泡坂妻夫のレビュー一覧
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神出鬼没の怪盗S79号と、それを追う専従捜査班の対決を描いた連作ミステリ。やはり怪盗ものというのはわくわくしてしまいます。その正体がある程度現れているにも関わらずミステリアスなS79号はもちろん、有能なのか無能なのかちょっとわからない(笑)専従捜査班の刑事二人のキャラクターも魅力的。
ややコミカルな読み心地と、予想を超えたトリックの数々に魅了されっぱなしでした。収束へと向かうラストの展開とS79号の「正体」にも驚かされたし。ずっと気になっていた連続殺人犯もなるほど、ここで出てくるのか!
お気に入りは「南畝の幽霊」。この盗み方、あまりにも想像のはるか斜め上をいっていました。まさかそんなことってー -
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ネタバレ〇 概要
市立公民館でアマチュア奇術クラブ「マジキ・クラブ」が公演を行う。アマチュアらしく,成功する舞台もあれば,失敗する舞台も…。ハプニング続きで最後の出し物「袋の中の美女」を行うが,袋から出てくるはずの水田志摩子が姿を消してしまう。志摩子は「私の人生でも最も大切なドラマが起こりかかっている」という言葉を残していたが,ちょうど,「袋の中の美女」の公演をしていた時間に,自室で死亡していたことが分かる。死体の周りには数々の奇術の道具が。その道具は,マジキ・クラブに所属する鹿川が書いた自費出版小説「11枚のトランプ」に対応している道具だった。
作中作に「11枚のトランプ」という11作のショート -
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見た目はおっさん、頭脳はイケメン。
警視庁特殊犯罪捜査課、海亀の亀さんこと海方惣稔(うみかたふさなり)と、新米刑事の小湊くんが奇妙な殺人事件を追う。
こういうバディもの、好きですよ。
なにより、主人公の亀さんのキャラクターがいい。
酒浸りでニラ臭い、ずんぐりむっくりのやる気のないおっさん。しかし、訊かれればいつも事件の核心を突き、じつは博識でグルメで芸術やファッションにも造詣が深く、女性のあしらいもうまい。
この小汚いおっさんのレクチャー通りに、小湊くんが見事に女性を口説き落とすシーンは最高に可笑しい。
でも、ユーモアミステリの様でいて中身は本格。さすが泡坂妻夫。
大きな仕掛けに小さな企 -
Posted by ブクログ
ネタバレトリックあり、恋愛あり、冒険活劇要素ありの贅沢な傑作。
犯人は冒頭で運悪く死亡するが、その後に起こる殺人はすべて犯人が事前に仕込んでいたからくり殺人だった。
冒頭の事故はなんと隕石が突然降ってくるというギャグみたいな展開。あまりに非現実的すぎて、夢と現実が混ざっているのでは?と少し勘ぐってしまったほど。
文章がかなり上手く、物語の中に自然に伏線を溶け込ませる技巧やホワイダニットが鮮やかであることは連城三紀彦を思い出したし、解説の阿津川辰海も同様のコメントをしている。そして阿津川という名字が泡坂妻夫の本名厚川から取られていることを今さら知る。