散策の途上で出合った少女が美しく解剖されるまでを素描する「天使解体」、白痴の姉とその弟が企てる祖父殺し「サイレン」、陵辱された書家の女弟子の屍体が語る「玄い森の底から」等、妖美と戦慄が彩る幻想小説や、兎派と犬派に分かれた住民たちの仁義なき闘争を綴る「聖戦の記録」の黒い笑い、失われた女の片脚を巡る「脛骨」の郷愁、ゴッホの絵画を再現した園に溺れゆく男たちの物語「ドービニィの庭で」の技巧等々。文体を極限まで磨き上げた十五の精華を収める。孤高の鬼才による短篇小説の精髄。※紙書籍版とはカバー画像が異なります。/【収録作】「天使解体」/「サイレン」/「夜のジャミラ」/「赤假面傳」/「玄い森の底から」/「アクアポリス」/「脛骨」/「聖戦の記録」/「黄昏抜歯」/「約束」/「安珠の水」/「アルバトロス」/「古傷と太陽」/「ドービニィの庭で」/「隣のマキノさん」/解説=石堂 藍
Posted by ブクログ 2022年12月14日
氏の逝去の報に接して再読、やはり素晴らしい。綺羅を尽くした文体で紡がれた15の短編。「小説は天帝に捧げる果物、一行でも腐っていてはならない。」と言ったのは中井英夫だったか、その言葉そのものの一冊。作者自身は「一冊だけ残せるなら、これ」と言ったそうだが、「一冊だけ無人島に持て行くとするなら、これ」かも...続きを読む
Posted by ブクログ 2018年10月17日
文章芸の極みな短編集
言葉の選びと連なりが表現するものは
さまざまな読み味があり向ける視野の幅広さがあり再読に耐える深さが出来上がっていて
いつまでもすりすりしていたくなる造形の楽しさがある
『脛骨』のようなすっきりする作品が自分の中に好みとしてあるけれど
そこから立って見渡して独力でなされた広さに...続きを読む
Posted by ブクログ 2012年11月21日
泰水好きだなーもー!
綺譚集は過去の短編を集めた作品だそうですが、やっぱり冒頭の三部作が秀逸。「天使解体」「サイレン」「夜のジャミラ」のインパクトたるや・・・特に個人的にはジャミラですね、ついうっかり何度も読み返しちゃう。
「脛骨」も好きです。かわいいよね! 他にある意味印象深いのは「聖戦の記録」。...続きを読む
Posted by ブクログ 2010年10月08日
器用で芸達者、且つ凄まじい勢いを持つ文体の力もさることながら、独特のフラットな感性とインパクトの強い物語のギャップが、読み手に何とも言い難い「これは凄い」という印象を抱かせ、屍体と黄昏の向こう側には恐怖と悲しみと虚無しかないという良識を易々とひっくり返し、読後の清涼感をもたらしてくれます。
扱って...続きを読む
Posted by ブクログ 2010年05月19日
津原泰水には中毒性があるようだ。
「バレエ・メカニック」を最初に読んだときは、狐につままれた気分になったけど、「蘆屋家の崩壊」でまんまと虜になり、ふと気がつくと津原作品が読みたくて仕方なくなる。
そんなわけで3冊目。
これは、一つ一つ輝きの違う宝石が入った宝石箱のような短編集。
しかし、まあ、宝石...続きを読む