スマートな見た目とは裏腹に、どこか抜けた言動のカメラマン”亜愛一郎”の名推理を描く連作短編。
収録作品は8編。個人的に好きだったのは「DL2号機事件」「ホロボの神」「黒い霧」の3編。
デビュー作でもある「DL2号機事件」は飛行機の爆破予告を皮切りに意外な展開を見せていく短編。
めくるめ
...続きを読むく事件の展開に対しての、犯人の動機の解明がお見事! 意外なところから伏線になっていて人間の不可思議な心理が巧く使われた短編になっていると思います。
「ホボロの紙」は戦時中、日本軍の一隊が逗留したホロボ島で起こった現地未開民族の自殺事件の真相を推理する話。
日本の慣習や考え方と違う未開民族の思考や風習が事件解決のカギとなっていて、それを考慮に入れた事件の解決が面白かったです。梓崎優さんの『叫びと祈り』に似た感じの短編です。
「黒い霧」は商店街が突然トナーカートリッジの黒い霧に覆われてしまった事件を描きます。
事件そのものの面白さもさることながら、商店街の人々のハチャメチャっぷりも楽しい短編でした。
文章は読みにくいところもありましたが、ちょっと変わったロジックや事件、また暗号を使ったものなどバラエティ豊か、愛一郎のどこか抜けた感じも良かったです。
第1回幻影城新人賞佳作「DL2号機事件」