エリック・マコーマックのレビュー一覧
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まだ一作しか読んでいないけど、マコーマックは私のお気に入り作家になっていきそうな予感。端々に比喩と教訓が散りばめられている。読んでいると頭が居心地のいい場所に飛んでいくような感覚。場所というのは地理的な意味ではなく、「あー、こういうことを考えたり感じたりしているとき私はリラックスしているな」と思えるものがある場所のこと。
小説でこんなに付箋を付けたことがないというくらい好きなフレーズに出会えた。一番のお気に入りは以下。
「ことばはわれわれを自由にしてくれないのではないかと思う。ことばには大きな重量が付属しているのだ。だから、マックスウェル、あまり本をたくさん読みすぎないように気をつけたまえ。 -
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ネタバレブレア行政官から見習い記者ジェイムズの元に送られてきたのは、疫病のために封鎖され、情報規制が敷かれている村、キャリックに住む薬剤師が書いた手記だった。一人のよそ者の滞在と、エスカレートする破壊行為に関連はあるのか。村の秘密と言語中枢を狂わせる毒の謎は……。排他的な村で起こった奇妙な事件を描いたメタ・ミステリー。
マコーマック作品は他に『隠し部屋を査察して』と『パラダイス・モーテル』の二作を読んでいるが、いつも〈演技と創作〉を主題にしている作家だと思う。特に本作は、死なせるためにキャラクターを創作し、無から真相を生みだすミステリーというジャンルの型を使って、「死を受け入れるために物語を必要と -
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面白かった。
彼の今までの作品はグロテスクで奇想な展開が多かったのだけれど、本作にはあまりそういう展開はでてこない。
所々出てはくるのだけれど、あまりメインの話に有機的には絡んではこない。
ただ、そんなグロテスクで奇想な展開は、今までに彼が発表してきた作品に登場したエピソードに似た内容が多いので、彼の一つの集大成的な意味合いもあるかも知れない。
まぁ、そんな展開を期待していた人にとってはちょっと肩透かしを食らわされたように感じるかも知れない。
実は僕も最初はそんな肩透かしを食らった一人だったのだが、読み進めていくうちに「おいおい、エリックさん。グロテスクで奇想な展開がなくても凄く面白い作品が書 -
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『ひょっとしたら、一見ごく取るに足らない要素 ― 聞き間違えた一言、誤った想定、無理もない計算違い ― こそ実は、物事の連鎖における何より強力な環なのかもしれないのだ』―『学芸員いま一度』
旅先の鄙びた古本屋で目に留まる一冊の古書。物語がそのように始まると、ついウンベルト・エーコの小説を思い浮かべてしまう。だがしかし、この物語はエーコが好んで描いた劇中劇のような形式に素直に嵌まることはない。スコットランドでかつて観測されたという「黒曜石雲」にまつわる記録は十分に摩訶不思議な物語を展開しそうだというのに。
一人称の主人公の語りは、古書の周りを回りながら自らの来し方を辿り、如何にして自身をメキ -
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これは色んな面白さが詰まった物語だった!!古書店で見つけた「黒曜石雲」という不思議な雲についての本。そこに記された「ダンケアン」という地名は若い頃、苦い経験をした地だった。そこから物語は彼の半生へ。両親を悲劇的な事故で失い、大学を出て職を得たダンケアンでのミリアムへの情熱的な恋、そして裏切り。失意のままアフリカ行きの船に乗り込み、流されるまま世界を巡る。各地で運命を左右する人々に出会い、心揺さぶる経験をしてきた。結婚し、子供も得た今「黒曜石雲」の謎を追ううち、懐かしい人と再会し、衝撃の真実を知る。不気味なゾクリとさせる不意打ちのラストがなんとも言えない印象を残す。
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南米で『黒曜石雲』という古書を手に取った「私」は、そこにスコットランドのダンケアンという地名を発見して驚愕する。それはかつて「私」が逃げるように立ち去った場所だった。一人の男の半生記に奇妙で不条理なエピソードを散りばめた、著者の集大成的な長篇小説。
マコーマックによる果てしない自己言及の物語。自作のパロディや再話がふんだんに入っていて、マッドサイエンティストがでてきたり南国に対するエロティックな妄想が爆発していたりと『パラダイス・モーテル』『隠し部屋を査察して』の要素が踏襲されていながらも、訳者あとがきで柴田さんが言うとおり、ビザールな悪趣味だけじゃない温かみを感じられるのが今までと違うな -
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ネタバレネットで見かけて。
端的に言えば、一人の男の人生のお話。
しかも若くして恋に破れ、それを引きずる男のお話。
これだけだと全く面白そうなストーリーではないし、
話の展開も何があるわけでもない。
微妙に不思議な場所や、不思議な人たちが出てくるが、
全くの異世界というわけでもない。
幻想的な話は、えてして猟奇的であったり、
怪奇的であったりと、不快な何かを伴う場合が多い気がする。
このお話も決して気持ちの悪い場面もあるが、
全体的にはふわふわとした心地よい感じで
読み進めることができる。
何と言って面白いわけではないし、
「人生の軌道が丸ごと変わった忘れようない体験」も普通だし、
「雲」を巡