泡坂妻夫のレビュー一覧

  • 湖底のまつり
    少々無理を感じる部分もあるけど、それを補って余りある物語の雰囲気、読者をまんまと騙す構成が素晴らしい。夢か現か、登場人物はもちろん、読者までも幻惑する幻想小説として読んでもいいのではないか。
  • 湖底のまつり
    泡坂妻夫さんの作品は騙されることを楽しむようにできているので、ネタバレレビューは見ないで読んだ方がいい。
    このレビューもトリックのネタバラシはしていないが、ストーリーに触れているのでこれから読む人はスルーしてください。

    同じ物語を2人の視点で語る小説は多々あるが、これは4人の視点で語られる珍しいも...続きを読む
  • ダイヤル7をまわす時
    久しぶりの読書は復刊された泡坂妻夫の短編集。質の高い話ばかりで度肝をぬかれた。好みはダイヤル7、芍薬に孔雀、青泉さん。奇術師でもあった作者ならではの楽しさがつまっていた。とてもよかったので、「煙の殺意」と「ヨギガンジーの妖術」も読もう。
  • 煙の殺意
    一分の隙もない短編集。落語のようなとぼけた語り口と、何回も読者の予想や思い込みをひっくり返す展開が見事。虚実ないまぜのうんちくが効果的な『椛山訪雪図』、社会を外側から眺めているかのような登場人物達が十蘭っぽい『紳士の園』が特に好き。
  • 亜愛一郎の狼狽
    美青年なのだがどこか抜けている亜。彼が解決する事件も、一見事件に見えなかったり、事件が起こる前に解決してしまったり、やはりどこか変わっている。
    全編ともかなりレベルが高く、国産短編集の中でもトップクラスではないだろうか。
    個人的ベストは『DL2号機事件』『G線上の鼬』、次いで『黒い霧』。

    『DL2...続きを読む
  • ヨギ ガンジーの妖術(新潮文庫)
    手品とかまったく興味ないので、あんまり楽しめないかなーと思いながら読んでみたら、笑えて面白かった!
    ヨギ・ガンジー、ちょっとハマったかもw
  • 煙の殺意
    米澤先生の帯にまんまと一本釣り。
    歯間に食い込む針の違和感を爪楊枝で取りたい衝動を舌先で遊びつつ、次の歯ミガキまで楽しませて頂きました。
  • 煙の殺意
    泡坂氏初期の短編にはチェスタトン張りのロジックが愉しめる。それは歪んだ論理とでも云おうか、読後に奇妙な味わいを残す。

    本作では「赤の追走」、「紳士の園」、「煙の殺意」、「開橋式次第」がそれに当たる。

    しかし本作は先ほど「奇妙な味わい」と述べたようにエリンの『特別料理』を意識したに違いないと思われ...続きを読む
  • 乱れからくり
    馬割朋浩の死は単に交通事故とかでも良かったかもしれないけど、そこが隕石の衝突というありえないシチュエーションなのが、自動殺人というありえないトリックを受け入れられる世界観作りに一役買っているような感じがした。
    舞子が警察を追われることになった事件の復讐でみたいな動機も考えたけど、結局その事件は潔白...続きを読む
  • 11枚のとらんぷ
    奇術家としても有名な作者の作品だけあって、色々な奇術の裏側が知れて面白かった。
    奇術の小ネタ集みたいな作中作も面白かったし、その中に犯人特定の手がかりが隠されていたのが驚いた。
    犯人が分かった後も、元々加害者と被害者が逆だったという真相に驚いた。
  • 湖底のまつり
    あの夜愛してくれた人は一月前に殺されていた。あれは一体何者だったのか。
    意外な展開に驚きつつ、少しずつ少しずつ物語の真相が見えてくる面白さ。真っ直ぐすぎる愛の恐ろしさを感じる恋愛ミステリー。
  • 蔭桔梗
    今回はじっくり読ませてもらった。途中で次の日に持ち越さないよう、一編が完結するまで読んだのが功を奏した。

    率直な感想を云わせてもらえば全てが一級品の短編集だ。
    自伝的な短編、「増山雁金」、「簪」、「弱竹さんの字」。
    ラストに不意を打たれた「遺影」、大人の恋愛を感じさせる表題作や「絹針」、それに加え...続きを読む
  • ヨギ ガンジーの妖術(新潮文庫)
    入手困難だったこの名作がやっと再販されたので再読。装丁は変わっていないが、新保博久氏の解説が追加されている。
    改めて凄い短編集だと思った。奇術に相通じるトリックが惜しげも無く使われている。こういう騙し方があるのか、こんな伏線の張り方があるのか、と、前にも読んでいるのに唸ってしまった。
    あまりにも斬新...続きを読む
  • 妖盗S79号
    神出鬼没の怪盗S79号と、それを追う専従捜査班の対決を描いた連作ミステリ。やはり怪盗ものというのはわくわくしてしまいます。その正体がある程度現れているにも関わらずミステリアスなS79号はもちろん、有能なのか無能なのかちょっとわからない(笑)専従捜査班の刑事二人のキャラクターも魅力的。
    ややコミカルな...続きを読む
  • 妖女のねむり
    夢見心地とはこのことだろう
     輪廻転生によって、運命の再会を果たした真一と麻芸。前世から現世、そして来世へと時は巡っていきます。波乱の展開を経て、様相が大きく変わりますが、夢から醒めることはありません。再生の先に待つのは、奇跡か、それとも悲劇かーー
     氏の才が集結した幻想ミステリの極致。
  • 11枚のとらんぷ
    大きく三部に分かれていて、
    第一部はマジックショーとその裏側を見れて、最後に殺人事件が発生したことがわかる。マジックの裏側が見れて面白い。
    第二部は殺人事件にかかわりのある奇術短編集。最後にはトリックがわかる仕組みで面白い。実は殺人事件の真相の伏線にもなってる。
    第三部は世界中の奇術家が集まるイベン...続きを読む
  • 11枚のとらんぷ
    〇 概要
     市立公民館でアマチュア奇術クラブ「マジキ・クラブ」が講演を行う。アマチュアらしく,成功する舞台もあれば,失敗する舞台も…。ハプニング続きで最後の出し物「袋の中の美女」を行うが,袋から出てくるはずの水田志摩子が姿を消してしまう。志摩子は「私の人生でも最も大切なドラマが起こりかかっている」と...続きを読む
  • 亜愛一郎の逃亡
    ああさまにはとんでもない事実が出てきます。
    驚き桃の木クラスの事実です。

    そんな最後の巻です。
    さすが記述をたしなむ人だけあり
    びっくり系の事件が多いです。
    で、いて結構大胆なこともやっていますし、
    偽の情報を使って大胆なこともやってますし。

    最後の事実は必見!!
  • 亜愛一郎の狼狽
    一度この苗字を聞いたら
    忘れることはないでしょう。
    なにせ「あ」、あですからね。
    (ちなみに実在しない苗字です)

    そんな手抜きな苗字(!)のせいなのか、
    彼はどこか抜けているのです。
    ドジをやらかすこともしょっちゅうですし、
    行動もどこかぎこちがない。

    だけれども、頭脳は素晴らしいものを
    持って...続きを読む
  • 煙の殺意
    冒頭の「赤の追想」を読んですぐ、米澤穂信の『氷菓』を思い出した。淡々とした語り口、理路整然とした謎解きの明かし方が似ているように感じられたからだ。果たして、直木賞候補の『満願』を書く際に米澤氏がこの『煙の殺意』参考にしたという記事を読み、やはりと思ったのであった。こういう逸品に出会えた事を幸運に思う...続きを読む