泡坂妻夫のレビュー一覧
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いやもう…キレイに騙されました。
冒頭の一章は、ずっと夢の中を漂っているような不思議な読書体験で、「これは現実?幻想?」と足元がふわふわする感じ。何が起きているのか掴めないまま読み進めていたら、二章から一気に景色が変わり、山奥の“水没を控えた村”という舞台が立ち上がってきます。そこから物語は想像していた方向とはまったく違う方へ転がり始め、章ごとに視点が変わることで少しずつ謎が形を帯びていくのが本当に面白かった。
解説で「騙し絵の世界」と書かれていましたが、まさにその通りで、誰が主人公なのかすら揺らぐような独特の読後感がずっと続きます。
ラストについては…どうか平穏な幸せを、と願わずにはいられませんでした。
扱っているテーマは今読むと自然に受け止められるけれど、これを昭和の時代に発表したという事実にしみじみ感動。大胆で繊細で、時代を超えて読まれる理由がわかる気がします。
ネタバレなしで読んでこそ楽しめるタイプの作品と思います。 -
Posted by ブクログ
「忍火山恋唄」
洒落ている
冬の温泉地と芸者たち、三味線の音色と江戸浄瑠璃の語りが纏う情緒
昭和の文豪たちが愛した“旅情 恋慕”の香りが漂う文章で、さらりと情念を映す
いま読むとしっとりとして、良い
それだけ自分も歳ということ……
川端康成の『雪国』が読みたくなる
「駆け落ち」
“駆け落ち”という言葉はすでに死語だ
似たような場合は今でもあるだろうが、覚悟の重さが全く違う
明治の小説黎明期よりもさらに古いテーマだが、職人と花街にはよく似合う。
「角館」
東北と東京は切っても切れない関係にある
華やかな都会の装いには、土と雪で暮らす人たちの裏地がある
背中合わせのもどかしさが、物語となる
「折鶴」
一連の職人話の終わりは表題作の“折鶴”
時代とともに廃れゆく生業、あがき方は人それぞれ
何を思い何を求めたのかは、当人のみが知ること
“洒落た”物語かと思ったが、締めは隙間がない -
Posted by ブクログ
解説が「霊媒探偵城塚翡翠」の相沢沙呼さん。
相沢さんは、本作品の影響をもろに受けていたようですね。
謎解きで本書に仕掛けられた伏線の数々に「そういうことだったのか」と思っていたら、その先にもう一段まさかの展開が隠されていた。
マジックの演出方法や種明かしを交えながら、緻密にミステリーが組み立てられていて、一度読んだだけでは不明瞭な場面が沢山残る。
結果、伏線の場面を再確認しながら二度読みすることに!
この作品は泡坂ミステリの長編一作目で、作家デビューから一年後のものでした。
マジシャンがマジックをネタに小説を書く。
登場するマジシャンたちを騙しながら、本書の読者も騙す。
しかも謎が解けたと思わせた後のどんでん返し。
楽しそうに執筆している泡坂妻夫さんの姿が目に浮かんだ。
これで読もうと決めた泡坂さんの本は読み終わった。
どれも面白かった。
改めて「総特集 泡坂妻夫 (KAWADE夢ムック 文藝別冊)」を読み直して、あと3冊くらい候補作品を選んでおこう。 -
Posted by ブクログ
奇術を題材にした作品。昭和51年発刊のようですが、大半の描写が奇術ショウ(マジックショー)に割かれているため時代感がつかみにくいです。またその時代には書かれているほど奇術が流行っていたのかも分かりません。それらの掴みどころの無さが醸し出す独特な雰囲気に飲まれてしまい、一読目はミステリ作品としての秀逸さには気付きませんでした。
落ち着いて二度目を読んでみると、伏線の多さと多彩さに驚かされました。
奇術師にもプロだけでなく趣味でやっている素人が居るように、伏線にも分かりやすいものから散りばめられており、普段ミステリを読んでもなかなかトリックを見破れない人でも、見破る楽しみが得られます。
かと言ってミステリとしてのレベルが低いわけではなく、分かりやすいトリックかと思っていたものが、実はもっと重要なトリックの伏線になっていたりと、噛めば噛むほど味わい深い作品です。 -
Posted by ブクログ
★5では足りないくらい面白かった。
ネタバレ厳禁なので、予備知識なしに読めてよかった。
これから読もうとしている人はレビューは見ない方がいい。
(いきなり犯人明かしちゃってるレビューがあるので)
主人公はボクサーを諦めた若い男の勝敏夫なのだが、働き口の調査会社で行動を共にすることになる元警官の女傑・宇内舞子のキャラが凄い。
物語(と読者)をグイグイ引っ張っているのは舞子だ。
物語の舞台となるのは、からくり玩具を扱う老舗の会社の経営者一族が住んでいる「ねじ屋敷」と呼ばれる屋敷。
不可解な死が続き警察も入り込んでいる中でさらに次々と起こる殺人事件。
殺人は、各人の生活習慣を見越した上で、必ず行われるであろう行動を利用している。
だが、いくら読み進めても犯人らしき人物が見えてこない。
誰が、何のために、連続殺人を行っているのか分からない。
最後に明かされる殺人の犯人とその「からくり」に納得。
愛一郎やヨギガンジーと異なり、おちゃらけ無しの本格ミステリー作品。
見事に読者を騙すストーリー展開と、仕掛けの巧妙さに脱帽。
補足:
からくり玩具に興味がある人は、より面白く読めると思う。
最初にキツツキのオモチャが出てくる。
吸盤のついた足を壁に垂直に張り付けるとキツツキの動きをする。
中に入れてある砂の落下が生み出す力をキツツキの動きに変えたからくりオモチャだ。
メカニカルバンクは、硬貨を乗せると骸骨の手が出てきて掴み、箱の中に入れてしまうやつを持っていたことがある。
本書では「政治家」という、衣装の胸の隙間に硬貨を隠してしまうものが紹介されていて動きを想像してしまった。
本書に登場するもので圧巻は、「ねじ屋敷」に作られた「からくり迷路」だ。
これは文章だけでは理解しにくいので、図で示される。
計算されつくされた壮大な仕掛けが明らかになった時の驚きは半端ではない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ泡坂妻夫さんの作品は騙されることを楽しむようにできているので、ネタバレレビューは見ないで読んだ方がいい。
このレビューもトリックのネタバラシはしていないが、ストーリーに触れているのでこれから読む人はスルーしてください。
同じ物語を2人の視点で語る小説は多々あるが、これは4人の視点で語られる珍しいものだった。
しかも先ほどと同じ状況にいるはずの人物が異なっている。
一章 紀子 川で流されそうになった紀子は晃二に助けられ一夜を共にする。だが晃二は1カ月前に死んでいた。
どういうことだ?幽霊の物語か?実は晃二は生きていた?
二章 晃二 晃二は川で流されそうになった緋紗江を助け一夜を共にする。これがきっかけで晃二と緋紗江は結婚する。
紀子と晃二の出来事より前の晃二が確かに生きていた時の話だ。この後どういう展開になるのか?
三章 粧子 元恋人をたずねて粧子が来た。粧子は晃二と同じ日に毒を飲み、二人とも川に転落し流されて死ぬ。
四章 緋紗江 晃二の屍体は翌日みつかったが、粧子は靴しかみつかっていない。粧子と緋紗江、紀子と緋紗江の関係が明かされる。
終章 粧子の遺体が見つかった時、紀子と緋紗江が偶然鉢合わせする。
読者は四章でこの物語の謎解きができている。
紀子の発した、真相を理解したことがわかるセリフで物語が終わる。
不思議な物語だが種明かしされたあとに読み直してみると、うまく状況の細かい描写ができていると思う。
泡坂妻夫氏のトリックアイデアは私の想像力の範疇を越えている。
1978年と50年近くも昔の作品だと思うと、当時の読者はこの展開には不慣れであるが故目新しさも感じただろう。
しかし、このトリックはさすがに無理がある。
さすがにバレるだろうという状況に全く気付かないで物語が進むのだから、読者が騙されるのもしかたがない。 -
ネタバレ 購入済み
奇術家としても有名な作者の作品だけあって、色々な奇術の裏側が知れて面白かった。
奇術の小ネタ集みたいな作中作も面白かったし、その中に犯人特定の手がかりが隠されていたのが驚いた。
犯人が分かった後も、元々加害者と被害者が逆だったという真相に驚いた。 -
ネタバレ 購入済み
馬割朋浩の死は単に交通事故とかでも良かったかもしれないけど、そこが隕石の衝突というありえないシチュエーションなのが、自動殺人というありえないトリックを受け入れられる世界観作りに一役買っているような感じがした。
舞子が警察を追われることになった事件の復讐でみたいな動機も考えたけど、結局その事件は潔白が証明されなかったな。
椙本孝思先生の「魔神館事件」を思い出したけど、こちらの方が何十年も前に書かれてると思うとすごい。