あらすじ
妻に苛められることで愛を確認するヒモも同然の婿養子。何を言われても耐えられたが、どうしても許すことの出来ない一言を妻は口にしてしまう。愛は憎悪に変わり、男は自分の「ある能力」を駆使した殺人計画を練る。だが、事態はまったく予期せぬ展開を見せる――。『七回死んだ男』『人格転移の殺人』と並ぶ、西澤ミステリの傑作が新装版になって登場!(講談社文庫)
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
こんな本格ミステリなのに、ある能力をアリバイトリックに使うとは大胆不敵な西澤保彦氏。そしてそのある能力の欠陥が故に見事に着地点に。もうこれは一気読み必至の本格長編パズラーの傑作。
気弱でヒモで無気力なマゾヒストでありながら、不純な動機で密かに作家を目指す、長男なのに婿養子が主人公。この夫の視点で物語は進むのだが、どこで何が起こったのか最後まで分からない。殺人現場はロサンゼルスで自分は東京に。完璧すぎるアリバイ。そんな緻密で論理的なはずの計画にイレギュラーが。何故か見知らぬ白人男性の死体が現れる。
とても満足な作品でした。
Posted by ブクログ
超能力を題材とした本格ミステリ。
超能力なのに本格って言っていいのか知りませんが、そういう風に言われているし、実際読んでもそんな感じ。
コメディ的でもあり、非常に下らないけと、楽しく読める作品。
Posted by ブクログ
主人公にひどく親近感がわいて仕方ない作品だった。前半だけでもう自分には忘れられない作品。これまで物語に触れてきて、親近感を覚えたキャラはいくつか存在するが、その中でもトップ3に入るレベル。
さらには、主人公の嗜好が自分と似ているだけでなく、真相まで自分の嗜好ど真ん中だった。
もう好きと言わざるをえない。
あと、チョーモンインシリーズの保科さんと、今作の主人公の姿が、まるで表裏の関係のようだった。
p332の夢の再生について語りながら、そうして行き着いた物語の最後の言葉は、ただ哀愁。
Posted by ブクログ
期待が高かっただけにもう一つ惜しいというのが正直な感想。
登場人物の背景や能力の説明にページが割かれすぎな感もあり、事件に本格的に足を踏み入れるのが少し遅い。
解決編は意外性こそ大きいのだが納得かと言われると微妙。たぶん、被害者は全くの勘違いで401号室に入った、つまり直接的には登場人物らとは結局なんの関係もなかったというところが引っかかってるんだと思う。偶然の連続により事件が思いもよらぬも方向へ…というのはいいんだけど何の繋がりもない偶然が割り込んでくるといまいち納得できないのかなあと思いました。
また、恋愛模様も自分好みではなかったのも不満の要因の一つ。『七回死んだ男』『人格転移の殺人』も事件を乗り越えて愛情が深まったりしてるんですよね。今作では奥さんとの仲が結局微妙なまま終わってるんじゃないのかっていうのが心残りです。
Posted by ブクログ
ロスにいる妻景子を殺すため、日本からテレポートしてアリバイ完璧なはずだった和義。しかしロスにテレポートしたらあれれな展開に。
ベースはコミカルなSFミステリ。オチのところで景子、和義、妹・玲奈、景子の愛人通訳・波多野、景子の秘書・美智代のドロドロ感が噴出。
殺されたマット・カミングスが凶悪そうだけどなんか不憫。
テレポートの副作用(酒飲む、裸になる、行き先の物と入れ替わる)が上手いこと絡み合ったオチも良い。
パスポートはそういうことね、確かにと納得!
Posted by ブクログ
まず特殊設定の作り方が上手い。
ただ"瞬間移動ができる"というだけではなく、移動すると裸になってしまううえに、移動先から元の場所へ何かが送られてくる。また、主人公は超がつくほどの下戸だが、酒を飲まないと能力を使えない。
そしてこの移動のための条件があるからこそ見事なロジックが出来上がっている。やはりこういうロジックがしっかりしている作品は面白い。
超能力と本格推理は相容れるのか
西澤保彦さんと言えば「7回死んだ男」が有名ですが、本作品も同作と同じように超能力+ユーモア+本格推理小説という仕立てとなっております。
で、どういった超能力かと言いますと、まあタイトルで一目瞭然かも知れませんが、実は主人公は瞬間移動が出来る訳でありまして、ただそんなことが出来るのであれば、アリバイなんか作り放題で何が起ころうがこいつが犯人に決まってるではないかと思われるかも知れませんが、そこはこの作者の書く小説ですので色々と捻りが効いてます。
具体的には酒を飲んで酩酊状態でないと移動出来ないとか、移動先には裸で現れるとか、下手に移動したら2度と帰って来れない状況もありうる訳で、実に有難迷惑と言いますか嫌がらせのような能力となっている訳で、果たして主人公はこの論理学の設問のような妙な条件をかいくぐりながら、自らの目的を達成できるのか?(ただ当初の目的は冒頭でいきなり挫折してしまうのですが)というお話であります。
Posted by ブクログ
西澤保彦さんのSFミステリー、テレポートとゆう特殊能力を持つ主人公が妻の殺害を試みる。
しかしテレポートとゆう最強の能力だが、このテレポートには欠点が沢山ある。
その欠点を絶妙にカバーしながら行われる殺人、しかし死んだのは妻ではなく全く知らない男、これはなんだ!?テレポートを使った事件解明に挑む。
Posted by ブクログ
瞬間移動の条件設定が絶妙だった。条件を駆使して練られた犯罪計画と、それによって複雑な様相を見せるもうひとつの事件。愛憎入り乱れた人間関係も相まって混迷を極めるが、解決は至ってシンプルかつ鮮やか。
Posted by ブクログ
うんうん、なかなか面白かった。
七回死んだ男も面白かったけど、この特殊能力を使ってしまうミステリ、結構好きです。
ただ、主人公には共感できないけど!
…ヴァ!が緊張感のある場面でもどうしても笑ってしまう。
危険がモーニング、危険がモーニング。
Posted by ブクログ
メカニズムもへったくれもないトンデモ設定を大前提に、条件の中でいかに論理的な謎解きを展開するか、というのが、この方の作品の見どころですね。しかし、今作はご都合主義やこじつけが論理を上回っているような印象を受けて残念。そして登場人物たちの心情や、そこから生まれる行動が、いまいち腑に落ちない……。
瞬間移動のために「アルコール摂取が必要」「着ている衣服が脱げる」「移動先にある何かが対価として移動されてくる」といった条件が、謎解きの要所要所で生きてくるのはさすがですが、しかしここでもトリック成立のためにあとからこじつけたような設定もあって、う~ん……という感じ。
そしてラスト、話の収拾をどうつけるかを、あんな形で丸投げして終わらないでいただきたい。いや本当に。
Posted by ブクログ
う~ん。
「七回死んだ男」よりはだいぶ落ちるな。
SF的発想の中にミステリーが有るから、説明的文章が多くなるのはある程度止むを得ないけど、これは長すぎ!
ほぼ半分が主人公の特異体質であるテレポーテーションの説明に費やされているし、肝心の殺人事件も前設定が多すぎ。
結果、著者の持ち味であるとぼけたストーリー展開がチョットしかない。
これ以上長くしてもダレるだろうし難しいところ。
「欠陥のあるテレポーテーション」がこの話のキモなんだから、もう少し簡潔に説明出来なかったかな~。
残念!