19世紀末のロンドンを舞台に、警官達の奮闘を描きます。
時代色たっぷりで面白く読めました。
1889年、切り裂きジャックの事件がどうやら迷宮入りに終わり、街には恐怖が漂っている時期。
警察の権威は地に落ちています。
とはいえ、そもそも警察官の数は少なく、殺人課は発足したばかり。増え続ける犯罪に対し
...続きを読むて、12人しかいない刑事の負担が増える一方という過酷な状況なのでした。
ウォルター・ディ警部補は抜擢されて殺人捜査課へ赴任してきます。
犯罪が少ない田舎町から越してきて、若い妻クレアも慣れないロンドン暮らしに。
クレアは良家の出で、本来は高嶺の花。ディのほかにない人柄を見抜いて結婚したのです。
そんなとき、警官が殺される事件が起きます。
平行して進む出来事が絡み合い、入り組んだ人間関係がどう解き明かされるかわからない、緊迫した三日間に。
ウェールズ出身のネヴィル・ハマースミス巡査は、煙突掃除の少年が死んだ事件をほっておけず、その家の前を見張ります。
おそらくは事故なのですが‥そんな危険なところで働かせた雇い主や通報しなかった家の人間を簡単に許せなかったのです。
不眠不休で頑張る根っからの警官、このハマースミスがすごくいいんですよ!
キングスリー博士は、法医学検査官。
といっても、まだ正式には警察にその役職はなく、見ていられずに買って出ているのです。
変人だけど熱心な博士。娘を助手にしています。
上巻では、まだ話がどっちへ転ぶかわからないところも。
群像劇という感じで、いちおうの主人公らしい人物も主人公とまで呼べないような‥
濃厚な雰囲気で、所々でぐっと熱がこもった描写があり、引き込まれました。