あらすじ
出張先のメキシコで、突然の雨を逃れて入った古書店。そこで見つけた一冊の書物には19世紀に、スコットランドのある町で起きた黒曜石雲という謎の雲にまつわる奇怪な出来事が書かれていた。驚いたことに、かつて、若かった私はその町を訪れたことがあり、そこで出会ったある女性との愛と、その後の彼女の裏切りが、重く苦しい記憶となっていたのだった。書物を読み、自らの魂の奥底に辿り着き、自らの亡霊にめぐり会う。ひとは他者にとって、自分自身にとって、いかに謎に満ちた存在であることか……。幻想小説、ミステリ、そしてゴシック小説の魅力を併せ持つ、マコーマック・ワールドの集大成とも言うべき一冊。
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Posted by ブクログ
ネットで見かけて。
端的に言えば、一人の男の人生のお話。
しかも若くして恋に破れ、それを引きずる男のお話。
これだけだと全く面白そうなストーリーではないし、
話の展開も何があるわけでもない。
微妙に不思議な場所や、不思議な人たちが出てくるが、
全くの異世界というわけでもない。
幻想的な話は、えてして猟奇的であったり、
怪奇的であったりと、不快な何かを伴う場合が多い気がする。
このお話も決して気持ちの悪い場面もあるが、
全体的にはふわふわとした心地よい感じで
読み進めることができる。
何と言って面白いわけではないし、
「人生の軌道が丸ごと変わった忘れようない体験」も普通だし、
「雲」を巡る謎も解けたような、解けないような結末だが、
不思議な旅から帰ってきたような、そんな作品だった。
Posted by ブクログ
不思議な小説だなあと思いながら、ぐいぐい引き込まれてしまった。ところどころのグロテスクな描写やエピソードに「こういう風に表現する必然性はあるのか?」と首を傾げながら読み、印象的なエピソードにも「これがどんな風に発展していくのか?」と気にしたりしていたけれど、本書の紹介文の「ゴシック」という表現に納得。
別に必然性もないけれど、そういうものなんだと。とにかく、全体を貫く印象は「不穏」。
すっきりとした解決はないけれど、この雰囲気を楽しむ小説なのだと理解した。
Posted by ブクログ
いかにも面白そうな出だし、どんどん読み進めたのだけれど、最後まで読んで読み終えて何の感動もなかったな。それがちょっと残念。
現在から始まりスコットランドのスラム生まれ(とはいえ事故で両親を亡くすまでは幸せな生い立ち)の語り手が不思議な運命に導かれて世界中を旅する、まあある意味サクセスストーリーではあるのだけれど。
重要な要素のひとつに異母兄弟。ひとりではなくて複数の人間のやらかし。この異母兄弟に抱く幻想?は男性特有のものだよなと思った。まあ、この話に出てくる異母兄弟はみんな良い人だけれどね。
最後に精神病患者とのあいだに子供が出来たのでは?と恐怖する語り手、いやそれあんたのスケベ心が悪いんだから。バチ当たったな。