泡坂妻夫のレビュー一覧
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ネタバレ面白い!
マジシャンとしても有名な作者の奇術トリックを駆使した短編集。曽我佳城シリーズのみを文庫本2冊にまとめた企画本《秘の巻》。
作者の裏芸(?)が素材なので、まさに水を得た魚のような筆運び。長編でも「乱れからくり」「斜光」など傑作ミステリーをものにしていますが、「煙の殺意」などの短編集も適度に力が抜けていていい。
例えば、本書の「剣の舞」に見られる話の転がし方はもはや名人芸。また、「カップと玉」に出てくる【数当てカード】は事前に作っておけば、何かと余興に使えそう。そんな楽しく完成度の高い短編が11作収録とお得感満載。
実はこれ、文庫本として発売された2003年に2冊一緒に購入したのだが、何 -
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ネタバレ解説
解説によれば、本作は泡坂妻夫のノンシリーズミステリとして、『煙の殺意』や『ゆきなだれ』という短編集と同時期に発表された作品が集められており、異なるカラーの作品をグラデーション的につなぎ、ロジックとトリックに彩られた作品群が収録されている。
雑誌の犯人当てとして発表された「ダイヤル7」は、犯人が警察官であるという意外性が特徴だが、ミステリとしてのロジックの完成度はそこそこといったところ。犯人を指摘する決め手は一応あるものの、他の可能性を完全に排除できるほどの論理性には欠ける。
他の作品も、緻密なロジックというよりは、チェスタートン的な論理のアクロバットや意外性に焦点が当てられている。 -
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創元推理文庫版で発売されたのが2001年なので、てっきり新しめの作品集なのかと思いきや、1976~79年と『亜愛一郎』シリーズと同じ時期に執筆されたものであるとともに、元のそれが入手し辛くなったことからの発売かもしれないと知り、内容に好みはあるかもしれませんが、ミステリファンならば、一度読んでおいて損はない作品だと感じました。
本書には、それぞれに趣の異なる8つの短篇が収められており、当時の時代背景も反映されているかもしれないと感じたのは、これまで私の中で抱いていた、泡坂妻夫に対する人柄の良さを思わせるイメージとは真逆のそれであり、それは人間には良いところも悪いところもあるのだろうなとい -
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ネタバレ米澤穂信がおすすめしていた作家であり作品だったので読んでみた。
三角形の顔をした老婦人がたびたび出てくるのはモブの使いまわし的な、ただの遊び心の表れだろうか。
「DL2号機事件」
大きな地震があったら近いうちにはまた起きないだろうと考える心理に初めて触れて面白かった。それで殺人まで起こそうとするのは異常だけど、異常だから殺人まで犯すのはわかってしまう。
これをデビュー作にするの、犯人の心理に興味がありますって感じで面白い。トリックじゃないんだな。ハウダニットよりホワイダニット派ってことかな。
「右腕山上空」
そう思ったらちゃんとトリックの話だった。
塩田がたくさんの女性と結婚し離婚しなが -
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当初、読みたいと思ったのは「しあわせの書」だが、ガンジーシリーズの第1作であるこちらを優先。
表紙の絵から ヨギ ガンジー は、いかがわしそうな奇術師で、インチキ臭い感じがプンプンしてる。
表紙の絵では「名探偵」と書かれたターバンを巻いているが、しあわせの書では「迷探偵」生者と死者では「酩探偵」と変化するそうだ。
ふざけた野郎だとガンジー像を作って読み始めたが、意外と真面目と言うか癖がなかった。
このへんは亜愛一郎も同じで、主人公のキャラで遊ぶのはほどほどにして、トリックの内容をきちっと語らせることに徹している。
さて、その肝心の作品内容だが、
最初の「王たちの恵み<心霊術>」の謎解きから -
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本名:厚川昌男(あつかわまさお)で、筆名:泡坂妻夫はアナグラムだった。
どうやら「あ」にこだわったようで、デビュー作「DL2号機事件」の主人公の名前を「亜」にしたようだ。
謎解きの語り口は理路整然としていて"刑事コロンボ"を思い出した。
「亜」は自称カメラマンのようだが、なぜか事件現場に居合せ謎解きを語る役回り。
人間の思考の癖とその思考に基ずく行動を推理したり、思考パターンを逆手に取った行動に注目したりして、真相解明するのは手品の仕掛けをばらすようで面白い。
背が高くてハンサムで力持ちらしいのだが、カッコイイという感じはなく、少しすっとぼけている印象が強い。
戦争 -
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ネタバレ生誕90年記念出版の第4弾か? 初版は1979年に幻影城から刊行された、故泡坂妻夫氏の第1長編である。新装版刊行を機に手に取った。
奇術師の顔も持つ泡坂氏だが、本作のテーマはずばり奇術。奇術師としての経験と知識が存分に活かされている。奇術を嗜まない自分にはわからないが、解説の相沢沙呼さんによると、作中の奇術師たちの描写は、大変リアルだそう。
アマチュアの奇術クラブによるショウが市民会館にて行われていたが、トリを飾る奇術で、仕掛けから出てくるはずの女性メンバーが姿を消した。彼女はアパートの自室で死体となって発見された。周囲に散乱していた小道具には共通点が…。
このショウが実にグダグ -
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「泡坂妻夫」の長篇ミステリ小説『湖底のまつり(仏題?:La Fete Du Seraphin)』を読みました。
ここのところ国内ミステリ作品が続いています… 「泡坂妻夫」の作品は、『夢裡庵先生捕物帳』以来なので、1年ちょっと振りですね。
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●「綾辻行人氏」推薦──「最高のミステリ作家が命を削って書き上げた最高の作品」
傷ついた心を癒す旅に出た「香島紀子」は、山間の村で急に増水した川に流されてしまう。
ロープを投げ、救いあげてくれた「埴田晃二」とその夜結ばれるが、翌朝「晃二」の姿は消えていた。
村祭で賑わう神社に赴いた「紀子」は、「晃二」がひと月 -
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『ダイヤル7をまわす時』の解説で、櫻田智也さんが『煙の殺意』に言及していた記憶があったので、読んだ。(櫻田さんがどんな言葉でこれを紹介していたか失念した。あとで確認したら追加するかもしれない。)
必ずしも「事件→誰かが謎を解く」という構造の話ばかりではなく、最近読んだ岩波少年のホラー短編集とか、ウェストール短編集(こちらはホラーと銘打ったものではないが一応ホラーやスリラーが得意な作家とされている)のような、ちょっと不思議なぞくっとするお話集になんとなく読み心地が似ていた。
色気と、ユーモアと、トリック愛とは変わらず、短編集全体としてもバラエティ豊かで、とても良かった。
以下、備忘メモ