泡坂妻夫のレビュー一覧
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青銅色の鐘楼を屋根に頂く大正時代に創設された精神病院。
警視庁特殊犯罪捜査課、海方惣稔(うみかたふさなり)は、連続毒殺事件の予兆を嗅ぎ取り、潜入捜査を始める。
海亀の亀さんこと海方刑事と部下の小湊くんが活躍するシリーズ第2作。
レビューの冒頭で『潜入捜査』とカッコイイことを書きましたが、じつは亀さん、へその手術のついでに暇になったので精神科に転院し、仕事をさぼるため事件をでっち上げ、さらに暇つぶしに小湊くんを呼び寄せただけというユーモアミステリ仕立て。しかしそれが次第に本当に事件に発展して行き...
世界銀行総裁を名乗り病院内通貨を大量発行するおじさんや、神の不在を数学的に解明したという露 -
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泡坂妻夫の妙技を凝らした品々を堪能する、傑作短編を八編収録。
つくづく「泡坂さんはホワイダニットの作家さんなんだなぁ」と思った短編集であった。
なぜ、犯人はそのような犯行をしたのか? なぜ、そういう行動を取るに至ったのか?
ここらへんの心理的ロジックを描かせると、泡坂さんの筆は冴えに冴える。一見突飛過ぎるロジックも、不思議と動機としてしっくり来るのだ。まさに、「こんなの現実にはありえない」とわかりつつ、その「騙し」を堪能するトリックアートのような、めくるめく騙し絵の世界である。
この短編集のうち、ホワイダニット作品の白眉はやはり「紳士の園」と「煙の殺意」だろうか。読んでいて、泡坂さんのデビ -
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これはおもしろかった。
内容も内容で面白かったけれどそれ以上に言葉の遊び方に感動した。こういう風な文章を書く方っていうのは語彙力が凄まじいんだろうなぁ。
ちなみにこの小説、タイトルや小見出しだけでなく書き出しと結びの一文も回文になってます。すごいな!
概略
アルコール浸りの落ちぶれ奇術師七郎は、動く一大娯楽場〈ウコン号〉の処女航海でさえない腕前を披露することになった。
紹介されたアシスタントを伴い埠頭に着いたところが、出向前から船内は何やら不穏なムードに満ちている。
案の定と言うべきか、初日直前の船内で連続殺人の騒動が持ち上がり、犠牲者には奇妙な共通点が見出され……。
章題はすべて回文、「台 -
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奇術、猛獣使い、アクロバット、危険術と、バラエティショウを一杯に詰め込んだショウボート。
港々を回航しながら興業をうっていこうという趣向だ。
ところが初日を明後日に控えて殺人事件がおこったのだ。しかも連続殺人が・・・。
そのうえ被害者には奇妙な共通点があった。
回文の名前をもつ―つまり上から読んでも下から読んでも同じ名前になる人物が、次次と殺されていったのだ・・・。
初泡坂作品。
ずーっと気になっていたのですが、残念ながら今月鬼籍にはいられてしまわれました。
一人追悼特集です。
タイトルも各章の章題もすべて回文、作中にも多くの回文が出てくるという知己にあふれた作品。
泡坂さん自身も奇術を愛 -
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ネタバレ輪廻転生をテーマに、前世で恋人同士だったと信じる男女の恋愛物語から幕を開けます。
二人はあらゆる場所で、あらゆる人から、物から記憶から、二人の前世からの繋がりを証明していきます。
が、そこで突然殺人事件が起きます。
それまでの幻想的な雰囲気や、不可思議な証拠の数々が一気に別の真実をあぶりだしていく怒涛の展開が凄まじいです。
悲しくきれいで、夢のような愛の物語を見ていたのに、突然リアルで厳しい現実に引き戻されるようです。
「どこかで、お会いしましたね?」という魅惑的な言葉の謎が最後まで残っていましたが、真実がわかったときには「そこであったんかい!」と突っ込まずにはいられませんでした。