Posted by ブクログ
2021年12月31日
全7巻の作品
こういう長編作品はなかなか再読が難しいであろうから備忘録としてレビューしたい
そのため一部ネタバレあり
フランス革命後の激動の時代
ナポレオンが失脚しエルバ島へ流刑され、ルイ18世が王権を取り戻した頃…
世間ではナポレオンを支持するボナパルト派とルイ18世を擁立する王党派がにらみ合...続きを読むっていた
何とも純朴な好青年という印象の主人公ダンテス
「父」と「婚約者」と「船乗り(一等運転士)の仕事」という狭い世界で十分満ち足り、人を疑うことも知らず幸せに生きていた
もうすぐ結婚を控え、仕事においては船長に昇格か⁉︎というまさに幸せ絶頂ともいえる矢先
船乗り仲間のひがみ、ダンテスの婚約者メルセデスを愛してやまない従妹の嫉妬
そして全く無頓着であった自分の世界とは関係のない政治絡みに巻き込まれる
それらが出来過ぎたようにうまく絡み合い、まさかの反王党スパイ容疑で逮捕されるのである
しかも婚約パーティーの当日…である
そんな皮肉な運命により天国から地獄へ真っ逆さまとなるダンテス
さてダンテスの運命を狂わせた非常に厄介な検事代理の男ヴィルフォール
彼自身は王党である
そして父親はボナポルト派であるジロンド党
その父親が策士となった手紙
まったく手紙の中身を知る由もないダンテスが運命のいたずらにより運び屋になってしまったのだ
ヴィルフォールは父をかばいつつ、自分の地位を守りたいという計算高い野心家
そんな彼がダンテスという一人の青年を使わない手はない…と始まった策略によりダンテスはナポレオン帰国陰謀を企てた罪で獄中へ
不幸のどん底に突き落とされる
独房に入れられたダンテスは、時間の経過とともに気がおかしくなっていく
彼の心の変化は期待、希望、祈りに始まり、絶望、憤怒、憎しみへと変化する
それが鎮まると今度は死に対する安息を求めるように…
こうした地獄絵図のような時間が何年も経過した折、ある出来事により同じ獄中の罪人と交流ができることに
それがローマ人の祭司ファリアという人物である
ダンテスはファリアの教養と辛抱強さ、精力に脱帽する
ファリア司祭は12年余りの獄中生活で紙、ペン、針、梯子…までもを創意工夫と気力により作り上げ、持ち前の知識を活かし論文まで作成するのである
祭司の貴重なお言葉は以下
〜これらの知恵は、不幸が必要であったのだ
火薬を爆発させるのに圧力がいるように…
監獄生活は、ほうぼうに散らばっていたわしの才能を一つの点に集めてくれた〜
とまぁ、ありえないほどの人物との出会いにより眠っていたダンテスの知識、才能が開花する
ファリア司祭の秘密を共有したダンテス
それはファリアが秘書として働いていた貴族(枢機員)の遺した宝であり、その場所をダンテスに教え譲り渡そうとするのである
〜囚われていたあいだの息子なのだ〜
二人の間には友情を超え、親子のような深い愛情で絆ができるのだが…
実に面白い!
さすが名作だけある
始終エキサイティングな展開で、あっという間に読んでしまった…
平々凡々で人の良さだけが取り柄のようなダンテスの人格が少しずつ崩壊していく
このジリジリと迫る彼の変化が見ものである
ダンテスがどう変貌を遂げ、復讐鬼となるのか…
またどう脱獄するのか…
さらには全7巻であるがそんな長い事かけてどう展開するのであろうか…
そんなところも見ものである