『吸血鬼ドラキュラ』以前の19世紀英米吸血鬼小説アンソロジー。
本邦初公開の作品を中心に10篇を収録。
吸血鬼ダーヴェル―断章 ジョージ・ゴードン・バイロン
・・・人物描写と情景の妙。未完なのが残念。
吸血鬼ラスヴァン―奇譚 ジョン・ウィリアム・ポリドリ
・・・彼と出会い、興
...続きを読む味を抱いたことが悲劇の始まり。
黒い吸血鬼―サント・ドミンゴの伝説
ユライア・デリック・ダーシー
・・・不条理でナンセンスなれど、黒人奴隷問題提起も。
吸血鬼ヴァーニー―あるいは血の晩餐(抄訳)
ジェイムズ・マルコム・ライマー
トマス・プレスケット・プレスト
・・・全232章から数章を抜粋。処女の血を求めて彷徨う男の遍歴。
ガードナル最後の領主 ウィリアム・ギルバード
・・・横暴な領主と占星術師との対峙。そして妻に迎えた娘は。
カバネル夫人の末路 イライザ・リン・リントン
・・・地主の新妻と迷信深い村人たち。嫉妬と羨望、不安が
入り混じり、起こる事件。この女は吸血鬼だ!
食人樹 フィル・ロビンソン
・・・動植物研究家が描く、蠢く枝葉が徐々に迫る恐怖。
カンパーニャの怪 アン・クロフォード
・・・古屋敷に籠った男と呼応するように倒れた男。
その屋敷の地下坑の霊廟で友たちが見たものは。
善良なるデュケイン老嬢 メアリ・エリザベス・ブラッドン
・・・念願の老婦人付添婦になったベラ。元気いっぱいの
彼女だったが、徐々に衰弱していく。その理由は?
魔王の館 ジョージ・シルヴェスター・ヴィエレック
・・・『ドラキュラ』以降の作品から。抗えぬ威厳と
カリスマを備えた男に魅了される青年の運命とは。
解説-ドラキュラ伯爵の影の下に
注記一覧有り。
『吸血鬼ドラキュラ』以前の9作と以後の1作での、
19世紀英米吸血鬼小説アンソロジー。
バイロンの未完の作品から始まり、同年アメリカの異色作品、
ゴシックからヴィクトリア朝文芸への様々な作品、
週刊連載形式の三文恐怖小説、そして『ドラキュラ』以降の
作品までの、様々な吸血鬼小説を紹介している。
植民地やアフリカからの奴隷、簒奪者と農民や農奴の当時の情勢。
まだ科学発展以前の、土地の瘴気説、輸血思想がある一方で、
処女の生き血を首から摂取、ゾンビ、宿命の女等、
その後の吸血鬼小説に見られる特徴の先駆も、登場。
ちょっと尻切れトンボな作品もあるけど、それぞれの描く
吸血鬼の姿が様々で、ある意味吸血鬼かもしれないものも。
それぞれのホラー感覚がなかなかの妙味。