄執と云うには美しすぎ、恋愛と云うにはいびつで、救済と呼ぶにはエロティック。
    ●「死者の書〜続編」
     え?何で未完なんですか?!
     すごく続きが気になるんですけど。
    ●「口ぶえ」
     自叙伝的物語。
     すごく‥‥ホモです。

    0
    2011年05月17日

    Posted by ブクログ

    死者の書は何度も読み返し、その度に魂を奮わされてきた。初稿も読み、人形劇の映画も観たし、近藤よう子の漫画も読んでいる。大坂に単身赴任時に当麻寺や二上山には何度も足を運んだ。
    口ぶえも既読。

    死者の書の続篇について知ったのは、中沢新一さんの本からだったかな。
    概要を知って、それほど食指が動いた訳ではなかったんだけど、本屋の棚に見付け、読んでみた。
    従って、このレビューは続篇についてのみ。
    左大臣の名が明かにされないのは、本編(?)で亡霊の名が伏せられているのと共通している。読み始めて、あっさり折口の文章に絡め獲られる。
    住吉から堺の古墳群を望み、学文路(かむろ)の寺に逗留する。高野山に行く南海電車にそんな駅あったなと思うが、そんな立派な寺あるんかな。当麻寺との繋がりも示唆されて、おっという気持ちになる。
    房主と左大臣との対話の占いの話から日京卜からキリスト教らしき唐の不思議の術に話が及ぶ。初稿でも郎女の観想する阿弥陀の姿がキリストを彷彿としていたことを思い出す。このあと、どういう展開だったんだろう。知る術もないんだけどね。

    0
    2022年07月02日

    Posted by ブクログ

    内容は難解。ただ、日本語の使い方が恐ろしい。例えば石棺の中で蘇った死者に垂れる雫の音「した、した、した」。その死者が人を呼ぶ声「こう、こう、こう」。朝が来て東の空が「ひいわりと」白んでくる。昔の人は語彙が少なかったというが、こういう表現を目にするとよほど伝わってきてむしを恐ろしい。

    0
    2015年08月02日

    Posted by ブクログ

    前知識ゼロで購入した本書。
    音の文章表現に惹かれたのだけど、歴史小説として(黒岩重吾作品以来)、この時代設定は大変好みなので、心躍らせながら読み進めた。

    何度か「ぬぬ、これはひょっとしてひょっとするのか」などと思いつつ、『死者の書』を読み終え、『口ぶえ』にいたってそれは確信に。

    BLだったでござる。

    特に否定はしないけど、ただちょっとびっくりした。けっこう露骨なので。
    『口ぶえ』の情景描写はとても素晴らしく、R.カーバーやC.マッカラーズの作品を彷彿とさせる。
    解説を読むと民族学的に読むのが正解のようだけど。

    0
    2014年04月11日

    Posted by ブクログ

    民俗学者折口信夫による小説。表題の「死者の書」は一応完結した作品となっているが、他の収録作品は未完。民俗学者としての作者が捉える民族観・歴史観と、当然ながら作者自身の主観が色濃く漂う作品は、ストーリーの時系列が意図的に組み替えられていることと、単語の読みやかなづかいに慣れないせいかスラスラ読み進む訳では無いのだが、何だか不思議な浮遊感を伴う読書体験だった。

    どうしても作者の意図を読み込もうとして、小説としてそれほど楽しむことが出来なかったのが残念。「口ぶえ」が半自伝的小説だという解説でなるほどと納得したが、同性愛的主題は趣味ではないなあ。

    0
    2011年02月26日

死者の書・口ぶえ の詳細情報

  • カテゴリ
    :
    小説・文芸
  • ジャンル
    :
    小説 / 国内小説
  • 出版社
    :
    岩波書店
  • 掲載誌・レーベル
    :
    岩波文庫
  • タイトル
    :
    死者の書・口ぶえ
  • タイトルID
    :
    259519
  • ページ数
    :
    328ページ
  • 電子版発売日
    :
    2014年04月25日
  • コンテンツ形式
    :
    EPUB
  • サイズ(目安)
    :
    3MB

閲覧環境

  • 【閲覧できる環境】
  • ・ブックライブ for Windows PC(アプリ)
  • ・ブックライブ for iOS(アプリ)
  • ・ブックライブ for Android(アプリ)
  • ・ブックライブ PLUS for Android(アプリ)
  • ・ブラウザビューア

※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。

この本をチェックした人は、こんな本もチェックしています

岩波文庫 の最新刊

無料で読める 小説

小説 ランキング

折口信夫 のこれもおすすめ

死者の書(上)

少年・青年マンガ

死者の書(上)

完結
形容詞の論

小説・文芸

形容詞の論

無料あり
  • 試し読み

国語と民俗学

小説・文芸

国語と民俗学

無料あり
  • 試し読み

愛護若

小説・文芸

愛護若

無料あり
  • 試し読み

新しい国語教育の方角

小説・文芸

新しい国語教育の方角

無料あり
  • 試し読み

稲むらの蔭にて

小説・文芸

稲むらの蔭にて

無料あり
  • 試し読み

歌・句・諺のはなし

小説・文芸

歌・句・諺のはなし

歌の円寂する時

小説・文芸

歌の円寂する時

無料あり
  • 試し読み

同じジャンルの本を探す