あらすじ
出張先のメキシコで、突然の雨を逃れて入った古書店。そこで見つけた一冊の書物には19世紀に、スコットランドのある町で起きた黒曜石雲という謎の雲にまつわる奇怪な出来事が書かれていた。驚いたことに、かつて、若かった私はその町を訪れたことがあり、そこで出会ったある女性との愛と、その後の彼女の裏切りが、重く苦しい記憶となっていたのだった。書物を読み、自らの魂の奥底に辿り着き、自らの亡霊にめぐり会う。ひとは他者にとって、自分自身にとって、いかに謎に満ちた存在であることか……。幻想小説、ミステリ、そしてゴシック小説の魅力を併せ持つ、マコーマック・ワールドの集大成とも言うべき一冊。
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序盤、黒曜石雲の描写から始まり、終始どんよりした空気を感じながら読み進めた。
度々差し込まれた奇怪なエピソードが鋭く心に残る。
決して明るい物語ではないが、読書体験としては新鮮に感じた。
主人公ハリーとその息子フランクとの関係性が独特(互いを尊敬しつつ、なんでも話せる関係、ではない感じ)で、こんな親子も良いなと思った。
通して、ハリーの内面に迫っていく感じが面白い。
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出張で訪れたメキシコの古書店で、偶然手にした一冊の本「黒曜石雲」。そこにかつて暮らした街の名を見つけた事をきっかけに、物語が主人公の過去へと展開していく。スラムで生まれ、恋に破れ逃げるように世界を転々とし、各地で様々な人と出会い別れ、流されるように生きたハリー。時々「黒曜石雲」の調査の進展が挟み込まれ、アクセントとなる。数奇な彼の人生は、多くの偶然(必然?)に弄ばれ、幸福と過去の恋愛へのパラノイアの間で揺れ動く。物語の語り手であるハリーの、雲のように流れる人生を追体験でき、良い読書体験ができた。
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面白かった。
彼の今までの作品はグロテスクで奇想な展開が多かったのだけれど、本作にはあまりそういう展開はでてこない。
所々出てはくるのだけれど、あまりメインの話に有機的には絡んではこない。
ただ、そんなグロテスクで奇想な展開は、今までに彼が発表してきた作品に登場したエピソードに似た内容が多いので、彼の一つの集大成的な意味合いもあるかも知れない。
まぁ、そんな展開を期待していた人にとってはちょっと肩透かしを食らわされたように感じるかも知れない。
実は僕も最初はそんな肩透かしを食らった一人だったのだが、読み進めていくうちに「おいおい、エリックさん。グロテスクで奇想な展開がなくても凄く面白い作品が書けるじゃないか!」なんて偉そうに思ってしまった。
とある男の数奇な半生を描いているのだけれど、その彼が持っている考え方や、恋愛に対する脆弱な感受性、モラルに対する潔癖感、人としての強さ弱さ、などなど「わかるわかる、あるある」と思いながら、実はあまり感情移入は出来ずに、それでも気持ちよくこの男を俯瞰しながら読み進める、といったちょっと変わった読書体験ができた。
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古書店で、とある本を見つけるハリー。
そこから彼の半生が語られる。
滾々と湧きいでる泉水が虹を放つような言葉で。
タイトルどおり、ぽっかりと浮かびいつしか形を変え消えゆく雲のような挿話。ほんとうに、雲を眺めるような心地よい読書時間がもてた。
ラストは、波乱に満ちていくのか穏やかに過ぎゆくのか、どちらにしてもハリーの人生が長く続いていくだろうことを感じさせる。
本を閉じても物語は閉じないようだ。
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『ひょっとしたら、一見ごく取るに足らない要素 ― 聞き間違えた一言、誤った想定、無理もない計算違い ― こそ実は、物事の連鎖における何より強力な環なのかもしれないのだ』―『学芸員いま一度』
旅先の鄙びた古本屋で目に留まる一冊の古書。物語がそのように始まると、ついウンベルト・エーコの小説を思い浮かべてしまう。だがしかし、この物語はエーコが好んで描いた劇中劇のような形式に素直に嵌まることはない。スコットランドでかつて観測されたという「黒曜石雲」にまつわる記録は十分に摩訶不思議な物語を展開しそうだというのに。
一人称の主人公の語りは、古書の周りを回りながら自らの来し方を辿り、如何にして自身をメキシコの古書店に赴かせしめたかを説明する。その物語がやがて古書に書き残された物語と交差し、荒唐無稽とも思われる古い記録の謎が解き明かされる為の必要不可欠な過程なのだと思わせるかのように、語りの接ぎ穂は常に古書へと戻ってゆく。過去の一つひとつのエピソードは、主人公の抱える心の重荷の秘密に迫りながら、何も解決されぬままその重さを増すばかり。どこかで古書との繋がりが明かされるのではないか、それを切っ掛けに何かが解決されるのではないかと思いながら読み進めるのだが、古書の謎の解明は遅々として進まない。次のエピソードこそとの期待感だけが膨らみ続ける。
しかし、読み手の期待はゆっくりと少しずつ裏切られる。そして控え目な語り手こそが、実は波乱万丈の物語の主人公であったのだと結論せざるを得なくなる。作家エリック・マコーマックの巧みな誘導の術中にすっかりと陥ったのだ。解明されるべきことは解明されたとはいえ、主人公の軛が解かれた訳ではなく、ただ物事の連鎖というものが、偶然とも見える人知を超えた因果によって織りなされていくものだということを知るのみ。不思議な感慨が残る。
翻訳の柴田元幸によれば、マコーマックは幻想小説を主にものにする作家とのことで、確かに本編全般にその雰囲気はある。一方で、エピローグに至るまでの長い長い問わず語りの自叙伝は、歩んできた道程で遭遇した不思議な出来事を、淡々と受け止める人生論のようでもある。人生というものには、はっきりとした自覚できる序章もなければ、集大成を伴って迎える大団円もない、と主人公が、つまりは作家が、捉えているようであることが、どことなく不気味に響く幕切れの言葉からも読み取れるようでもある。
『といっても、誰かに意見を求める気はない。いつも思うのだが、自分一人の胸にとどめておいた方がいい事柄もこの世にはあるのだ』―『エピローグ』
何気ない心情の吐露が誰かにとっての因果を生み出すとも限らないのだから。
ところで黒曜石は英語で「Obsidian」という。その言葉の響きが草野心平のとある詩を想起する。マコーマックが描き出した不思議な黒曜石雲の心象風景は、その草野心平の詩と不思議と呼応するように見える。
『
黒燿石(オブシディアン)ノ微塵ノヨウニ。
キシム氷ノ黒イ。
海。
黙(モダ)スハ岩礁。
時間ノ中ニ頭ヲ抱ヘ。
満満ミチル無数ノ零ノ。
黒ガラス。
天。
』―『風景』
スコットランド、エアシャー(Ayrshire)から望む荒涼とした波立つ大西洋の風景と草野心平が見た海景の繋がり。それを詩人が「黒曜石の微塵」と例え、更に天の模様と対比させる。偶然の繋がりが、ここにもまた。
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めくるめく怪奇、ユーモア、官能。やがて脳内で文章が諸星大二郎作画に変換されていく。物語の描かれ方はマジックリアリズム的だが、南米のものとはずいぶんパースの取り方が違う印象。ヨーロッパの魔術的風景だなぁと感じる。人智を超えた非科学の世界と、素面で合理的な世界の両方を愛し、愛される主人公が誰より特異で魅力的だ。読みながら何度も「面白い…!」と声に出た。
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グラスゴー近郊のスラム「トールゲート」で育った主人公ハリーの魂の遍歴の物語であり愛を渇望し目の前にあることに気づけなかった物語である.メキシコの田舎町の古書店で出会った一冊の古書「黒曜石雲」から糸が解けて大いなる大河のような物語が始まる.スコットランド,ダンケアンでのゴシックホラーのような味わい,アフリカでの冒険小説のような雰囲気,カナダでのサクセスストーリー的な展開や家族への複雑な愛といった盛りだくさんな内容で,しかも本にまつわる謎も含めて,読み応えのある骨太の小説だった.表紙の絵もどこか不安な荒涼としたこの本にぴったりだ.
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これは色んな面白さが詰まった物語だった!!古書店で見つけた「黒曜石雲」という不思議な雲についての本。そこに記された「ダンケアン」という地名は若い頃、苦い経験をした地だった。そこから物語は彼の半生へ。両親を悲劇的な事故で失い、大学を出て職を得たダンケアンでのミリアムへの情熱的な恋、そして裏切り。失意のままアフリカ行きの船に乗り込み、流されるまま世界を巡る。各地で運命を左右する人々に出会い、心揺さぶる経験をしてきた。結婚し、子供も得た今「黒曜石雲」の謎を追ううち、懐かしい人と再会し、衝撃の真実を知る。不気味なゾクリとさせる不意打ちのラストがなんとも言えない印象を残す。
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「パラダイス・モーテル」では風呂敷を広げるだけ広げて「これちゃんと畳める?」とこちらがワクワクと不安でいっぱいになったところで手その風呂敷を手品で消してしまい、こちらの胸にぽっかり穴を開けて茫然とさせ(褒めてます)、「ミステリウム」では一度きれいに畳んで見せた風呂敷を残りページも少ないのにもう一度クシャクシャにしてから畳み直すと言う荒技で読むものを呆れさせた(褒めてます)マコーマック、ちゃんとお話畳めるやん!!何なら四角やなくて綺麗な花になってるやん、くらいの大団円。いやはや、やるやんマコーマック。
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グラスゴー近郊のスラム一歩手前の地域で育ったハリーの半生をたどる不思議な読感の本。ハリーは必ずしも自発的に行動するタイプではなく、どちらかというと巻き込まれ型の男。恋に敗れて逃げながらも、その記憶を何度も反芻する。必ずしも望んでいなかった仕事につき、望んでいたとはいえない結婚をし、それでもその一つ一つに誠実であろうとしながらまた他人に巻き込まれる。暗くて陰鬱に描くこともできたのだろうが、あちこちでふわふわした救いが漂う。短い描写で深みのある情景を描く技量がすごい。
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南米で『黒曜石雲』という古書を手に取った「私」は、そこにスコットランドのダンケアンという地名を発見して驚愕する。それはかつて「私」が逃げるように立ち去った場所だった。一人の男の半生記に奇妙で不条理なエピソードを散りばめた、著者の集大成的な長篇小説。
マコーマックによる果てしない自己言及の物語。自作のパロディや再話がふんだんに入っていて、マッドサイエンティストがでてきたり南国に対するエロティックな妄想が爆発していたりと『パラダイス・モーテル』『隠し部屋を査察して』の要素が踏襲されていながらも、訳者あとがきで柴田さんが言うとおり、ビザールな悪趣味だけじゃない温かみを感じられるのが今までと違うなと思った。
すでに成立している男女ペア+語り手(男)という三角関係が何度も繰り返されるのは、語り手が孤児になったことと関係があるのかな。「本当の愛」を問い続ける語り手はずっと精神的に幼く、二人組のなかに招かれながらもペアが抱える秘密は共有してもらえずに子どものような扱いを受ける。ダンケアンでの大失恋がかなりリアルな事情(「こいつは父の介護に耐えられない」という見切り)だったり、最後には「本当の愛」というロマンティシズムの裏の無責任さが暴かれたり、精神的に成熟できなかった男の話だと思う。
でも語り手のパーソナリティなんか本当はどうでもよくて、ヒゲの先を二つに分けて鈴をぶら下げてる医者だの、全身植物の刺青が入っている女たちだの、挿絵をどこまで拡大しても細部が精緻に描かれている豆本だの、次から次へと開陳される奇想の連鎖に身を任せるのがマコーマックの楽しみ方だろう。この人は人類学者と作家とマッドサイエンティストを同類とみなしているんだと思う。観察し、分析し、書くことで対象から安全な距離を取る簒奪者たち。
黒曜石雲と黒い雨は、インクによって書かれ、読者に覗き込まれている世界のメタファーなのではないか。私たちは自分が誰かの手で書かれた物語の登場人物なのではないかと空を見上げて悟る日がある。だが、すぐにそんなことは忘れて日常に戻っていく。『黒曜石雲』を起点として紡ぎだされる「私」の人生も、雲の形のように意味を見いだそうと思えば見いだせそうなそうでもないような、座りの悪いエピソードの連なりだが、その説明のつかなさこそが現実に似通ってみえるのだ。
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仕事で訪れた町で、雨に降られて偶然入った古本屋。そこで見つけて本には、かつて若かった頃に短期間過ごした町のことが書かれていた。
その本の内容は奇怪で、真偽を確かめようと専門家に依頼する。その調査で判明することや、再び街を訪れて出会うこと、思い出が交錯する。
意味深な思わせぶりなシーン、人物が多く、薄い不安感が漂う。
話の先が全く見えず、結論が意外だった。ゴシックホラーだった。楽しめる。
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久しぶりの海外文学。ふらりと訪れた古本屋で「黒曜石雲」という1冊の本に出会う主人公。その本にはかつて数ヶ月だけ暮らしていた村で発生した奇妙な現象が記されていた。「ダンケアン」というその村を思い起こした主人公はこれまでの数奇な人生を振り返っていく。というのがストーリーの基本軸。そこから彼が体験する様々な奇譚を回想とともに読んでいく。これがめちゃくちゃ面白く数ページのエピソードで1つの短編を読んでいるような味わいがある。ラストの不穏な空気も合わさって非常に楽しい読書体験となった。
Posted by ブクログ
ネットで見かけて。
端的に言えば、一人の男の人生のお話。
しかも若くして恋に破れ、それを引きずる男のお話。
これだけだと全く面白そうなストーリーではないし、
話の展開も何があるわけでもない。
微妙に不思議な場所や、不思議な人たちが出てくるが、
全くの異世界というわけでもない。
幻想的な話は、えてして猟奇的であったり、
怪奇的であったりと、不快な何かを伴う場合が多い気がする。
このお話も決して気持ちの悪い場面もあるが、
全体的にはふわふわとした心地よい感じで
読み進めることができる。
何と言って面白いわけではないし、
「人生の軌道が丸ごと変わった忘れようない体験」も普通だし、
「雲」を巡る謎も解けたような、解けないような結末だが、
不思議な旅から帰ってきたような、そんな作品だった。
Posted by ブクログ
柴田さんが訳なのと、ほんの分厚さに惹かれ手に取った。読み始めたらめちゃくちゃ面白い。村上春樹の長編好きは、絶対好きだと思う。
でも、期間があいてしまったのが原因かもしれないけど、終盤がトーンダウンって感じで面白くなかった。序盤中盤と面白かっただけに残念だった。貸出期間内に読み切れなかった自分のせいなのかなー。そんなわけで−☆
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エリマコはどれを読んでも面白いが、今回は「おいてけぼり度」「変態度」が低くて、自分的には肩すかし。じっくり読めるが、主人公がねー「自分がない」人間で、世話焼かれすぎ、流されすぎで、当然、何度もヤ○マンにひっかかるのよ。そのたんびに悲劇のヒロイン扱い、ク○ビ○チを聖女扱い、なんだこれ。○ッチとはそういう生き物。災害と一緒。かかわる方が駄目。多分皆さんには評判良さそうな本だけど、今までの「未完成な感じ」に惹かれてた自分には、ちょっと疲れる作品だった。「野生の王国」感はとても堪能した。
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不思議な小説だなあと思いながら、ぐいぐい引き込まれてしまった。ところどころのグロテスクな描写やエピソードに「こういう風に表現する必然性はあるのか?」と首を傾げながら読み、印象的なエピソードにも「これがどんな風に発展していくのか?」と気にしたりしていたけれど、本書の紹介文の「ゴシック」という表現に納得。
別に必然性もないけれど、そういうものなんだと。とにかく、全体を貫く印象は「不穏」。
すっきりとした解決はないけれど、この雰囲気を楽しむ小説なのだと理解した。
Posted by ブクログ
メキシコの古本屋で見かけた古書「黒曜石雲」。それはスコットランドのダンケアン町に起きた不思議な気象状況に関する記述だった。
ダンケアン。その名前に私の心は乱れる。それはまだ若かった頃の私が数ヶ月の間滞在し、情熱的な恋をして、そして酷く破れて去った炭鉱の町だった。
ここから物語は、ハリー・ステーンという名前の”私”の人生の回想となる。
ハリーは世界を回る生活だった。
生まれたのはスコットランドの工場町のトールゲートというスラムだった。大学を出て教師になるために訪れたのがダンケアン、恋に敗れてどこかへ行こうと船乗りとして海に出る。しばらくアフリカに滞在して、カナダに家を持つが仕事でまた世界を回る。
ハリーの人生は相当波乱万丈で、突然の別れに襲われたり猟奇的なものを見たり倫理的に問題のある問題を突きつけられたりするのだが、本書における語り口が淡々としていてどこか他人事ですらある。
書かれている伝承や、実際に経験したことも、なかなかグロテスク。出産で妻が死ぬと産まれた赤子を殺し自殺した夫、突然目玉が飛び出し大量に出血して死んだ子どもたち、不発弾が爆発して人を飲み込み崩れた長屋、女の母乳しか飲んではいけないシャーマン、アフリカの種族同士の争いで切り刻まれつなぎ合わされた死体、超常的な力を得た人たちに対する脳実験、互いに性行為も語り合う父と娘の深すぎる信頼関係、冷静な時は三人称で妄想に囚われている時は一人称になる物書き。
そうしてハリーが語る半生は、メキシコで「黒曜石雲」を手に入れたところまで追いつく。
「黒曜石雲」に書かれた不可思議な雲の現象は本当に合ったことなのか?そしてついにずっと避けてきたスコットランドを訪ねることにする。
ハリーの人生には突然の別れがあり、聞きたかったが聞けなかったことがあり、そして常に自分の人生に落ち着けなかった。
愛する人はなぜ自分を裏切ったのか?愛する人達は自分に突然訪れた死をどのように迎えたのか、親しい友人はその後無事に生きているのか、今彼らがいたらなんというのか…。
それらを少しでもわかるためにハリーはスコットランドへと向かう。そしてハリーに示される、新たな不安と、素晴らしい希望と、そしてそれらをも足元から揺るがすような悪い予感…。
自分の人生の謎、残酷で矛盾に溢れ怪奇に満ちたこの世界、だが自分の謎に向かい合おうとするのなら、不穏な先行きであってもそれは人生の旅なのだろう。
<いつも思うのだが、自分ひとりの胸にとどめておいたほうがいい事柄もこの世にはあるのだ。P453>
Posted by ブクログ
今までに邦訳されている3作品を実はかつて読んでいるんだけれど、正直イマイチ入り込めなかったんだよね。
ところが今回のこれは! 面白かったです。
Posted by ブクログ
いかにも面白そうな出だし、どんどん読み進めたのだけれど、最後まで読んで読み終えて何の感動もなかったな。それがちょっと残念。
現在から始まりスコットランドのスラム生まれ(とはいえ事故で両親を亡くすまでは幸せな生い立ち)の語り手が不思議な運命に導かれて世界中を旅する、まあある意味サクセスストーリーではあるのだけれど。
重要な要素のひとつに異母兄弟。ひとりではなくて複数の人間のやらかし。この異母兄弟に抱く幻想?は男性特有のものだよなと思った。まあ、この話に出てくる異母兄弟はみんな良い人だけれどね。
最後に精神病患者とのあいだに子供が出来たのでは?と恐怖する語り手、いやそれあんたのスケベ心が悪いんだから。バチ当たったな。