泡坂妻夫のレビュー一覧

  • 斜光

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    ありえそうもない設定に果敢に挑み、見事に力技で完結させた大人の物語です。作者の力量に感服すること間違いなし。迷うことなく、読むべし。

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    2017年06月04日
  • 湖底のまつり

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    ネタバレ

    2010年代の今読むならば、台詞回しにしろ情愛シーンの描写にしろ、何とも呑み込み難い陳腐な表現にどうしても感じられるが、執筆当時の流行と風俗に思いを馳せれば腑にも落ちる。
    開発が進む昭和の山村を舞台とし、当地の祭りなども小道具として用いて土着民俗ものの匂いすら漂わせている本作は、松本正張作品にも通じる空気を纏っている。

    多様性というものが叫ばれて久しい昨今に生きる我々にとっては、使われている叙述トリックのタネやプロットからもはや大きな驚きは得られず、さすがにそらちょっとしんどいやろ! とツッコみたくもなるが、あくまで古典を味わうという感覚で。

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    2017年04月29日
  • 煙の殺意

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    バラエティに富んだ短篇集。老練な文章も良い。「紳士の園」、「煙の殺意」は傑作! だが少し使い回しが気になる作品も。

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    2017年01月01日
  • 煙の殺意

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    ここに死体を捨てないでくださ
     奇妙な論理というなら表題作が飛び抜けていますが、「紳士の園」「開橋式次第」の方が私好みでした。前者はスワン鍋が象徴するように、これから何が始まるのだろうと聴衆の心を大いに引き付け、手品の披露から種明かしに至るまで流れるように進んでいきます。後者はお得意の伏線祭りに加えて、ちゃっかり探偵役が入れ替わっているのも見逃せないポイント。いずれも賑やかでユニークな作風になっています。
     「椛山訪雪図」はきっと私のセンスがないのでしょう。美しい情景がぼんやりと浮かびましたが、すぐに消えていきました。

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    2016年09月28日
  • 乱れからくり

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    からくり盛りだくさん。迷路とか、秘密の通路といったギミックには童心に返ってワクワクする。でも、現実にはそんなものないんだよなぁ。

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    2016年08月06日
  • 妖女のねむり

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    「生まれ変わり」をテーマに据えつつ展開される前半はとてもロマンチック。前世では不幸があり結ばれなかった二人が、前世の謎を探るうちに明らかになる事実。
    ラストでの怒濤の解決編と、しっとりと締めるラスト1行。素敵でした。

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    2016年04月01日
  • 蚊取湖殺人事件

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    ネタバレ

    好きな作家は多々いるが,最も好きな作家は,やはり泡坂妻夫である。どの作品も,文章も肌に合うし,世界観,キャラクター,設定などもいつも感心してしまう。もう読み尽くしていたと思っていたが,古本屋で見たことがない文庫を見つけたので購入。蚊取湖殺人事件は別のアンソロジーかなにかで読んだことがあり,ミステリとはいえない作品もあった。「雪の絵画教室」と「銀の靴殺人事件」,「秘宝館の秘密」が初めて読む泡坂妻夫のミステリだった。三つ読めれば十分かな。泡坂妻夫ということだけでも★3は確定。

    ○ 雪の絵画教室
     渡辺恒という画家のアトリエでミケランジェロ六郎というテレビでも人気の画家が殺害される。田中裳所という

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    2015年12月07日
  • 亜愛一郎の狼狽

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     スマートな見た目とは裏腹に、どこか抜けた言動のカメラマン”亜愛一郎”の名推理を描く連作短編。

     収録作品は8編。個人的に好きだったのは「DL2号機事件」「ホロボの神」「黒い霧」の3編。

     デビュー作でもある「DL2号機事件」は飛行機の爆破予告を皮切りに意外な展開を見せていく短編。

     めくるめく事件の展開に対しての、犯人の動機の解明がお見事! 意外なところから伏線になっていて人間の不可思議な心理が巧く使われた短編になっていると思います。

    「ホボロの紙」は戦時中、日本軍の一隊が逗留したホロボ島で起こった現地未開民族の自殺事件の真相を推理する話。

     日本の慣習や考え方と違う未開民族の思考

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    2015年12月04日
  • 亜愛一郎の狼狽

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    ずっと読みたかった愛一郎さん。どじっこ愛一郎さんかわいいよ。
    人の深層心理みたいなものから事件を解いていくタイプの探偵さんだなぁ。少し文章が読みづらいと感じましたが、愛一郎さんの癒しオーラで楽しく読めました。
    一番なるほど感を味わえた「曲がった部屋」と、ミステリ部分もさることながら民俗学的な面白さもあった「ホロボの神」がお気に入りです。
    それにしてもこの時代留守がちだからと言ってガス代を他所で一緒に払ってもらうなんて制度があったのだなぁと関係ないところで驚いた。

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    2015年11月24日
  • 奇術探偵 曾我佳城全集 戯の巻

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    前作にあたる秘の巻より、読みやすかったです。人名になれたからかもしれません。奇術のトリックとミステリーを融合させている作品ですが、トリックの要素が少し弱目だったことで、読みこなせました。

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    2015年09月10日
  • 死者の輪舞

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    中心となるアイデアは前例があるのでとりわけ素晴らしいとは思いませんでしたが、一捻り加えられた真相は伏線が序盤から張り巡らされていたのに全く見抜けず、感嘆してしまいました。
    海方刑事のキャラは馴染めませんでしたが、小湊との掛け合いが面白く最後まで楽しめました。

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    2015年07月30日
  • 奇術探偵 曾我佳城全集 秘の巻

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    奇術とミステリーが合わさった作品です。ボリュームがあります。奇術とミステリーの両方が楽しめる分、やや難解。人物名も凝っているので、読みづらかったです。じっくり向き合うための本というところです。

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    2015年07月26日
  • 11枚のとらんぷ

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    だっていいじゃない、奇術だもの。

    トリックを書きたいから、小説を書く。おかしくも悲しい、推理小説の弱点ではないかと思う。動機よりも犯人よりも、もしかしたらもっと書きたくなるのがトリックではないだろうか。まず事件が起こるI部。事件の元になった本が実際に書かれるII部。謎が解かれるIII部。II部の小説は、実用的ではないけど、封印するには惜しいトリックを小説にしたものと、登場人物は語る。称賛を浴びたい、自分の才能を証明したい、一番になりたい、そんな人の欲がつまった話。

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    2015年07月05日
  • 蔭桔梗

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    女の肩から音もなく着物が滑り落ちるような。そんなふうに、静かな熱を持って淡々と進む短編たち。
    どの話も尖るような勢いはないのに、いつの間にか指先に刺さった棘のようにじくじくと痛み出す。
    「弱竹さんの字」はラストに向けた展開が秀逸。
    「十一月五日」には創造者の情念。
    「竜田川」こういうミステリー、もっと読みたい。
    「校舎惜別」怖い。なぜか怖い。

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    2015年05月20日
  • 11枚のとらんぷ

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    奇術…いわゆるマジックショーの最中にメンバーが殺害されるが、メンバー全員にアリバイがあるというミステリー。
    第三部作から成り、第一部は上記のショー中の殺人事件。
    第二部は、体験談としてメンバーが登場する奇術短編集。
    第三部は、第一部の殺人事件のタネ明かしといった構成。

    殺人事件の設定としても面白く読みやすかったです。推理の要素となる第二部は、短編集になっていて、それだけでも楽しめるトリックのタネ明かしが沢山。退屈せずに読めました。
    第三部まで読み進めていくと実は、このあたりに殺人のヒントが隠されており、見事!という感じ。
    最後の第三部ですが、トリックも犯人にも感心。途中、推理ショーまでたどり

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    2014年09月11日
  • 11枚のとらんぷ

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    奇術師としても活躍された作者の知識と経験を存分にいかした、奇術づくしのミステリ。
    真相の衝撃度は弱いかなと思うけど、緻密な伏線や構成の妙には感心することしきりです。
    奇術の種明かしをテーマにした作中作にもミステリ的な趣きがあり、奇術とミステリの親和性の高さを改めて実感しました。

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    2014年09月06日
  • 11枚のとらんぷ

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    ネタバレ

    この作家さんの小説は初めて読みました。

    一部、小説の中で登場人物の書いた小説が展開される面白い構成のお話でした。
    また、登場人物の書いた小説の中に事件のヒントが隠されており、犯人を推理する楽しみもあります。
    こういった仕掛けを持たすために、すごくよく構成と伏線が考えられています。

    話は変わりますが、伏線というのは伏線とわかっていた方が面白いものもあれば、それと感じさせず、回収の際にあっ!と思わせるものがあり、どちらも面白味があります。
    しかし伏線を張り方以上に重要なのが回収の仕方だと思います。
    中にはいかにも「さっき出てきたあれ!あの伏線の回収ですよ!」とアピールをしてくるものがあり、自己

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    2014年08月05日
  • 煙の殺意

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    1970年代後半に書かれた著者初期の短編集です。どれも騙しのテクニックが光りますが、作品の出来にはややばらつきがありました。
    個人的ベストは、江戸時代の画家の描いた絵に隠された謎を解き明かす【椛山訪雪図】。騙し絵や玩具などに興味のない人にはピンと来ないかもしれませんが、鮮やかなトリックがとても印象的です。
    その他【閏の花嫁】【煙の殺意】【歯と胴】も見逃せません。【閏の花嫁】はオチが見え見えなのは残念ですが、最後の一言でゾクッと来ました。
    【煙の殺意】はアイデア自体には前例がありますが、点と点が繋がる瞬間は驚嘆しました。
    【歯と胴】は完全に見えた殺人計画が思わぬところからバレてしまうという落とし

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    2015年04月07日
  • 奇術探偵 曾我佳城全集 戯の巻

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    このミスベスト10、2001年版1位。ミステリーと奇術ってよく似たものだけど不思議とコラボ作品はなかった。珍しさもあってそれなりに面白いけど、キャラ設定や心理描写が何となく稚拙な感じでコナン読んでるよう。直木賞作家だしわざとそういう作風にしてるのかも。

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    2014年03月06日
  • 奇術探偵 曾我佳城全集 戯の巻

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    下巻。
    霧のようだった探偵から温度を感じられるようになってきた頃。
    記憶に残ったのは最後の作品。ミステリーとしてはいかがかと思ってしまうのは、著者からのクイズという犯人宛の枠にはまりすぎてしまったからなのだろう。
    物語としてこのラストは好き。
    ここまで最初から考えていたんだろうな〜。名前もあるし。
    オススメはしないけれど、お暇ならいかが?

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    2013年11月08日