泡坂妻夫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
大好きアワツマ作品ではあるが、正直いうとけっこう難儀しながら、なんとか読み終えた。でも読んで良かった。
難儀ポイントはなんといっても、名前が覚えられないこと。時代が違うから慣れない名前というだけでなく、芸名や俳号の類がもりもり出てきて、黄表紙作家としての名前は◯◯で絵師としては△△、今は名を改め□□、実は後の✕✕である……なんてケースばかりでもう誰が誰やら。メインの謎のひとつは一応「写楽は誰?」なので、実はこの人でしたと明かされても、「えっとそれはつまり、、、誰」となってしまい、読む資格なしかよと我ながら落ち込む。
だが実は、私のミステリー読みライフにおいてはこの「読む資格なしかよ」状態になることは、そんなに珍しくない。謎をちりばめて解いてくれた作者と探偵さんには申し訳ないのだが、「そこはよくわからなかったが面白かった」と満足して読んでいることが多い。今回もそのパターンでした。
満足ポイントのまずひとつは、ちょうど今興味のある時代が舞台であったこと。よしながふみ『大奥』を読んでいるので、江戸時代づいている。何巻だったか忘れたが、田沼意次〜松平定信あたりを読んだときの感動がきっかけでこちらへも食指が動いたので、その動機がちゃんと満たされて嬉しい。
ふたつめは、スターがたくさん出ること。蔦屋重三郎も来年の大河ドラマの主役だし(大河ドラマ必ず見てるというわけではないですが)、歌麿、北斎、十返舎一九、歌舞伎役者もいろいろ、最後まで読むと「あら、この人は後のこの人だったのか!」という驚きも。ただし彼らを「スター」と感じることを含め、時代背景や蔦重及び写楽の基礎知識準備として、松本清張『写楽の謎の一解決』での予習が果たした功績は非常に大きい。ありがとう。
三つめからはアワツマ味に入るが、手妻、紋章上絵師、神田まわりの職人街の風情といった泡坂さんならではの要素が堪能できること。解説に書かれていた、作中の◯◯さんは作者自身が重ねられているのではないか、という“感想”は「私も同じ箇所で同じこと思いました!」と心のなかで激しく挙手してしまった。他の、奇術等を中心に据えたような作品に比べるとひとつひとつの要素は抑えめだが、作品全体を通して、ああ、泡坂ワールドだなあという思いには浸れる。解説にもあったが、章名や終章の締め方の洒落方も嬉しい。
四つめは、主人公がかっこいい。すごい美男子とか高貴とか金持ちとか熱血漢とかいうわけではないが、そこはかとなくかっこいい。表向きは目立つところはなく、如才なく町付き合いして暮らしている本屋の若旦那にすぎないが、さりげない優しさ、情深さ、一途さの一方で少しの色気、咄嗟の英断、手妻好きなんていう趣味人の一面と商売人としてのリアリストな一面の同居、などがあいまって、そこはかとなくかっこいい。この魅力も、勝手な思い入れながら、泡坂さんらしいなあと感じる。
時代ものは私はちょっと読むのに気合がいるので、とにかく、自分としては良い時期に読めて良かった。 -
Posted by ブクログ
泡坂妻夫の短篇ミステリ作品集『奇跡の男』を読みました。
今月上旬にアンソロジー作品『贈る物語 Mystery 九つの謎宮』に収録されていた『病人に刃物』を読んで、泡坂妻夫の作品を読みたくなったんですよね。
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バスの転落事故で一人だけ生き残った男が、今度は袋くじの特賞に大当たり。
そんな強運、あり!?(奇跡の男)
小さな飲み屋「糀屋」の客が死に、なぜか警察に被害者の香典が送られてきて……(狐の香典)。
“卯の花健康法”や“健脳法”など、珍妙なことばかり思いつくナチ先生が殺された。
雪に残された足跡が唯一の手掛かり?(ナチ式健脳法) など、ユーモラスで奇想天外な極上ミステリ短編集。
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昭和61年(1986年)から昭和62年(1987年)に発表された以下の5篇を収録して昭和63年(1988年)に刊行された短篇集です。
■奇跡の男
■狐の香典
■密会の岩
■ナチ式健脳法
■妖異蛸男
■解説 山前譲(推理小説研究家)
60人を越す死者が出たバスの転落事故で、たった一人生き残った男… 宝くじを買えば、その賞金の十倍という袋くじの特賞に当たる、、、
果たして、この世の中にそんな男が存在するのか? 写真週刊誌の記者・白岩百合子は、彼に興味を持ち、追跡を開始するが… 『奇跡の男』等、奇想天外でユーモラスなミステリ短篇集。
ユーモラスで軽く読める5篇でしたが、個人的には、
奇跡の男に三度目の軌跡は訪れるのか… 二度あることは三度あるという諺を使った計画的な犯行が印象的な『奇跡の男』、
雪に残された足跡が手掛かりとなる密室殺人事件… 奇妙なタイトルに秘められた謎解きのユニークさが印象的な『ナチ式健脳法』、
民宿の浴室での密室殺人事件… マリンスポーツが巧く絡めてあるユニークなトリックが印象的な『妖異蛸男』、
の3篇が好みでしたね。 -
購入済み
泡坂さんと言えば「亜愛一郎シリーズ」や「曾我佳城シリーズ」と言った連載ものが有名ですが、本作も連載ものとなっており、ただタイトルからも分かるように主人公は捕まえる方ではなく、捕まえられる方となっております。また主人公の正体や目的が明かされるのは結末の章となっており、途中までは多分この人が妖盗S79号なんだろうなという記述はあるのですが、名前や性別がはっきりしなかったりと謎のままで話が進んでいき、この為どちらかと言えばS79号を捕まえる側の専従捜査班二人のコミカルな描写の方が印象が強い作品となっております。