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14歳で銀行に事務見習として就職し,定年まで家族の生活を一人で支えつづけた詩人,石垣りん.家と職場,生活と仕事の描写のうちに根源的な雄々しい力を潜ませた詩を書きつづけ,戦後の女性詩をリードした詩人のすべての詩業から,手書き原稿としてのみ遺された未発表詩や単行詩集未収録作品を含む,120篇を精選.
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Posted by ブクログ
「表札」の石垣りんである。表紙の自筆原稿の達筆に驚く。 強い人だと思っていたが、父と義母、無職のふたりの弟、5人の暮らしをひとりの月給で支える日々で、 長い間漕ぎつづけましたが 文化的な暮しは そんなやすらかな港は どこにもありませんでした と書いた。さらに、 最低限度の生活を維持したいのが...続きを読む 私の願いでした 国はそれを保障してくれたことがありません 国とは何でありましょう と告発する。やっぱり強い人だ。 ※ 日本国憲法第25条 (第1項) すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 (第2項) 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。 もっとも心にひっかかった詩をひとつ、 雪崩のとき 人は その時が来たのだ、という 雪崩のおこるのは 雪崩の季節がきたため と。 武装を捨てた頃の あの永世の誓いや心の平静 世界の国々の権力や争いをそとにした つつましい民族の冬ごもり 色々な不自由があっても また良いものであった。 平和 永遠の平和 平和一色の銀世界 そうだ、平和という言葉が この狭くなった日本の国土に 粉雪のように舞い どっさり降り積っていた。 私は破れた靴下を繕い 編物などしながら時々手を休め 外を眺めたものだ そして ほっ、とする ここにはもう爆弾の炸裂も火の色もない 世界に覇を競う国に住むより このほうが私の生きかたに合っている と考えたりした。 それも過ぎてみれば束の間で まだととのえた焚木もきれぬまに 人はざわめき出し その時が来た、という 季節にはさからえないのだ、と。 雪はとうに降りやんでしまった、 降り積った雪の下には もうちいさく 野心や、いつわりや 欲望の芽がかくされていて "すべてがそうなってきたのだから 仕方がない”というひとつの言葉が 遠い嶺のあたりでころげ出すと もう他の雪をさそって しかたがない、しかたがない しかたがない と、落ちてくる。 ああ あの雪崩、 あの言葉の だんだん勢いづき 次第に拡がってくるのが それが近づいてくるのが 私にはきこえる 私にはきこえる。 (1951.1)
100分で名著でこれから紹介される若者のための本である。伊藤比呂美が解説している。この解説がなければ石垣りんがどこのひとかよくわからない。東京の銀行で長らく勤めた。国際女性デーにふさわしい詩集であるばかりでなく、とてもわかりやすく同意しやすい詩集である。学生にとっても読んでこれほどわかりやすい詩集は...続きを読むないであろう。
伊藤比呂美の好みでない石垣りん後期の「穏やかな人生詩」が少ないなど、選詩に偏りはあるが、それでも石垣りんの言葉の凄まじさを味わえる内容に満足。 私は彼女の穏やかな優しい詩もとても好きなので、それは別詩集を買おうと思う。
なかなか…石垣りんさんが過ごしてきた時代背景がまざまざと浮かぶかのような…そんな詩のベストセレクションでしたねぇ…社畜死ね!! ヽ(・ω・)/ズコー 貧乏と孤独と…家族に悩まされ? ながらも…この時代の女の人で独身ってなかなか珍しいんじゃないでしょうか? などと要らぬことを考えながら読み進めて...続きを読むいきましたねぇ…。 うーん、これは…再読したくなるような詩集でしたね! 茨木のり子さんと言う人もどうやら有名らしいので、そちらもチェックしてみましょうかね…。 さようなら…。 ヽ(・ω・)/ズコー
銀行員として働きつつ、詩を紡ぎ続けた石垣りんの精選詩集。茨木のり子さんの詩にも大きな衝撃を受けましたが、石垣りんさんの詩は、また、全く違った意味での衝撃でした。 現代詩にはまってしまいそうです。
歴史を通り抜けていく私たちが、お土産に渡す21世紀はどのようなものになっているだろうか 「ことば」という一編を読んで、石垣さんでもことばを逃してしまうことがあるんだと、ちょっとホッとする。
詩人になるほどの鋭い感性を持った人が生活のために銀行で働いたら、それはそれは思うところいっぱいあるだろうなあ。苦しいだろうなあ。と思う。 それが見事に言葉になっている詩たち、素晴らしいし胸打たれる。 もし私が谷川俊太郎や茨木のり子みたいな、生きるために何か必死こいて仕事しなくてもいい、いい身分の詩...続きを読む人だったなら、石垣りんの詩読んだら恥ずかしくなるだろうな。 自分うすっぺらー、って思うと思う。 何かに耐え忍びながら生きてる人の言葉って重みが違うし、それだけ鬼気迫る文言が出てくる。 労働の凄さを思わされた。
光村図書の中学二年生の教科書に「挨拶ー原爆の写真によせて」が載せられている関係で、石垣りんの教材研究をしようと思って、友人がいっしょに読んでくれることになった一冊。石垣りんの詩以上に、伊藤比呂美の解説が、ものすごく丁寧に一つひとつの詩集の流れを追っているところの方が、ものすごく印象的で、なるほどと思...続きを読むってもう一度読み返してしまった。 第一詩集『私の前にある鍋とお釜と燃える火と』は、伊藤比呂美に、「率直すぎて、現代詩というより、ほとんど社会の正義と反戦と平和のプロパガンダだ。アジテーションだ(p287)」と言わしめる戦争をテーマにした詩に始まり、「身のまわりのp日常的なことがらを見つめ始める(p291)」詩へと移っていく。その視線はやがて「家族の存在に向かい、家族の感情に向かい、家族の使う便所に向かい、台所に向かい、それから自分自身に向かって(p292〜293)」いくと、日常の暮らしの汚さを描いていき、最後に一つ、ため息をつくのだという。 戦争は終わった。平和を願った。社会について、時事について書いてきた。それから人々を、日常を書いてみた。汚いこと、恥ずかしいことをいっぱい書いた。それから家族を書いた。自分を書いた。書いてきた。そして今、石垣りんは、ここ、詩の半ばで、脱力して、病気もあって、詩らしさからすっかり逃れて、地声で、聞こえるか聞こえないかくらいの低い声で、つぶやくのだ、「ああ疲れた、ほんとうに疲れた」と。(p305) この詩集は、伊藤比呂美が選んだ選集だが、本人も「どれひとつとして、選びたくない詩がなかった(p285)」と言っているように、『私の前にある鍋とお釜と燃える火と』と『表札など』については、かなりの数がそのまま載せられている。これは、後半の『略歴』、『やさしい言葉』、『レモンとねずみ』の三つと比べれば明らかだと思う。それくらいに前半の二つの詩集は、詩集というまとまりとして、一つのストーリーが出来上がっていて、編者の伊藤比呂美が、その作者としてのストーリーを、上手に拾い上げている。 もう詩集としての理解は、解説にすっかり納得してしまって、それ以上のことを思えなくなってしまった。あとは、個人的に気に入った詩について想いを馳せるくらいのものである。自分の現在置かれた境遇に対して、タイムリーだったということもあって、第三詩集『略歴』にある「定年」は、なんだかものすごく刺さってしまった。 ある日 会社がいった。 「あしたからこなくていいよ」 人間は黙っていた。 人間には人間のことばしかなかったから。 会社の耳には 会社のことばしか通じなかったから。 人間はつぶやいた。 「そんなこといって! もう四十年も働いて来たんですよ」 人間の耳は 会社のことばをよく聞き分けてきたから。 会社が次にいうことばを知っていたから。 「あきらめるしかないな」 人間はボソボソつぶやいた。 たしかに はいった時から 相手は会社、だった。 人間なんていやしなかった。(p152〜153 定年) 合理化された組織の原理で動く会社には、一人ひとりの人間の声は届かない。決められたルールに則って、機械の部品のように取り替えられる社員たちの様が、不当に長い間、懲戒処分を待たされる自分の境遇と重なって、ものすごく共感してしまった。 働きたいのに働かせてもらえないということの、必要とされなさ。自分の代わりはいくらでもいるのだということの虚しさ。どれだけ、何を訴えても、人間の言葉で訴えても、聞く耳を持つことのない会社という組織の非人間性。理不尽が、この詩の中に詰まっていることが、身をもって感じさせられる。「あきらめるしかないな」と、ボソボソと呟いた人間の表情を思い浮かべるだに、いたたまれない気持ちになる。 個人的には、詩集を読みきったあと、伊藤比呂美の感性的な言葉に頼らない、冷静な解説を味わってほしい。詩の言葉を丁寧に拾い集めて引用し、解説を加えていく手つきは、ものすごく憧れる。こんな風に詩を読むかどうかは別にしても、教師という職業をやっている身として、こんな風に詩を説明できたらとは思う。 選集であることの魅力をいかんなく感じ取れる本だと思う。
言葉が強い。戦争と戦後すぐ、ふんばって生きている女性の叫び。時が経つなか、年を重ねるなか、家族の重みに耐えながら毎日仕事に向かう生活者の姿。まっすぐで簡明な言葉が刺さる。
銀行員として働きながら詩を書き続けた人。 昔国語の教科書に載っていて名前は知っていたけど、日経新聞の特集で関心を持ったから買った。 初期の頃は、戦後間もない日本の社会風景を、一般庶民の目線から表現していて興味深かった。 短い言葉の連なりで、人生や社会の根源的なものを描写する表現力があると感じた。
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