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留学体験に取材した『倫敦塔』、日露戦争にまつわる怪談『趣味の遺伝』、アーサー王時代の物語『幻影の盾』など七つの短篇。同時期の『猫』と全く異質なこれらの作品の世界はユーモアや諷刺の裏側にひそむ漱石の「低音部」であり、やがてそれは『それから』以後の彼の全作品に拡大されてゆく。 (解説 江藤淳・注 石井和夫)
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Posted by ブクログ
七篇の短篇を収録していますが、擬古文の作品が二点含まれるなど、漱石が小説の書き方を模索しているかのような感じを受けました。収録作は『倫敦塔(ロンドンとう)』『カーライル博物館』『幻影(まぼろし)の盾』『琴のそら音』『一夜』『薤路行(かいろこう)』『趣味の遺伝』の7篇。 擬古文で書かれた『幻影の盾』...続きを読む『薤路行』は、美しい文章に酔つつも、それだけに所々が不明瞭な箇所が散見されて、頭が付いて行けなかった。それにアーサー王伝説が絡むと、某アニメの影響で女性剣士のセイバーが脳裏に浮かんでいけない。いつか再読したいと思っております。 『一夜』は、何が言いたいのかよくわからなかったです。好きな四作品の感想を以下に。 『倫敦塔』あらすじ: 二年の英国留学中の着後間もないころ、倫敦塔を訪れたときの話し。そこは幾千もの罪人が護送され、牢獄や処刑場として使われた、まさに英国の負の歴史を詰め込んだ城塞でした。その建物を見て回り、古の人々に思いを馳せるうち、やがて空想が幻影として目の前に現れたかのようになり……。 感想: 時折ユニークな語り口を交えながら、ちょっと不気味で幻想的な文章に引き込まれました。ラストのカラッとしたオチも好きです。小説といいますか、紀行文の形態を取った短篇ですが、とても気に入りました。 ところで、チャールズ・ディケンズ 『二都物語』の感想で、中野京子氏の話しを出しましたが、怖い絵の代表格ポール・ドラローシュ 《レディ・ジェーン・グレイの処刑》の絵画の話しが出てきてビックリ。本を読んでるといろいろ引き寄せるものがありますね。 『カーライル博物館』あらすじ: ある朝、公園で散歩する度に夢想していた、歴史家のカーライルの庵りに足を運んだ。展示してある故人の遺物について、案内役の婆さんが何年何月何日と澱みなく朗読的な口上を述べたてますが、次第に話しを聞き流しつつ、故人の過去に思いを馳せ始めます……。 感想: 故人である歴史家のトマス・カーライルの居宅を訪ねる紀行文。案内役の婆さんの様子はもちろん、故人が奥さんに頭が上がらなかった話しが面白い。また、日常の音すら呪わしく感じるほど神経質な性格が、彼が著作に耽る妨げになっていた描写も面白かったです。 『琴のそら音』あらすじ: 久しぶりに友人の津田を下宿に訪ねて、自らは下宿を出て家を借りつつも、手伝いの婆さんの迷信深さに困惑する様を吐露する。なんでも、婆さんが相談に訪れる寺の坊主が言うには、引っ越さなければ婚約者に不幸があるとのこと。ちょうど彼女がインフルエンザにかかっており、それを津田に話すと、津田はインフルエンザが肺炎に変じて亡くなった、ある親戚にまつわる不思議な霊体験を語りだした……。 感想: 津田くんの下宿からの帰り道は、怖い話しを聞いた後のこともあり、何もかも怖く感じるところが共感できました。また、主人公が、生まれて初めて死について真剣に向き合って考えたことが語られているところは、漱石自身にもいえるのではと興味深かった。 なお、作中で津田くんが持っていた本は、漱石の『思い出す事など』や『文学論』に出てくる、アンドルー・ラング『夢と幽霊の書』です。その本の解説によると、津田くんの言う「ロード・ブローアムの見た幽霊」とは”第五章 生霊”にある「ブルーアム卿の物語」のことのようです。読んでみると、確かに津田くんの話す幽霊譚と同様の内容。これを原書で読んで、作品に落とし込んだ漱石の語学力には驚かされました。 『趣味の遺伝』あらすじ: 日露戦争の空想に耽っていると、いつしか新橋にいた。駅には凱旋する兵士たちと歓迎する群れなす人々。しかし、そこに戦死した浩さんの姿は無かった。弔いに駒込の寂光院に足を向けると、詣るべき墓に若い女を見る。暫くして誰だか気になるも、手掛かりは浩さんの日記にある「郵便局で逢った女の夢」という記述のみ。そこで、日頃興味がある遺伝の知識で推論すれば、浩さんとその女の関係がわかるのではと行動に移します……。 感想: 内容はタイトルが表す通り、お互い惹かれあう恋仲が、子どもや孫にも受け継がれる不思議を物語るものです。しかし、そこに至るまでの戦争批判とも取れる箇所が多々あったのが興味深い。例えば、凱旋する将軍に万歳しかけてやめた場面なんかは、浩さん含めて多くの帰らぬ人たちへの代弁のようで、当時の風潮を考えると驚きですね。発表に際して、勝ち戦で沸く世論や戦場が内地でなかったことが功を奏したのかもしれない。他にも結婚して半年足らずで後家になる例え話しは、勝ち負けや損害の大小に注意が向きがちな戦争に、漱石の意外な視点の投げかけにハッとさせられました。
赤毛のアンの作中劇の原作(アーサー王伝説をもとにしたテニスンの詩「ランスロットとエレーン」)を美しい日本語で読みたくて手にとった。 テニスンの「ランスロットとエレーン」は長編詩だが、漱石の「薤露行」は小説であり、きれいな文語調で綴られている。中世の騎士物語なので文語体がよくあっていた。さすが漱石と...続きを読むいったところだった。 他の短編も、明治の東京の人の生活が垣間見え、とても面白かった。描写も巧みでユーモアに富んでおり、肖像がお札に印刷されるだけのことはあると思った。 アーサー王伝説は日本でも大人気で、ゲームやアニメなど、あらゆるファンタジーものの礎になっている。一方、海外で知られた日本の伝説が何かあるかと考ても、全く思いつかない。ジブリが竹取物語を映画化していたが、マニア向けの域を出ない。 アーサー王にあって桃太郎にないものは何か。アーサー王に普遍的な魅力があるのか、単に西洋に対する憧れが人気のもとなのか。当然のように世界中の人がおらが村の伝説を知っており、謎の改変が繰り返されて、新しい伝説すら確立しつつあるのはどんな気分なのか。などと色々と考えてしまった。
文体も主題もそれぞれ違う短編集の中でも、一際鮮やかかつ濃い存在感を放つのはやはり表題作?の一つである倫敦塔。過去の風景がまるで今現在見聞きしているかのように描かれる様は、その内容の凄惨さと相まってより艶やかに、湿り気のある感を読者に抱かせる。決して読みやすくはなかったけれど、過去の空想を現在形の文章...続きを読むで表す手法は面白かった。幻影の盾、一夜、薤露行は文体が読み慣れないせいかそもそも意味がよく分からなかったし、カーライル博物館、琴のそら音、趣味の遺伝は、漱石の小説としては少し物足りない感じが、、、でも現代の小説でもそんなの腐るほどあるよなあ。この全体的に薄暗い短編集を、吾輩は猫である、坊ちゃんと同時期に書いていたというのが面白いところ。色んな表現の仕方や文体を漱石なりに試していたんだろうと伺わせる、その探究心、向上心に拍手!
漱石のロンドン留学時代。 これがあの『吾輩は猫である』と同じ人が同じ年に書いた作品とは到底思えない。ユーモアなし、風刺なし。幻想的な小品群である。評伝によればこの頃の漱石は神経衰弱に悩まされていたとのことなので、そういった精神状態も作風に影響を与えたのかもしれない。 いつかこの本を手にロンドン塔...続きを読むに行ってみたいものだ。ジェーン・グレーは現れるだろうか。
8月25日購入。倫敦塔・カーライル博物館・幻影の盾・琴のそら音・一夜・薤露行(かいろこう)・趣味の遺伝の7篇。同時代の『猫』と全く異質なこれらの作品の世界はユーモアや諷刺の裏側にひそむ漱石の「低音部」であり、やがてそれは彼の全作品に拡大されていく。…BYエトジュン!それにしてもイギリス留学中のそーせ...続きを読むきセンセは、病んでた・・倫敦塔なんか殆ど妄想で語ってる、幻影の盾も妄想。一夜にいたっては禅問答だものな
『倫敦塔』『カーライル博物館』か 読みにくくて続けて読むのが辛かった。『幻影の盾』もベースになっているアーサー王の伝説を知らないとついていけないくらい読みにくい。『琴のそら音』『趣味の遺伝』は読みやすくて良かった。特にパンチのある話がない短編集だったかな~。
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倫敦塔・幻影の盾 他五篇
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