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Posted by ブクログ
多少強引で粗削りな部分も感じてしまうものの、それでもそれも含めてその強い想いに共感と感動を覚えた。冒頭に提示される魅力的な謎を追究、発展させていくストーリー展開はめちゃめちゃ上手だと思う。たちまちのうちに引き込まれ、続きが気になってしょうがなかった。人工知能という舞台設定も興味深かった。水科晴、雨、そして工藤。時に性的に、時に狂気的に、暴走の気配も見せる小説だけれども、いやまてよ、恋は盲目、常識的な見境がなくなってしまうのも確かに恋の一面だったはずだ。
打算的だったはずの男が落ちた狂おしいほどの初恋とその悲劇的な終焉。これは良し悪しを超えてその強い想いが伝わってくる新時代のラブストーリーの傑作だと思う。
Posted by ブクログ
この小説を読んだとき「ギアチェンジがスゴい」小説だと思いました。自分が強く感じたのは小説の半分ほどでまず一回、そして終盤にもう一回。ギアを変えたときの振動で、頭を車の天井にぶつけそうになりました(笑)
一人の人格を完璧に再現する人工知能を作ることになり、そのモデルケースで既に亡くなっている女性が選ばれるのですが、その人工知能を作ることになったプログラマーが主人公のミステリ。
この亡くなった女性が、かなり個性的というか、とにかく強烈。彼女の自殺方法、生前の生活の様子は、まさに天才や異才の雰囲気を感じさせます。
以前、北村薫さんは宮部みゆきさんの『火車』を恋愛小説としても読める、と評したそうです。行方不明になった顔も分からない女性に、徐々に囚われ感情移入していく主人公は、一種の恋愛状態であると。
当時は、分かったような分からない感じだったのですが、この小説を読みようやく北村さんの言わんとするところが分かってきました。すでに亡くなった女性の行動に興味や共感を抱き、徐々に自分の理想を投影し囚われ始める。そしてその執着や行動の意味に主人公が気づいたとき……、まずこれがギアチェンジの第一段階。
彼女を再現するため、徐々に活動を活発化していく主人公ですが、その調査をやめるよう謎の脅迫者が出てきます。そこから徐々に亡くなった女性を探っていくミステリから、脅迫者は誰か、その目的は、というミステリも展開されていきます。
そうしたメインストーリーも面白いのですが、サブストーリーが面白いのも、この小説の魅力だと思います。主人公は調査の傍ら、自身が開発した人工知能を使った恋愛アプリをめぐるゴタゴタや、人工知能と将棋棋士の対決、いわゆる「電王戦」をめぐるゴタゴタにも巻き込まれていきます。
ここで社会が抱く人工知能のイメージや、あるいは個人が抱く人工知能のイメージも描かれて、無意識的に物語のテーマについてより深く考えるようになるのです。日々発展していく人工知能に希望をみるか、恐怖をみるか、友人とみるか、敵とみるか。
電王戦の話は長編のサブストーリーにするにはもったいなく感じる読み応えを、個人的には感じました。普通に棋士サイドの話も読んでみたい。
そして脅迫者の行為もエスカレートしていき、一方で主人公の調査もエスカレートしていき……、この辺の書き方もすごいなあ。主人公の執着具合や狂気の描き方が本当に秀逸で、なんだかダークヒーローの活躍を読んでいるような感覚を覚えていきます。ぶっちゃけ脅迫者よりも主人公の方が、怖いかもしれない……
そして、脅迫者の正体も分かり、主人公も危機を逃れ、ようやく人工知能作りも佳境に(ここまでのエピソードが濃厚なので、ここに至って、「あ、そういえば人工知能を作る話だった」と思い出しました……)
もうエピローグ的な感じだろうな、と思いながら読んでいたのですが、ここでさらにギアが入ります。「主人公、そこまでやるの……」と唖然とし「こいつ本気だな」と改めて物語に対し向き合わされ、気合いを入れ直し最後まで読み進めることができました。
ラストシーンも味わい深い……。ここに至って主人公のキャラクターの特異さの意味も分かった気がします。序盤を読んだ段階では、頭の良さを鼻にかけ、人生をバカにしている「イヤなやつ」という印象が強かったのですが、読み進めるにつれ、徐々にその感情は薄れてきて、そしてラストに圧倒されました。
解説の恩田陸さんも書かれているのですが、これは一種の青春小説でもあったわけですね。思わずスタンディングオベーションを送りたくなるような、そんなラストシーンだった気がします。
第36回横溝正史ミステリ大賞
Posted by ブクログ
SF+ミステリー+恋愛。
しかしこのSF的な要素についてはかなりの現実味というか、現状AIの進化は驚くべきものがあるので、もうAIと恋愛をすることが不自然ではない時代が来るのでしょう。もしかしたら来ている???
既にこの世を去っている見知らぬ女性をAIとして復活させる。しかも彼女は世間を騒がせた犯罪者で、自らを標的として自殺を遂げている人物。これだけで既に面白い話になりそうだなと想像させますが、正直ここまでSFとミステリーに振ってくるとは思いませんでした。表紙からするともっと恋愛感動に大振りしてくるのかなと。
捻くれているうえに類まれなる頭脳を持っているが故に、生に倦んでいる青年が主人公ですが、すでに死んでいる女性を復活させる為に次第に感情が白熱してくる所が面白い。
そしてサブキャラにもなかなか面白い人物がいるので、一過性の容疑者では片づけられない魅力が有ります。
AIとの恋愛というのは単純に人柄やその雰囲気に魅力を感じるという事でしょう。そこには肉体的接触も金銭的な含みもない、純粋な存在への欲求であると言えるでしょう。
純粋な愛を結晶化させたものに人間が食い込むのは非常に難しいので、本当にAIの中から理想の存在を見つけた人には心からの祝福を送るしかないでしょう。不完全な我々には完全で理想的な受け答えをするAIに勝つ術はないでしょう。
恋愛とは言わなくとも、年を取って一人になってからAIが救いになる事は大いにあるかもしれません。
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