斎藤忍随の作品一覧
「斎藤忍随」の「読書について 他二篇」「プラトン」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
- 作者をフォローする
- フォローすると、この作者の新刊が配信された際に、お知らせします。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで200万冊以上配信中!
「斎藤忍随」の「読書について 他二篇」「プラトン」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
ビジネス・実用
小説・文芸
Posted by ブクログ
「本をたくさん読んでいる人はエラい」という、いかにももっともらしく聞こえるこの通説にとらわれている人々へ向けられた手引書が、こちらになります。
使い古された一般論に一石を投じる書は世の中にごまんとありますが、読書というトピックを、こういった切り口でバッサリ斬る本は、なかなか革新的です。本書を手に取って開いてみると、序盤からかなり辛辣な内容が書かれています。
「自分の思想というものを所有したくなければ、その最も安全確実な道は、暇を見つけ次第、直ちに本を所有することである。」
「書物から読みとった他人の思想は、他人の食べ残し、他人の脱ぎ捨てた古着に過ぎない。」
「読書とは他人にものを考えてもらうことである。1日を多読に費やす勤勉な人間は、自分でものを考える力を失っていく。」
ここまで読んで、「はい、そうですか。なら読書はやめます」と本を閉じてしまってはいけません。
確かに、本を買うだけ買って雑に斜め読みしたガワだけの知識を、得意げに他人へ披露するタイプの人にとっては、少々耳が痛い内容かもしれません。小生に至っては耳どころか心まで痛くなるほど図星でしたが、めげずにもう少し読み進めてみましょう。
著者の言わんとするところは、要するに「人の考えにばかり頼らず、自分で考える力を持て」ということです。本書は巷でよく誤解されがちですが、決して「多読=悪」と言っているわけではありません。
むしろ、自分にとってためになる良書はどんどん読み、思考の糧にするとよい。ただ、それらは他人がすでに開拓した成果である以上、それに頼りすぎて自分の信念を放棄してはならない、と著者は述べています。
まずは物事について自分で思索してみる。その中で生まれた疑問や、自分だけでは補えない部分を埋めるために、他人の知識を少しばかり借りる──そうした姿勢での読書を著者は推奨しているようです。
繰り返すようですが、読書で得た知見は、あくまでも視野を広げるための材料にすぎません。本からかき集めた情報をそのまま自分の意見として使い、自分の思考領域を完全に他人へ侵略されてしまっては、あまりにももったいないのです。著者が伝えたいことの本質は、そこにあるのではないでしょうか。
このように、衒学的な学者たちやソフィストの例まで引き合いに出しては斬っていき、我々の読書に対する常識を覆していくショウペンハウエル大先生の筆致は頼もしい限りですが、文章中にツッコミどころが一切ないわけでもありません。
本書19ページでは、「世間普通の人たちは、むずかしい問題の解決にあたって、熱意と性急のあまり権威ある言葉を引用したがる」と批判しておきながら、その次のページでは、「セネカの言葉にあるように『何人も判断するよりはむしろ信ずることを願う』からである」と、セネカの“権威ある言葉”を思い切り引用しています。
いや、ちょっと待てよと。
真面目な文体のまま、突然あまりにも大きなボケをかましてくるので、読んでいて思わず横転してしまいました。
もっとも、著者はこれを「自己矛盾」という新手のレトリックとして書いたのかもしれません。完全無欠の人間に延々と正論を浴びせられたら、プライドの高い読者はイライラして本を閉じてしまうかもしれませんし。
そもそも、「本」という媒体で「本に頼るな」と説いている時点で、この書籍はある意味、矛盾の権化です。
さて、頑張って読み終えたところで、我々はいったいこの内容をどう受け止めるべきでしょうか。「多読なんてやめて、自分の信念に基づいて考えよう」と思ってしまった方は、一度立ち止まってみてください。
そう考えてしまうということは、あなたはまさに「ショウペンハウエルの脱ぎ捨てた古着」に頼ってしまっているということになります。
ここに気づいた上で、では次にどう考えるのか。それこそが、著者が読者に本当に求めていることなのではないでしょうか。
Posted by ブクログ
夏休みに宿題の読書感想文を四苦八苦して書いたのに、先生から「お前のは感想文じゃない、あらすじだ」と言われた経験はないだろうか。感想というのは、読めば自動的に湧いてくるわけではない。
読書と思索の関係もこれと似ている。わわわれは知識を頭に入れただけで、何かを考えたような気になってしまう。でも、「知る」ことと「考える」ことはまったく別物だ。この区別がついている人はじつは少ない。受け売りの知識にすぎないものを自分が考えたことのように語っている人間のいかに多いことか。「読書は思索の妨げになる」というのは、つまりそういうことなのだ。
本書はこうした読書についての鋭い洞察が詰まった一冊である。「良書は二度読め」も同じである。これを実践している人はどれくらいいるだろうか。かく言う私もつい最近やっと始めたのだが、なんでもっと早くやらなかったのかと後悔している。
面白い本に出会ったときは、読み終わったらすぐに最初から読み直す。時間が経ってから読み返すのでは意味がない。そう言えばこんなことが書いてあったっけ。そのくらいの認識で終わる。続けて2回読むから意味がある。もちろん、3周4周できるならそれに越したことはないが、忙しくても最低2回は読んだ方がいい。
ドイツ語の諺で「Einmal ist keinmal」というのがある。einmalは1回、keinmalは一度もない、0回という意味。つまり、1回なんてなかったのと同じ、回数に入らないということである。2周目の読書はまさにこの感覚なのだ。1回だけでは読んでないと言っても過言ではない。