泡坂妻夫のレビュー一覧
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ネタバレ2010年代の今読むならば、台詞回しにしろ情愛シーンの描写にしろ、何とも呑み込み難い陳腐な表現にどうしても感じられるが、執筆当時の流行と風俗に思いを馳せれば腑にも落ちる。
開発が進む昭和の山村を舞台とし、当地の祭りなども小道具として用いて土着民俗ものの匂いすら漂わせている本作は、松本正張作品にも通じる空気を纏っている。
多様性というものが叫ばれて久しい昨今に生きる我々にとっては、使われている叙述トリックのタネやプロットからもはや大きな驚きは得られず、さすがにそらちょっとしんどいやろ! とツッコみたくもなるが、あくまで古典を味わうという感覚で。 -
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ネタバレ好きな作家は多々いるが,最も好きな作家は,やはり泡坂妻夫である。どの作品も,文章も肌に合うし,世界観,キャラクター,設定などもいつも感心してしまう。もう読み尽くしていたと思っていたが,古本屋で見たことがない文庫を見つけたので購入。蚊取湖殺人事件は別のアンソロジーかなにかで読んだことがあり,ミステリとはいえない作品もあった。「雪の絵画教室」と「銀の靴殺人事件」,「秘宝館の秘密」が初めて読む泡坂妻夫のミステリだった。三つ読めれば十分かな。泡坂妻夫ということだけでも★3は確定。
○ 雪の絵画教室
渡辺恒という画家のアトリエでミケランジェロ六郎というテレビでも人気の画家が殺害される。田中裳所という -
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スマートな見た目とは裏腹に、どこか抜けた言動のカメラマン”亜愛一郎”の名推理を描く連作短編。
収録作品は8編。個人的に好きだったのは「DL2号機事件」「ホロボの神」「黒い霧」の3編。
デビュー作でもある「DL2号機事件」は飛行機の爆破予告を皮切りに意外な展開を見せていく短編。
めくるめく事件の展開に対しての、犯人の動機の解明がお見事! 意外なところから伏線になっていて人間の不可思議な心理が巧く使われた短編になっていると思います。
「ホボロの紙」は戦時中、日本軍の一隊が逗留したホロボ島で起こった現地未開民族の自殺事件の真相を推理する話。
日本の慣習や考え方と違う未開民族の思考 -
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奇術…いわゆるマジックショーの最中にメンバーが殺害されるが、メンバー全員にアリバイがあるというミステリー。
第三部作から成り、第一部は上記のショー中の殺人事件。
第二部は、体験談としてメンバーが登場する奇術短編集。
第三部は、第一部の殺人事件のタネ明かしといった構成。
殺人事件の設定としても面白く読みやすかったです。推理の要素となる第二部は、短編集になっていて、それだけでも楽しめるトリックのタネ明かしが沢山。退屈せずに読めました。
第三部まで読み進めていくと実は、このあたりに殺人のヒントが隠されており、見事!という感じ。
最後の第三部ですが、トリックも犯人にも感心。途中、推理ショーまでたどり -
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ネタバレこの作家さんの小説は初めて読みました。
一部、小説の中で登場人物の書いた小説が展開される面白い構成のお話でした。
また、登場人物の書いた小説の中に事件のヒントが隠されており、犯人を推理する楽しみもあります。
こういった仕掛けを持たすために、すごくよく構成と伏線が考えられています。
話は変わりますが、伏線というのは伏線とわかっていた方が面白いものもあれば、それと感じさせず、回収の際にあっ!と思わせるものがあり、どちらも面白味があります。
しかし伏線を張り方以上に重要なのが回収の仕方だと思います。
中にはいかにも「さっき出てきたあれ!あの伏線の回収ですよ!」とアピールをしてくるものがあり、自己 -
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1970年代後半に書かれた著者初期の短編集です。どれも騙しのテクニックが光りますが、作品の出来にはややばらつきがありました。
個人的ベストは、江戸時代の画家の描いた絵に隠された謎を解き明かす【椛山訪雪図】。騙し絵や玩具などに興味のない人にはピンと来ないかもしれませんが、鮮やかなトリックがとても印象的です。
その他【閏の花嫁】【煙の殺意】【歯と胴】も見逃せません。【閏の花嫁】はオチが見え見えなのは残念ですが、最後の一言でゾクッと来ました。
【煙の殺意】はアイデア自体には前例がありますが、点と点が繋がる瞬間は驚嘆しました。
【歯と胴】は完全に見えた殺人計画が思わぬところからバレてしまうという落とし