• 妖盗S79号
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    泡坂さんと言えば「亜愛一郎シリーズ」や「曾我佳城シリーズ」と言った連載ものが有名ですが、本作も連載ものとなっており、ただタイトルからも分かるように主人公は捕まえる方ではなく、捕まえられる方となっております。また主人公の正体や目的が明かされるのは結末の章となっており、途中までは多分この人が妖盗S79号なんだろうなという記述はあるのですが、名前や性別がはっきりしなかったりと謎のままで話が進んでいき、この為どちらかと言えばS79号を捕まえる側の専従捜査班二人のコミカルな描写の方が印象が強い作品となっております。

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    2022年02月24日
  • せんべろ探偵が行く
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    何とも意味ありげなタイトルなのですが「せんべろ」というのは単純に千円でべろべろになるまで酒を飲める店ということで、ただ連載時期が今から20年前とは言え、当時でも晩飯を食うだけで千円くらいはすぐ到達してしまいそうに思えるのですが、果たして千円でそこまで酒を飲ましてくれる店があるのだろうかというところが本作品の肝となっております。実際のせんべろ体験記は小堀淳さんの担当で、その合間にらもさんの酒に関するエッセイが挟まるという構成になっておりますが、その体験記の中にもらもさんは登場しており、小堀さんが書く客観的に見たらもさんというのも、らもさん本人のエッセイとはまた違った意味での面白さがあります。特に

    #笑える

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    2022年02月19日
  • しらふで生きる 大酒飲みの決断
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    大酒飲みだった町田さんが突然断酒をおこない、その断酒をおこなうに至る心境の変化とどのように断酒をおこなったか、またその結果どうなったのかという内容が克明に記録されている断酒日記でありまして、イメージとしては中島らもさんの「今夜、すべてのバーで」を想起させるのですが、読後感はかなり違っております。というのも読んでも読んでも町田さんが何故断酒に至ったのかという肝心な部分が上手く理解出来ず、断酒をおこなう為の方法(とは言ってもかなりぶっとんでるので本当に酒を止めたい人が参考に出来るとは思えないのですが)が長々と書かれておりまして、ただ終盤になってくると酒を止めたがためにこれだけのメリットを享受できた

    #笑える

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    2022年02月16日
  • 西方冗土 カンサイ帝国の栄光と衰退
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    中島らもさんの関西をお題としたエッセイ集でありまして、らもさんのエッセイといいますとそれだけで一種独特の味わいがあるのですが、更に関西というキーワードに特化されているのでありますから、それはただ事ではありません。今までに出会った不思議な関西人の紹介から始まり、テレビにも取り上げられたことがある謎の喫茶店のお話とか、奇妙奇天烈な内容が詰まっております。中でも個人的に好きなのは毎年色々なビジネスのアイデアをらもさんに持ちかけてくる広告代理店の社長さんのお話で、ある年はアフリカタニシの養殖を思いつき母貝を冷蔵庫に保管させられたり、またある年は謎のキノコ栽培を持ちかけられそのキノコを喰わされたりと散々

    #笑える

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    2022年02月14日
  • ネコの亡命
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    本作は椎名誠さんが週刊誌に連載されたエッセイをまとめたもので、時期的には30年近く前に書かれたものとなります。ただエッセイとは言いましても椎名さんがアクティブに行動されていた頃(今でも十分アクティブではありますが)のものですので、北海道の別荘で大雪と格闘するエピソードや、映画撮影でモンゴルに長期間滞在した際の記録などがメインになっておりまして、旅行記と呼んでもそれほど違和感はないと思います。それで表題作の「ネコの亡命」はタイトルだけ見るとスパイ小説みたいで何だか意味ありげですが、これもモンゴル滞在時のお話で単にモンゴルでは猫は働かない動物なので日本のように愛玩用の目的で可愛がられることはなく、

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    2022年02月12日
  • 花嫁のさけび
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    普通の推理小説が物語の中の登場人物同士による騙し合いなら、叙述型の推理小説は物語の作者と読者の騙し合いであるとよく言われますが、泡坂さんにはそういったレベルを超えて、物語の外で作者と読者が場外乱闘をしているといったそんな感じの作品があります。具体的には「しあわせの書」や「生者と死者」などはその凄すぎる仕掛け故に電子書籍に出来ないほどなのですが、実は本作にも詳しくは説明できないのですがそういった趣向が施されております。ただ前述の作品に比べるとそれが分かりづらく、読み終わった後に恩田陸さんの解説を読んで初めてその事実に気付くといったケースも多いかと思いまして(私もそうでした)、通常電子書籍ですと解

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    2022年02月09日
  • P+D BOOKS オールドボーイ
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    本作は色川さんの遺作となった短編集で、晩年に書かれた作品が10編収録されております。作品の主軸となっておりますのは、芹沢博文棋士の最期をそのまま実名で記録した「男の花道」や、かつての無頼仲間のその後を書いた「男の旅路」といった男シリーズでありまして、特に「男の旅路」は、賭博場で知り合った二人が客観的に見れば片方が片方を食い物にし続けていて、その食い物にしていた方が落ちぶれていた事実を、作者はもう片方の近親者に告げるも、そちらも同じような境遇に落ちていたという、救われないと言えばその通りなんですけど何というかこの作者でしか書け得ない内容となっております。また作者は阿佐田哲也名義でこの二人をモデル

    #切ない

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    2022年02月07日
  • カーテン
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    アガサ・クリスティー作品といえば、読んだことはないけどトリックだけは知ってるといういわゆるネタバレ率が高いことで有名で、恐らくは世界中で一番ネタバレされている作者と言っても過言ではないでしょう。本作もポワロ最後の事件ということで、色々なところでネタバレされていますが、ただ単純な犯人当てでもないので、犯人の名前だけ分かっても読後の衝撃度はそれほど損なわれないという内容ですので、そういった理由で読むのを躊躇されている方がいらっしゃいましたら、ぜひ読んでもらいたい作品です。この作品は発表こそクリスティーの晩年である1975年ですが、実際に執筆されたのは1943年ということで、出版をそこまで待ったのは

    #ドキドキハラハラ #ダーク

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    2022年01月08日
  • 南国かつおまぐろ旅(「椎名誠 旅する文学館」シリーズ)
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    椎名さんの数多いエッセイ作品の中でも、本作はかなり上位に位置するのではないでしょうか。中でも巻末での目黒さんとの対談でも取り上げられてます「クソまみれの人生」の回は外すことが出来ないというか、ただタイトルからも察することが出来るように尾籠な話なので詳しくは書きづらいのですが、要は電車での帰りに便意を催してしまうという内容です。ただ、週刊誌での著名な作家による連載ものなのですから、最終的には何とかなるんだろうなとそんな気持ちで読んでいると最終的に何ともならなかったという、下手な推理小説よりもどんでん返しが効いていて驚かされます。他の回もちょうど映画の製作と公開時期に重なっていることもありまして、

    #笑える

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    2022年01月03日
  • リフォームの爆発
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    タイトルの通り家のリフォームに対する内容なのですが、本作はリフォームに対する指南本とかハウツー本とかではなく、あくまでも作者自身が自宅のリフォーム工事を試みた際に発生した様々な出来事を綴っている私小説的なものとなっておりまして、まあこのタイトルですから将来的にリフォームをおこなう参考にしようと思って購入する人はいないでしょうけど、もしその目的でこの本を手にしたとしましたらその内容に面食らうことになるでしょう。最初にリフォームの目的についてそれらしく書かれてはいるのですが、何故かリフォームに関する見取り図というのかそういった図面の資料が一切載せられておらず、取り合えず台所が南北に長いというところ

    #笑える

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    2021年12月28日
  • 屋上
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    島田荘司さんが提言する本格ミステリーの定義として「最初に幻想性のある謎が提示され、最後にその謎が論理的に解決される」というものがありますが、本作で提示される謎は凄いです。何しろ自殺する理由などこれっぽっちも無い人たちが、その建物の屋上に水を撒きにいくと何故か次々に頭から飛び降りてしまうというものなのですから、尋常ではありません。その内容から「ロウモン街の自殺ホテル」や乱歩の「目羅博士」を想起させまして、それらの作品は実は秘密の抜け穴があったりとかファンタジー性の強い解決だったりとか、ちょっと本格ミステリーと呼ぶには厳しい内容なのですが(そもそもロウモン街の方は実話ベースなので仕方がないのですが

    #笑える

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    2021年12月20日
  • 99%の誘拐
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    誘拐ものに定評のある岡嶋二人作品の中でも特に傑作との評判の高い本作なのですが、筋立てとしましてはシンプルな犯人当て推理小説ではなく、割と最初の段階で犯人の正体がそれとなく分かるような書き方がされてまして、いわゆる倒叙スタイルのような感じで話が進んでいきます。とは言いましても犯人が完全に明示されてる訳ではなく、読んでいる内に多分そういうことなんだろうなと思いながらも、でもどうやってこれを実現しているのかというハウダニットの謎が積み重なっていくという岡嶋作品ならではの面白さがあります。また後半の身代金の受け渡しの為に高速道路をひた走ったりスキー場でのアクロバットな活劇シーンは映像化にも向いている感

    #ドキドキハラハラ

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    2021年12月17日
  • 新装版 瞬間移動死体
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    超能力と本格推理は相容れるのか

    西澤保彦さんと言えば「7回死んだ男」が有名ですが、本作品も同作と同じように超能力+ユーモア+本格推理小説という仕立てとなっております。
    で、どういった超能力かと言いますと、まあタイトルで一目瞭然かも知れませんが、実は主人公は瞬間移動が出来る訳でありまして、ただそんなことが出来るのであれば、アリバイなんか作り放題で何が起ころうがこいつが犯人に決まってるではないかと思われるかも知れませんが、そこはこの作者の書く小説ですので色々と捻りが効いてます。
    具体的には酒を飲んで酩酊状態でないと移動出来ないとか、移動先には裸で現れるとか、下手に移動したら2度と帰って来れない状況もありうる訳で、実に有難迷惑

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    2020年02月17日