あらすじ
新宿赤マントシリーズ第4弾が電子書籍で登場。改行を多くすることによってスピードと効率化を図る「改行改革」を唱えたり、山形県で馬に乗って馬上の感覚について考えたり、椎名誠がさまざまなことを考える人気エッセイ。
本作用に表紙イラストを椎名誠が描き下ろし。巻末には、「対談 椎名誠×目黒考二」「電子書籍版あとがき」「椎名誠の人生年表」を掲載。
<目次>
ガクとの再会
ふらふら越年日記
改行改革
料亭三昧
クソまみれの人生
白兵戦
べったら漬けの余裕
幕張メッセで不思議な宴
九州ジグザグ旅
群れの街シブヤ
重苦しい朝
南国かつおまぐろ旅
奥会津の山里で
新島クサヤ旅
夜の街三点セット
何もおこらなかった
春眠よいずこ
困ったものだ
奥会津だより その1
奥会津だより その2 パンツおまけ事件
奥会津だより その3 腹のへる村
突然熱との遭遇
死ね全国のクルマピカピカ野郎
死ね全国のアウトドアバカたちよ
いやなガキがふえている
祝刊行「日本のバカベスト100」
お盆にメッセで
一馬力のシアワセ
別府からのセーカン
嵐のまにまに
君は「ネギー」を知っているか?
怪奇ねむり男
大阪ふらふら記
羽田はバカになりました。
瀬戸内海カニ・エビ旅
温泉とヘルメット
秋空ラーメン旅
名古屋の偶然
松山でむなしい記者会見
あとがき
文庫版のためのあとがき
対談 椎名誠×目黒考二
電子書籍版あとがき
椎名誠の人生年表
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
赤マントシリーズ第4弾。週刊文春1993年1月14日号~11月25日号掲載分をまとめたもの。バブルが崩壊して浮ついた時代から次第に経済の縮小・停滞期へと向かっていく下り坂な当時の空気感が全体から伝わってくる。そんな中でも、銀座のクラブのママさんのひとこと「銀座のお店はもう半分ほどなくなってしまったのよ」にもっとも集約されているように思える。当時で半分なのだから、2014年現在の今は果たしてどうなっているのだろう?
白眉はなんといっても『クソまみれの人生』の巻。当時、週刊文春でリアルタイムに読んだ記憶がある。自分も同じような修羅場を何度も経験しているので、リアルに緊迫感・切迫感が伝わってくる。数えきれないほどある椎名エッセイのなかでも1位、2位を争う秀逸の1篇。この1本だけでも読む価値がある。
「秋風ラーメン旅」もリアルタイムで読んでいて、よく覚えている。富山県でたまたま入ったラーメン屋がズイマーだった話。これに尾ひれ背びれがついて、一部の読者に富山県全部のラーメン屋がズイマーだったような印象を与えてしまい、抗議がいっぱい来そうな。ちゃんと読めば、そんな悪意はまったくないことがわかるのにね。
何かに怒っている時の椎名誠エッセイは、初期のスーパーエッセイ時代を彷彿させとても面白い。しかし、何かがキッカケで抗議が殺到したりすると、書く方も慎重になってしまい、本来の面白さが薄まってしまう作品をその後読まされることになる。これは、あまりよろしくない傾向ではないかと息苦しさを感じ、少々ぐったりしてしまったのであった。
椎名さんの数多いエッセイ作品の中でも、本作はかなり上位に位置するのではないでしょうか。中でも巻末での目黒さんとの対談でも取り上げられてます「クソまみれの人生」の回は外すことが出来ないというか、ただタイトルからも察することが出来るように尾籠な話なので詳しくは書きづらいのですが、要は電車での帰りに便意を催してしまうという内容です。ただ、週刊誌での著名な作家による連載ものなのですから、最終的には何とかなるんだろうなとそんな気持ちで読んでいると最終的に何ともならなかったという、下手な推理小説よりもどんでん返しが効いていて驚かされます。他の回もちょうど映画の製作と公開時期に重なっていることもありまして、海外よりも国内での旅話が多く、それも昨日は沖縄、明日は北海道とまさに東邦西走しておりまして、そんな時代の空気も感じられる作品となっております。