あらすじ
散策の途上で出合った少女が美しく解剖されるまでを素描する「天使解体」、白痴の姉とその弟が企てる祖父殺し「サイレン」、陵辱された書家の女弟子の屍体が語る「玄い森の底から」等、妖美と戦慄が彩る幻想小説や、兎派と犬派に分かれた住民たちの仁義なき闘争を綴る「聖戦の記録」の黒い笑い、失われた女の片脚を巡る「脛骨」の郷愁、ゴッホの絵画を再現した園に溺れゆく男たちの物語「ドービニィの庭で」の技巧等々。文体を極限まで磨き上げた十五の精華を収める。孤高の鬼才による短篇小説の精髄。※紙書籍版とはカバー画像が異なります。/【収録作】「天使解体」/「サイレン」/「夜のジャミラ」/「赤假面傳」/「玄い森の底から」/「アクアポリス」/「脛骨」/「聖戦の記録」/「黄昏抜歯」/「約束」/「安珠の水」/「アルバトロス」/「古傷と太陽」/「ドービニィの庭で」/「隣のマキノさん」/解説=石堂 藍
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Posted by ブクログ
妖しくて、恐ろしくて、美しくて、摩訶不思議な世界が、様々な文体で綴られている短編集。
面白かった。
幻想的な世界に引きずり込まれるような感覚が、実に気持ちいい。
「天使解体」「玄い森の底から」「脛骨」「アクアポリス」
あたりがお気に入りだった。
ちょっと癖になる中毒性がある作家さんだな。
Posted by ブクログ
エロ(生)と死。パンチがあり過ぎて、侵食されて精神をやられています。どの短篇もすごいです。
たとえば恒川光太郎さんの幻想はファンタジー寄りの性善説に対して、津原さんはホラー寄りの性悪説みたいな感じ。この世とあの世の境界線がそこ彼処にあって誰しもに起こり得るっていうのは同じだけど、津原さんの人物たちは特に元々その境界が曖昧な人物(アーティストや子供やトランスジェンダーや精神疾患者など)が多く、敏感ゆえに圧倒的な力で悪とか美とかに飲み込まれてしまう。抗えないし抗うという発想すら持ち得ない。むしろそれが自然なことだと。だから怖い(苦笑)足下がぐにゃりと溶けて恐怖と不安に襲われてしまう。
ただ、美しいものが持つ力についてはとてもよく分かります。
私がいちばん好きなのは『脛骨』です。最も普通に感じる作品かも知れないけど、生きている人の切断されてしまった脚はその人のものなのか屍なのか否かなど考えだすと確かに気になります。その視点が面白いと思いました。
Posted by ブクログ
ホラー幻想小説。若干のグロエロ含み。短編15本。
万人にはお勧めしないけれど、江戸川乱歩が好きな方や、この表紙の絵にピンと来て、以下の文字の並びが琴線に触れた方は是非ともご一読の上、私と握手をお願いします。握手だけ、言葉はいらない。
綺 幻 妖 黄昏 境界 惑乱 美醜 狂気 蠱惑 紅湿 憂愁
感想としては蛇足ながら、短編15本全て文体が違う上にどれも美しい文章という離れ業も楽しめることも1点付け加え。