『妖女のねむり』と同じく、幻想的な雰囲気たっぷりのミステリです。
一晩を共にした人が、実は1カ月前に死んでいたという魅力的な謎とともに、自身の記憶と一致する部分もあれば、齟齬を感じるといった主人公の不安もこちらに伝わってくるようでした。
途中、明らかに意図的なデジャヴを誘う記述も、読者の目を廻す役割
...続きを読むを担っています。
物語も後半に差し掛かると、怪しげな女性の目撃などで、より妖しい雰囲気が漂い始めます。
そして明かされる真相は、やっぱり妖しいものでした。トリックというよりは、イリュージョンを見せられた気分。右手に注目を集めておいて、左手で小細工をするような、まさにマジシャン泡坂妻夫らしい仕掛けです。
『妖女のねむり』に勝るとも劣らぬ傑作です。