泡坂妻夫のレビュー一覧
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創元推理文庫版で発売されたのが2001年なので、てっきり新しめの作品集なのかと思いきや、1976~79年と『亜愛一郎』シリーズと同じ時期に執筆されたものであるとともに、元のそれが入手し辛くなったことからの発売かもしれないと知り、内容に好みはあるかもしれませんが、ミステリファンならば、一度読んでおいて損はない作品だと感じました。
本書には、それぞれに趣の異なる8つの短篇が収められており、当時の時代背景も反映されているかもしれないと感じたのは、これまで私の中で抱いていた、泡坂妻夫に対する人柄の良さを思わせるイメージとは真逆のそれであり、それは人間には良いところも悪いところもあるのだろうなといった、漠然としたものというよりは、人間は時と場合によって、突拍子もなく平気で恐ろしいことを考えつく生き物であることを、ごく当然のように描いている、そこに感じられた容赦の無さであると共に、だからこそ見えてくる人間味もあった。
ここで冷静に省みると、亜愛一郎シリーズにも、確かにそうしたテーマは存在するが、作品全体を覆うユーモラスな雰囲気と亜自身の個性によって、大分和らいだ印象を抱かせる反面、この前読んだ「乱れからくり」には、本書と似たような人間の持つ闇の一面を垣間見たことから、泡坂妻夫も人間なのであることをようやく意識させられた、というよりは、そこに彼の作家性があるのだと思われたことに、実は騙しの美学だけではなく、思いの外、現実志向も強かったのではないかと感じられたのである。
となると、彼の中で思い描いているのは、物語がたちまち様変わりするようなミステリとしての面白さや陶酔感だけではなく、あくまでも、それを引き起こしているのは人間なのであるということも強く意識させられることにより、人間というものの得体の知れなさから考えさせるものもありながら、そこから派生する泣き笑いのような思いには、決して恐怖だけではない、そこに至るまでの気持ちがそうさせるのだと思わせるものもあった、そんな人間の不完全さに悲喜こもごもが宿っている点には、単なるミステリという枠だけでは収まりきらない、まるで人間自体が謎であるかのような書きっぷりに、泡坂妻夫の世の中の表と裏を見抜く、確かな眼差しがあるように感じられた。
思えば、最初の「赤の追想」から、いきなり後頭部を激しく叩きつけられたようなショックがあり、安楽椅子探偵仕立てなので直接的では無いものの、それでも彼の望みを叶えるための、その考え方には理解の範疇を超えた恐ろしいものがありながら、どこか哀愁も漂わせていた、それは人生のゴールが決して変わることのない、彼自身の悲劇とも思われる中、それに対して、人間の中に光と闇があることを当たり前に受け入れた彼女の言葉に、どこか爽やかさを感じられたのが一つの救いでもあった、生と死の対照性を、ある素晴らしいものに擬えて、人間の儘ならぬ様を見事なまでに描いている。
「椛山訪雪図」は、知識が専門的すぎて読み辛かったものの、最後は目にも鮮やかに、その意味するところを簡潔に見せてくれた、そこには「椛」の読み方から、実は最初からタイトルに全て込められていたことを思い知る、その正々堂々とした潔さと、死角を突いたような絶妙なバランス感が、泡坂妻夫の一つの持ち味だと思う。
「紳士の園」は、かなり闇志向が強い一品で、公園の奥でバーベキューパーティーさながらにあれを食べようとするのが、既に衝撃的だったが、それすらも些細なことに過ぎなかった最後の意外性には、それに対する並々ならぬ思いもあることから、単なる奇矯さだけではない、確かな説得力もあったのだが、それ以上に、この『大は小を兼ねる』的解釈の非人間性には、冷静に考えれば考えるほど空恐ろしいものがあった。
「閏の花嫁」は、最初と最後でがらりと景色が一変する、まさに泡坂妻夫の醍醐味を堪能しつつ、お伽話はお伽話だからこそ楽しいということも痛感させられ、人間も動物の一種であることを、改めて思い知る。
「煙の殺意」は、事件の捜査をしながらも、デパートの火事のテレビ中継から目が離せない望月警部と、屍体そのものが好きな斧技官の、ユニークなコンビだからこそ事件の真相に気付くことのできた、物語としての面白さとは対照的に、犯人の動機は本書の中で最も理解不能で恐ろしいものがあり、しかもそれを何の躊躇いもなく実行しながら、謝罪の一言も何も無く、これでも人間なのだろうかと思わずにはいられなかった、その衝撃は怒りよりも、どこか無関心風な望月警部と斧技官の様子も加わって、悲しくてやり切れないものへと変わり、確かにこうしたことも世界ではいくらでも起こっているけれど・・・といった、人間社会の闇の部分を深く抉り出しながら、「紳士の園」と見事な対照性を為した構成も心憎いばかりで、泡坂妻夫、恐るべしといった心境。
「狐の面」も専門的知識の読み辛さがあったものの、物語は心に響くものがあり、そこには奇術に対して奇術で対抗するといった、言葉は一緒であっても、そこへの拘りと思い入れには天と地ほどの差がある点に、泡坂妻夫の好きなものに対する真摯な情熱が、ひしひしと伝わってきながらも、それをユーモラスなタッチで描いたことに、彼の人間性が垣間見えた、それは最後の彼女に対する優しさもそうであった。
「歯と胴」は、犯罪者心理として起こり得る物語に斬新さは無かったものの、それを呼び起こす一つ一つの要素が、ゆっくりと明らかになっていく過程にあった、まるでホラー映画を観ているような恐怖には、思わず信じてしまいそうな臨場感で満たされているようであったが、これも人間に闇の部分がある故の思考法なのだと思うと、果たして人間とは、悲しい程に愛しい存在なのか、滑稽な程に愚かな存在なのか、よく分からなくなる。
最後の「開橋式次第」の、五代揃って一つ屋根の下で暮らしている家族の、人数が多すぎて名前を覚えられない面白さの裏で、くどい程に繰り返されるのは、人間は何かを拠り所にして生きていることであり、それが良くも悪くも、それぞれの人生に反映されている点を皮肉を交えて描きながら、どこか微笑ましさも感じられたのは、きっと完璧でないからこそ人間は特別に愛おしく思える存在なのだということを、改めて教えてくれたのだろうと、私は思う。 -
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当初、読みたいと思ったのは「しあわせの書」だが、ガンジーシリーズの第1作であるこちらを優先。
表紙の絵から ヨギ ガンジー は、いかがわしそうな奇術師で、インチキ臭い感じがプンプンしてる。
表紙の絵では「名探偵」と書かれたターバンを巻いているが、しあわせの書では「迷探偵」生者と死者では「酩探偵」と変化するそうだ。
ふざけた野郎だとガンジー像を作って読み始めたが、意外と真面目と言うか癖がなかった。
このへんは亜愛一郎も同じで、主人公のキャラで遊ぶのはほどほどにして、トリックの内容をきちっと語らせることに徹している。
さて、その肝心の作品内容だが、
最初の「王たちの恵み<心霊術>」の謎解きから、まさかそうくるとは!…と予想外の展開だった。
普通は皆が考えがちな判断が実は間違っているという、ごく常識的な決めつけを逆手にとられ「やられた」感を受ける。
「ヨギ ガンジーの予言<予言術>」も勝手な思い込みを利用して騙す手口の種明かしが語られる。
予言の内容を書き留めるために使った、どこにでもある道具にそんな仕掛けをしているとは微塵も思いもしない。
何とかトリックを暴いてやろうと思って読んだのだが、どの話も全く予想できなかった。
全てが明かされた後、もう一度読み直してもトリックがわからないように書かれている。
全編、素直に「へぇ~、そういうこと?!」と、からくりを楽しむ内容だった。 -
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ネタバレ生誕90年記念出版の第4弾か? 初版は1979年に幻影城から刊行された、故泡坂妻夫氏の第1長編である。新装版刊行を機に手に取った。
奇術師の顔も持つ泡坂氏だが、本作のテーマはずばり奇術。奇術師としての経験と知識が存分に活かされている。奇術を嗜まない自分にはわからないが、解説の相沢沙呼さんによると、作中の奇術師たちの描写は、大変リアルだそう。
アマチュアの奇術クラブによるショウが市民会館にて行われていたが、トリを飾る奇術で、仕掛けから出てくるはずの女性メンバーが姿を消した。彼女はアパートの自室で死体となって発見された。周囲に散乱していた小道具には共通点が…。
このショウが実にグダグダで、失敗の連続に苦笑する。自分は伏線を見落とした。死体の周囲に散乱していた小道具は、いずれも奇術小説集『11枚のとらんぷ』で使われたものだった。『11枚のとらんぷ』とは作中作のタイトルでもある。
作中作はよくある手法だが、全文が載っているのは珍しい。この作中作全11編はそれぞれ奇術の種明かしなのだが、茶目っ気たっぷりで実に楽しい。もっと読みたいくらいだ。奇術師とは、騙すためなら手間を惜しまない人種なのだ。
いよいよ謎解きかと思いきや、世界的奇術ミーティングに参加し満喫する面々に、少々戸惑う。喪に服せとは言わないが…。『11枚のとらんぷ』の著者であるメンバーが真相に至ることができたのだから、参加した意義はあったのか?
正直、本格としてフェアとは言い難いが、むしろ動機の面こそ興味深い。奇術師ならではの動機とは。それがどんなに貴重なものなのか、素人にはわかるまい。いくら作り話でも、何てことしてくれたんだよおい…。
なお、全11編に描かれた奇術は、すべて泡坂氏オリジナルとのこと。奇術師らしい構成力が光る作品と言える。 -
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「泡坂妻夫」の長篇ミステリ小説『湖底のまつり(仏題?:La Fete Du Seraphin)』を読みました。
ここのところ国内ミステリ作品が続いています… 「泡坂妻夫」の作品は、『夢裡庵先生捕物帳』以来なので、1年ちょっと振りですね。
-----story-------------
●「綾辻行人氏」推薦──「最高のミステリ作家が命を削って書き上げた最高の作品」
傷ついた心を癒す旅に出た「香島紀子」は、山間の村で急に増水した川に流されてしまう。
ロープを投げ、救いあげてくれた「埴田晃二」とその夜結ばれるが、翌朝「晃二」の姿は消えていた。
村祭で賑わう神社に赴いた「紀子」は、「晃二」がひと月前に殺されたと教えられ愕然とする。
では、私を愛してくれたあの人は誰なの……。
読者に強烈な眩暈感を与えずにはおかない、「泡坂妻夫」の華麗な騙し絵の世界。
解説=「綾辻行人」
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『幻影城』の1978年(昭和53年)6・7月合併号から10月号にかけて連載された作品です。
■一章 紀子
■二章 晃二
■三章 粧子
■四章 緋紗江
■終章
■解説 晃二
渓流の平らな岩に座り、「紀子」は足を伸ばした… その時、突然、彼女は川が大きくふくらむのを感じ、次の瞬間には濁流に呑み込まれていた、、、
傷心を癒すため旅に出た「香島紀子」は、旅先の峡谷で増水に遭い、危ういところを「埴田晃二」と名乗る若者に助けられた… その夜、彼女は村はずれのあばら家で、男と一夜を共にした。
だが翌朝、なぜか男が消えている… 探しに出た彼女は、村祭で賑わう神社で村人に尋ねると、男がひと月前に毒殺されていたと聞いて愕然とする! では彼女を助け、「晃二」と名乗った人物は誰なのか?
「香島紀子」と「埴田晃二」の出会い、「藤舎緋紗江」と「埴田晃二」の出会い… 似通ったシチュエーションでありながら、微妙にズレを感じつつ、そこに「荻粧子」と「埴田晃二」の出会いにより物語は新たな展開を見せ、そして、「藤舎緋紗江」と「荻粧子」の関係が明らかになるに連れて、徐々に真実が明らかになるという展開、、、
微妙な時間のズレや同一人物を異なる人物とミスリードさせる巧みな叙述トリック、そこに妖艶さが加わり、最初から最後まで集中力が途切れることなく読めましたね… 愉しめました。
以下、主な登場人物です。
「香島 紀子(かしま のりこ)」
会社を辞めて千字村を訪れた女性。
「埴田 晃二(はにだ こうじ)」
千字村出身の若者。自動車好きで東京でガソリンスタンドの修理工として働いていた。あだ名は「パンサー」。
「藤舎 緋紗江(とうしゃ ひさえ)」
大学を卒業したばかりのダム工事の測量士補。
「金海 芳男(かなみ よしお)」
晃二の友人。
「パーゾウ」
千字村の住人。乞食。本名不明。
「深沢 源吉(ふかざわ げんきち)」
千字村の住人。ダム反対運動の指導者。
「荻 粧子(おぎ しょうこ)」
千字荘の投宿者。大学2年生。演劇部所属。
「館崎(たてざき)」
所轄署の刑事。 -
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『ダイヤル7をまわす時』の解説で、櫻田智也さんが『煙の殺意』に言及していた記憶があったので、読んだ。(櫻田さんがどんな言葉でこれを紹介していたか失念した。あとで確認したら追加するかもしれない。)
必ずしも「事件→誰かが謎を解く」という構造の話ばかりではなく、最近読んだ岩波少年のホラー短編集とか、ウェストール短編集(こちらはホラーと銘打ったものではないが一応ホラーやスリラーが得意な作家とされている)のような、ちょっと不思議なぞくっとするお話集になんとなく読み心地が似ていた。
色気と、ユーモアと、トリック愛とは変わらず、短編集全体としてもバラエティ豊かで、とても良かった。
以下、備忘メモ。ネタバレはしてないはず。
・赤の追想→小柄で老け顔だが妙に色気のある男が安楽椅子探偵を演ずる。地の文の美しさも心に残った。「…堀があった。淀んだ都会の水は、夜になると水の心を取り戻していた。対岸のネオンが、水と恋をした。」
・椛山訪雪図→解説の澤木喬さんはこれを大絶賛していた。(私はちょっと固有名詞に混乱したせいか入り込めなかった。)
・紳士の園→刑務所帰りの島津。同じく刑務所帰りの先輩近衛に誘われ閉園後の公園での怪しげな酒宴を二人で開く。酒宴の前後で物語の様相が変わるのが面白い。
・閏の花嫁→彼、私の方に気があると思っていたのに、まさかあなたと結婚するとはね!という関係の女二人の手紙のやりとりからのまさかの展開。
・煙の殺意→お、表題作。殺人事件の現場で、デパートの火災事故のテレビ中継に見入る、無類のテレビ中継好きの望月警部。熱心に、執拗なほど熱心に現場、というか被害者の遺体の検証をするのは、無類の屍体好きの斧技官。この互いに相手を「変なやつだな」と思っている者同士のコラボで真相が解明される。
・狐の面→ヨギガンジーイズムを感じる一話。
・歯と胴→完全犯罪なるか。女のとある台詞が伏線だったことがあとでわかるのが見事。
・開橋式次第→大家族をおじいちゃんが一人で起こして回るドタバタ喜劇調の幕開けが楽しい。 -
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「泡坂妻夫」の連作短篇時代小説集『夢裡庵先生捕物帳』を読みました。
「泡坂妻夫」作品は、『亜愛一郎の狼狽』以来なので、約2年振りですね… 「松本清張」、「近藤史恵」、「井川香四郎」の作品に続き、時代小説・捕物帳です。
-----story-------------
〈上〉
絵馬の中の人物が、まるで矢を放ったように見える殺しの現場の真相は――(『びいどろの筆』)。
味競番付で上位になった店ばかり次々と強盗に襲われているが……(『泥棒番付』)。
砂を金に変える秘術をおらんだ人から教わったという者が持ち込んできた話とは(『砂子四千両』)。
「空中楼夢裡庵」こと八丁堀定町廻り同心の「富士宇衛門」が、江戸の風物詩をめぐる不可思議で魅惑的な事件と対峙する。
(解説:「芦沢央」)
〈下〉
「相性を見てほしい」真剣な顔をした娘が本当に占ってもらいたかったものとは(『手相拝見』)。
金魚が一匹残らず死んだ。さらには人間まで……もしやあの饅頭に毒が?(『金魚狂言』)。
花火が終わって静まり始めた川に浮かぶ船には、一体の屍体が(『仙台花押』)。
八丁堀同心「夢裡庵」が大砲隊の前に仁王立ちする最終話(『夢裡庵の逃走』)を含む、江戸が舞台の連作ミステリ11篇。
(解説:「澤田瞳子」)
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1992年に刊行された『びいどろの筆』、1999年に刊行された『からくり富』、2005年に刊行された『飛奴』の3作品を上下巻に再編集して改題された作品で、「空中楼夢裡庵(くうちゅうろう むりあん)」こと八丁堀定町廻り同心の「富士宇衛門」が、江戸を舞台にした不可思議で魅惑的な事件を解決する連作短篇です、、、
全篇に「夢裡庵」が登場するものの、各作品の主人公が「夢裡庵」とは限らず、前の物語での謎解き役が次の物語では主人公となり、その物語の謎解き役がさらにその次の物語の主人公になる… という感じでリレーされていく形式なので、読んでいるうちに、徐々に世界観に入り込んでいく感じで、毎回、読み口が異なるので飽きずに読めましたね。
〈上〉
■びいどろの筆
■経師屋橋之助
■南蛮うどん
■泥棒番付
■砂子四千両
■芸者の首
■虎の女
■もひとつ観音
■小判祭
■新道の女
■解説 芦沢央
〈下〉
■猿曳駒
■手相拝見
■天正かるた
■からくり富
■風車
■飛奴
■金魚狂言
■仙台花押
■一天地六
■向い天狗
■夢裡庵の逃走
■解説 澤田瞳子
一篇が40ページ程度だったし、さらっと軽く読めるような内容だったので、肩の力を抜いて読める作品でした、、、
全21篇、それぞれ魅力がありますが… その中でも印象に残った作品を紹介します。
おらんだ人の医師「ジョベノン ローコキ」から伝えられた砂を金に変えるという秘薬“マテリヤプリマ”を持っているという「草藤蘭魚」が、さらに大量の秘薬を手に入れるため、金主を募っているという… 「蘭魚」は金主たちの前で秘術を行い、実際に砂から金を作り出して見せた、、、
その手順には特に怪しいところもなさそうだったが… 当然ながら「蘭魚」の“秘術”はインチキなのですが、その裏に隠された意外な狙い(真の狙い)に驚かされた『砂子四千両』。
「由美吉」と「豊菊」は茶屋「小桜屋」で人気の芸者だが、その境遇は対照的だった… 「多田屋源兵衛」という嫌な客につきまとわれる「由美吉」と、「竹之助」と名乗る謎の侍と惚れ合っている「豊菊」、、、
しかしある日、なぜか「豊菊」が「多田屋源兵衛」を殺してしまった… 「豊菊」の動機があまりにも鮮烈で、自由のない女たちの哀しみが強く印象に残る『芸者の首』。
浅草の見せ物小屋で大人気の、三つの乳房を持つ“もひとつ観音”、その観音様をつとめている「お照」が、ある日ふらふらとどこかへ姿を消してしまった… 一方その頃、何かに喉を食いちぎられた侍の死体が発見された、、、
その懐には、“もひとつ観音”の刷物が… 「夢裡庵」の人情裁きが印象的な『もひとつ観音』。
納豆売りからお釣りとして珍しい一文銭を手に入れた「与七」は、占師の「薬小路車道」とともにその出所を調べていた… 様子を怪しく思った岡っ引きに自身番へと連れて行かれた二人だったが、そこで出くわした女の死体が持っていた紙入れの中には、、、
古銭に関する蘊蓄が面白いですね… そして「夢裡庵」の犯人の見逃し方が印象的な『猿曳駒』。
蛤弁天で売り出された富くじに、江戸の町は大騒ぎ… 岡っ引きの「俵助」が営む小料理屋「青馬」でも、常連が富くじの話で盛り上がるがその中の一人で石屋の「庄太」が、何と百両の一番富を当てたらしい、、、
しかし、どうもおかしな様子の「庄太」に、「俵助」の娘「千代」は不審を抱く… 本来は完全犯罪に近いと思いますが、それが発覚するきっかけが、実に自然な『からくり富』。
捕らえられた盗賊が、今までに盗みに入った店の名前を白状させられた… その中に、このところ天文道師の占いで大儲けしている「大坂屋」の隠居所の名があったが、なぜか当の「大坂屋」からは被害の届けがなかったのだ、、、
鶯と鳩の謎解き… 特に伏線がお見事な『飛奴』。
大の金魚好きで知られる「岩治」の金魚が全滅してしまった… 熊谷稲荷の祭礼で配られていた饅重を家人が与えたところ、たちどころに金魚が死んでしまったという、、、
さらに、同じ饅重によると思われる事件が相次ぎ、ついに死人が出て… ささやかな矛盾から事件の真相が明らかになる過程は面白い『金魚狂言』。
最終話『夢裡庵の逃走』では、彰義隊に加わり、大砲部隊として討幕軍と戦う「夢裡庵」のエピソードが描かれています… やがて戦端が開かれ「夢裡庵」の奮戦も虚しく、、、
彰義隊の運命は歴史の知るところですが… 厳しい戦いの中を、何とか生き残った「夢裡庵」、明治を彼らしく生きた後日譚を読んでみたいですね。 -
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「泡坂妻夫」の連作短篇時代小説集『夢裡庵先生捕物帳』を読みました。
「泡坂妻夫」作品は、『亜愛一郎の狼狽』以来なので、約2年振りですね… 「松本清張」、「近藤史恵」、「井川香四郎」の作品に続き、時代小説・捕物帳です。
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〈上〉
絵馬の中の人物が、まるで矢を放ったように見える殺しの現場の真相は――(『びいどろの筆』)。
味競番付で上位になった店ばかり次々と強盗に襲われているが……(『泥棒番付』)。
砂を金に変える秘術をおらんだ人から教わったという者が持ち込んできた話とは(『砂子四千両』)。
「空中楼夢裡庵」こと八丁堀定町廻り同心の「富士宇衛門」が、江戸の風物詩をめぐる不可思議で魅惑的な事件と対峙する。
(解説:「芦沢央」)
〈下〉
「相性を見てほしい」真剣な顔をした娘が本当に占ってもらいたかったものとは(『手相拝見』)。
金魚が一匹残らず死んだ。さらには人間まで……もしやあの饅頭に毒が?(『金魚狂言』)。
花火が終わって静まり始めた川に浮かぶ船には、一体の屍体が(『仙台花押』)。
八丁堀同心「夢裡庵」が大砲隊の前に仁王立ちする最終話(『夢裡庵の逃走』)を含む、江戸が舞台の連作ミステリ11篇。
(解説:「澤田瞳子」)
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1992年に刊行された『びいどろの筆』、1999年に刊行された『からくり富』、2005年に刊行された『飛奴』の3作品を上下巻に再編集して改題された作品で、「空中楼夢裡庵(くうちゅうろう むりあん)」こと八丁堀定町廻り同心の「富士宇衛門」が、江戸を舞台にした不可思議で魅惑的な事件を解決する連作短篇です、、、
全篇に「夢裡庵」が登場するものの、各作品の主人公が「夢裡庵」とは限らず、前の物語での謎解き役が次の物語では主人公となり、その物語の謎解き役がさらにその次の物語の主人公になる… という感じでリレーされていく形式なので、読んでいるうちに、徐々に世界観に入り込んでいく感じで、毎回、読み口が異なるので飽きずに読めましたね。
〈上〉
■びいどろの筆
■経師屋橋之助
■南蛮うどん
■泥棒番付
■砂子四千両
■芸者の首
■虎の女
■もひとつ観音
■小判祭
■新道の女
■解説 芦沢央
〈下〉
■猿曳駒
■手相拝見
■天正かるた
■からくり富
■風車
■飛奴
■金魚狂言
■仙台花押
■一天地六
■向い天狗
■夢裡庵の逃走
■解説 澤田瞳子
一篇が40ページ程度だったし、さらっと軽く読めるような内容だったので、肩の力を抜いて読める作品でした、、、
全21篇、それぞれ魅力がありますが… その中でも印象に残った作品を紹介します。
おらんだ人の医師「ジョベノン ローコキ」から伝えられた砂を金に変えるという秘薬“マテリヤプリマ”を持っているという「草藤蘭魚」が、さらに大量の秘薬を手に入れるため、金主を募っているという… 「蘭魚」は金主たちの前で秘術を行い、実際に砂から金を作り出して見せた、、、
その手順には特に怪しいところもなさそうだったが… 当然ながら「蘭魚」の“秘術”はインチキなのですが、その裏に隠された意外な狙い(真の狙い)に驚かされた『砂子四千両』。
「由美吉」と「豊菊」は茶屋「小桜屋」で人気の芸者だが、その境遇は対照的だった… 「多田屋源兵衛」という嫌な客につきまとわれる「由美吉」と、「竹之助」と名乗る謎の侍と惚れ合っている「豊菊」、、、
しかしある日、なぜか「豊菊」が「多田屋源兵衛」を殺してしまった… 「豊菊」の動機があまりにも鮮烈で、自由のない女たちの哀しみが強く印象に残る『芸者の首』。
浅草の見せ物小屋で大人気の、三つの乳房を持つ“もひとつ観音”、その観音様をつとめている「お照」が、ある日ふらふらとどこかへ姿を消してしまった… 一方その頃、何かに喉を食いちぎられた侍の死体が発見された、、、
その懐には、“もひとつ観音”の刷物が… 「夢裡庵」の人情裁きが印象的な『もひとつ観音』。
納豆売りからお釣りとして珍しい一文銭を手に入れた「与七」は、占師の「薬小路車道」とともにその出所を調べていた… 様子を怪しく思った岡っ引きに自身番へと連れて行かれた二人だったが、そこで出くわした女の死体が持っていた紙入れの中には、、、
古銭に関する蘊蓄が面白いですね… そして「夢裡庵」の犯人の見逃し方が印象的な『猿曳駒』。
蛤弁天で売り出された富くじに、江戸の町は大騒ぎ… 岡っ引きの「俵助」が営む小料理屋「青馬」でも、常連が富くじの話で盛り上がるがその中の一人で石屋の「庄太」が、何と百両の一番富を当てたらしい、、、
しかし、どうもおかしな様子の「庄太」に、「俵助」の娘「千代」は不審を抱く… 本来は完全犯罪に近いと思いますが、それが発覚するきっかけが、実に自然な『からくり富』。
捕らえられた盗賊が、今までに盗みに入った店の名前を白状させられた… その中に、このところ天文道師の占いで大儲けしている「大坂屋」の隠居所の名があったが、なぜか当の「大坂屋」からは被害の届けがなかったのだ、、、
鶯と鳩の謎解き… 特に伏線がお見事な『飛奴』。
大の金魚好きで知られる「岩治」の金魚が全滅してしまった… 熊谷稲荷の祭礼で配られていた饅重を家人が与えたところ、たちどころに金魚が死んでしまったという、、、
さらに、同じ饅重によると思われる事件が相次ぎ、ついに死人が出て… ささやかな矛盾から事件の真相が明らかになる過程は面白い『金魚狂言』。
最終話『夢裡庵の逃走』では、彰義隊に加わり、大砲部隊として討幕軍と戦う「夢裡庵」のエピソードが描かれています… やがて戦端が開かれ「夢裡庵」の奮戦も虚しく、、、
彰義隊の運命は歴史の知るところですが… 厳しい戦いの中を、何とか生き残った「夢裡庵」、明治を彼らしく生きた後日譚を読んでみたいですね。 -
Posted by ブクログ
東京創元社から二〇二三年に復刊された泡坂妻夫さん短編集で、解説が櫻田智也さん。収録作品は、一九七九〜一九八五年に発表されたものとのこと。アワツマ&櫻田ファンにとっては嬉しいコラボ。
本の紹介は櫻田さんによる解説以上に語ることはない!ので感想メモのみ。
【本編の感想】
・ダイヤル7、芍薬に孔雀→優しさ。
・芍薬に孔雀、飛んでくる声→ちょっと艶っぽさ。
・可愛い動機→このオチが好きかどうかは意見が分かれそう。
・金津の切符→蒐集家が出てくるミステリーは読んだことがあるが、その美学を味わえたのは初かも。変態性のほうへ傾かず、温かみある蒐集家を描き出したところがさすがアワツマ。私はこれが一番好きだった。
・広重好み→がらがらっと風景の変わる後半がさすが。そしてこの軽さもいい。
・青泉さん→伏線がそこだったか!とやられた感が心地よかった。
【解説の感想】
・櫻田さんが亜愛一郎シリーズに手を伸ばしたきっかけが『〜狼狽』というタイトルを見ての直観というエピソードが好き。
・松本清張との対比についての考察が面白かった。
・実は私は「チェスタトン流の逆説」などと言われたときそれがどういう論理展開のことを指すのかいまいちわかっていない。そのせいで色々な解説を味わい損なっている気はずっとしていたが、今回は特にその勿体無さが身に沁みた。いつか体得したらまた読もう。
・最後の一文に、思わず手を挙げたくなる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ初版は1985年に刊行された、故泡坂妻夫氏の短編集である。生誕90年記念出版の第1弾として、創元推理文庫から刊行され、第2弾、第3弾も予定されている。
表題作か「ダイヤル7」。暴力団の組長が自宅で殺害された。犯人はなぜすぐに現場を離れなかったのか? 若い読者にはピンとこない理由かもしれないが、自分は使ったことがある世代なので納得。ノスタルジックな1編。
「芍薬に孔雀」。容疑者らしき人物が、事情聴取中に刑事に語ったこととは。泡坂氏は奇術の愛好家だったそうなので、こんなネタを思いついたのだろうか。マニアックであり定番ジャンルでもある、ピリリと洒落が効いた1編。
「飛んでくる声」。なぜか向かいの建物の部屋から声が聞こえる。その内容とは。構成面でもよく練られているのだが、真相よりも、声が飛んでくる現象の説明がないのが気になった。ガリレオシリーズではないけども。
短い「可愛い動機」。動機はともかく結果はまったく可愛くない。他の手段がいくらでもあるだろうがっ!泡坂流ブラックジョークか?
「金津の切符」。嗚呼、コレクターの悲哀か。「芍薬に孔雀」に負けず劣らずマニアックだが、解せないのは犯行が露見した理由。「………」に込められた、犯人の気持ちやいかに。○○をこのために使うのは現代目線でも斬新だ。
キュート路線だろうか「広重好み」。回りくどいというか何というか。ダシにされた彼の立場は…。最後に「青泉さん」。アトリエで殺害された青泉さん。彼のようなタイプはいるが、殺された上に暴かれてしまうとは、気の毒すぎる…。
全7編、バリエーションもあり楽しめた。第2弾以降も読んでみよう。 -
Posted by ブクログ
超常現象を奇術で解決するミステリ
ドイツ人とミクロネシア人と大阪人の血をひき、ロンドンではヨーガを教え、シカゴではすりの実演、東京では医者を相手に催眠術の講義をする、謎の男ヨギ ガンジー
「しあわせの書」と「生者と死者」が気になり、シリーズものは1作目から読みたい派なのでまずはこれから読んでみた
連作短編で、収録は7編
・王たちの恵み〈心霊術〉
・隼の贄〈遠隔殺人術〉
・心魂平の怪光〈念力術〉
・ヨギガンジーの予言〈予言術〉
・帰りた銀杏〈枯木術〉
・釈尊と悪魔〈読心術〉
・蘭と幽霊〈分身術〉
奇術師が超常現象の裏側を見破るという設定はドラマ「TRICK」を思い浮かべるけど、ドラマのずっと前にこんな発想の物語はあったのですねぇ
使われているトリックに関しては、説明されればミステリではありがちなものだけど
そこに至るまでのミスリードなどが上手い
著者自身が奇術師であり、観客や読者の注視する部分の誘導に慣れているんだと思う
いかにも怪しそうなもの、常識や物語の定番など、読者は思考を誘導されてしまいがち
そんな思い込みをひっくり返す構図はなかなかよい
さて、ヨギ ガンジーとお付の者の概要を知ったので、「しあわせの書」と「生者と死者」も続けて読みます -
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2012年に発売された単行本の文庫化で、新たに、「酔象秘曲」が書籍初収録された作品集ですが、推理ものとして凄いというよりは、泡坂さんの作品を好きな方が読んで楽しむタイプかと思われます。
本書の一番の目玉であろう、酔象秘曲は未発表作品で、辻褄の合わない部分があるものの、ちゃんとミステリーとして完結している点が素晴らしく、「酔象将棋」というのが、泡坂さんの創作かと思いきや、実在しているもので、酔象の駒の存在ひとつで、全く違う遊戯を見ているような面白さを、文章から感じられました。
また、他の「幕間」の作品は、泡坂さん独自の視点が面白く、「聖なる河」のラストが印象的だったことと、「流行」は、貫井徳郎さんが見落とした作品があると指摘してくれなかったら、収録されなかったかもしれない、貴重な作品。これもショートショートながら、印象に残る。
そして、「奇術」は、マジシャンでもある泡坂さんの、マジックについて、個性的な登場人物たちが語り尽くす展開ながら、つい読み耽ってしまい、どこまでが真実で、どこまでが創作なのか分からない、不思議な感覚が面白い。
ちなみに、TAMCの創立者の一人、「緒方知三郎」の「緒方奇術文庫」は、調べたら実在しており、先程の酔象将棋同様、こうしたミステリアスで知らなかったものを知る喜びを、本書では、度々実感いたしました。
また、戯曲の「交霊会の夜」は1983年の作品で、実際に演劇を観ているような感覚で、ミステリーを楽しめて、泡坂さん特有の、個性的で怪しい人物達のユーモア溢れる遣り取りもあって、面白く、1987年には、推理劇専門劇団「宝石座」の第三回作品として、上演されたとのこと。観たかったなあ。
そして、泡坂さんの作品で、個性的かつ怪しく、更に胡散臭い(でも、ジェントルマン)といえば、「ヨギガンジー」シリーズであり、本書にも三篇収録されており、これが読みたくて私は購入しました。
おそらく、短篇がある程度まとまれば、「生者と死者」に次ぐ、作品集を発表したものと思われる、その充実の内容は、まず「カルダモンの匂い」において、ガンジーのグルメ通の一面を覗かせながら、不動丸を守る姿勢に、カッコいいと思っていたら、終盤に、胡散臭い大阪弁を久しぶりに聞けて、やはりガンジーはガンジーだったし、それぞれの良さを発揮した、不動丸と本多美保子の役割分担もお見事。
続く、「未確認歩行原人」でも、ガンジーの発言は胡散臭いながら、その裏で冷静に物事を考えている姿には、やはり探偵という称号が、彼には相応しく感じられ、口では「私のばか弟子たち二人」と言いながら、二人のことを心配している内面も覗えて、いつも通り、事件も殺人も起こらないけれど、その反面、関係者たちへの優しい眼差しが、とても印象に残る。
そして、「ヨギ ガンジー、最後の妖術」は、泡坂さんが付けたタイトルではなく、まさに執筆途中での無念の未完となり、僅か数頁ながら、ガンジーも登場するし、暦の吉凶や芭蕉祭など、興味深い言葉もいくつか見られ、どんな話なのか想像するのもいいかもしれないが、さすがにガンジーの胡散臭さを代わりに執筆できる人はいないと思われ、私としては、未完であることが真に残念でならない。 -
Posted by ブクログ
面白かった!でもその魅力を説明するのが難しい(笑)。
ヨギガンジーと不動丸という、何者なのか説明しづらい男ふたり(一応、師弟関係)が探偵役?のミステリー?ですが、よくよく考えると殺人事件も窃盗事件も怪現象も起こってない…?でもトリックはある!作家でありながらアマチュアマジシャンでもあったというアワツマならではのミステリー、なのかな。ミステリーを読みたいけど怖いの苦手な人におすすめかも。
ガンジーは、「霞以外は食しませんので」と言いながら出されたご馳走をバクバク食べたり、片言の日本語で登場したと思ったら後できれいな東京弁を話していたり、「陰陽の特性からして助手は女性でなければなりません」と言って女性の手を握ったりと、胡散臭いこと極まりないのだが、「人を喰ったような」というちょっと悪意も滲むような形容はそぐわない。作品全体には下世話なネタもちらほらあるのに、不思議と下品じゃない。なんとなく品がある。どこか星新一味を感じる(最近私、感想でこのワードを使いがち)。
赤染明子・照子姉妹がなんか好きです。 -
購入済み
普通の推理小説が物語の中の登場人物同士による騙し合いなら、叙述型の推理小説は物語の作者と読者の騙し合いであるとよく言われますが、泡坂さんにはそういったレベルを超えて、物語の外で作者と読者が場外乱闘をしているといったそんな感じの作品があります。具体的には「しあわせの書」や「生者と死者」などはその凄すぎる仕掛け故に電子書籍に出来ないほどなのですが、実は本作にも詳しくは説明できないのですがそういった趣向が施されております。ただ前述の作品に比べるとそれが分かりづらく、読み終わった後に恩田陸さんの解説を読んで初めてその事実に気付くといったケースも多いかと思いまして(私もそうでした)、通常電子書籍ですと解説が載せられていないことが多いのですが、この作品に限っては解説は必須と言えるかも知れません。それだけに解説は必ず読後に読まれることをお奨めします。