面白かった。
彼の今までの作品はグロテスクで奇想な展開が多かったのだけれど、本作にはあまりそういう展開はでてこない。
所々出てはくるのだけれど、あまりメインの話に有機的には絡んではこない。
ただ、そんなグロテスクで奇想な展開は、今までに彼が発表してきた作品に登場したエピソードに似た内容が多いので、彼
...続きを読むの一つの集大成的な意味合いもあるかも知れない。
まぁ、そんな展開を期待していた人にとってはちょっと肩透かしを食らわされたように感じるかも知れない。
実は僕も最初はそんな肩透かしを食らった一人だったのだが、読み進めていくうちに「おいおい、エリックさん。グロテスクで奇想な展開がなくても凄く面白い作品が書けるじゃないか!」なんて偉そうに思ってしまった。
とある男の数奇な半生を描いているのだけれど、その彼が持っている考え方や、恋愛に対する脆弱な感受性、モラルに対する潔癖感、人としての強さ弱さ、などなど「わかるわかる、あるある」と思いながら、実はあまり感情移入は出来ずに、それでも気持ちよくこの男を俯瞰しながら読み進める、といったちょっと変わった読書体験ができた。