泡坂妻夫のレビュー一覧

  • 乱れからくり

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     隕石の衝突による死亡事故という突飛な掴みから始まるミステリーで、玩具会社『ひまわり工芸』の関係者一族を襲う連続殺人と一族が抱える謎、『ねじ屋敷』と呼ばれる奇妙な館と巨大迷路、女探偵&新米助手のコンビ、多彩な玩具の蘊蓄など王道でありながら読者の意表を突くフーダニット、ハウダニットに思わず引き込まれた。

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    2026年05月06日
  • 湖底のまつり

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    ネタバレ

    なんだこれは。騙し絵...騙し絵...騙し絵か...。当時コレを読んでいた人たちよく怒らなかったな(知らないけれど)。やっぱりこの先生の物語は美しい。百合が美しいというのもあるけれど、世界が美しいなと思う。通学中の車窓に表紙のような景色が拡がる季節に読めて良かった。

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    2026年05月01日
  • 写楽百面相

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    ネタバレ

    いつの時代も正体不明の謎を暴くというのはワクワクするものである。たとえそれが事実であろうとなかろうと、そこはフィクションであり、読者を納得させてしまえば作者の勝ちである。
    この作品は東洲斎写楽という、有名で、その実、誰も正体を知らないというミステリアスな人物に焦点を当てている。
    誰が写楽なのかは、そこに至るまでを思えばずいぶんあっさりと明かされるのだが、この物語の軸には写楽が誰かという以上に、主人公の一途な思いが置いてあることで、読者もつい引き込まれてしまうのだ。
    ただ一点だけ、自分の不勉強なせいもあり、何度も知らない言葉に出会うので、携帯片手に調べながら読む方が、より理解が深まると思われる。

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    2026年04月13日
  • ヨギ ガンジーの妖術(新潮文庫)

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    ドイツ人×ミクロネシア人×大阪人の混血のヨギガンジー。
    どの話も謎や超常現象を手品のネタバラシ的な感じで解決していく形。

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    2026年02月28日
  • 夜光亭の一夜 宝引の辰捕者帳ミステリ傑作選

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    ネタバレ

    宝引きの辰シリーズの傑作選。このシリーズは語り手がお話毎に変わり、主人公である辰があまり目立たないのが特徴かな。それでもシリーズが進むにつれて個性が出てきたり娘のお景や子分たちが良い感じになったり楽しめるシリーズ。表題作の『夜光亭の一夜』では泡坂妻夫の別のシリーズ探偵の先祖と思われる人物も登場したりして楽しめる。やっぱり全集的にして全部読めるようにしてほしいな。1冊だけ単行本しかないし。

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    2026年02月11日
  • 横丁の名探偵 犯人当て小説傑作選

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    自分で犯人を推理するのは苦手だけど、こういうスタイルの小説は好き。
    今回のアンソロも、どれも面白かった。
    まさに、帯にあるとおり、「貴方も必ず騙される」
    落語調の仁木悦子さん、亜愛一郎シリーズの泡坂妻夫さんにと豪華ラインナップも嬉しい。
    特に、泡坂作品にはのけぞった。まじかーー。
    ということで、『ダイヤル7』が収録の『ダイヤル7をまわす時』を引っ張り出して読み始めることに。

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    2026年01月10日
  • 妖女のねむり

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    ネタバレ

    これはすごかった。これはミステリなのか!?解決できるのか!?と思って読み進めたけどしっかり解決された。これは全然わからなかったなあ。終わり方がなかなか切ない。

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    2026年01月05日
  • 煙の殺意

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    ネタバレ

    おもしろかった!スピーディーに読めた。短編ミステリだと、最後にどかんと返されたりして楽しい。美しいと言われていた「椛山訪雪図」ついに読めた。なるほど美しい。名前もきれい。「紳士の園」「閏の花嫁」好きだったな。「紳士の園」は出所したふたりの会話がなんだか好きだった。「閏の花嫁」みたいな書簡体小説結構好きみたい。

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    2026年01月05日
  • 妖女のねむり

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    ネタバレ

    結構ボリュームのある文庫だったがスイスイ読めた

    輪廻転生モノと知っていたらやや尻込みしてしまうところだったが、前情報なしで楽しめた

    中盤の急展開から、現実と幻想のヒロインが入れ替わる結末が見事です

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    2025年12月14日
  • 煙の殺意

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     男女の恋愛模様、一幅の掛け軸、なんの変哲もない公園、殺人現場での風変わりな捜査など様々な趣向を凝らしたミステリーが八編収録された短編集で、筆致豊かな人物描写と情景描写、読み手の思い込みを利用したトリックの数々が今読んでも色褪せない名作だと感じられた。

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    2025年12月09日
  • 乱れからくり

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    ネタバレ

    トリックあり、恋愛あり、冒険活劇要素ありの贅沢な傑作。
    犯人は冒頭で運悪く死亡するが、その後に起こる殺人はすべて犯人が事前に仕込んでいたからくり殺人だった。
    冒頭の事故はなんと隕石が突然降ってくるというギャグみたいな展開。あまりに非現実的すぎて、夢と現実が混ざっているのでは?と少し勘ぐってしまったほど。
    文章がかなり上手く、物語の中に自然に伏線を溶け込ませる技巧やホワイダニットが鮮やかであることは連城三紀彦を思い出したし、解説の阿津川辰海も同様のコメントをしている。そして阿津川という名字が泡坂妻夫の本名厚川から取られていることを今さら知る。

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    2025年12月07日
  • 妖女のねむり

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    ミステリの面白さを味わえる作品です。
    輪廻転生というのを背景に細かい伏線を貼りながら驚くほど丁寧に回収するさまはさすが。

    3007冊
    今年235冊目

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    2025年09月08日
  • 迷蝶の島

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    ネタバレ

    マジでやられたミステリー・リスト作品

    主人公視点、捜査視点、ヒロイン視点の3章構成が面白い

    結論から言えば見事にやられた
    日付けのトリックはイマイチだが、ヒロインが死に至った真相と深い余韻が良かった

    ヨット用語が頻出して状況描写がイメージし難い、遭難してから手記を書き始めるまでの10日間の空白期間は読者にとってミスリード(ヒント)で済むが、捜査側として看過できる日数では無いのでは?
    という難癖をつけて星4つ

    ※岩に血液が付いていたのが謎、とのレビューを拝見しましたが129ページ10行目に伏線というか正解が書いてあります

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    2025年08月30日
  • 湖底のまつり

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    同じようで少し違う。どこか落ち着かない奇妙さと謎を残しながら進んでいく物語。
    解説にあった通り、まさしく「騙し絵」のような作品だった。
    事前に感想を見てしまったことでトリックに勘付いてしまったのが勿体なかった。

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    2025年04月09日
  • 乱れからくり

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    物語を読み終わったとき、あるいは物語の最中にタイトルの意味についてその秀逸さを知って驚くことが多々あるが、本作「乱れからくり」もそういった秀逸さが際立った作品と言えよう。

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    2025年03月20日
  • ダイヤル7をまわす時

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    悲劇的な事件も、語り手の妙によってユーモラスに描かれる短編集。不思議と物語に味わいがあります。表題作と「芍薬に孔雀」がおそらく2トップですが、亜シリーズから嵌った身としては「広重好み」も外せません。

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    2025年02月25日
  • 奇術探偵 曾我佳城全集 秘の巻

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    ネタバレ

    面白い!
    マジシャンとしても有名な作者の奇術トリックを駆使した短編集。曽我佳城シリーズのみを文庫本2冊にまとめた企画本《秘の巻》。
    作者の裏芸(?)が素材なので、まさに水を得た魚のような筆運び。長編でも「乱れからくり」「斜光」など傑作ミステリーをものにしていますが、「煙の殺意」などの短編集も適度に力が抜けていていい。
    例えば、本書の「剣の舞」に見られる話の転がし方はもはや名人芸。また、「カップと玉」に出てくる【数当てカード】は事前に作っておけば、何かと余興に使えそう。そんな楽しく完成度の高い短編が11作収録とお得感満載。
    実はこれ、文庫本として発売された2003年に2冊一緒に購入したのだが、何故か今まで読まなかったのが本当に悔やまれる。この勢いで《戯の巻》へ突入。

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    2024年10月29日
  • 11枚のとらんぷ

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     奇術トリックを軸にした本格ミステリーで、奇術ショウの途中で起こった殺人事件が作中作の『11枚のとらんぷ』の見立てではないかという謎が終始不可解で最後まで気になり読み終えた。事件のトリックは勿論作中作の奇術のトリックも作者が奇術師なだけあってバラエティに富んでいたのも印象的だった。

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    2024年10月20日
  • 湖底のまつり

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    1978年。今から約46年前に連載された作品。当時、読む事が叶ったならば、今以上の衝撃を受けていただろう。脳を霧が浸し、脳に艶を残し、脳が眩暈を起こす、艶美な騙し絵の物語。

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    2024年09月23日
  • ダイヤル7をまわす時

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    ネタバレ

    解説
     解説によれば、本作は泡坂妻夫のノンシリーズミステリとして、『煙の殺意』や『ゆきなだれ』という短編集と同時期に発表された作品が集められており、異なるカラーの作品をグラデーション的につなぎ、ロジックとトリックに彩られた作品群が収録されている。
     雑誌の犯人当てとして発表された「ダイヤル7」は、犯人が警察官であるという意外性が特徴だが、ミステリとしてのロジックの完成度はそこそこといったところ。犯人を指摘する決め手は一応あるものの、他の可能性を完全に排除できるほどの論理性には欠ける。
     他の作品も、緻密なロジックというよりは、チェスタートン的な論理のアクロバットや意外性に焦点が当てられている。ミステリ小説としてのエンターテインメント性の高さは、さすが泡坂妻夫といった印象である。平凡な材料でも、彼の手にかかれば、思ってもみなかった味に仕上がる。それでも、どこか癖になり、楽しめる短編集だ。★4を付けたい。
    ● ダイヤル7
     懸賞付き犯人当て企画として書かれた短編ミステリ。応募総数は2,419通で、正解率は約7.5%と、かなり難易度の高いミステリとなっている。
     会場で犯人当てクイズとして出題されるという設定。塚谷という人物から依頼を受けた久能は、10年前に戸根警察署で共に働いていた仲だった。当時に実際に起きた事件をモデルに、犯人当てクイズを作成している。
     元暴力団幹部の狭間清が出所する。狭間はかつて北浦組に属しており、大門組の幹部を殺害して自首していた。彼の出所を快く思わない者も多く、さらに復讐を誓う人物もいた。
     事件が起きたのは夜8時頃の地震の1時間後。北浦組の組長・北浦達也が、心臓を一突きにされて殺害される。
     鍵となるのは、地震に気づいていなかった塚谷。地震により動いた時計を元にして時刻を確認し、117番にダイヤルした痕跡。そこから、地震の事実を知らなかった塚谷が犯人と見抜かれる。
     犯人が警察官という意外性や構成は見事。ただし、地震の不知が唯一の決め手というのは、やや論理性に欠け、公平性にも疑問が残る。本格としての完成度はそこそこだが、意外性と構成力は秀逸。★4
    ● 芍薬に孔雀
     アメリカでカードの扱いを覚えた老人・重円太郎が、ガールフレンドの駒さんとともに四国の金刀比羅宮へのツアーに参加する。ツアー中、刑事の武田夫妻、元教師の関口夫妻と親しくなる。
     幻のカード「ビーコック(ピーコック)」が関口夫妻のトランプに含まれており、重円は強く欲しがるが、譲ってもらえない。
     その後、関口が殺害され、口にはビーコックのカードが。犯人は重円かと思われたが、真犯人は武田刑事だった。ビーコックは、かつて交通事故で亡くなった武田の息子の遺品であり、加害者が関口だと疑っていたのだ。
     決め手となるのはダイイングメッセージのカードの選択。もし重円が犯人なら「10円玉」をくわえていたはずという逆説的推理。そして、カード「ダイヤの4」=「ひし形」→「武田菱」の連想で真犯人に至る。
     伏線回収の巧みさ、カードにまつわるうんちく、そして意外性ある刑事犯人という展開。泡坂らしさが光る完成度の高い短編。★4
    ● 飛んでくる声
     団地で同居する石浜と真島。向かいの棟から不思議と聞こえてくる夫婦の会話。やがて殺人事件が発生し、目撃者である石浜は、同居人の真島に事件の話を打ち明ける。
     しかし、事件の真相を推理していたのは石浜だけではなく、彼が家庭教師をしている生徒・小佐藤もいた。小佐藤は真島が犯人だと見抜き、警察に通報する。
     決め手となるのはカーテンの柄の形状。外から見ると「9」に見える模様を、真島は「p」と言った。つまり内側から見たことがある=部屋に入ったことがある=犯人、という論理。
     構造上の偶然やご都合主義的な点も否めないが、ベランダ越しに声が聞こえるというユニークな設定を活かし、同居人が犯人という意外性を成立させている。★3
    ● 可愛い動機
     ある人物が「千衣子」という女性について語る短編である。語り手が何者なのかは、物語が進むにつれて少しずつ明かされていく。
     千衣子はかつて、生命保険をかけた夫を殺害した容疑で逮捕され、裁判を受けるが、証拠不十分で無罪となった。
     語り手は、千衣子の中学・高校の同級生。当時、千衣子は小柄で体操部で活躍していたが、母が若い男に夢中になって家を出ていったことをきっかけに、太り始める。
     語り手が点滴を受けている描写から、現在は入院中であることが分かる。
     千衣子は誠志という男と見合い結婚し、1年後にその夫が死亡。語り手が記者であることがここで明かされる。
     裁判では、千衣子の浮気相手・力武の存在が発覚するが、彼女が隠していたのは、不倫そのものより、母への怒りと恥じらいによるものだった。
     語り手は、裁判で無罪となった千衣子と再婚していた。物語のラストでは、彼女が語り手と共に車で港に向かい、海に飛び込む。動機は「痩せるため」。前回の勾留中に痩せた経験から、再び痩せようと考えていた。
     語り手が千衣子の過去を語りつつ、彼女の内面や動機が見えてくる構成。痩せるために殺人を計画するというたわいもない真相だが、語りの巧みさと構成の妙で印象に残る。★3の上位。
    ● 金津の切符
     主人公・箱夫は、父の影響で蒐集趣味を持つようになる。子供時代から父の仲間たちと接するなかで、蒐集とは何かを考えるようになる。
     「大量で美しいものを集めることが本質」と悟った箱夫は、国鉄の全乗車券収集に取り組む。幸福駅ブームの15年前の設定。
     25年をかけて集めきった頃、テレビ取材も入る。その直後、小学校時代の友人・角山から連絡が入り、自分の方が完全なコレクションを持っていると見せつけられる。
     角山が職権を利用して切符を手に入れていたこと、自分の収集を小馬鹿にする態度から、箱夫は殺意を抱く。道路工事の音に紛れ、殺害を決行。
     1週間後、警察が訪れる。角山が「金津の切符」を盗んでいたことが判明。箱夫は角山と話したと嘘をつくが、角山は耳栓代わりにガムを耳に詰めていたため、会話は成立しなかった。
     その矛盾が決定打となり、箱夫は容疑者とされる。倒叙ミステリとして構成は丁寧で、蒐集にまつわるうんちくも面白い。
     ミスの描き方、決め手の小道具としてのガムもユニークで、泡坂らしさがある。完成度の高い倒叙ミステリ。★4
    ● 広重好み
     多希、靖子、珠美の3人の社長秘書が、旅行で旧東海道を歩く。珠美は「広重」という名前の人物に縁があるように語っており、小学生時代の初恋相手・杉山広重、大広重というミュージシャンのファンなど、様々な「広重」を語る。
     同じ会社の人事課にいる内田広重と親しくなった珠美。多希は珠美の語る杉山広重が実在するのか調べるが、実際は全く好感の持てない人物で、珠美が書いた社内報のエピソードは誇張されたものだった。
     結局、珠美は内田広重と結婚する。利夫は気づく。珠美は最初から内田広重に好意を持っており、「広重」という名前に縁があると思わせるように仕向けていた。
     ミステリ的な意外性は強くないが、全体として構成が緻密で読み心地がよく、泡坂妻夫らしい技巧が光る。★3の上位。
    ● 青泉さん
     舞台は喫茶店「ピカール」。主人公と怜、彫金師・糸尾、画家志望のシーソーらが集う場所に、「青泉」と号する洒落た男が現れる。アトリエや画材、コスチューム、パイプなど、すべてを本格的に揃えた彼を皆が尊敬する。
     ただし、シーソーは彼をライバル視していた。青泉が殺害され、疑われたのはシーソーだったが、雪の日に足跡を残した犯人が空き巣の常習犯と分かり、彼は無実と判明。
     最大の謎は青泉の正体。彼は絵を描いたことがなく、実は製薬会社の宣伝部長。パッケージデザインに携わり、まず形から「画家らしさ」を極めていったという人物だった。
     主人公は青泉から「学びたいという気持ちを大切にしろ」と教わり、だらけた生活から立ち直り、怜と結婚する。
     ミステリというより、人生寓話的な一編。事件は起きるが、フーダニットではなく青泉さんは何者なのかという謎が中心。構成は巧みだが、ミステリとしての意外性には欠ける。★3

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    2024年09月16日