泡坂妻夫のレビュー一覧

  • 湖底のまつり

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    ネタバレ

    『乱れからくり』と並んで初期の泡坂の代表作と評される本書は、やはり時代の流れか、当時の読者諸氏を唸らせた衝撃はもはや薄れてしまっていた。価値の多様化が顕著になった昨今では、同性愛が真相のファクターであることが特に奇抜さを齎さなくなってしまった。

    しかし、それでも尚、作者は手練手管を使って読者を煙に巻く。
    女が男に化けて女をイカせる。この謎の解明は素晴らしい。

    しかし本作を読んで痛感したのは、時代がオープンになればなるほど、我々の常識が崩され、謎という暗闇が小さくなってしまう事だった。

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    2019年04月21日
  • 花嫁のさけび

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    映画界のスター、北岡早馬と再婚し、幸せの絶頂にいた伊津子だったが、北岡家の面々は数ヶ月前謎の死を遂げた先妻、貴緒のことが忘れられず、屋敷にも彼女の存在がいまだに色濃く残っていた。そんなある夜、伊津子を歓迎する宴の最中に悲劇が起こる。そして新たな死体が……。

    いつか読んでみたいと思っていた泡坂妻夫。最初から昭和のサスペンス映画の雰囲気全開で楽しい。真相は今読むと分かりやすいんだけど、丁寧な描写と雰囲気だけで十分楽しめた。あんなに前妻のこと言われたら嫌だわ……。そして早馬さんひたすら可哀想だよ……

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    2019年02月05日
  • 湖底のまつり

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    ネタバレ

    これぞ本格派ミステリー。
    ダムの底に沈んでいく東北の過疎の村が舞台。お祭りの場面は幻想的。
    女性は、旅先の川で溺れそうになったところを助けてくれた村の男性と一夜を共にしたが、男性は一か月前に毒を盛られて殺されていた。すべては夢だったのか、男性は幽霊だったのか。。。読み進んでいくうちに、だんだんとトリックがわかってくる。後で前の章を読み返してみると、トリックのヒントがあちらこちらに、ちりばめてある。
    官能小説のようなところが多過ぎたり、官能シーンの会話が文語的で不自然だったり、一夜を共にしただけで結婚したり、刑事が事あるごとに娘のことを想ったり、ほおをふくらませたり、緋紗江がなぜか刑事と結婚した

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    2019年01月29日
  • 亜愛一郎の狼狽

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    とりあえずミステリの有名どころは押さえていきたい\(^^)/

    というわけで、絵師でありマジシャンでもある泡坂妻夫先生の、亜愛一郎シリーズです。
    冒頭の「DL2号機事件」がデビュー作で代表作の一つでもあるようなんですが、個人的にはちょーっと、いえ、正直ものすごく物足りなかった(汗

    DL2号機よりは、上空の熱気球内で芸人が殺される「右腕山上空」、傾いた団地で殺人事件が発生する「曲った部屋」、巨大仏像の掌の上で起こった奇妙な事件を描く「掌上の黄金仮面」、未開の地の首長が謎の死を遂げる「ホロボの神」が面白かった。

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    2019年01月18日
  • 湖底のまつり

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    思ってたんと違う!
    古い作品だけど自分が田舎者だからか、あまり古くさくは感じない。奇祭、葡萄酒、男女の交わり等々、日常と非日常を反転させるアイテムの使い方がすごい。解説で”眩暈感”と表現されていたけど、確かにそう。
    でも、本格ミステリを期待して読むと多分肩透かし。最後の謎解きも、下品すぎやしませんかね…
    あと、みんな頰をふくらませすぎじゃない?かわいい。

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    2019年01月14日
  • 煙の殺意

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    70年代に書かれたミステリを集めた短編集、恥ずかしながら・・・初めての泡坂妻夫。
    正確には、泡坂妻夫の作品自体は他のミステリ・アンソロジーで読んだ事はありますが、一冊の本としては・・・(^_^;)
    米澤穂信の帯書き『世界最高のミステリ短編集です。』の一文に惹かれて読みました。
    確かにミステリとしての読み応えは十分にありましたが・・・如何せん文体が古く、今一つ感情移入できない感じは否めませんでした!残念!!

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    2018年12月24日
  • 毒薬の輪舞

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    ここ続けて読んできた『鬼女の鱗』、『びいどろの筆』、『蔭桔梗』といった時代物、もしくは職人の世界を描いた恋愛物と、侘び・寂びを感じさせる日本情緒豊かな作品に親しんできたため、この作品は現代本格物ということで、どこか別の人が書いたような違和感を覚えたが、やはり随所に泡坂らしさを覗かせ、小さいながらも驚きを提供してくれた。
    精神病院を舞台にしたにも拘らず、重く暗くならないのは主人公海方のキャラクター性と、泡坂の筆の軽さゆえか。

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    2018年09月26日
  • 夜光亭の一夜 宝引の辰捕者帳ミステリ傑作選

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    宝引の辰「捕者帳」、傑作13編を収録。泡坂妻夫の捕者帳ならばハズレ無し。それぞれトリックやネタの趣向が違っていてコンパクトに纏めてくる鮮やかさ。面白いです。
    印象深いのは、やはり紋章上絵師でもある氏が描いた「鬼女の鱗」、手妻ネタであり、且つ、例のシリーズのキャラクターのアレですねとニヤリとさせる「夜光亭の一夜」、判じ物の「雛の宵宮」辺りかな。

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    2018年09月06日
  • ヨギ ガンジーの妖術(新潮文庫)

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    ネタバレ

    〇 総合評価
     ヨギガンジーシリーズは,「驚愕の仕掛けの文庫本」である「しあわせの書」という作品を読んで好きになったので,なんとか「ヨギガンジーの妖術」も読みたいと思っていた。そして,まさに待望の復刊となったので手に入れた作品。思い入れは深い。内容は,長らく絶版になっていただけのこともあり,傑作とまでは言い難い。しかし,「王たちの恵み」はチェスタトン風の逆説的なオチが楽しめた。ほかにも手品で使えそうなアイデアでかかれた小品ともいうべき佳作の作品ぞろい。中にはやや物足りない作品もあったけど,それなりに楽しむことができた。しばらくは手に入るだろうけど,このデキだとそこまで売れないと思われ,更にもう

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    2018年08月25日
  • 奇跡の男

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    文庫の裏表紙の紹介文から多大な期待をしてしまった「奇跡の男」から始まったこの短編集は、全体的な印象から云えば、別段心に残るような意外な真相、プロットは無いものの、何故か気になってしまう。
    それは各々の短編に出てくる人物たちがやたらと存在感をアピールしているから。

    純文学の香気漂う「狐の香典」、「密会の岩」の糀屋五兵衛と安里に代表される飄々とした物腰は何とも堪らない。また他の作品から懐かしい顔が出ていたのも嬉しかった。

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    2018年08月05日
  • 煙の殺意

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    つまらない本は途中でまだ終わらないのかなとつい思ってしまいますが、面白い作品は永遠に続いてほしいと思わせる力があります。

    もちろん、本書は面白さ抜群です。

    文章も格調高いものからユーモラスなものまで様々なバリエーションで読んでいて作者の芸の深さを堪能できますが、私は特に「狐の面」が昔の興行師のだましテクニックと童話のような雰囲気を持った作品として印象深かったのでおすすめです。

    文庫本解説の澤木喬氏の文章もよかった、これだから文庫本はお得ですよね。

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    2018年06月21日
  • 湖底のまつり

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    ネタバレ

    濡れ場の美しさ、語彙の豊富さに感嘆。
    勉強になります……

    ミステリーとして「エ?あ?」と惑わされる感覚は素晴しく、真相が見えるまではわくわくしながら読みました。

    が、どう考えても無理がある……
    残念……という感は拭えず。

    とはいえ、非常に美しい犯罪の光景、そして真実だとは思います。

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    2018年05月17日
  • 妖盗S79号

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    ネタバレ

    ルパン並みの手際で次々お宝を盗んでいく怪盗S79号と、追いかけるポンコツ警察官コンビ。
    時折出てくる連続女性殺人鬼や、次々襲ってくる相続税でどんどん貧乏になっていく二宮の事情などがどう絡むのかと楽しみにしていたのだが、結局肩透かし。
    怪盗が捕まらないのは仕方ないにしても、こんな短絡的であっさりした結末では大団円と言われてもスッキリしない。
    東郷警部もこんな形でお膳立てされた花道で満足なのかなぁ。あれだけS79号に執着していたのに。
    泡坂さんだからコメディの中にも色んなからくりがあるものと期待していただけに残念。
    それぞれの盗みの話の中にドラマがあったものもあったけれど。

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    2018年04月26日
  • 迷蝶の島

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    思い違いから百々子、桃季子と三角関係になってしまった達夫。桃季子をセイリングに誘い海上で殺害を試みるが、桃季子は漁船に救助され、達夫は無人島で木に宙吊り状態で首を切られ発見された。達夫が残した手記、桃季子と百々子の証言は微妙に食い違いが…。やがて、桃季子も死体で発見される。達夫が無人島でいるはずのない桃季子を見るなど、面白い仕掛けもあるが、全体を通して土ワイの雰囲気が漂い、読み応えとしては残念ながら物足りなかった。1980年出版の復刊。

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    2018年03月10日
  • 妖盗S79号

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    たいへん泡坂節の作品で満足。連作短編集なので、ドラマを観ている気分で、1作読んでは休憩を入れて堪能しました。(連続で読むと、毎度恒例の紹介文なんかがちょっとくどく感じるところがあるので、1作1作新鮮な気持ちで楽しみながら読みたくて)
    忘れた頃にたまに出てくる連続猟奇殺人事件をどう絡めるのかワクワクしながら読み進めまして、ラストの大宴会までああ持って行ったかと、泡坂流トリック楽しみました。

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    2018年01月19日
  • 湖底のまつり

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    ネタバレ

    序盤の詩的な表現が、少々読みづらさを感じさせるものの、後半になるにつれて表現も平易に。

    時間的なズレが感じさせるミステリーな展開は、引き付けられました。
    あの人が暗躍してるのか、いやあの人か、というドキドキもありました。が、この結末はちょっと無理があるなと。

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    2017年11月13日
  • 湖底のまつり

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    傷ついた心を癒す旅に出た香島紀子は、山間の村で急に増水した川に流されてしまう。
    紀子は、埴田晃二という男に助けられ、その夜結ばれるが、翌朝晃二の姿は消えており、晃二がひと月前に殺されたと知らされる。
    昨夜の男は誰だったのか?
    様々な人間が複雑に絡み合うミステリー。

    本屋のPOPで、「衝撃のラスト!予備知識をつけないで読んでください」的なことが書いてあって気になって購入。
    ある意味衝撃のラストだったけど、ミステリーというよりも、文学的というか幻想的というかなんというか…。
    ライトなミステリーでは無かったかな。

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    2017年10月02日
  • 折鶴

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    まだよく理解していない作家。個人的には2冊目。

    前回は玩具職人の薀蓄を絡めた殺人事件の推理という話だったが、こちらの短編ではなかなか事件らしい事件が起こらないので、読んでいく重心をどこに取れば良いのかなかなか悩む。

    とはいえ、蒔絵師に浄瑠璃、染師、縫箔(ぬいはく)師などという、江戸の技術の職人の世界や古典芸能を軸足にしてるんだなというところはよくわかった。

    4篇納められているが、真ん中2篇は結構印象は薄い。最近の小説に慣れすぎているので、専門知識と散文的な会話を元に、本当に純文学をやられるとついて行けずに「もう終わり?」となるのだな。落ちるポイントはわかりやすいけれども。

    しかし、この

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    2017年07月11日
  • 湖底のまつり

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    失恋を機にある山奥の村を一人訪れた紀子は、川で溺れそうになった所を一人の若者に助けられ、彼の持ち家である空き家で一夜を共にする。
    翌朝姿を消したその人・晃二を探すが、彼は一月前に毒殺されていた。
    紀子が出会ったのは誰なのか。晃二は何故死んだのか。恋い慕う人を求めて突き進んだ先に何があるのか。
    全般に散りばめられた官能的な描写が、眩暈と共に作者が描く騙し絵の中へと誘ってくれる。

    今読むとどうしても時代の差を感じるけれど、お陰で閉鎖的な雰囲気と狂気の香りが増している。
    章が変わる毎に驚き慌てて前章を読み返すのを繰り返し、まさかないだろうと早々に否定した予測をまさかの力技で実現されてしまった…。

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    2017年06月20日
  • 湖底のまつり

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    ストーリー展開は面白い。
    時や人物がシンクロして不思議な感覚になる。
    また登場人物が話の中で繋がっていくのも上手く練ってあると思う。
    ただ男女の絡みの描き方が官能小説じみていて読み心地がよくない。
    その時代的な物なのか、作家の年齢的な物なのか分からない。
    以前に「乱れからくり」を読んで面白かった印象があったのでいつか読み直してみたい。

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    2017年06月19日