【感想・ネタバレ】11枚のとらんぷのレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年12月06日

 生誕90年記念出版の第4弾か? 初版は1979年に幻影城から刊行された、故泡坂妻夫氏の第1長編である。新装版刊行を機に手に取った。

 奇術師の顔も持つ泡坂氏だが、本作のテーマはずばり奇術。奇術師としての経験と知識が存分に活かされている。奇術を嗜まない自分にはわからないが、解説の相沢沙呼さんによる...続きを読むと、作中の奇術師たちの描写は、大変リアルだそう。

 アマチュアの奇術クラブによるショウが市民会館にて行われていたが、トリを飾る奇術で、仕掛けから出てくるはずの女性メンバーが姿を消した。彼女はアパートの自室で死体となって発見された。周囲に散乱していた小道具には共通点が…。

 このショウが実にグダグダで、失敗の連続に苦笑する。自分は伏線を見落とした。死体の周囲に散乱していた小道具は、いずれも奇術小説集『11枚のとらんぷ』で使われたものだった。『11枚のとらんぷ』とは作中作のタイトルでもある。

 作中作はよくある手法だが、全文が載っているのは珍しい。この作中作全11編はそれぞれ奇術の種明かしなのだが、茶目っ気たっぷりで実に楽しい。もっと読みたいくらいだ。奇術師とは、騙すためなら手間を惜しまない人種なのだ。

 いよいよ謎解きかと思いきや、世界的奇術ミーティングに参加し満喫する面々に、少々戸惑う。喪に服せとは言わないが…。『11枚のとらんぷ』の著者であるメンバーが真相に至ることができたのだから、参加した意義はあったのか?

 正直、本格としてフェアとは言い難いが、むしろ動機の面こそ興味深い。奇術師ならではの動機とは。それがどんなに貴重なものなのか、素人にはわかるまい。いくら作り話でも、何てことしてくれたんだよおい…。

 なお、全11編に描かれた奇術は、すべて泡坂氏オリジナルとのこと。奇術師らしい構成力が光る作品と言える。

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