あらすじ
散策の途上で出合った少女が美しく解剖されるまでを素描する「天使解体」、白痴の姉とその弟が企てる祖父殺し「サイレン」、陵辱された書家の女弟子の屍体が語る「玄い森の底から」等、妖美と戦慄が彩る幻想小説や、兎派と犬派に分かれた住民たちの仁義なき闘争を綴る「聖戦の記録」の黒い笑い、失われた女の片脚を巡る「脛骨」の郷愁、ゴッホの絵画を再現した園に溺れゆく男たちの物語「ドービニィの庭で」の技巧等々。文体を極限まで磨き上げた十五の精華を収める。孤高の鬼才による短篇小説の精髄。※紙書籍版とはカバー画像が異なります。/【収録作】「天使解体」/「サイレン」/「夜のジャミラ」/「赤假面傳」/「玄い森の底から」/「アクアポリス」/「脛骨」/「聖戦の記録」/「黄昏抜歯」/「約束」/「安珠の水」/「アルバトロス」/「古傷と太陽」/「ドービニィの庭で」/「隣のマキノさん」/解説=石堂 藍
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Posted by ブクログ
(2008/5/26)
生と性は隣りあわせなんですねもちろん生と死性と死も、、リアルであり、グロテスクであり生々しくあり実感でありました。いやがおうにもひきつけられてしまいました点と丸が無い文章旧字体の文章凄く読み難かったのですがそれがまた惹きつけましたああ真似が出来ません
あな恐ろしや津原泰水この人は一度死んだことがあるに違いない 桐野夏生 帯の文章も凄いです
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大傑作。
幻想文学に惹かれる人は残酷さの中にある美しさを探している人だと思うのだが、本著にはそんな残酷さの中の美に溢れている。
その残酷さも即物的なもの(それはそれで好きなのだが)とは違って美学がある。腐臭があっても、どこか目を離すことができない。
更にその美しさを然るべき文章で記すことが出来る作家である。
津原泰水さんの記す文章をもっと読みたかった。
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どの作品にも惹き付けられるが、一際美しく思ったのは「脛骨」だった。舞台となった場所が近いので、たまに行く。ここでね…と水辺につい目をやる。
津原氏が亡くなられたことを、悲しく、悔しく思う。
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短編集。
面白かった。
人ではないものと人であるものの、それぞれのこわさが味わえる良作。
高評価のルピナス探偵団が、まったく楽しめなかったので、同じ作者の作品を手に取るのが不安だったが杞憂。
(短編集好きなので)
各話の扉絵(なのかな)のデザインがそれぞれ違って、それがまた凝ってて素敵。
Posted by ブクログ
氏の逝去の報に接して再読、やはり素晴らしい。綺羅を尽くした文体で紡がれた15の短編。「小説は天帝に捧げる果物、一行でも腐っていてはならない。」と言ったのは中井英夫だったか、その言葉そのものの一冊。作者自身は「一冊だけ残せるなら、これ」と言ったそうだが、「一冊だけ無人島に持って行くとするなら、これ」かもしれない。もっと書いてほしかった。ご冥福を。
Posted by ブクログ
グロとエロとその中に潜む美しさよ、、という感じ。最初えぐみにびっくりして引きかけたけど、読めば読むほど引き込まれていって最終的には貪るように読んでた。刺激と衝撃がすごい
Posted by ブクログ
文章芸の極みな短編集
言葉の選びと連なりが表現するものは
さまざまな読み味があり向ける視野の幅広さがあり再読に耐える深さが出来上がっていて
いつまでもすりすりしていたくなる造形の楽しさがある
『脛骨』のようなすっきりする作品が自分の中に好みとしてあるけれど
そこから立って見渡して独力でなされた広さにただただ感心する
Posted by ブクログ
津原泰水の短編はどれも素晴らしいのだけど、どの作品も読み始めはややうんざりする。自分の中の見たくない自分や忘れかけていたものなど、なんというかそういう朽ち果てようとしていたものに不意に出くわしてしまう感じ。ダメージが大きい。綺譚集では、自分の残酷さと薄さに向き合わされた。「聖戦の記録」、血が滾った。
Posted by ブクログ
ひたひたと、ずぶずぶと、静かに狂気に溺れていく感覚。
罪であり、むごたらしく、醜悪なものであっても、津原泰水の文章の中では、崇高な犯し難い何かに変貌します。
長編も何作か読みましたが、短編の方が魅力が凝縮されている感じです。
Posted by ブクログ
泰水好きだなーもー!
綺譚集は過去の短編を集めた作品だそうですが、やっぱり冒頭の三部作が秀逸。「天使解体」「サイレン」「夜のジャミラ」のインパクトたるや・・・特に個人的にはジャミラですね、ついうっかり何度も読み返しちゃう。
「脛骨」も好きです。かわいいよね! 他にある意味印象深いのは「聖戦の記録」。うわぁ、ってなります。
津原さん好きは「11」の前にいったんこちらを読んでいただきたい!おすすめ!
Posted by ブクログ
【天使解体】私を置いてずんずんと進んゆく。ずんずんと解体されてゆく。
【玄い森の底から】
美しくしなやかなことばにくらくらくら。
【聖戦の記録】闘え!戦え!
【約束】なんてうつくしいのだろう。
私も約束になりたい。なりたいよ。
Posted by ブクログ
例えばこういった感想のようなものを書いていると、自分の文才の無さに絶望的な気持ちに陥ってしまうのですが、津原泰水は文章を綴ることが楽しくて仕方がなかったのだろうなと思わせるような多様な文体で楽しませてくれます。
幻想小説というのは、ストーリーよりも、その文体が持つアトモスフィアによって成り立つものだと常々思っていたのですが、まさにその通り。どの作品も作品の中に溢れる空気がもう違います。
ただ、興味深く読んだのは、「赤仮面傳」「玄い森の底から」「ドービニィの庭で」。僕自身はストーリー重視のようです。
津原泰水は川上未映子の「わたくし率 イン 歯ー、または世界」が本書収録の「黄昏抜歯」からアイデアを盗用していると指摘していたそうです。真偽は判りませんが両作品とも面白かったです。
Posted by ブクログ
まるで文体に酔うような感覚でした。幻想、ファンタジー、ホラー、怪奇、グロテスク、エロティック、ミステリ…この短篇集を一言で形容できるジャンルが分かりません。まさに綺譚。素晴らしかったです。
緻密な文章
津原泰水(つはらやすみ)さんの15の短編を集めた『綺譚集』です。幻想、狂気、エログロ、生と死の世界を、緻密な文章によって書かれています。
大体、SNSや書店員さんがオススメしている本を読むことが多いのですが、この本はどういうきっかけで読み始めたんだったか。読書はどこかその時の自分の体調や生活に応じて感じるものだと思うけど、それからすると、今の自分には来なかったかな。
Posted by ブクログ
短編集,15編
ホラーのようなサスペンスのような犯罪物のようなものや幻想的なもの,つまりいろいろな不思議不条理をとき明かさずそのまま差し出している.そしてどこか切ないような物悲しい気持ちにもなる珠玉の作品集.
Posted by ブクログ
15つのお話からなる短編集
日常に潜む狂気みたいなものが、色々な話の中に隠れている。
「いや、こんなのなんでもないですよ、普通です普通」みたいな感じで書かれているから、こっちも「そうなのか」と思ってしまうけど、読んだ後に得体の知れないものが、じわじわとにじり寄ってくる。そんな感じ。
私は「夜のジャミラ」「赤假面傳」「玄い森の底から」「脛骨」「ドービニィの庭で」が特に好き
もし、グロテスクな表現が平気な人だったら、読んでみることをおすすめします。
Posted by ブクログ
エロ(生)と死。パンチがあり過ぎて、侵食されて精神をやられています。どの短篇もすごいです。
たとえば恒川光太郎さんの幻想はファンタジー寄りの性善説に対して、津原さんはホラー寄りの性悪説みたいな感じ。この世とあの世の境界線がそこ彼処にあって誰しもに起こり得るっていうのは同じだけど、津原さんの人物たちは特に元々その境界が曖昧な人物(アーティストや子供やトランスジェンダーや精神疾患者など)が多く、敏感ゆえに圧倒的な力で悪とか美とかに飲み込まれてしまう。抗えないし抗うという発想すら持ち得ない。むしろそれが自然なことだと。だから怖い(苦笑)足下がぐにゃりと溶けて恐怖と不安に襲われてしまう。
ただ、美しいものが持つ力についてはとてもよく分かります。
私がいちばん好きなのは『脛骨』です。最も普通に感じる作品かも知れないけど、生きている人の切断されてしまった脚はその人のものなのか屍なのか否かなど考えだすと確かに気になります。その視点が面白いと思いました。
Posted by ブクログ
「死」「美」「性」についての耽美な短編15編。
文章が美しい。
やはり短編にキレ味が凄いと思います。
「赤假面傳」「脛骨」「約束」「隣のマキノさん」
がお気に入りです。
「赤假面傳」…ウデの確かな漫画家さんが
コミカライズしてくれたりしないだろうか…
Posted by ブクログ
悪夢を見て、そこから抜け出せないでいるような、日常から一瞬にして異界へ引きずり込まれてしまうような、奇妙な話ばかりを集めた短編集です。不条理、頽廃と狂気、淫靡で猟奇的、グロテスクで残酷、懐かしさと喪失感、倦怠と恍惚、猥らで無垢、虚無と絶望、失望と冷笑、憎悪と未練、醜悪と哀切、そして美・・・死と背徳の匂いが付き纏うこの種の作品に、つい惹きこまれてしまうのは、ここに描かれているのが人間の業、本性、本質だということを、無意識に感じてしまうからなのではないでしょうか?〝奇譚〟ではなく、〝綺譚〟という文字を使っているところが味噌ですネ。幻想文学という括りでは、収まりきらない一冊でした。
Posted by ブクログ
短編15作。
残忍な言葉を綴る、美しい日本語に惑わされ、猥雑で俗悪さを嫌悪し、内臓を鷲掴みされたような気分の悪さに慄きながらも、頁を捲る。
つい、こっそり盗み見してしまうような。
Posted by ブクログ
ホラー幻想小説。若干のグロエロ含み。短編15本。
万人にはお勧めしないけれど、江戸川乱歩が好きな方や、この表紙の絵にピンと来て、以下の文字の並びが琴線に触れた方は是非ともご一読の上、私と握手をお願いします。握手だけ、言葉はいらない。
綺 幻 妖 黄昏 境界 惑乱 美醜 狂気 蠱惑 紅湿 憂愁
感想としては蛇足ながら、短編15本全て文体が違う上にどれも美しい文章という離れ業も楽しめることも1点付け加え。
Posted by ブクログ
三浦しをんの三四郎…から。面白かった。短編集。こういうの好き。ホラーのような幻想小説のような。かなり死や性をフューチャーしてるので、グロテスクな部分もあり。短い話も混ざっているのもいい。この人の本、他にも読んでみようかな。
Posted by ブクログ
15編の短編集。
2作品目まで読んで、今回は合わないかと思ったが、3作品目から帯の瀬名氏のコメントのとおり彼岸に連れ込まれたようだ。
この狂気の世界を愉しみ、美しいと感じる自分をどうかとも思ったが、抜け出すのにちょっとした努力が必要だった。
この方の発想というか、感覚というかそれをまた作品にまとめ上げる力にとても惹かれます。
Posted by ブクログ
ものすごく美しい表紙に惹かれて思わず手にとるとそこは狂気の世界。どこかコミカルな”蘆屋家~”、どこかハートフルな”アクアポリスQ”と読んできたのでフェイントだった。これは怖いというか、読後感がちょっといやな気分になる。15作品からなる短編集。
Posted by ブクログ
さわやかな感じのいい話を読んですっきりしたい、という人にはお勧めできない。妙に生々しいグロテスクな世界に迷い込んでしまったような気がする。なんともいえない読後感。どう理解すればいいのかわからない話もある。読み始めた時は、ウ……合わないかも…と思ったけれど、最終的になんだかんだ引き込まれて最後まで読んでいた。赤假面傳、玄い森の底から、聖戦の記録、ドービニィの庭で、が良かった。
Posted by ブクログ
又吉先生がお勧めしてたので読んだ。思ってた以上にサイコな話やった。世にも奇妙な物語をさらにサイコにした感じ。最初の天使解体で読み返してしまうほど衝撃を感じ、読み方がわかった。1番記憶にあるのは古傷と太陽。推理小説好き、残虐小説好きの方には是非の一冊、
Posted by ブクログ
綺麗だと感じた話は「脛骨」だけ。どの話も構想はおもしろいのですが文体がいまいち・・性に合いませんでした。上を求めたらキリがないのですが、「奇」と「綺」を求めるのならおすすめしない。
Posted by ブクログ
たまたま『蘆屋家の崩壊』が水に合い、この本に手を伸ばしてみました。
うん、これ、ダメな人いるだろうけどね。何も知らない人には最初の短編『天使解体』はキツくないだろうか。でもここでウットリするか、回れ右するか、ふるいに落とせるのかもしれません。私は前者。とんでもなく壮絶な状況なのに、頭が麻痺して“それ”に神秘性を感じてしまったのです。まんまと私も狂ってしまったのでしょう。そして中毒性があるようです。
一言で表わすと、「ちょっと変な酔いかたをするから止めておいたほうが良いのだけれど、こっそり飲みたい」酒のような。いや、それではまだ軽すぎるな。
『奇談』・『奇譚』・『綺談』でなくやはり『綺譚』集が相応しい。
Posted by ブクログ
思索に富む短編集。ホラーというよりは幻想文学といった趣。私にはピンと来るようで来ませんでした。水が合わなかったのかな。泰水だけにね!なんつって!
Posted by ブクログ
短編集。境界線があやうい、というかない。
「脛骨」が一番好きかなー。読後感が爽やか。「安珠の水」「玄い森の底から」も好きだ。
しかしグロエロと言えなくもないので苦手な人はやめたほうが。