小説・文芸 - 東京創元社作品一覧

  • 消えたメイドと空家の死体
    4.8
    善人だが刑事の才能はない主人ウィザースプーン警部補のため、こっそり事件を解決してきた家政婦ジェフリーズ夫人と屋敷の使用人たち。その実績を見こんで、前回の事件関係者クルックシャンク夫人が人捜しを依頼してきた。年若い友人のメイドが、奉公先で盗みの疑いをかけられ、くびにされたまま行方知れずなのだという。一方、警部補が新たに担当することになった空家での若い女性殺害事件は、遺体の腐乱がひどく死者の身元が不明なまま。捜査を始めるや、このふたつの事件が意外な形で結びつく? 話題沸騰、ヴィクトリア朝痛快ミステリ第2弾。
  • 記憶翻訳者 いつか光になる
    3.4
    過剰共感能力者とは、他人の感情に共感しすぎてしまう特異な体質のために、社会生活に支障をきたしてしまう人々。生きづらさを抱える彼らの共感能力を生かし、本来はその持ち主にしか理解できない記憶を第三者にも分かるようにする“記憶翻訳”の技術を開発したのが九龍という企業だった。珊瑚はその中でもトップクラスの実力を持つ記憶翻訳者だ。依頼人の記憶に寄り添い、その人生を追体験するうち、珊瑚は幼い頃に失った自身の一部について思いを馳せるようになる──第5回創元SF短編賞受賞作「風牙」を収録。心を揺さぶる連作短編集。/【収録作)風牙/閉鎖回廊/いつか光になる/嵐の夜に/あとがき/解説=長谷敏司※本書は、『風牙』(2018年10月刊行)を再編集・改題し、書下ろし2編を加えたものです。
  • 記憶翻訳者 みなもとに還る
    4.3
    過剰共感能力を生かし記憶翻訳者として働く珊瑚は、勤務先の〈九龍〉に持ち込まれた仮想空間コンテンツをきっかけに生活共同体〈みなもと〉を訪れる。そこで珊瑚を待っていたのは、自身の母親だと名乗る女性・都だった。すでに亡くなっていると思っていた“母”は精神的支柱として生活共同体をまとめる日々のなかで、過剰共感能力の異常発現ともいえる症状があらわれて苦しんでいた。珊瑚は原因を探るべく、都の記憶データに潜行するが……第5回創元SF短編賞受賞作「風牙」に始まる、記憶をめぐる傑作SFエンタテインメント連作集、第2弾。/【収録作】流水に刻む/みなもとに還る/虚ろの座/秋晴れの日に/あとがき/解説=香月祥宏※本書は、『風牙』(2018年10月刊行)を再編集・改題し、書下ろし2編を加えたものです。
  • 機械はなぜ祈るか
    -
    【第9回創元SF短編賞優秀賞受賞】大学の研究室に伝わる「開かずの会議室」に足を踏み入れた愛が出くわしたのは……喋る全自動ロボット掃除機!? 故郷を追われたロボット掃除機と愛たちは、大学周辺に巣くう“ヤツら”との戦いに挑む! ゲスト選考委員・新井素子がそのセンスを激賞した新鋭のエンターテインメントSF! イラスト=丸紅茜/着色=東京創元社
  • 飢渇の人 エドワード・ケアリー短篇集
    4.0
    『堆塵館』でごみから財を築いた奇怪な一族の物語を紡ぎ、『おちび』でフランス革命の時代をたくましく生きた少女の数奇な生涯を描いた鬼才エドワード・ケアリー。その彼が本国で発表し、単行本未収録の9篇(『おちび』のスピンオフ的作品を含む)+『もっと厭な物語』(文春文庫)収録の1篇に、この短篇集のために特別に書き下ろした6篇を加えた、日本オリジナル短篇集。書き下ろしイラストも多数収録。ケアリーらしさがぎゅっと詰まった、ファン垂涎の一冊。/【目次】序/吹溜り/おれらの怪物/バートン夫人/アーネスト・アルバート・ラザフォード・ドッド/かつて、ぼくたちの町で/家庭で用いられる大黒椋鳥擬の歌/コズグレーヴ諸島/私の仕事の邪魔をする隣人たちへ/エドワード七世時代の寄せ集めの人物/おが屑/毛物/鳥の館 アーネスト・アルバート・ラザフォード・ドッド著/パトリックおじさん/名前のない男の肖像/グレート・グリート/飢渇の人/訳者あとがき
  • 帰還兵の戦場1 コロニー星系の悪夢
    4.0
    元特殊部隊員のジェイコブは、人類とはまったく異質な異星生命体〈やつら〉との過酷な戦いから帰還して以来、荒廃した地球ですさんだ生活を送っていた。そんな彼に元上官のロールストン少佐から連絡が入る。〈やつら〉の一体が地球に侵入したので始末しろというのだ。全身の強化処置の封印を解除され、複雑な感情を抱きつつも兵士として復活した彼は、瀕死の異星生命体を保護していた少女モラグと出会う。どうやら相手は攻撃ではなく、人類との和平のためにやってきたらしい……かくて星間大戦を終わらせるため、帰還兵と少女の旅がはじまった!/解説=岡部いさく
  • 聴き屋の芸術学部祭
    3.5
    生まれついての聴き屋体質の大学生、柏木君が遭遇する4つの難事件。芸術学部祭の最中に作動したスプリンクラーと黒焦げ死体の謎を軽快に描いた表題作、結末が欠けた戯曲の謎の解明を演劇部の主演女優から柏木君が強要される「からくりツィスカの余命」、模型部唯一の女子部員渾身の大作を壊した犯人を不特定多数から絞り込んでゆく「濡れ衣トワイライト」、深夜の温泉旅館で二人組の泥棒とともに〈いったいここで何が起こったか?〉を推理する「泥棒たちの挽歌」の4編を収録。第5回ミステリーズ!新人賞佳作入選のデビュー作を皮切りに、文芸サークル第三部〈ザ・フール〉の愉快な面々が謎を解く過程を描いた快作。ユーモア・ミステリ界に注目の新鋭登場!
  • 危険な男
    4.1
    ジョー・パイク、海兵隊あがりの元警官で、現在はロスで私立探偵を営んでいる。銀行の帰りに窓口で応対してくれた女性イザベルが拉致される現場を目撃、見過ごすことはできず、追跡して彼女を救い出す。二人組の犯人を警察に引き渡し、一件落着と安心したのも束の間、なんと二人組は保釈されてしまった。それを知ったイザベルは、犯人が再び自分を狙うのではと恐れ、パイクの電話にメッセージを残すも失踪する。だが、二人組は保釈直後に何者かに殺されていた。パイクは相棒コールの助けを借り、イザベルの行方を追うが……。実力派の著者最新作。/解説=若林踏
  • 危険な友情
    5.0
    1924年、ニューヨーク。警察署で供述書を作成するタイピストとして働くローズの前に、新人タイピストのオダリーが現われる。彼女は美しい黒髪をボブにし、最新流行の高級な服に身を包んだ自由奔放な雰囲気の女性で、酔っ払いを上手にあしらって警官たちを感心させた。オダリーと親しくなったことでローズの人生は一変し、豪奢なホテルの一室で同居をはじめる。だがオダリーには秘密があった。贅沢な生活の資金はどこから? なぜ警察署に勤めているのか? そして彼女がローズに仕掛けた罠とは。2人のタイピストが織りなす優美なサスペンス!/解説=大矢博子 ※単行本版タイトル『もうひとりのタイピスト』を改題した文庫版を底本といたしました。
  • 喜劇悲奇劇
    3.7
    右から読んでも左から読んでも「きげきひきげき」――アルコール浸りの落ちぶれ奇術師七郎は、動く一大娯楽場〈ウコン号〉の処女航海で冴えない腕前を披露することになった。紹介されたアシスタントを伴い埠頭に着いたところが、出航前から船内は何やら不穏なムードに満ちている。案の定というべきか、初日直前の船内で連続殺人の騒動が持ち上がり、犠牲者には奇妙な共通点が見出され……。章題はすべて回文、「台風とうとう吹いた。」の一文で始まる、奇抜な謎とぺてんの楽しさてんこ盛りの本格長編ミステリ。言葉遊びへの造詣こよなく深いミステリ界の魔術師泡坂妻夫が物した、他の追随を許さない会心作。/作者のことば=泡坂妻夫、解説=新保博久
  • 鬼哭洞事件
    3.5
    1巻1,599円 (税込)
    夏の暑い盛りのある日、私立探偵・野上英太郎の事務所を佐方康之と名乗る依頼人が訪れた。彼は27年前に姿を消した母親と妹を、父に内密で捜しているという。手掛かりは写真一枚のみだが、野上は調査を引き受ける。しかし翌日、康之は死体となって発見された。彼の出身地・鳶笊村へ向かった野上と助手である中学二年生の少年・狩野俊介は、余命幾許もない康之の父が住まう、洞窟内に建てられた奇怪な屋敷を訪れた。そこで俊介は己と同じく推理の才を発揮する不思議な男と出会う――江戸時代から伝わる謎の神楽、佐方家の財産をめぐる確執、神楽のさなかに発生する殺人。少年探偵の成長を縦糸に本格の興趣を凝らす著者の代表作〈狩野俊介〉シリーズ誕生30周年を記念する待望の最新長編!
  • 寄宿学校の天才探偵
    3.0
    エリンガム・アカデミー、そこは天才や革新者を輩出してきた全寮制の学校。願書も入学試験もなし、ドアを叩いた生徒のなかにきらめきが見えたら、入学が許される。新入生のスティヴィは推理マニアで、80年前に起きたアカデミーの創始者で大富豪、エリンガムの妻と娘が誘拐された事件を調べている。身代金が払われたにもかかわらず、妻は殺され、娘は行方不明のまま、犯人の正体も分からずじまいだった。入学の際の課題としてスティヴィは事件を調べ直すが、そんなとき新たに殺人が……。NYタイムズベストセラー作家が書いた本格ミステリ。
  • 寄宿学校の天才探偵3 事件を解き明かすときがきた
    4.0
    エリンガム事件を調べていたフェントンが、自宅の火事で死亡した。二酸化炭素中毒で死んだハイエス、地下道に閉じ込められたエリー、焼死したフェントン。どれも一見事故だが、スティヴィは納得していなかった。80年前の事件の2人の犠牲者、そして行方不明のアリス。何か決まったパターンがあるはずだ。だがそんな折、アカデミーに嵐が迫る。生徒はすべて退去を命じられるが、思惑のあるスティヴィたちは勝手に居残った。天才少女探偵は過去と現在の謎を解き明かすことができるのか? 寄宿学校を舞台にしたミステリ三部作、ついに完結!
  • 寄宿学校の天才探偵2 エリンガム最後のメッセージ
    3.0
    生徒の不審死、さらに容疑者の失踪と、エリンガム・アカデミーでの事件が相次ぎ、スティヴィは無理やり家に連れもどされてしまう。せっかく学校にも馴染み、念願だった80年前の事件の再捜査も進んできたところなのに。そこに上院議員のエドワード・キングが現れ、息子のデヴィッドが放校されないように協力してくれるなら、スティヴィを学校に戻してやると言ってきた。他に手はなく、役目を引き受けたスティヴィだったが、アカデミーでさらなる事件が……。天才を集めた学校での事件に挑む、少女探偵スティヴィの活躍を描いたシリーズ第2弾。
  • 奇商クラブ
    3.0
    優れた法曹家でありながら法廷で発狂し、今は隠棲しているバジル・グラントと友人たちは、善良な大佐を見舞う恐ろしい陰謀や、奇妙な拉致事件の被害者となった牧師が語る信じ難い体験談などに接するうちに、あるクラブの会員たちと出会う。会員は既存のいかなる商売のバリエーションにもあたらない「完全に新しい商売」を発明し、それによって生活を支えなければならない――この一風変わった結社は「奇商クラブ」と呼ばれていた。チェスタトンが〈ブラウン神父〉シリーズに先駆けて発表した六篇を新訳で贈る。/解説=小森収
  • 綺譚集
    4.1
    散策の途上で出合った少女が美しく解剖されるまでを素描する「天使解体」、白痴の姉とその弟が企てる祖父殺し「サイレン」、陵辱された書家の女弟子の屍体が語る「玄い森の底から」等、妖美と戦慄が彩る幻想小説や、兎派と犬派に分かれた住民たちの仁義なき闘争を綴る「聖戦の記録」の黒い笑い、失われた女の片脚を巡る「脛骨」の郷愁、ゴッホの絵画を再現した園に溺れゆく男たちの物語「ドービニィの庭で」の技巧等々。文体を極限まで磨き上げた十五の精華を収める。孤高の鬼才による短篇小説の精髄。※紙書籍版とはカバー画像が異なります。/【収録作】「天使解体」/「サイレン」/「夜のジャミラ」/「赤假面傳」/「玄い森の底から」/「アクアポリス」/「脛骨」/「聖戦の記録」/「黄昏抜歯」/「約束」/「安珠の水」/「アルバトロス」/「古傷と太陽」/「ドービニィの庭で」/「隣のマキノさん」/解説=石堂 藍
  • 奇談蒐集家
    3.5
    自ら体験した不可思議な話、求む。高額報酬進呈(ただし審査あり)。――新聞の募集広告を目にして酒場を訪れた老若男女は、奇談蒐集家を名乗る恵美酒と美貌の助手・氷坂を前に、怪奇と謎に満ちた体験談を披露する。シャンソン歌手がパリで出会った、運命を予見できる魔術師。少年探偵団の眼前で、少女の死体と入れ替わりに姿を消した魔人。冬薔薇が咲き誇る洋館に住む美しき館の主からの奇妙な申し出……。数々の奇談に喜ぶ恵美酒だが、氷坂によって不思議な謎は見事なまでに合理的に解き明かされる!安楽椅子探偵の推理が冴える連作短編集。

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  • 啄木鳥探偵處
    3.8
    【TVアニメ『啄木鳥探偵處』原作!】日本一の高塔として名を馳せる浅草十二階で、幽霊が目撃された――。明治四十二年九月、僕、金田一京助のもとへ石川啄木が持ち込んできた、幽霊騒動を報じる新聞記事。抜群の詩歌の才能を持ちながらも世に認められない啄木は、家族を養うため探偵業をはじめたところだった。その才能にほれ込んでいた僕は、助手役として探偵業に巻き込まれるが、事件は意外な方向へ……。第三回創元推理短編賞受賞作「高塔奇譚」をはじめ、人形の頭が男の喉を咬み切ったという怪事件「忍冬」など、トリックとロジックが冴える五編を収録する傑作連作ミステリ集。/【目次】第一話 高塔奇譚/第二話 忍冬/第三話 鳥人/第四話 逢魔が刻/第五話 魔窟の女/解説=細谷正充
  • 昨日まで不思議の校舎
    3.8
    にわか高校生探偵団、市立最大の謎に挑む! 超自然現象研究会の会誌〈エリア51〉臨時増刊号が特集した「市立七不思議」が何者かに影響を与えたのだろうか? 突如休み時間に流された、七不思議の一つ「カシマレイコ」を呼び出す放送。そんな女子生徒は、もちろん存在しない。さらにその日の放課後に、四ヶ所で発見された「口裂け女」を模した悪戯、さらにさらに翌日には「一階トイレの花子さん」まで用務員室に出現。なぜ七不思議のうち、この三つが現われたのだろう? かつては七不思議ではなく、「市立三怪」だったということを突き止めた葉山君、そして伊神さんは、その背後にある悪意に気づくが……。コミカルな学園ミステリ・シリーズ長編。

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  • 木野塚佐平の挑戦だ 木野塚佐平シリーズ2
    3.6
    1巻605円 (税込)
    桃世はケニアに行ったきり。現職の総理大臣が急逝し、世間は大混乱だというのに、あこがれの美人ニュースキャスター香川優子の姿に煩悶する木野塚佐平氏。ダブル不倫、ホモの失踪事件、おなじみ高村女史からの無理難題を解決しては、糊口をしのぐ毎日。そんなある日、電波系オタク男からの依頼、中年女からの盗聴の相談と、事務所に続々寄せられる妙な仕事。さらには、あの香川優子をじかに訪ねる機会まで・・・・・・。抱腹絶倒、呵々大笑、ケニアから帰国した桃世とともに、木野塚氏は今日も行く。ユーモア・ハードボイルド長編。シリーズ第2弾!

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  • 木野塚探偵事務所だ 木野塚佐平シリーズ1
    3.2
    1巻550円 (税込)
    警視庁(ただし経理課一筋三十七年)を定年退職した木野塚佐平氏。フィリップ・マーロウ、リュウ・アーチャーなど、ハードボイルドに心酔する氏は、長年貯めたヘソクリを元手に、憧れの探偵事務所を開業する。しかし、凶悪事件の依頼どころか、念願の美人秘書もやってこない。そんなある日、近所づき合いで掲載した業界誌の広告から、ひょんな依頼が舞い込んでくる。記念すべき木野塚探偵事務所最初の事件は、何と、金魚の誘拐事件だったのだ。気鋭の著者が、愛すべき老人探偵。木野塚氏の活躍(?)を描く、大爆笑必至のハードボイルド連作集、シリーズ第一弾。

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  • 気まぐれ食堂 神様がくれた休日(なつやすみ)
    3.7
    調理師の実果は、念願の三ツ星レストランで働き始めた矢先にケガをして失業、恋人にも逃げられてしまう。不運が重なり思いがけなく休みができた彼女は、あてもないまま瀬戸内海の小島に滞在することに。島民より猫の多い猫島で民宿を営む老夫婦と、釣りや料理を手伝いながらのんびり過ごす実果。そんなある日、島で道に迷った彼女は、気まぐれで営業しているという風変わりな食堂と出会う。主人らしき青年はいるものの大抵は店を空けていて料理をふるまう様子もない、この謎めいた食堂との出会いをきっかけに、実果にささやかな転機が訪れる――。
  • 君の知らない方程式 BISビブリオバトル部
    3.9
    1巻1,731円 (税込)
    秋学期が始まり、“校内コスプレ大会”ワンダー・ウィークで盛り上がる美心国際学園(BIS)。ビブリオバトル部も、地区大会出場者を決めるバトルに向けて、日々の活動に力を入れていた。一方、思いがけず二人の異性から告白をされてしまい、つらい選択を迫られる空。空をめぐって対立することになった武人と銀は、周囲に秘密の“決闘”で決着をつけようとしていた。しかし空は……。大人気、ビブリオバトル青春小説シリーズ!
  • キャクストン私設図書館
    値引きあり
    3.8
    読書好きのバージャー氏が発見した〈キャクストン私設図書館&書物保管庫〉。初版本と手稿本を所蔵するその古びた図書館には、人々に広く知れ渡ったがゆえに“実体化”した物語の登場人物が住んでいた。アンナ・カレーニナ、オリヴァー・ツイスト、ハムレットなどが暮らす図書館の秘密を知ったバージャー氏が起こした、とんでもない事件とは……。アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞とアンソニー賞を受賞した表題作。異世界冒険譚『失われたものたちの本』のスピンオフ。触れた者に次々と怪奇現象が起きる奇書をめぐる中編。〈キャクストン私設図書館〉で“もっとも不可思議なできごとのひとつ”と言われる、かの名探偵シャーロック・ホームズにまつわる逸話を描く短編の、全4作を収録。非日常の世界に没頭する楽しみをじっくり味わえる、本や物語をテーマにした作品集!/【目次】キャクストン私設図書館/虚ろな王(『失われたものたちの本』の世界から)/裂かれた地図書──五つの断片 1 国王たちが抱いた不安と恐怖の話 2 ジン 3 泥 4 異世界の彷徨い人 5 そして我々は暗闇に住まう/ホームズの活躍:キャクストン私設図書館での出来事/訳者あとがき
  • キャッツアイころがった
    3.6
    1巻550円 (税込)
    滋賀県北部の余呉湖で身元不明の死体が発見された。顔が潰された上、指が切り取られ指紋もない。唯一の手がかりは、胃の中にあった一粒の宝石――キャッツアイ。続いて京都の美大生、大阪の日雇労働者が連続して殺害され、ともに口にキャッツアイを含んでいた。三府県での合同捜査は混迷を極める。事件の鍵は殺された美大生が旅行していたインドにあると、その同級生の啓子と弘美は一路彼の地へと飛び立つ……。果たしてキャッツアイの意味と、連続殺人事件の真相を探りだせるのか。第4回サントリーミステリー大賞を受賞した著者初期の傑作。 ※本作品は東京創元社、文藝春秋で同一タイトルの作品が販売されております。本編内容は同じとなりますので予めご了承下さい。既に同作品をご購入されているお客様におかれましてはご注意下さい。

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  • キャプテン・フューチャー最初の事件
    4.0
    のちにキャプテン・フューチャーの名で太陽系八惑星に知られるカーティス・ニュートンと三人の仲間、フューチャーメンが挑んだ最初の事件! デネブ人のものとされる月面の遺物が観光用に保存されると決まった式典で、演台に立った月共和国選出の有力議員コルボ。この男こそは、カーティスの幼年期に天才科学者の両親を虐殺した張本人だった。復讐を果たそうとするカーティスたちを、惑星警察機構のエズラとジョオンはマークする。ヒューゴー賞・星雲賞受賞作「キャプテン・フューチャーの死」の著者が、正典を入念に読み込み、完全リブート!
  • 吸血鬼
    4.3
    時は初秋、所は塩原温泉の某旅館、そこでは今、前代未聞の決闘が行なわれようとしていた。夏の末から居つづけている湯治客の男二人が、一人の未亡人を巡って命を賭けた闘いを繰り広げていたのだ。そして、決闘の場から卑劣にも逃げだした敗者のものと思われる無惨な死体が発見されるに及び、恐ろしい闘いの幕が切って落とされた。帰京して以来、畑柳未亡人とその愛する息子の上に降り懸かる陰惨で奇怪な事件の連続! 姿無き吸血鬼に敢然と立ち向かう名探偵明智小五郎と文代、小林少年の行く手に待ちかまえているものは? 大乱歩渾身の長編推理。

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  • 吸血鬼ラスヴァン 英米古典吸血鬼小説傑作集
    4.0
    ブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』に先駆けて発表された英米の吸血鬼(ヴァンパイア)小説に焦点を当てた画期的アンソロジーが満を持して登場。バイロン、ポリドリらによる名作の新訳、伝説の大著『吸血鬼ヴァーニー――あるいは血の晩餐』抄訳ほか、ブラックユーモアの中に鋭い批評性を潜ませる異端の吸血鬼小説「黒い吸血鬼――サント・ドミンゴの伝説」、芸術家を誘うイタリアの謎めいた邸宅の秘密を描く妖女譚の傑作「カンパーニャの怪」、血液ではなく精神を搾取するサイキック・ヴァンパイアものの先駆となる幻の中篇「魔王の館」など、本邦初紹介の作品を中心に10篇を収録。怪奇小説を愛好し、多彩な翻訳を手がけてきた訳者らによる日本オリジナル編集で贈る。/【目次】序文――バイロン男爵の光の下に 夏来健次/吸血鬼ダーヴェル――断章(一八一九) ジョージ・ゴードン・バイロン/吸血鬼ラスヴァン――奇譚(一八一九) ジョン・ウィリアム・ポリドリ/黒い吸血鬼――サント・ドミンゴの伝説(一八一九) ユライア・デリック・ダーシー/吸血鬼ヴァーニー――あるいは血の晩餐(抄訳)(一八四七) ジェイムズ・マルコム・ライマー トマス・プレスケット・プレスト/ガードナル最後の領主(一八六七) ウィリアム・ギルバート/カバネル夫人の末路(一八七三) イライザ・リン・リントン/食人樹(一八八一) フィル・ロビンソン/カンパーニャの怪(一八八六) アン・クロフォード/善良なるデュケイン老嬢(一八九六) メアリ・エリザベス・ブラッドン/魔王の館(一九〇七) ジョージ・シルヴェスター・ヴィエレック/解説――ドラキュラ伯爵の影の下に 平戸懐古
  • 旧神郷エリシア 邪神王クトゥルー煌臨!
    4.0
    風の邪神イタカを退けたのち、ふたたび時空往還機に乗り探索の旅へと出立したド・マリニーとモリーンがボレアに帰還した。シルバーハットらとの再会を喜ぶも束の間、タイタス・クロウより突然の知らせが入る。最も恐るべき脅威、あのクトゥルーとその邪神どもがついに蠢きはじめた不吉な兆しが見られるという。やつらが決起したら、地球のみならず、全宇宙さえ危うい! クロウがいる善なる旧神たちの地〈エリシア〉へ、なんとしても行かねばならぬ――そう決心したド・マリニーはわずかな手がかりをもとに、エリシアへと急遽旅立つのだが……。〈タイタス・クロウ・サーガ〉最終巻!/解説=鵺沼滑奴
  • 休日はコーヒーショップで謎解きを
    3.5
    拳銃を持って押し入ってきた男は、なぜ人質に“憎みあう三人の男”の物語を聞かせるのか? 意外な真相が光る「二人の男、一挺の銃」をはじめ、腕利きの殺し屋に次々と降りかかる予測不可能な出来事を描く「残酷」、殺人事件が起きたコーヒーハウスで、ツケをチャラにするため犯人探しを引き受けた詩人が探偵として謎解きを繰り広げる黒い蘭中編賞受賞作の「赤い封筒」など9編。正統派推理短編、私立探偵小説、ヒストリカル等、『日曜の午後はミステリ作家とお茶を』で人気を博した短編の名手が贈るとっておき! ごゆっくりお楽しみください。【収録作】まえがき/「ローズヴィルのピザショップ」/「残酷」/「列車の通り道」/「共犯」/「クロウの教訓」/「消防士を撃つ」/「二人の男、一挺の銃」/「宇宙の中心(センター・オブ・ザ・ユニバース)」/「赤い封筒」/編訳者あとがき
  • 431秒後の殺人
    3.8
    写真を撮る楽しみを教えてくれた、松原京介の不可解な死。離婚話で揉めていた彼の妻は、関与が疑われたものの、死亡時刻にはタクシーに乗っていた。どこをどう見ても、不運な事故としか考えられない状況だったが──恩人の死をその妻の仕業と確信した駆け出しカメラマンの安見直行は、祖母の助言によって六角法衣店を訪れる。店の主は代々京の辻や橋に立ち、道のさざめきから神託を受け、失せ物を見つけ出すことができるというのだ。直行は恩人の死亡事故を他殺と証明する証拠を探して欲しいと依頼するが、若くて無愛想な店主・六角聡明からは、けんもほろろに断られてしまう。だが、直行の撮った一枚の写真がきっかけで、六角は事件の証拠探しに協力を約束する。現代のガジェットによって構成された不可能犯罪を、緻密な論証で見事に解き明かす表題作ほか全五編を収録。第十六回ミステリーズ!新人賞受賞者による出色のデビュー連作集。/【目次】第一話 431秒後の殺人●これは計算尽くで偶然の可能性を限りなく必然に近くなるまで高めた――殺人事件だよ。/第二話 睨み目の穴蔵の殺人●最近、お客さんから「襖の武将の目が動いた、絵の中から睨まれた」なんて言われるんです。/第三話 眠れる映画館の殺人●幽霊でもない限り、無理やん? だって誰にも首を絞めたりする時間なんかなかったやんか。/第四話 照明されない白刃の殺人●オレ達がそいつの後を追って角を曲がるまでに、次の瞬間にはもう通りから姿が消えていたんだ。/第五話 立ち消える死者の殺人●この部屋に入院した人はな、夜中に攫われて二度と戻ってこられへんねんて。/著者あとがき
  • 京都東山 美術館と夜のアート
    3.0
    神戸静河は学芸員志望だったものの、縁あって採用されたのはイチビこと、地元の市立美術館の常駐警備員。警備システムの解除や正面玄関の開錠など、展覧会スタッフたちを迎えるためにいち早く出勤しなければならない。これが施設常駐の警備員のオシゴトである――。深夜に美術館裏の庭園で遭遇した不審な男の正体は? 巡回中の展示室で見た浮世絵が新発見の写楽? 展示物のブログ紹介がきっかけで神社の失われた御神刀が発見されたが……などなど、地道な警備のオシゴトと美術ミステリのコラボレーション! ミステリーズ!新人賞受賞作家が、京都の町と美術館を舞台に描く、連作短編集。
  • 恐怖 アーサー・マッケン傑作選
    3.2
    アーサー・マッケンは平井呈一が最も愛した怪奇小説家だった。二十代の頃、友人から借りた英国の文芸雑誌で「パンの大神」に出会った平井青年は、読後の興奮収まらず、夜が明けるまで東京の街を歩き回ったという。戦後その翻訳紹介に尽力、晩年には『アーサー・マッケン作品集成』全6巻を完成させた。太古の恐怖が現代に甦る「パンの大神」「赤い手」「白魔」他の初期作に、大戦中に英国の或る地方を襲った怪事件の顚末を描く中篇「恐怖」など、異次元を覗く作家マッケンの傑作を平井呈一入魂の名訳で贈る。/【目次】訳者のことば/パンの大神/内奥の光/輝く金字塔/赤い手/白魔/生活の欠片/恐怖/アーサー・マッケン作品集成 解説/解説=南條竹則
  • 恐怖の谷【阿部知二訳】
    4.0
    シャーロック・ホームズ最後の長編は、彼の最大の敵、悪の天才モリアーティ教授との死闘である。ある日ホームズのもとにとどいた暗号文は、殺人の警告であったが、時すでにおそく、被害者は惨殺されてしまった。平和なイングランドの小村に起こる殺人は、アメリカ開拓時代の昔にさかのぼって、悪の集団の恐るべき正体を暴露する!ディクスン・カーがドイル長編中のベストとして推す傑作で、第二部は、それだけ独立させても充分な謎と意外性を秘めている。

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  • 恐怖の谷【深町眞理子訳】
    3.8
    シャーロック・ホームズのもとに届いた暗号の手紙。悪の首魁モリアーティー教授の配下からのそれは、サセックス州の〈バールストン館〉のあるじに危険が迫っていることを告げるものであった。そして実際、その館で凄惨な殺人事件が発生する。捜査に乗りだしたホームズが解き明かした驚愕の真相とは? ホームズの推理譚の第一部に続き、第二部ではアメリカの荒涼とした〈恐怖の谷〉での目をおおいたくなるような、凄絶な物語が描かれる。第一部と第二部の双方に意外性が秘められた、最高傑作の呼び声高い長編!/解題=戸川安宣、解説=北原尚彦
  • 狂乱廿四孝/双蝶闇草子
    4.0
    三世澤村田之助、江戸末期から明治初期にかけて一世を風靡した歌舞伎の名女形。舞台の最中の怪我から脱疽となり結果として四肢を切断せざるを得なかった悲劇の名優である。明治3年、異彩の画家・河鍋狂斎の描いた幽霊画を発端とした連続殺人事件が、猿若町を震撼させる。幽霊画には歌舞伎界を揺るがす秘密が隠されているらしい――。滅び行く江戸の風情とともに、その事件の顛末を戯作者見習いのお峯の目を通して丁寧に活写した、第6回鮎川哲也賞受賞作『狂乱廿四孝』に、その後のお峯たちの姿を描いた未完の長編ミステリ『双蝶闇草子』を付す。/解説=浅野里沙子
  • 巨神覚醒 上
    4.0
    ロンドン中心部に忽然と現れた、第二の巨大ロボット――あれから9年、ついに恐れていた事態が現実になったのだ! この男性型ロボットが6000年前、地球に巨大ロボット・テーミスを残していった異星種族のものであるのは間違いない。だが、人類を試すかのごとく沈黙を守る巨神に対し、恐怖と打算に駆られた人々は愚かな行動に出る。それが地球滅亡の危機を招くとも知らずに……人智を超えた存在を前に、人類の命運はテーミスと国連地球防衛隊(EDC)に託された! 原稿段階で映画化決定のデビュー作『巨神計画』待望の続編、空前のスケールで登場!
  • 巨神降臨 上
    3.5
    全世界で1億人の犠牲者を出しつつも、人類が辛うじて滅亡の瀬戸際で踏みとどまってから9年。地球にただ1体残された巨大ロボットを修復したアメリカはそれをラペトゥスと名づけ、自国の思うがままに他国を蹂躙していた。それに抵抗する各国とのあいだで地球に全面核戦争の危機が迫る中、姿を消していたテーミスとエヴァたちがついに地球に帰還する。彼らが語りはじめるのは、6000年前に巨大ロボットを地球に遺してゆき、9年前の危機を引き起こした異星種族との本格的遭遇であった。星雲賞受賞『巨神計画』『巨神覚醒』に続く、三部作完結編!
  • 巨星 ピーター・ワッツ傑作選
    3.5
    地球を発って十億年以上、もはや故郷の存続も定かでないまま銀河系にワームホール網を構築し続けている恒星船と、宇宙空間に生息する直径2億kmの巨大生命体との数奇な邂逅を描くヒューゴー賞受賞作「島」、かの有名な物語が驚愕の一人称で語られるシャーリイ・ジャクスン賞受賞作「遊星からの物体Xの回想」、戦争犯罪低減のため意識を与えられた軍用ドローンの進化の果てをAIの視点で描く「天使」――『ブラインドサイト』で星雲賞など全世界7冠を受賞した稀代のハードSF作家ピーター・ワッツの傑作11編を厳選。日本オリジナル短編集。【収録作】「天使」/「遊星からの物体Xの回想」/「神の目」/「乱雲」/「肉の言葉」/「帰郷」/「炎のブランド」/「付随的被害」/「ホットショット」/「巨星」/「島」/解説=高島雄哉
  • きらめく共和国
    3.8
    1994年、緑のジャングルと茶色い川をかかえる亜熱帯の町サンクリストバルに、理解不能な言葉を話す子どもたちがどこからともなく現れた。彼らは物乞いをしたり盗みを働いたりして大人たちを不安に陥れ、さらにスーパーを襲撃した。そして数ヶ月後、不可解な状況で32人の子どもたちが一斉に命を落とした。子どもたちはどこから来たのか。どうして死ぬことになったのか。社会福祉課の課長として衝撃的な出来事に関わった語り手が、22年後のいま、謎をひもといていく──。現代スペインを代表する作家が奇妙な事件を通して描く、子どもの無邪気さと暴力性、そして野生と文明、保護と支配の対比。純粋で残酷な子どもたちの物語。
  • 霧に橋を架ける
    値引きあり
    4.0
    人間を寄せつけない“霧”の大河に初めての橋を架けようとする人々の苦闘と絆を描き、ヒューゴー賞とネビュラ賞をダブル受賞した表題作。宇宙で遭難した女性と、圧倒的に異質な相手の邂逅を描く、ネビュラ賞受賞の衝撃作「スパー」。消失と再出現を繰り返す猿たちのサーカスとともに旅する女性が出合う奇跡を描いた、世界幻想文学大賞受賞中編「26モンキーズ、そして時の裂け目」。現代SF界きっての短編の名手が、孤独を抱えたものたちの不可思議な出会いとふれあい、そして別れを鮮やかに描く。数々の賞に輝く傑作11編を収めた幻想SF短編集。/解説=橋本輝幸
  • 切れない糸
    4.0
    1巻660円 (税込)
    東京の商店街育ちの新井和也は、大学卒業を間近にした冬、家族の危機に直面する。そこで急遽、就職の決まっていない和也が、家業の新井クリーニング店を継ぐことに。同級生たちの新しい門出に沸く春、不慣れなクリーニングの集荷作業で、お客さんから預かった衣類から思わぬ謎が生まれていく。同じ商店街の喫茶店で働く沢田直之、店のアイロン職人・シゲさんなど周囲の人々に助けられながら、失敗を重ねつつも謎を解明していく和也。商店街の四季を通じて和也の成長と、人の温かさをさわやかに描く、連作集。青春ミステリの決定版。

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  • 金閣寺は燃えているか? 文豪たちの怪しい宴
    3.5
    文京区の長い路地を抜けるとバーだった。大学教授の曽根原は、ふと気づくとバー〈スリーバレー〉に足が向いている。女性バーテンダー・ミサキの魅力なのか、文学談義のせいなのかは判らない。ある晩、まだ客の少ない時間にミサキが繰り出した質問は、川端康成の『雪国』についてだった。登場人物の行動から『雪国』はミステリではないか、というミサキの疑問に、途中からまたしても入店してきた宮田が、珍妙な説を披露し始めて……。『雪国』に加え、田山花袋『蒲団』、梶井基次郎『檸檬』、三島由紀夫『金閣寺』と、日本文学界の名作の新解釈で贈る、鯨統一郎最新作。
  • 金環日蝕
    4.0
    1巻1,899円 (税込)
    知人の老女がひったくりに遭う瞬間を目にした大学生の春風は、その場に居合わせた高校生の錬とともに咄嗟に犯人を追ったが、間一髪で取り逃がす。犯人の落とし物に心当たりがあった春風は、ひとりで犯人探しをしようとするが、錬に押し切られて二日間だけの探偵コンビを組むことに。かくして大学で犯人の正体を突き止め、ここですべては終わるはずだった──。《本の雑誌》が選ぶ2020年度文庫ベスト10第1位『パラ・スター』の著者が、〈犯罪と私たち〉を真摯かつ巧緻に描いた力作。
  • 禁忌
    3.7
    ドイツ名家の御曹司ゼバスティアンは、文字のひとつひとつに色を感じる共感覚の持ち主だった。ベルリンにアトリエを構え写真家として大成功をおさめるが、ある日、若い女性の誘拐・殺人容疑で緊急逮捕されてしまう。取り調べの際、捜査官に強要されて殺害を自供したゼバスティアンを弁護するため、ベテラン刑事弁護士ビーグラーが法廷に立つことになった。緊迫感に満ち満ちた裁判の行方と、あらゆる者の想像を絶する驚愕の真相とは。『犯罪』で2012年本屋大賞翻訳小説部門第一位に輝いた著者が「罪とは何か」を真摯に問いかけた恐るべき問題作。
  • 金木犀と彼女の時間
    4.2
    高校最後の文化祭当日、菜月は屋上でクラスメイトの拓未に告白された直後、人生3度目のタイムリープに巻き込まれた。この状態になった菜月は同じ1時間を5回繰り返し、最後の出来事が確定事項となるのだ。その1回目、菜月が告白されるより前に拓未は転落死してしまう。同じことが操り返されるはずだったのに、いったい何が起きたのか? 菜月は残り4回のタイムリープのなかで、拓未が死なない方法を探して奔走するが……。他人に心を開けない女子高生がクラスメイトを救うために校舎を駆けめぐる、鮮やかな学園タイムリープ・ミステリ登場。/【目次】プロローグ/第一章 繰り返しの時間/第二章 文化祭の幕開け/第三章 起こるはずのない事件/第四章 深まる謎/第五章 彼女の時間/解説=村上貴史
  • 偽悪病患者
    3.3
    「佐治は偽悪病患者だ。接近させてはいけない」兄の警告を妹は一笑に付したが……犯罪の萌芽から事件発生と解決まで往復書簡形式で語られるモダン探偵小説の表題作、犯行に至る殺人者の心理を克明に描き、“なぜ殺したか”の謎を追求した「死の倒影」「情獄」、掘り出し物の骨董をめぐる奇譚「金色の獏」、都市伝説めいた怪現象が連続猟奇殺人に発展する犯罪幻想譚「魔法街」他、全九篇。日本探偵小説草創期に江戸川乱歩、甲賀三郎とともに絶大な人気を博した巨匠、大下宇陀児の多彩な作品を紹介する短篇傑作選。/【目次】偽悪病患者/毒/金色の獏/死の倒影/情獄/決闘介添人/紅座の庖厨/魔法街/灰人/〈エッセイ〉探偵小説の型を破れ/探偵小説不自然論/解題/解説=長山靖生
  • 技師は数字を愛しすぎた
    3.0
    パリ郊外にある原子力関連施設で、突然銃声が鳴り響いた。人々が駆けつけると、技師長のソルビエが撃ち殺され、金庫からは重さ二十キロほどの核燃料チューブが消えていた。そのチューブは、パリ市民を核爆発、放射能汚染の恐怖にさらす危険物だった。司法警察の捜査が開始されたが、なんと犯行現場は完全な密室状況にあったことが判明する。その部屋には、誰も入っていかなかったし、そこから誰も出てはこなかったのだ! 更に重なる不可能状況での事件……。フランス・ミステリ界を代表するコンビ作家による、密室テーマの傑作本格ミステリ。/解説=戸川安宣
  • 偽証裁判 上
    4.5
    1857年10月、ヘスターは新たな仕事を得た。エディンバラの名家の女主人メアリが夜行列車でロンドンを訪れ、数日滞在したのちに帰宅する予定で、その間の付き添いを請け負ったのだ。彼女は高齢で心臓に持病があり、薬の飲み忘れは命に関わる。経験豊富な看護婦であるヘスターは車中で指示通りに薬を飲ませたが、翌朝、メアリはこときれていた。身に覚えのない殺人の罪で起訴されてしまったヘスターの絞首刑を防ぐには、裁判で無実を証明するしかない。私立探偵モンクは真犯人を見つけるべく捜査を開始する。緊迫感に満ち満ちた傑作法廷ミステリ!
  • ギデオン・マック牧師の数奇な生涯
    4.0
    スコットランドの出版社に、半年前に失踪したギデオン・マック牧師の手記が持ち込まれた。彼は実直な人間として知られていたが、失踪する直前に、神を信じないまま牧師になったことや悪魔と親しく語らったことを告白し、教区の信徒たちから非難されていた。手記には彼の生い立ちから、自分以外には見えない立石を発見したことや悪魔との出会い、そしてなぜそれを大衆の前で語ったのかがすべて記されていた。――出版者による序文、マック牧師の手記、そしてまた出版者が執筆したエピローグという独特の構成で描かれる、一人の牧師の数奇な生涯。スコットランドを代表する作家が、歴史、風俗、伝説、父子の物語などさまざまな要素を織り込んで綴ったブッカー賞候補作。
  • 逆回りの時計
    3.0
    高木あずさは、脳梗塞で倒れたあと寝たきりになっている母に呼び出された。家の権利証と実印を森戸浩二に渡せ、これは償いだと必死に訴える母。億の単位に届く不動産をなぜその男に? 母からは理由を聞き出せず、あずさは仕方なく独力で事情を探り始めた。一方、ホテルのプールで起こった殺人事件の捜査中あずさに接触した菊地は、彼女を通じて貴重な情報を入手。その結果、過去数カ月間に発生していた事件が共通の背景を持つことを見出し、全容の解明に奔走する。練り上げられた筋立てと過去に根ざす衝撃の真相、シリーズ掉尾を飾る長編推理。

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  • 玉妖綺譚
    3.3
    異界と現実世界との間にある“はざま”。そこで産する竜卵石は妖力をもち、主の“気”を受けて玉妖と呼ばれる精霊を宿す。中でもその美しさ、知性から伝説的な存在とされるのが、難波俊之が育てた“難波コレクション”の七つの玉妖たちだ。そのひとつ〈くろがね〉を受け継いだ修業中の驅妖師・彩音は、玉妖に魅入られ眠り続ける姉を救おうとする……。人々の目に見えない異界妖が跋扈する皇国大和の首都・櫂都を舞台に、少女驅妖師・彩音と相棒の玉妖くろがねが、妖がらみの摩訶不思議な事件に挑む。第1回創元ファンタジイ新人賞優秀賞受賞作。/解説=井辻朱美
  • 玉妖綺譚3 透樹の園
    -
    妖力を奪われ眠りについた相棒の玉妖を目覚めさせる方法を知る唯一の人物、難波俊之の行方を捜し“はざま”をめぐっていた彩音は、ある“はざま”で奇妙な光景を目にする。男たちが異界妖を檻に追い込み、こちらの世界に連れ込んでいたのだ。妖は人間界では実体をもたず、檻をすり抜けてしまうのに、なぜ? 折しも都では“はざま”や異界妖の出現が増え、その存在を隠そうとする政府を悩ませていた。俊之捜しを続ける彩音は、いつの間にか遷都をめぐる陰謀に巻き込まれる羽目に……。石に宿る精霊、玉妖と驅妖師の絆を描く、シリーズ第3弾。
  • 玉妖綺譚2 異界の庭
    4.0
    ずっと傍らにいた玉妖くろがねが妖力を失い眠りについて以来、ただでさえ半人前の驅妖師・彩音は、十分な仕事をこなせずにいた。そんなとき、難波コレクションの創り主難波俊之の甥彬良から、コレクションの玉妖で唯一まだ会ったことのなかった蒼秀に会える、との知らせを受ける。異界の知識をため込んでいる蒼秀ならば、くろがねを目覚めさせる方法を知っているかもしれない。彩音は期待を胸に、蒼秀の持ち主の屋敷を訪ねるが……。心の傷を隠して玉妖がらみの事件に挑む少女驅妖師・彩音。彼女は過去を清算し相棒を取り戻すことができるのか。/解説=卯月鮎
  • 疑惑の墓標
    -
    失踪から2カ月、トランク詰めにされた高見沢妙子の遺体が西伊豆で見つかった。愛人関係にあったカメラマンの浅倉が容疑者とされたが、人となりを知る田辺は浅倉の無実を信じて調査を始める。一方、鳴子温泉近くの林で不審な死を遂げた塾講師、坂口三郎。新妻の陽子は夫を殺した男を捜そうと手始めに遺品を整理する。二人のアマチュア探偵の行動はやがて重なり合い、事件の不可分な関係が浮かび上がった。更なる究明を委ねられた捜査一課の相沢と菊地は、墓標に託されたメッセージを通じて真相に至る。藤雪夫との共著『獅子座』『黒水仙』に続くシリーズ第3作にして桂子単独名義の処女作。

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  • 銀色の国
    3.7
    NPO法人〈レーテ〉で自殺対策に取り組む田宮晃佑のもとに、立ち直ったはずの元相談者が自殺したという悲報が届く。亡くなる前の彼は、異様なほどVRにのめり込んでいたという。不審に思った晃佑は、友人の元ゲームクリエイター城間宙とともに調査を始める。一方、SNSに死をほのめかす投稿を繰り返す浪人生の外丸くるみは、フォロワーの一人から自助グループ〈銀色の国〉に誘われる。ネット上で人と人とが支え合う――そんな言葉に惹かれて受け取った荷物の中身は、VRゴーグルだった。仮想世界と現実で一体何が起きているのか。日本推理作家協会賞受賞作家による傑作ミステリ。/解説=千街晶之
  • 銀河核へ 上
    3.7
    故郷を失った地球人類は、多様な種族が共存する銀河共同体(GC)に加盟を許され、弱小種族ながら繁栄を享受していた。宇宙船〈ウェイフェアラー〉は、超光速航行のためのワームホール、通称“トンネル”建設専門の作業船である。多種族混成の寄せ集め乗組員とつぎはぎだらけのこの中古船に、GC政府から突如舞い込んだ大仕事──銀河系中心部(コア)への新航路となる長距離トンネルを掘れ、というのだ! かくして彼らは、未踏の宙域への長い長い航海に乗り出した。個人出版から熱狂的な人気を博し、ヒューゴー賞、クラーク賞候補となった傑作スペースオペラ!
  • 銀河盗賊ビリイ・アレグロ/暗殺心
    5.0
    七つの銀河系に悪名高い日系人盗賊ビリイ・アレグロ・ナルセ。仲間は宇宙船の喋る船載コンピューターと、テレパシイで会話する毒蛇だ。彼らを先々で待つのは奇妙な依頼――有翼人の娘には王女に殺された恋人の復讐を、大企業の経営者には愛娘に贈ったアンドロイドの恋人の奪還を、市民全員が仮面の着用を義務づけられた都市の女子大生には市長本人の仮面の強奪を。そして驚愕の結末に至る『銀河盗賊ビリイ・アレグロ』。五つの国の王に復讐を誓う元王女・真晝(マヒル)は名うての刺客・鹿毛里(カゲリ)を雇い、この世の涯から涯へと旅を続ける。二人の行く手を阻むのは、それぞれに特殊能力を持つ刺客たち。手の込んだ展開で傑作の呼び声も高い活劇長編『暗殺心(アサツシン)』を合冊して贈る。/解説=半村良、矢田省作、日下三蔵
  • 銀河風帆走 第4回創元SF短編賞受賞作
    4.0
    地球と太陽系を喪い、星の世界への進出を余儀なくされた人類は、生き延びるためにあらゆる形態の人間を生み出した。ぼくらもそうして生まれた宇宙船だ。そして今ぼくら2隻は特命を帯び、銀河中心にある巨大ブラックホールに向かって1600年に及ぶ旅を続けている――。弱冠23歳の著者が贈る、雄渾の遠未来ハードSF。第4回創元SF短編賞受賞作。巻末に選考委員、大森望・日下三蔵・円城塔の選評を付す。
  • 銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件/奇妙という名の五人兄妹
    3.7
    妻が奇妙な強盗事件に遭遇した。犯人はお金に興味を示さず、居合わせた人々から「もっとも思い入れのあるもの」を奪っていったという。以来、なぜだか妻の身長は縮んでいき……(『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』)。祖母の授けた不思議な〈力〉に悩まされてきた五人兄妹。ある日、祖母から〈力〉を消してやると告げられた三女は、ひと癖もふた癖もある兄妹たちを集めるために奔走する(『奇妙という名の五人兄妹』)。――おかしな運命が照らし出す、夫婦の、兄妹の、家族のつながり。カウフマンの輝きに満ちた小説世界を2冊合本で贈る。/解説=牧眞司
  • 銀獣の集い 廣嶋玲子短編集
    4.3
    銀獣とは、石の卵から生まれる半人半獣の存在。富豪が屋敷に集めた5人の男女に言い渡したのは、1年後にもっとも優れた銀獣を連れてきた者に財産を譲るという条件だった……「銀獣の集い」。故郷で罪を犯したヨキは、孤島の灯台守として5年を過ごすことになるが……「咎人の灯台」。黄金館で母親と暮らすキア。だが、幸せな暮らしには秘密があった……「茨館の子供達」。〈ふしぎ駄菓子屋 銭天堂〉シリーズ、〈妖怪の子預かります〉シリーズで大人気の著者による、美しくてちょっぴり怖い3つの物語を収録した短編集。
  • 銀の仮面
    4.0
    ソニアはある日、玄関前で出会った今にも倒れそうな青年を家へ招き入れた。善意に満ちた孤独な中年女性の心の隙間に入りこむ美しく不気味な侵入者――“奇妙な味”の名作「銀の仮面」、大都会の暗闇にひそむ獣の恐怖を描く「虎」、ゴースト・ストーリーの佳品「雪」「ちいさな幽霊」、内気な少年に訪れたクリスマスの奇蹟の物語「奇術師」など、精妙なタッチで不安と恐怖の物語を織り上げる名匠ヒュー・ウォルポールの傑作集。/【収録作】Ⅰ「銀の仮面」「敵」「死の恐怖」「中国の馬」「ルビー色のグラス」「トーランド家の長老」/Ⅱ「みずうみ」「海辺の不気味な出来事」「虎」「雪」「ちいさな幽霊」/Ⅲ「ターンヘルム」「奇術師」/編訳者あとがき/解説=千街晶之
  • 吟遊詩人の魔法 上
    4.0
    かつてエイヴァールでは、吟遊詩人が学ぶ学院の〈視者〉たちが強大な魔法の力をふるい、王権とならびたつ権力を握っていた。だが〈視者〉の一部が禁断の魔法に手を染めたために争いがおき、学院は弱体化し、吟遊詩人の魔法は失われてしまった。……十二年に一度、タムリュリンの都では、盛夏祭に行われる競技会で最も優れた技を披露し優勝した吟遊詩人に〈銀の枝〉が与えられる。いまや王に絶大な影響力を及ぼす宮廷詩人も、競技会の優勝者だった。秘められた魔法と、陰謀が渦巻く都を舞台に、吟遊詩人たちの密かな戦いを描く本格ファンタジイ。
  • 空白の殺意
    3.5
    高崎市内の川土手で私立高校に通う女生徒の扼殺死体が発見される。その二日後、今度は同校の女性教師が謎めいた遺書を残して自殺する。そして行方不明だった野球部監督の毒殺死体が発見されるに及んで、俄然事件の背後に甲子園行を目指して熾烈な闘いをくり展げている学校同士の醜い争いが炙り出されてくる……。「模倣の殺意」「天啓の殺意」のトリック・メーカーが、密かな自信をもって読者に仕掛ける巧妙なワナ。改稿決定版。

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  • 久遠の島
    4.3
    〈久遠の島〉そこは世界中のあらゆる書物を見ることができる不思議な場所、心から本を愛する人のみが入ることを許される楽園だった。あるとき、ひとりの王子が島を訪れた。魅力的で、島を守る氏族の少年ともすぐに打ち解けたが、その真の姿は強欲で身勝手で目的のためなら手段を選ばない人物だったのだ。そして彼の野心が島に悲劇をもたらした……。書物の護り手である氏族の兄弟がたどる数奇な運命とは。連合王国フォト、呪法の国マードラ、写本の都パドゥキアを舞台におくる、著者のデビュー作『夜の写本師』に連なる本の魔法と復讐の物語。/【目次】久遠の島/テズーとヨーファン/あとがき
  • 九月と七月の姉妹
    3.8
    わたしは姉のセプテンバーの誕生から十か月後に生まれた。でも、互いの誕生日を混ぜ合わせて同じ日にしている。セプテンバーがそう決めたから。セプテンバーはゲームをする。セプテンバーが指示する側、わたしが操り人形。彼女の言うことをなんでも聞かなくてはいけない。指示通りにできなかった場合、わたしは命を一つなくしてしまう。そうやって遊ぶときはたいてい、わたしには命が五つあって、全部なくしたら何かが起こることになっていた。内気で意志の弱いジュライは、姉のセプテンバーの支配下にあるが、二人の絆は揺るぎないものだった。春先に学校で起きたある事件をきっかけに、母とともに町を出て亡父の生家へと引っ越したが、それを機にジュライの中には奇妙な不安と違和感が芽生え……
  • 櫛の文字 銭形平次ミステリ傑作選
    3.0
    神田明神下に住む、凄腕の岡っ引・銭形平次。投げ銭と卓越した推理力を武器にして、子分のガラッ八と共に、江戸で起こる不思議な事件に立ち向かっていく! 見せ世物小屋にて、水槽で泳ぐ美女ふたりのうちひとりが殺された謎を解く「人魚の死」。暗号が彫られた櫛をきっかけに殺人が起こる「櫛の文字」。評判の良い美人の妾が奉公した材木屋で、店を脅かす事態が発生する「小便組貞女」。世間を騒がす怪盗の意外な正体を暴く「鼬小僧の正体」。383編にも及ぶ捕物帳のスーパーヒーローの活躍譚から、ミステリに特化した17編を収録した決定版。【収録作】「振袖源太」「人肌地蔵」「人魚の死」「平次女難」「花見の仇討」「がらッ八手柄話」「女の足跡」「雪の夜」「槍の折れ」「生き葬い」「櫛の文字」「小便組貞女」「罠に落ちた女」「風呂場の秘密」「鼬小僧の正体」「三つの菓子」「猫の首環」/編者解説=末國善己
  • 孔雀屋敷 フィルポッツ傑作短編集
    3.3
    一夜のうちに起きた三人の変死事件を調査するため、英国から西インド諸島へ旅立った私立探偵。調べるほどに不可解さが増す事件の真相が鮮やかに明かされる「三人の死体」。鉄製のパイナップルにとりつかれた男の独白が綴られる、奇妙な味わいが忘れがたい「鉄のパイナップル」。不思議な能力を持つ孤独な教師の体験を描く表題作。そして〈クイーンの定員〉に選ばれた「フライング・スコッツマン号での冒険」など、『赤毛のレドメイン家』で名高い巨匠の傑作全6編を収める、いずれも初訳・新訳の短編集!/【目次】孔雀屋敷/ステパン・トロフィミッチ/初めての殺人事件/三人の死体/鉄のパイナップル/フライング・スコッツマン号での冒険/解説=戸川安宣
  • 躯体上の翼
    3.3
    航空上の脅威となる、強大な“人狗(ヒトイヌ)”の襲撃から〈共和国〉の緑化政策船団を護る生体兵器として生まれた少女・員(エン)。百年に一度、たった半年の任務のために存在している員は、ある日情報が枯れきった互聯網(ネツト)で、cyと名乗る人物に呼びかけられる。「会えて嬉しい。僕は常に一人だから」――ぎこちない会話を交わすうちに、員は彼に直接会いたいと願うようになる。だが、共和国による細菌兵器散布の脅威がcyに迫っていた。彼女は彼を救うため、二百二十一隻の船に戦いを挑む決意を固める。絶望的な戦力差を超えて、員はcyの元に辿り着くことができるのか。鮮烈な印象を残す本格SF。
  • 九年目の魔法
    4.3
    ため息をつき、本をベッドに伏せる。前に読んだはずだけど、こんな題名だったろうか? 壁にかかった写真の額を見上げる。これもこんな写真じゃなかったはず。この九年間で本当にあったことと、今おぼえていることが喰い違っている。まるで過去が変えられてしまったかのよう。大学生のポーリィは、十歳のころの思い出をたぐり寄せた。そうだ、近くの屋敷でお葬式が! そこで、あの人、リンさんと出会って、ずっと歳上の男の人なのに仲良しになって、それから……それから、とても恐ろしい何かが起こりはじめた……失われた時を求める少女の、愛と成長と闘いをつづる現代魔法譚!
  • 苦悩する男 上
    4.5
    イースタ署刑事クルト・ヴァランダー59歳、数年前に町なかのアパートを出て、田舎の家に住み始めた。娘のリンダも、同じ刑事の道を歩んでいる。そのリンダに子どもが生まれた。リンダのパートナー、ハンスは投資家。父親のホーカンは退役した海軍司令官、母親のルイースは元語学教師で、気持ちのよい人たちだ。だが自らの誕生パーティーの三ヵ月後、ホーカンが失踪してしまう。ルイースもハンスも原因に心当たりはないと言うが、ヴァランダーはパーティーでのホーカンの様子にひっかかるものを感じていた。北欧ミステリの金字塔シリーズ完結。
  • 雲

    4.5
    出張先のメキシコで、突然の雨を逃れて入った古書店。そこで見つけた一冊の書物には19世紀に、スコットランドのある町で起きた黒曜石雲という謎の雲にまつわる奇怪な出来事が書かれていた。驚いたことに、かつて、若かった私はその町を訪れたことがあり、そこで出会ったある女性との愛と、その後の彼女の裏切りが、重く苦しい記憶となっていたのだった。書物を読み、自らの魂の奥底に辿り着き、自らの亡霊にめぐり会う。ひとは他者にとって、自分自身にとって、いかに謎に満ちた存在であることか……。幻想小説、ミステリ、そしてゴシック小説の魅力を併せ持つ、マコーマック・ワールドの集大成とも言うべき一冊。
  • 蜘蛛男
    4.0
    とある貸事務所の十三号室を借り受けた奇妙な紳士。彼は、さっそく新聞に女事務員募集の記事を出し、応募者の中からひとりの美女を選び出すと自宅に連れ帰り、刃物類が転がる不気味な風呂場へと案内するのだった……。かくして、東京中を震撼させる恐るべき事件が続発する。この残虐な殺人鬼に対するは民間の犯罪学者畔柳友助。雑誌連載時に大好評を博した、手に汗握る長編推理!

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  • 雲の中の証人
    4.3
    弁護士事務所へ出向勤務を命じられた探偵社員の「私」は、製薬会社の会計課員がアパートで殺され、保管していた三千万円余りが奪われた半年前の事件を担当する。弁護すべきは、当時被害者の部屋に居候していた倒産寸前の工場主。絶対的に不利な条件下で雲を摑むような証人探しを拝命した私は――表題作『雲の中の証人』のほか、三幕の法廷コント『公平について』や、物真似殺人を企てた男の物語『赤い鴉』、恋に燃える女子大生と助教授の悲喜劇『あたしと真夏とスパイ』など、短編集成四巻目となる本書には、六二年~七二年発表の九編を収める。【収録作】「逢う時は死人」/「公平について」/「雲の中の証人」/「赤い鴉」/「私が殺した私」/「あたしと真夏とスパイ」/「或る殺人」/「鉄段」/「めだかの還る日」
  • 暗い海 深い霧 高城高全集3 
    4.5
    1巻770円 (税込)
    スパイとして国後島に潜入し、ソ連の警備隊に拘束された男。日本に帰還した男を待っていた真実とは――「暗い海 深い霧」。海岸で女の死体が発見された。痴情のもつれが原因と思われた事件に、なぜか公安調査官の影が――「微かなる弔鐘」。ある作戦に召集された米諜報機関の日本人工作員たち。諜略の果てに彼らが見たものは――「海坊主作戦」。東西冷戦の時代、謀略の最前線となった国境の海で繰り広げられる諜報戦に運命を翻弄される者たちを、非情かつ詩情豊かに描く作品群と、荒涼たる原野から地の底の炭鉱まで、北の大地に生きる男たち女たちの事件簿。昭和30年代前半に発表された高城作品の精華13編を収録。

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  • 暗闇にレンズ
    -
    数え切れないほどの監視カメラが眼を光らせる街角で、高校生の「私」と親友の「彼女」は、携帯端末の小さなレンズをかざして世界を切り取る。かつて「私」の母や、祖母や、曾祖母たちがしてきたのと同じように。そうして切り取られた世界の一部は、あるときには教育や娯楽のために、またあるときには兵器として戦争や弾圧のために用いられた――映画と映像にまつわる壮大な偽史と、時代に翻弄されながらもレンズをのぞき続けた、血縁に依らぬ“一族”の系譜を辿る物語。芥川賞作家の初長編にして、受賞第一作として発表された傑作が待望の文庫化。/解説=倉本さおり
  • 暗闇のセレナーデ
    3.6
    1巻550円 (税込)
    有名彫刻家に嫁いだ姉の家を訪ねた、美大生・美和と友人・冴子。そこで瀕死の状態の姉・雅子を発見する。病院に運ばれた雅子は、一命は取り留めるものの記憶喪失に陥った。雅子が運び出された後のアトリエは密室状態、そして夫は行方不明。自殺未遂、殺人未遂の両面で警察の捜査が進む中、美和は、冴子とともに独自の調査をはじめる。姿を消した義兄の行方を追う中で、事件の意外な真相が明らかになっていく。美術界の暗部で起こった事件に、女子大生コンビはいかなる推理を導き出すのか――。軽妙なタッチでつづられた黒川博行の初期本格作品。 ※本作品は東京創元社、徳間書店で同一タイトルの作品が販売されております。本編内容は同じとなりますので予めご了承下さい。既に同作品をご購入されているお客様におかれましてはご注意下さい。

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  • クリスマスに少女は還る
    4.1
    クリスマスも近いある日、二人の少女が町から姿を消した。州副知事の娘と、その親友でホラーマニアの問題児だ。誘拐か? 刑事ルージュにとって、これは悪夢の再開だった。十五年前のこの季節に誘拐され殺されたもう一人の少女――双子の妹。だが、あのときの犯人はいまも刑務所の中だ。まさか……。そんなとき、顔に傷痕のある女が彼の前に現れて言う。「わたしはあなたの過去を知っている」。一方、何者かに監禁された少女たちは、奇妙な地下室に潜み、力を合わせて脱出のチャンスをうかがっていた……。一読するや衝撃と感動が走り、再読しては巧緻をきわめたプロットに唸る。では、新鋭が放つ超絶の問題作をどうぞ!/解説=萩原香※紙書籍版とはカバー画像が異なります。
  • クリスマスのフロスト
    4.1
    【第1位『週刊文春』1994年ミステリーベスト10】クライヴは内心腐っていた。刑事に昇進したのも束の間、栄光のロンドンから七十マイル以上離れたこんな田舎町に配属になるとは。だが、悲嘆にくれている暇はない。じきにクリスマスだというのに、日曜学校からの帰途失踪した八歳の少女、銀行の正面玄関を深夜金梃でこじ開けようとする謎の人物など、市には大小様々な難問が持ちあがる。いや。最大の難問は、不撓不屈の仕事中毒にして、死体と女の話をこよなく愛する、上司のフロスト警部であったかもしれない……。続発する難事件をまえに下品きわまる名物警部が奮闘する、風変わりなデビュー作!

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  • クリムゾン・リバー
    4.1
    山間の大学町周辺で次々に発見される惨殺死体。拷問され、両眼をえぐられ、あるいは両手を切断され……。別の町でその頃、謎の墓荒らしがあった。前後して小学校に入った賊は何を盗み出したのか? まるで無関係に見える二つの町の事件を担当するのが、司法警察の花形と、自動車泥棒で学費を稼ぎ警察学校を出た裏街道に精通する若き警部。なぜ大学関係者が不可解な殺人事件に巻き込まれたのか? 埋葬されていた少年はなぜ死んでからも何者かに追われているのか? 「我らは緋色の川(クリムゾン・リバー)を制す」というメッセージの意味は? 二人の捜査がすべての謎をひとつに結び合わせる。フランス・ミステリの概念を変えた記念碑的傑作!/解説=吉野 仁
  • 黒い海岸の女王
    4.2
    1万2千年の昔、アトランティス大陸が海中に没したのち、現存する歴史が記されるまでの空白の期間にハイボリア時代なるものが存在した。この時期の伝承を伝えるネメディア国の年代記は、アトランティスの末裔、キンメリア生まれの英雄コナンの事跡を記している――。30歳で夭折した天才作家が創造し、のちに数多現れるヒロイック・ファンタジーの源となった傑作シリーズを、著者のオリジナル原稿に遡った校訂のもと全6巻に集成して贈る。横溢する妖美、奇怪はもとより一大宇宙史までをも堪能されたい。【収録作】「キンメリア(詩)」/「氷神の娘」/「象の塔」/「石棺のなかの神」/「館のうちの凶漢たち」/「黒い海岸の女王」/「消え失せた女たちの谷」/「資料編/「死の広間(梗概)」/「ネルガルの手(断片)」/「闇のなかの怪(梗概)」/「闇のなかの怪(草稿)/「R・E・ハワードからP・S・ミラーへの手紙」/「ハイボリア時代」/解説=中村融
  • 黒いダイヤモンド
    4.0
    長閑なフランスの小村、サンドニ。村の唯一の警官にして警察署長であるブルーノは、狩猟仲間であるエルキュールから、トリュフ市に粗悪な中国産トリュフが紛れ込んでいる問題について調査を依頼される。だが聞き込みを始めた矢先、エルキュールが何者かに殺害されてしまう。彼はかつて、情報部に所属する伝説の秘密警察官だった。犯行に及んだ者はその過去を知っていたのか? さらに彼の友人であるヴェトナム人夫婦まで中国人犯罪組織に襲撃され……。圧巻の取材力と緻密な構成、そして驚愕の真相。ベテランジャーナリストが放つ傑作ミステリ!

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  • 黒いトランク
    3.9
    千九百四十九年も押し詰った鬱陶しい日の午後、汐留駅前交番の電話のベルが鳴り、事件の幕が切って落とされた。トランクに詰められた男の腐乱死体。荷物の送り主は福岡県若松市近松千鶴夫とある。どうせ偽名だろう、という捜査陣の見込みに反し、送り主は実在した。その近松は溺死体となって発見され、事件は呆気なく解決したかに思われた。だが、かつて思いを寄せた人からの依頼で九州へ駆けつけた鬼貫の前に青ずくめの男が出没し、アリバイの鉄の壁が立ち塞がる……。巨星、鮎川哲也の事実上のデビュー作であり、戦後本格の出発点ともなった里程標的名作。綿密な校訂による決定版!

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  • クロイドン発12時30分
    3.4
    チャールズは切羽詰まっていた。父から受け継いだ会社は不況のあおりで左前、恋しいユナは落ちぶれた男の許へ来てはくれまい。母の弟アンドルーに援助を乞うも、駄目な甥の烙印を押されるばかり。チャールズは考えた。叔父の命か、自分と従業員全員の命か。これは「無用な一つの命」対「有用な多くの命」の問題だ。我が身の安全を図りつつ遺産を受け取るには――念入りに計画を立て、実行に移すチャールズ。快哉を叫んだのも束の間、フレンチ警部という名の暗雲が漂い始める。計画はどこから破綻したのか。『樽』と並ぶクロフツの代表作、新訳決定版。/解説=神命明
  • 黒い白鳥
    4.0
    6月2日早暁、久喜駅近くの線路沿いで男の射殺屍体が発見された。列車の屋根に乗ってそこまで運ばれた男は、労使抗争に揺れる東和紡績の西ノ幡豪輔社長と判明。敗色濃厚な組合側の妄動か、冷遇の憂き目に遭う新興宗教かと囁かれる中、最右翼と目される容疑者を追っていた当局は意外な線から彼の行方を知ることに。膠着する捜査を引き継いだ鬼貫警部は西ノ幡社長が貸金庫に預けていた写真に着目、あるかなきかの糸を手繰って京都から大阪へ、そして忘れじの九州へと足を運ぶ。そこで鬼貫が得たものは? 緻密なアリバイトリックを駆使し、第13回日本探偵作家クラブ賞を受賞した雄編。/解説=有栖川有栖
  • 黒い予言者
    4.0
    30歳で夭折した天才作家が創造し、すべてのヒロイック・ファンタジーの源となった傑作シリーズを、最新の校訂研究にもとづいて贈る第3集。ヴェンドゥヤ国の姫ヤスミナは、兄王を呪い殺した魔術師に復讐を果たすため、7人の捕虜の命と引き換えに、山地族の首領として勇名を轟かせていたコナンをヒメリア山系の奥深くへと向かわせようとした――人跡まれな山間に棲む恐るべき魔術師との死闘を描く表題作はじめ3編を収録。解説ではハワードの生涯を詳細に紹介。【収録作】「黒い予言者」/「忍びよる影」/「黒魔の泉」/「トムバルクの太鼓(梗概)」/「トムバルクの太鼓(草稿)」/解説=中村融
  • 黒水仙
    5.0
    宮城県の第八十八銀行白山支店で行員が射殺され、現金一億円と支店長が消えた。行員の口に押し込まれていたハンカチに施された黒い水仙の刺繍に、捜査官は首を傾げる。ほどなく、崖下に転落炎上した車から支店長が見つかり、当局は方針転換を迫られることに。強奪された一億円のうち紙幣番号の判明した十枚に関して得た情報が呼び水となって、東京の守衛殺しとの関連性も浮上、事件は思いがけない様相を呈していく。菊地警部が苦悩しつつも辿り着いた、黒水仙に象徴される悪しきものとは何か。父娘作家の出発点『獅子座』に続くシリーズ第2作。

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  • 黒蝶貝のピアス
    3.9
    1巻1,799円 (税込)
    前職で人間関係につまずき、25歳を目前に再び就職活動をしていた環は、小さなデザイン会社の求人に惹かれるものがあり応募する。面接当日、そこにいた社長は、子どもの頃に見た地元のアイドルユニットで一番輝いていた、あの人だった──。アイドルをやめ会社を起こした菜里子と、アイドル時代の彼女に憧れて芸能界を夢見ていた環。ふたりは不器用に、けれど真摯に向き合いながら、互いの過去やそれぞれを支えてくれる人々との関係性も見つめ直してゆく。年齢、立場、生まれ育った環境──全てを越えた先の物語。人間関係に悩むあなた、新しい環境に不安を感じるあなたに、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
  • 黒蜥蜴
    3.9
    左腕に黒蜥蜴の刺青をした美貌の女賊。社交界の花形にして暗黒街の女王――変幻自在の黒衣婦人は、大阪の富豪岩瀬家の秘宝とその愛娘を狙って、大胆にも名探偵明智小五郎に挑戦状を叩きつけてきた! 日本一のダイヤ「エジプトの星」をめぐって、息づまるような死闘が繰り広げられる。三島由紀夫の脚色による映画・演劇によって、さらにその名を天下に知らしめた、妖しい女賊と名探偵との宿命的な恋を描く江戸川乱歩の長編推理。

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  • 黒のクイーン
    3.4
    ウィーンに住むフリーランスの保険調査専門探偵ホガートは、大手国際保険会社支社長からある依頼を受けた。ウィーンの美術館がプラハの展覧会に貸し出した絵画が焼失、調査に派遣した絵画専門の調査員は、焼失した絵画はすり替えられた偽物だったとの報告を残し行方不明になった。その調査員を見つけだしてほしいというのだ。プラハに飛んだホガートは、ひとりの女探偵に出会う。彼女が調査しているプラハの連続殺人事件の話を聞くうち、ホガートはとんでもない事実に気づく。『夏を殺す少女』で衝撃的なデビューを飾った、オーストリア・ミステリの名手が仕掛ける巧妙な罠とは?

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  • 黒の扉は秘密の印 第二の夢の書
    3.6
    夢の世界で危機を切り抜け、学校の美形男子四人組のひとりヘンリーとつきあいはじめたリヴ。幸せいっぱいのはずだったが、運命の女神はそう甘くなかった。義理の祖母(予定)の大事な植木を破壊したことがみんなにばれるし、妹のミアは夢遊病にかかるし、夢の世界では〈死の将軍〉なる怪しい人物に追いかけられるし……。おまけにある秘密をめぐって、大好きな彼ともぎくしゃくする始末。どうするリヴ! 大人気の〈夢の書〉三部作、第二弾。
  • 黒百合
    3.6
    昭和27年の夏休み。14歳だった「私」こと進と一彦は、六甲山にあるヒョウタン池のほとりで、不思議な雰囲気を纏った同い年の少女と出会う。池の精を名乗ったその香という少女は、近隣の事業家・倉沢家の娘だった。三人は出会った翌日からピクニックや山登りを通して親交を深めてゆく。自然の中で育まれる少年少女の淡い恋模様を軸に、昭和10年のベルリン、昭和15年の阪神間を経由して、物語は徐々にその相貌を明らかにしてゆく。そして、最後のピースが嵌るとき、あらゆる読者の想像を超える驚愕の真相が描かれる。数々の佳品をものした才人による、工芸品のように繊細な傑作ミステリ。/解説=戸川安宣
  • 偶然にして最悪の邂逅
    3.5
    1巻1,899円 (税込)
    気がつくと昭和から令和へと元号も変わり(なんと平成という時代もあった!?)、38年も経っていたうえに、自分は幽霊になっていた。どうやら何者かに殺害されて、ここに埋められたらしいが、いったいなぜ? トリッキーな謎解きで魅了する「ひとを殺さば穴ふたつ」。高校生が廃屋になった旧校舎からの覗きを端に巻き込まれた不思議な事件を描く表題作「偶然にして最悪の邂逅」など、過去と現在が交差しながら、怒濤の展開へと突き進む、“日常の中の非日常”を魅惑的な筆致で贈る全5編。デビュー25周年を迎えた著者の、記念すべきミステリ短編集。【収録作】「ひとを殺さば穴ふたつ」/「リブート・ゼロ」/「ひとり相撲」/「間女の隠れ処」/「偶然にして最悪の邂逅」
  • 愚行録
    3.5
    1巻605円 (税込)
    ええ、はい。あの事件のことでしょ? えっ? どうしてわかるのかって? そりゃあ、わかりますよ。だってあの事件が起きてからの一年間、訪ねてくる人来る人みんな同じことを訊くんですから。――幸せを絵に描いたような家族に、突如として訪れた悲劇。池袋からほんの数駅の、閑静な住宅街にあるその家に忍び込んだ何者かによって、深夜一家が惨殺された。数多のエピソードを通して浮かび上がる、人間たちの愚行のカタログ。『慟哭』の作者が放つ、新たなる傑作!

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  • グッゲンハイムの謎
    4.3
    夏休みを迎えた12歳のテッドは、母と姉といっしょに、グロリアおばさんといとこのサリムが住むニューヨークを訪れた。おばさんはグッゲンハイム美術館の主任学芸員で、休館日に特別に入館させてくれた。ところが改装中の館内を見学していると、突然、何かのきついにおいと、白くて濃い煙が。火事だ! テッドたちは、大急ぎで美術館の外に避難した。だが火事は見せかけで、館内の全員が外に出た隙に、カンディンスキーの名画〈黒い正方形のなかに〉が盗まれていたのだ。しかも、おばさんが犯人だと疑われて逮捕されてしまう。なんとしても絵を取りもどして、おばさんの無実を証明しなければ。「ほかの人とはちがう」不思議な頭脳を持つテッドは、絵の行方と真犯人を探すため謎解きに挑む。『ロンドン・アイの謎』につづく爽快なミステリ長編!
  • グラスバードは還らない
    4.1
    マリアと漣は大規模な希少動植物密売ルートの捜査中、得意取引先に不動産王ヒューがいることを摑む。彼には所有高層ビル最上階の邸宅で、秘蔵の硝子鳥や希少動物を飼っているという噂があった。ビルを訪れた二人だったが、そこで爆破テロに巻き込まれてしまう! 同じ頃、ヒューの所有するガラス製造会社の関係者四人は、知らぬ間に拘束され、窓のない迷宮に軟禁されたことに気づく。「答えはお前たちが知っているはずだ」というヒューの伝言に怯えて過ごしていると、突然壁が透明に変わり、血溜まりに横たわる男の姿が!? 好評シリーズ第3弾!/解説=宇田川拓也
  • グリーン家殺人事件
    3.5
    発展を続けるニューヨークに孤絶して建つ、古色蒼然たるグリーン屋敷(マンション)。そこに暮らす名門グリーン一族を惨劇が襲った。ある雪の夜、一族の長女が射殺され、三女が銃創を負った状態で発見されたのだ。物取りの犯行とも思われたが、事件はそれにとどまらなかった――。姿なき殺人者は、怒りと恨みが渦巻くグリーン一族を皆殺しにしようとしているのか? 不可解な謎が横溢するこの難事件に、さしもの探偵ファイロ・ヴァンスの推理も行き詰まり……。鬼気迫るストーリーと尋常ならざる真相で、『僧正殺人事件』と並び称される不朽の名作が、新訳で登場。
  • グリーン車の子供
    3.9
    7年ぶりに、「盛綱陣屋」の微妙役への出演依頼があった老歌舞伎俳優・中村雅楽。しかし、雅楽は子役の配役が気にいらず、出演をなかなか快諾しない。そんな中、法要のため大阪を訪れた雅楽は、友人の竹野記者とともに帰京する新幹線のグリーン車で、一人の幼い少女と隣同士になる。東京へ到着する直前に「陣屋」への出演を決意した理由とは? 《中村雅楽探偵全集》第二巻は、第29回日本推理作家協会賞を受賞した「グリーン車の子供」を含む全18編。日本推理作家協会賞受賞時の著者の言葉など、資料も併録。【収録作】「ラッキー・シート」/「写真のすすめ」/「密室の鎧」/「一人二役」/「ラスト・シーン」/「臨時停留所」/「隣家の消息」/「美少年の死」/「八人目の寺子」/「句会の短冊」/「虎の巻紛失」/「三人目の権八」/「西の桟敷」/「光源氏の醜聞」/「襲名の扇子」/「グリーン車の子供」/「日本のミミ」/「妹の縁談」/徳間ノベルズ版『グリーン車の子供』 あとがき=戸板康二/受賞の言葉=戸板康二/創元推理文庫版解題=日下三蔵
  • グレゴワールと老書店主
    3.9
    老いた元老書店主は朗読を通して青年を読書へと誘う。老人の読書案内は、そのまま人生の道案内でもあった! 本と友情、本と愛情……本は人と人を結び合わせる。老人介護施設で働き始めた18歳の落ちこぼれ青年グレゴワールは、本だらけの居室で本に埋もれるように暮らす元書店主のピキエ老人に出会い、まったく無縁だった本の世界に足を踏み入れる。体も目も不自由になってきているピキエ老人に朗読をするのが日課となり、それは他の入居者たちにも波及する。ある日はサリンジャー、ある日はラブレー、ある日はアレッサンドロ・バリッコ……。そして、二人は下水管を通して発禁本の朗読を希望者にこっそり聞かせるイベントまで企画する! 青年は本のソムリエのような老人の案内に従って様々な本に出会い、その魅力に取り憑かれていく。
  • 刑事何森 孤高の相貌
    4.0
    埼玉県警の何森稔(いずもりみのる)は、昔気質の一匹狼の刑事である。有能だが、組織に迎合しない態度を疎まれ、所轄署をたらいまわしにされていた。久喜署に所属していたある日、何森は殺人事件の捜査に加わる。車椅子の娘と暮らす母親が、二階の部屋で何者かに殺害された事件だ。階段を上がれない娘は大きな物音を聞いて怖くなり、ケースワーカーを呼んで通報してもらったのだという。県内で多発している窃盗事件との関連を疑う捜査本部の見立てに疑問を持った何森は、ひとり独自の捜査を始めていく――。〈デフ・ヴォイス〉シリーズ随一の人気キャラクター・何森刑事が活躍する連作ミステリ第1弾。/【目次】二階の死体/灰色でなく/ロスト/あとがき/解説=杉江松恋

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