泡坂妻夫のレビュー一覧

  • ヨギ ガンジーの妖術(新潮文庫)

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    ヨギ ガンジー。年齢不詳(意外に若い?)。

    陽焼けした顔は鉤鼻で目が大きく、見るからに外国人で、筋肉質に痩せており、ヨーガが得意。

    日本語を辿々しく話すときもあるが、各地で講演会をするくらいには、普通に話せる(要するに、わざとそうしているのだ)。

    その内容は、ピックアップショウ(すり)、催眠術の講義、心霊術の実験、等々…、非常に胡散臭い(笑)

    しかし、それらが彼の持ちうる人間性のほんの一部にすぎないことは、この連作短篇集を読むにつれて、自ずと実感できるようになり、殺人事件は全くなくても、彼は素晴らしい探偵だと納得させられることでしょう。

    それは、マジックにタネがあるのと同じように、物事をよく見、かつ、それに心を奪われないことが大切だと、彼自身が話していたことそのものを、実践している点にあり、そこには、いかさまではなく、トリックであると述べる、彼自身の拘りも同時に感じられて、胡散臭い外面は、あくまでカムフラージュの可能性が高いのである。

    また、物事だけではなく、人間の内面もよく見ている彼の人の良さも、いくつか見受けられ、「王たちの恵み」の、町の文化の未来を見守る姿勢に、「隼の贄」の、信者たちの将来を気遣う気持ち、「釈尊と悪魔」での、小さな大衆劇団への温かい眼差しなど、こうした一面もあるから、ガンジーの胡散臭さが、より魅力を増して見えてくるのも、作者のマジックであろうか? 

    いや、それはないだろう。彼には天の邪鬼だったり、好色の一面もあるし、何より講演会の質をケチったり、関西弁で喋ったりと、やりたい放題ではないか(本当にそう)。

    まあ、それが面白いからいいか、と最終的には納得させられるのですがね。
    ただ、知性があることも確かで、その境界線がしっかり見えるので、私は彼を信頼しております。

    ちなみに、ガンジーと、二作目の「しあわせの書」で登場していた、「不動丸」、「本多美保子」との出会いのエピソードも本書で知ることができ、これが一作目だということに、再度納得しました。

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    2022年01月22日
  • 湖底のまつり

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    読み始めると官能的な表現があり、単なる推理小説ではないと感じながらページを捲る。ここで既に泡坂妻夫のトリックに嵌っていたようだ。小説の紹介文にあるような、まさしく騙し絵の世界でした。著者の他の作品も読んでみたい。(本屋さんでなかなか見つからないのが残念)

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    2021年10月30日
  • 夜光亭の一夜 宝引の辰捕者帳ミステリ傑作選

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    着物の描写が女も男もやっぱり細かい。江戸の庶民の芸事や娯楽の楽しみ方がよくわかる。探偵が幸福な家庭を営んでいるのがいいな。曾我佳城の先祖らしき人が魅力的。

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    2021年09月11日
  • ヨギ ガンジーの妖術(新潮文庫)

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    ネタバレ

    連作短編集。飄々とした人柄で、見た目も職業も、いかにも怪しいガンジー先生が、論理的に謎解きするギャップが面白い。日本であって日本ではない、妙な世界に迷い込んだような感じ。登場人物に、珍しい名字の方が多いのも印象的でした。

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    2020年12月19日
  • ヨギ ガンジーの妖術(新潮文庫)

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    4

    ヨギ ガンジー=(亜愛一郎+曾我佳城)÷2 ?
    いや、
    亜愛一郎 → ヨギ ガンジー → 曾我佳城
    かな?
    それともベン図であらわすのが妥当か?

    そんなこんなを考えさせられる仕掛なし短編集。

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    2020年10月28日
  • 蔭桔梗

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    1990年の直木賞を受賞した表題作を含む11編の短編集。いずれも紋章屋が登場する。身近な話ではないが、1編1編が深みをもって書かれており、素晴らしい

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    2020年04月21日
  • 亜智一郎の恐慌

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    その題名に冠せられた名前が物語るように、これはかつてミステリファンを驚喜させた『亜愛一郎シリーズ』の先祖に当たる亜智一郎を主人公にした時代ミステリである。
    が、アイデア溢れる作者のこと、決して亜愛一郎シリーズを踏襲するような二番煎じは行わず、これは云わば泡坂版『仕事人』である。『必殺』は敢えて除いておこう、血生臭い話が並んでいるわけではないので。

    亜智一郎を筆頭に、芝居好きな似非荒武者緋熊重三郎に、甲賀忍術を体得した藻湖猛蔵、豪腕誇る古山奈津之助の4名で構成された雲見番衆。とてもこの一冊で終わるのは勿体ないではないか!!!願わくばシリーズ化を求めたかったがそれも今は叶わぬ。

    そんな粋な彼らが織りなす物語はかつての『亜愛一郎シリーズ』の特色であったチェスタトンばりのアクロバティックなロジックは鳴りを潜め、むしろ宝引の辰シリーズや夢狸庵シリーズに近い雰囲気を持っているが今回は将軍直属の人物という設定だけに江戸時代の歴史を色濃く繁栄しているのも興味深い。
    従ってタイトルの『恐慌』の文字は物語の勇ましさには何とも似合わないとは思うのだが。

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    2020年02月24日
  • ヨギ ガンジーの妖術(新潮文庫)

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    ネタバレ

    初・泡坂妻夫。

    面白かった!
    全然古くない。斬新なくらい。
    奇術をミステリに取り入れた人、って聞いてたけど、ご本人が奇術師なのね。
    奇術とミステリの親和性をすごく感じる作品だった。

    ガンジーの人格が良い。
    魔術に見える現象をタネまで披露して、不思議な現象には必ず仕掛けがあるのだという立場を通す誠実な態度とか、物事を荒立てないようにする配慮とか。
    傑作だと評価の高い『しあわせの書』を読みたくてまずはこの作品を読んだんだけど、ファンになった。

    7つの短編のなかで、「帰りた銀杏」が一番好き。
    街の整備が別の目的のためになされていた、とかスケールが大きかったので。

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    2019年09月15日
  • 雨女

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    ネタバレ

    泡坂版「奇妙な味」短編集で全く以って一筋縄ではいかない作品群である。
    不能な自分の代わりに若者に自分の妻を抱かせる歪な愛をモチーフにした「雨女」を始め、「蘭の女」、「三人目の女」は何とも云えない読後感を残す二編だ。
    そして次は当初青春小説かと思わせ、ファンタジックなパラレル・ワールドを展開させ、最後は見事論理的に着地する「ぼくたちの太陽」、そして六篇中どちらかといえばまともな本格物に位置する最後の二編と、誠に幅広いマジックを展開させてくれた。

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    2019年06月16日
  • 花嫁のさけび

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    映画スターの北岡早馬と結婚した伊津子。
    早馬の先妻貴緒は、誰もが褒めたたえる人物だったが、謎の死を遂げていた。
    北岡邸で催された宴の最中、またも関係者が死を遂げる……。

    といった感じで話は進むのですが、正直終盤までは淡々と話しが進み、それ程盛り上がりを感じませんでしたが、探偵役の説明で「なるほど」と感心させられました。
    何か所か台詞・行動に伏線が張られていましたが、途中までは、あまり話に引き込まれなかったこともあり、全く気づきませんでした。
    最後に解説を読んで、読んでいる最中に感じていた違和感の正体に気付かされ、すっきりしました。

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    2019年06月11日
  • 迷蝶の島

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    ネタバレ

    構成の妙に楽しませてもらえる一遍。
    視点が変わることによって、同じ事象も違うものに見えてくる。
    冒頭のナルシス感満載な手記から、事件を俯瞰する視点に切り替わる、このパターン大好き。

    達夫のダメっぷりがイライラするほどだったとはいえ、色々壮絶でした……
    考えてみれば19歳だもんね……そりゃあ可愛いくて若い子にフラフラするよね……それにしては腹黒い部分だけは成熟していた気もするが。

    時代が違うから仕方ないのでしょうが、女ナメすぎ。ふざけんなよ。
    その分、桃季子の強さが爽快。

    とはいえ、ちょっと都合良すぎる気がしないでもないが(ヨットってそんな簡単に沈められるの?)。
    それと、島で二度目に見た桃季子はなんだったのか。
    まさに幻覚……?あれ、でも血が出てたよね。幻覚を殺すうち、怪我をしたという解釈?

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    2019年05月29日
  • 湖底のまつり

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    所々の細かな表現がちょっと苦手だなぁとは思ったけど、ストーリーとしては面白く、謎解きを想像しながら読み進めた。恋愛そもそもがトリックになるのが好みではなく、なんとなくのいまいち感を残しちゃったけれど、まあ良かったかな。

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    2019年02月13日
  • 湖底のまつり

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    これは面白いミステリーでした。
    ミステリーらしいミステリー。古典。
    幻影小説なのかと思いきや…
    時系列トリックかと思いきや…
    紀子、晃二、粧子、緋紗子そして終章
    各所に散りばめられた付箋はちゃんと掬い上げられて一つの線になっていく。しかもちっとも無理がない。
    過疎化の進む村…怪しくも哀しい風習を受け継がれた祭り。
    人は一瞬で恋に落ちる。
    人は何度でも恋をする。
    という大前提のもとがあってこそのヒューマンミステリー
    2019.1.9
    今年の2冊目

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    2019年01月10日
  • 湖底のまつり

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    ミステリ。恋愛ミステリ。
    1978年に書かれた作品ということで、文章に古臭さはある。
    各章ごとに視点となる人物が変わり、徐々に明らかになる真相。
    読み進めるほど面白くなっていくように感じた。
    トリックが現実的かどうかは些細なことで、純粋に構成が美しい作品。
    背表紙の通り、小説の形をした"騙し絵"。芸術的だと思いました。

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    2019年01月06日
  • 花嫁のさけび

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    俳優・早馬の元に嫁いだ伊津子は、前妻が奇妙な死を遂げたことを告げられて、、、
    またやられた。巧妙な罠に気付けなかった。伏線は細かくて拾えないのもあるが、質量ともに安定している。ラブロマンスもそれまでと印象がすっかり変化してしまったことに気付く。

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    2018年09月17日
  • 夜光亭の一夜 宝引の辰捕者帳ミステリ傑作選

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    泡坂妻夫は今となっては懐かしい「幻影城」でお目にかかって以来のファン。現代ものは登場人物の言い回しとか、情景描写とか、いつの時代?という古臭さを感じさせて、しかもそれが作品の魅力だったりする。
    時代物は文句なく大好き!無理目な展開やトリックがあるが、それもご愛敬。江戸の言葉、季節の風物着物の柄すべて丁寧で、読んでいるのが心地よい。
    表題にもなった『夜光亭の一夜』は手妻師浮城はあの人の…と想像が膨らむ。
    心がざわついてしまう時に短編一つ読んで寝ようかなと手に取る一冊。
    唯一気に入らないのが表紙。辰親分、もうちょっといい男のイメージなんだけど。せっかくの森美夏さんなのに。

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    2018年08月22日
  • 折鶴

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    最近(とは云っても同著者の『ゆきなだれ』以来だが)触れていない純文学の香気に酔わせて頂きました。しかも日本の伝統工芸の職人の世界を基に繰広げられる恋愛物語ということで日本情緒溢れる芳醇さが堪らなかった。

    それぞれの4作品に通底するのは、登場人物達の頑なまでのストイックさ。奔放な登場人物など1人としていず、それがまたぷんぷんと市井の暖かみを行間から立ち上がらせてくるのだ。
    正に“職人”泡坂妻夫が丹念に織り込んだ短編集と云えるだろう。

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    2018年07月08日
  • 夢裡庵先生捕物帳 (下)

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    上下巻読み終わった感想をまとめて記入。
    どの話も、読んでいる間、『江戸の風』が感じられて素晴らしかった。この短編連作の語り手リレーという手法が、ただ単に、単調になりがちな捕物帳にリズムを持たせる為だけの小手先の技ではなく、ラストの1篇へ向かって「江戸」を描くために必要な手段だったんだな……と上下巻読み切って、つくづく思い知らされました。泡坂妻夫でなければ書けない捕物帳、堪能しました!

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    2018年04月18日
  • 煙の殺意

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    肩の凝らない多種トリックの妙技は、マジックの華麗な舞台を見るように目の前でくるくると景色を変え、こちらも目を白黒させながら読む。

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    2018年01月07日
  • 湖底のまつり

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    幻想的で甘美な世界へ。死んだはずの人間に命を救われたという女性。導入部から心を掴んで離さない卓越した筆致に酔いしれる。紀子とは違い、あえて川の流れに身を任せて読んでいった。

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    2017年10月09日