泡坂妻夫のレビュー一覧

  • 亜愛一郎の狼狽

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    長身で彫りの深い端正な顔立ち、色白で知的な雰囲気で女性の心をとらえて離さない美男子なのに運動神経はまるでなく不器用でおっちょこちょいな青年写真家亜愛一郎。彼が行く先々で遭遇する事件を地道な捜査はほとんどせず、ホームズばりの観察眼だけで見事解決していく連作短編。愛一郎の飄々としたキャラがいい。暗号解読です謎を解き明かす『掘り出された童話』が特に良かった。

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    2025年06月26日
  • 11枚のとらんぷ

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    解説が「霊媒探偵城塚翡翠」の相沢沙呼さん。
    相沢さんは、本作品の影響をもろに受けていたようですね。

    謎解きで本書に仕掛けられた伏線の数々に「そういうことだったのか」と思っていたら、その先にもう一段まさかの展開が隠されていた。

    マジックの演出方法や種明かしを交えながら、緻密にミステリーが組み立てられていて、一度読んだだけでは不明瞭な場面が沢山残る。
    結果、伏線の場面を再確認しながら二度読みすることに!

    この作品は泡坂ミステリの長編一作目で、作家デビューから一年後のものでした。
    マジシャンがマジックをネタに小説を書く。
    登場するマジシャンたちを騙しながら、本書の読者も騙す。
    しかも謎が解けた

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    2025年05月30日
  • 折鶴

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     短編集。古書、新内、染物というアイテムと、金沢の温泉街という場所が絶妙な効果をあげている「忍火山恋唄」。恩人の死をきっかけに、かつて共に逃避行した女性と再会し、若い頃の思い違いを知らされる「駆落」。めぐまれた境遇にいるものの今の暮らしから逃れようとしている女性との心理劇が繰り広げられる「角館にて」。自分の名前を騙る者がどうやらいるようだ、という不安のなか、着物業界の衰退と内輪揉めを気に留めず淡々と仕事を続ける縫箔屋が、自分の本当の思いに気づいていく表題作。どの作品も、深い味わい。

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    2025年05月11日
  • 11枚のとらんぷ

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    公民館でアマチュアのサークルによって行われる奇術ショー。ドタバタでコメディタッチな雰囲気が大上段に構えてなくて凄くいい。しかし殺人事件が起きてからは、ヒントとなる劇中作に続いてラストの解決篇と第一級品のミステリーに。おすすめ!

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    2025年03月27日
  • 亜愛一郎の転倒

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    『〜狼狽』はそれほど面白いとは思わなかったが、こちらはユーモアたっぷりでニヤニヤしながら読みました。『〜狼狽』は再読だな。

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    2025年01月17日
  • 写楽百面相

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    江戸の人情風俗が良く描き込まれたミステリ。わずか十ヶ月の期間に百数十点者作品を残し、姿を消した謎の絵師写楽。写楽の謎はもちろんのこと写楽にまつわる人々を巻き込んだ大事件。随所にこめられたからくりに惑わされ、写楽がが誰であるかはわりとあっさりとした描写。からくり師の名手に堪能させられた作品。

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    2024年12月16日
  • 11枚のとらんぷ

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    奇術を題材にした作品。昭和51年発刊のようですが、大半の描写が奇術ショウ(マジックショー)に割かれているため時代感がつかみにくいです。またその時代には書かれているほど奇術が流行っていたのかも分かりません。それらの掴みどころの無さが醸し出す独特な雰囲気に飲まれてしまい、一読目はミステリ作品としての秀逸さには気付きませんでした。
    落ち着いて二度目を読んでみると、伏線の多さと多彩さに驚かされました。
    奇術師にもプロだけでなく趣味でやっている素人が居るように、伏線にも分かりやすいものから散りばめられており、普段ミステリを読んでもなかなかトリックを見破れない人でも、見破る楽しみが得られます。
    かと言って

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    2024年11月17日
  • 乱れからくり

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    ★5では足りないくらい面白かった。
    ネタバレ厳禁なので、予備知識なしに読めてよかった。
    これから読もうとしている人はレビューは見ない方がいい。
    (いきなり犯人明かしちゃってるレビューがあるので)

    主人公はボクサーを諦めた若い男の勝敏夫なのだが、働き口の調査会社で行動を共にすることになる元警官の女傑・宇内舞子のキャラが凄い。
    物語(と読者)をグイグイ引っ張っているのは舞子だ。

    物語の舞台となるのは、からくり玩具を扱う老舗の会社の経営者一族が住んでいる「ねじ屋敷」と呼ばれる屋敷。
    不可解な死が続き警察も入り込んでいる中でさらに次々と起こる殺人事件。

    殺人は、各人の生活習慣を見越した上で、必ず

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    2024年08月08日
  • 湖底のまつり

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    少々無理を感じる部分もあるけど、それを補って余りある物語の雰囲気、読者をまんまと騙す構成が素晴らしい。夢か現か、登場人物はもちろん、読者までも幻惑する幻想小説として読んでもいいのではないか。

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    2024年04月23日
  • 湖底のまつり

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    ネタバレ

    泡坂妻夫さんの作品は騙されることを楽しむようにできているので、ネタバレレビューは見ないで読んだ方がいい。
    このレビューもトリックのネタバラシはしていないが、ストーリーに触れているのでこれから読む人はスルーしてください。

    同じ物語を2人の視点で語る小説は多々あるが、これは4人の視点で語られる珍しいものだった。
    しかも先ほどと同じ状況にいるはずの人物が異なっている。

    一章 紀子 川で流されそうになった紀子は晃二に助けられ一夜を共にする。だが晃二は1カ月前に死んでいた。

    どういうことだ?幽霊の物語か?実は晃二は生きていた?

    二章 晃二 晃二は川で流されそうになった緋紗江を助け一夜を共にする。

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    2024年03月09日
  • ダイヤル7をまわす時

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    久しぶりの読書は復刊された泡坂妻夫の短編集。質の高い話ばかりで度肝をぬかれた。好みはダイヤル7、芍薬に孔雀、青泉さん。奇術師でもあった作者ならではの楽しさがつまっていた。とてもよかったので、「煙の殺意」と「ヨギガンジーの妖術」も読もう。

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    2023年05月08日
  • 煙の殺意

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    一分の隙もない短編集。落語のようなとぼけた語り口と、何回も読者の予想や思い込みをひっくり返す展開が見事。虚実ないまぜのうんちくが効果的な『椛山訪雪図』、社会を外側から眺めているかのような登場人物達が十蘭っぽい『紳士の園』が特に好き。

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    2022年11月27日
  • 亜愛一郎の狼狽

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    美青年なのだがどこか抜けている亜。彼が解決する事件も、一見事件に見えなかったり、事件が起こる前に解決してしまったり、やはりどこか変わっている。
    全編ともかなりレベルが高く、国産短編集の中でもトップクラスではないだろうか。
    個人的ベストは『DL2号機事件』『G線上の鼬』、次いで『黒い霧』。

    『DL2号機事件』
    数々の奇妙な謎が、たった一つの考え方によって一つに繋がれる。
    そしてそれを補強する伏線は質も数も凄まじく、前半はもはや伏線の塊。

    『G線上の鼬』
    これも同じく、伏線の塊。この発想を雪密室として使うのも巧い。

    『黒い霧』
    カーボンを町に撒く、という謎も魅力的だし、その真相も素晴らしい。

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    2022年01月23日
  • ヨギ ガンジーの妖術(新潮文庫)

    購入済み

    手品とかまったく興味ないので、あんまり楽しめないかなーと思いながら読んでみたら、笑えて面白かった!
    ヨギ・ガンジー、ちょっとハマったかもw

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    2020年12月19日
  • 煙の殺意

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    米澤先生の帯にまんまと一本釣り。
    歯間に食い込む針の違和感を爪楊枝で取りたい衝動を舌先で遊びつつ、次の歯ミガキまで楽しませて頂きました。

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    2020年09月24日
  • 煙の殺意

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    ネタバレ

    泡坂氏初期の短編にはチェスタトン張りのロジックが愉しめる。それは歪んだ論理とでも云おうか、読後に奇妙な味わいを残す。

    本作では「赤の追走」、「紳士の園」、「煙の殺意」、「開橋式次第」がそれに当たる。

    しかし本作は先ほど「奇妙な味わい」と述べたようにエリンの『特別料理』を意識したに違いないと思われる作品がある。『閏の花嫁』はもうほとんどオマージュであろうし、『歯と胴』は一種のホラーとも云える(題名からすればバリンジャーか)。

    恐らく雑誌掲載の短編を寄せ集めたものであろうが、この完成度は素晴らしい。

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    2020年03月03日
  • 11枚のとらんぷ

    ネタバレ 購入済み

    奇術家としても有名な作者の作品だけあって、色々な奇術の裏側が知れて面白かった。
    奇術の小ネタ集みたいな作中作も面白かったし、その中に犯人特定の手がかりが隠されていたのが驚いた。
    犯人が分かった後も、元々加害者と被害者が逆だったという真相に驚いた。

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    2019年12月03日
  • 乱れからくり

    ネタバレ 購入済み

    馬割朋浩の死は単に交通事故とかでも良かったかもしれないけど、そこが隕石の衝突というありえないシチュエーションなのが、自動殺人というありえないトリックを受け入れられる世界観作りに一役買っているような感じがした。
    舞子が警察を追われることになった事件の復讐でみたいな動機も考えたけど、結局その事件は潔白が証明されなかったな。
    椙本孝思先生の「魔神館事件」を思い出したけど、こちらの方が何十年も前に書かれてると思うとすごい。

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    2019年12月03日
  • 湖底のまつり

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    ネタバレ

    あの夜愛してくれた人は一月前に殺されていた。あれは一体何者だったのか。
    意外な展開に驚きつつ、少しずつ少しずつ物語の真相が見えてくる面白さ。真っ直ぐすぎる愛の恐ろしさを感じる恋愛ミステリー。

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    2019年09月10日
  • 蔭桔梗

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    今回はじっくり読ませてもらった。途中で次の日に持ち越さないよう、一編が完結するまで読んだのが功を奏した。

    率直な感想を云わせてもらえば全てが一級品の短編集だ。
    自伝的な短編、「増山雁金」、「簪」、「弱竹さんの字」。
    ラストに不意を打たれた「遺影」、大人の恋愛を感じさせる表題作や「絹針」、それに加えて自分なりのベストの二作品「くれまどう」と「色揚げ」。戦慄のラストの「竜田川」。
    寂寥感漂う「校舎惜別」に微笑ましい「十一月五日」。

    本統に素晴らしかった。

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    2018年09月09日