千円でベロベロに酔える店を求め、中島らも率いる中年探偵団が全国を駆け巡るという、グルメとは対極にあるオヤジな一冊である。
安酒を飲みながらの中年探偵団のゆる〜い対談と中島らものコラムという構成になっている。
一人あたり千円が上限(上限を超えてしまう回も多々あり)であるため400円のつまみを頼んだ
...続きを読むだけで、揶揄されるという、トホホ感が素晴らしい。中島らもの真骨頂だ。
どの店も安い。例えば大阪・京橋の「岡室酒店直売所」は、おでんの五品盛り合わせが250円、天ぷらの五品盛り合わせも250円、サイコロステーキが350円、豚キムチが400円。値段もびっくりだが、大阪の店のコピー「安さにビックリ! 味見てコックリ!」、週末割引サービスの名が「あ金・土のサービスデー」と笑うに笑えない感じが輪にかけてチープだ。けど、いいなぁ、俺も混じりたい。
安さはもちろんだが、味も「昔お呼ばれに行った料理自慢のおばさんの味」と美味しい店や「うちは晩酌に毎日通ってもらうような奥様公認の酒場。お客さまに喜ばれるお茶の間のような店でありたい」という良心的な大衆酒場も紹介している。
紹介されている店の中で一番行ってみたくなったのは、金沢の川魚料理の店「かわべ」。酒は客が持ち込まなければならないが、出てくる料理が凄い。前菜にニジマスの唐揚げと佃煮、アナゴの燻製。で、ヤマメの塩焼きを酒、酢、醤油のタレに漬け込んだもの、蘭の酢の物、ニジマスのヅケなどなど。これら地の利を活かした料理で、4人で五千円。たまらん。読んでるだけで、腹が減ってくる。酒が飲みたくなってくる。
で、紹介されている店の中に俺が大学時代よく飲んだ福岡・天神の角屋という立ち飲み屋が紹介されていたのが、嬉しかった。
最近物騒でダークな本ばかり読んでいたが、これはサクサクと楽しく読めた。中島らも、やっぱりいいなぁ。