泡坂妻夫さんの作品は騙されることを楽しむようにできているので、ネタバレレビューは見ないで読んだ方がいい。
このレビューもトリックのネタバラシはしていないが、ストーリーに触れているのでこれから読む人はスルーしてください。
同じ物語を2人の視点で語る小説は多々あるが、これは4人の視点で語られる珍しいも
...続きを読むのだった。
しかも先ほどと同じ状況にいるはずの人物が異なっている。
一章 紀子 川で流されそうになった紀子は晃二に助けられ一夜を共にする。だが晃二は1カ月前に死んでいた。
どういうことだ?幽霊の物語か?実は晃二は生きていた?
二章 晃二 晃二は川で流されそうになった緋紗江を助け一夜を共にする。これがきっかけで晃二と緋紗江は結婚する。
紀子と晃二の出来事より前の晃二が確かに生きていた時の話だ。この後どういう展開になるのか?
三章 粧子 元恋人をたずねて粧子が来た。粧子は晃二と同じ日に毒を飲み、二人とも川に転落し流されて死ぬ。
四章 緋紗江 晃二の屍体は翌日みつかったが、粧子は靴しかみつかっていない。粧子と緋紗江、紀子と緋紗江の関係が明かされる。
終章 粧子の遺体が見つかった時、紀子と緋紗江が偶然鉢合わせする。
読者は四章でこの物語の謎解きができている。
紀子の発した、真相を理解したことがわかるセリフで物語が終わる。
不思議な物語だが種明かしされたあとに読み直してみると、うまく状況の細かい描写ができていると思う。
泡坂妻夫氏のトリックアイデアは私の想像力の範疇を越えている。
1978年と50年近くも昔の作品だと思うと、当時の読者はこの展開には不慣れであるが故目新しさも感じただろう。
しかし、このトリックはさすがに無理がある。
さすがにバレるだろうという状況に全く気付かないで物語が進むのだから、読者が騙されるのもしかたがない。