逸木裕の作品一覧
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ユーザーレビュー
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ミステリー(特に死が絡むもの)は暗くてえぐいものが好きなので、その点でいくと物足りなさはあった。でもそれを凌駕するほどの『解釈』に圧倒されてしまった。音楽とは何か、演奏家の演奏はなんなのか、聴く側は一体何を鑑賞しているのか、という問いかけがとても冷たくて、かつてクラシック音楽に携わっていた身からする
...続きを読むと、当時自分の演奏にああでもないこうでもないと言ったり言われたりしていたことに果たしてなんの意味があったのだろうか、という気持ちにさせられた。
そしてこれは音楽に限った話ではないと思う。この世の全ての事象、表現する側とそれを受け取る側がいる限り付き纏う。私たちは世界の何を見ているのだろう。全くの私情や先入観なしに世界を見ることはできないのではないだろうか。
読みながらそういったことを考えていると、小説ではなくもはやデカルトについての哲学書を読んでいるような感覚に陥った。
こんな風に重厚な読後感を残せるのは、楽器が他でもないチェロだったから、というのもあると思う。
Posted by ブクログ
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〈火神〉の異名を持つ孤高の音楽家・鵜崎顕。彼の主催する鵜崎四重奏団で、団員の黛由佳が亡くなったため欠員補充のオーディションが開かれる。学生時代に彼女と親しかった坂下英紀は彼女の死に疑念を抱き、オーディションを受けることでその真相に迫ろうとするが……。
ミステリーだと思って読むと肩透かしを食らう。本作
...続きを読むで描かれているのはクラシック音楽や演奏を含めた“芸術”の本質だ。
登場人物の1人が言う。「人間は、何も判らない」。この言葉が繰り返され、すべては〈錯覚〉だとされる。
深い。そしておもしろい。年間ベスト入り確定の1冊。
Posted by ブクログ
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大好きな作家さんの安定した面白さ!
フルート奏者として悩む主人公の少女と、出会う人たちが抱えるそれぞれの事情や葛藤が丁寧に描写され、映画を見ているような気持ちになりました。
夢が叶いそうにない時、誰でも理由をつけて他の道を選びたくなるものですが、この本を読んでいると頑張りたいと思えます。
Posted by ブクログ
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本の雑誌3月号の新刊めったくたガイド(SF)を読み終えて、何の気なしに次頁をめくったら、推理小説のページに「音楽とは何か」を問う、逸木裕『四重奏』を推す!という見出しに釘付けとなった。いつきひろし?あの演歌の?ではない。「いつきゆう」とルビが振ってあった。そりゃそうだ、予備知識が無ければそう読むでし
...続きを読むょう。約三段の解説を読み終えたら、この本を直ぐに手に入れたいという衝動にかられた。これは本当に推理小説なのか?内容が甘利にも次元の高い音楽の話をしている。今まで関わってきた私と音楽との関係を見直すきっかけになりそうなテーマに手が震えた。よほどクラッシック界の実情を御存じなのか?それとも緻密な取材に寄るものなのか?この逸木裕のバックグラウンドが判らないので、もうどうしてよいか判らない。書評だけでこれだけ興奮すると、本を読み終わったら気絶しているかもしれない。因みに『四重奏』とは弦楽四重奏ではなく、チェロ四重奏。
読む前に紙面を使い過ぎた。さて、感想だが、考えが纏まらない。いろいろなことをいろいろ考えさせられる内容だった。本作品の根幹を成すテーマは「音楽とは何か?」、「模倣」か「オリジナリティー」か?
まずは「模倣」から考えよう。実は模倣は非常に高度な技術を要する。上手い人、下手な人、音量の小さい人、汚い音を出す人、テンポが一定しない人等々、それらの人の多様な音を再現するには、自分の音と相手の音の差をなくすこと。お笑いものまねタレントが本人と全く同じ動き、全く同じ声を出し、体形・表情・衣装を限りなく同じにするには涙ぐましい努力が必要だ。しかも一人だけではない、100人以上のものまねができる人もいる。世の中には特徴を掴む能力に長けたがいる。鵜崎が求めるのはそれに近いレベルだ。私も学生時代から楽器を演奏しているが、まずは有名奏者のまねをする所から入る。ベルリンフィルの首席と同じ音が出せるよう何日も徹夜で技術を磨いた。頭の中で一流奏者の響きが常に流れていればゴールは近い。
そして、次の段階が「オリジナリティー」だ。実際は、本書で書かれているように「模倣」と「オリジナリティー」は対立するのもではない。「模倣」の次に「オリジナリティー」の追及が来るのだ。様々な演奏の模倣ができるようになると、模倣した複数の演奏から取捨選択、良いとこ取りをする欲が出てくる。どの演奏にこの演奏をこの程度加えると言った香水調合の様な検討を行い自分自身特有のスタイルを確立する。これがオリジナリティーの追求だ。
そして最終段階が「アンサンブル」だ。勿論一人ではアンサンブルは成り立たない。二人以上人が集まって演奏すれば、ここからアンサンブル力が必要となり、時間と人をかけてアンサンブル力を磨く必要が出てくる。鵜崎の四重奏団は模倣とアンサンブルに特化し、オリジナリティーは徹底的に排除するといった歪な合奏に位置づけられる。プロアマ問わずこの3つができていれば音楽を楽しむ権利を得られる訳だ。鵜崎、可哀そうな奴。
本筋とは離れるが、ブルックナーの交響曲第9番を指揮する巨匠神山多喜司は、明らかに朝比奈隆のパロディだ。この皮肉は良く分かる。鵜崎・坂下は巨匠の化けの皮を心の中で剝いだだけではなく、神山(朝比奈)の狂信者に対して冷たい戦闘行為を繰り広げているのだ。テンポが遅ければ遅い程良いのであれば、チェリビダッケの演奏を死ぬまで聴けばよい。
要は、この作品に出てくる中途半端な登場人物達には「模倣」、「オリジナリティー」、「アンサンブル力」の3つのうち、いずれかが欠けている。例え、3つ全部を手にしたとしても、その時に人生の破滅、音楽の破滅・熱的死が待ち受けているという皮肉。
もっと掘り下げて考えたいが、文字にするとマイナス思考に陥ってしまうので、この辺で終わりにしたい。本作品はジャンルが推理小説ということだが、最後のどんでん返しがショボすぎて盛り上がらないまま終わってしまった。中山七里レベルまでは求めないが、華麗なネタばらしを次回は期待したい。最後に私としては、本作品は音楽小説としては最高峰に位置づけている。
Posted by ブクログ
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23/12/23〜24/1/2
7月に『23春』、8月に『22秋』、10月に『22春』、今回12月に『23秋』。順番が入れ替わったりしたけど、やっと最新作に追いついた。『23春』だけ、あと4人分がまだ読めてないので、次はそれを。
今回の『23春』は、今まで読んだ3つと比べてとても読み応えがあり、楽し
...続きを読むめた。
12/23〜12/27東川篤哉 ★★★
『どうして今夜の彼女は魅力的に映るんだろう』
『謎解きはディナーのあとで』以来。
おじさん作者らしいめんどくさい感じはあるものの、軽く読めて面白かった。トリックは想像通りだけど、まあ楽しく読めたのでよし。あるマイカの口調が楽しい。
12/27逸木裕 ★★★★★
『スプリット』
初読み作家さん。
才能を美醜で見分けられるスカウトマンの主人公。研ぎ澄まされた感覚で、粘り強くスカウトする姿が面白く、また主人公の成長物語でもあり、読後感がよかった。
回想シーンの入り方がわかりづらいため、読んでいて混乱した。回想シーンの会話は〈〉表記だと気付いてからはだいぶわかりやすくなった。
12/28長岡弘樹★
『笑う君影草』
初読み作家さん。
スズラン毒なことは、すぐに気付いた。
いじめられっ子が犯人なことはまあいいとして、
①いじめの解決策
②それにより本当にいないものとして見えなくなる
の2点が強引だと感じた。
①については、先生の悪手だと思うし、最後またそれを伝授しているのがダメだと思う。適切な関わりをしてほしかった。
②については、“いない人“が本当に見えなくなるってどんなホラーだよ、という感じ。お見舞いのシーンとか。
え、ホラー作家なのかな。ミステリーじゃなくて、ホラーミステリーなの?それならアリなのかも。私にとっては苦手な作品だった。
12/28似鳥鶏 ★★★
『名探偵名前が適当』
まあまあ楽しめた。いつも個性的なキャラが出てくる作家さんというイメージ。
12/29太田愛 ★★★★
『夏を刈る』
『22秋』の『鯉』は苦手だったけど、こちらは似たような作品ながら楽しめた。ドロドロ部分が少なかったからかな。中編作品を読んだような満足感だった。婚約者も兄もクズだなぁ。
1/2宮内悠介★★★★★
『最後のひと仕事』
面白かった。
結局、天才ではなかったのかもしれないけど、サイコっぽいなぁ。怖い。
Posted by ブクログ
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