あらすじ
2020年、研究者の工藤賢は死者を人工知能化するプロジェクトに参加する。モデルは美貌のゲームクリエイター、水科晴。晴は“ゾンビを撃ち殺す”ゲームのなかで、自らを標的にすることで自殺していた。人工知能の完成に向け調べていくうちに、工藤は彼女に共鳴し、惹かれていく。晴に“雨”という恋人がいたことを突き止めるが、何者かから調査を止めなければ殺す、という脅迫を受けて――。極上のミステリ×珠玉の恋愛小説! 第36回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
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最初からすごい引き込まれた。
徐々に、水科晴がどんな人物なのか。なぜ、その生き方を選んだのか気になっていく。
《虹を待つ》ってなんの事だろ?と思いなが読み進めると、最後は本当に素晴らしかった。
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多少強引で粗削りな部分も感じてしまうものの、それでもそれも含めてその強い想いに共感と感動を覚えた。冒頭に提示される魅力的な謎を追究、発展させていくストーリー展開はめちゃめちゃ上手だと思う。たちまちのうちに引き込まれ、続きが気になってしょうがなかった。人工知能という舞台設定も興味深かった。水科晴、雨、そして工藤。時に性的に、時に狂気的に、暴走の気配も見せる小説だけれども、いやまてよ、恋は盲目、常識的な見境がなくなってしまうのも確かに恋の一面だったはずだ。
打算的だったはずの男が落ちた狂おしいほどの初恋とその悲劇的な終焉。これは良し悪しを超えてその強い想いが伝わってくる新時代のラブストーリーの傑作だと思う。
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主人公の独善的でステキな性格(←嫌味)に多少イライラしつつも、謎と伏線回収のバランスが良く、続きが気になりほぼ一日で読破。
ラストで「ざまぁ!」と思うか「哀れ…」と思うか。
それは読者次第。
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この小説を読んだとき「ギアチェンジがスゴい」小説だと思いました。自分が強く感じたのは小説の半分ほどでまず一回、そして終盤にもう一回。ギアを変えたときの振動で、頭を車の天井にぶつけそうになりました(笑)
一人の人格を完璧に再現する人工知能を作ることになり、そのモデルケースで既に亡くなっている女性が選ばれるのですが、その人工知能を作ることになったプログラマーが主人公のミステリ。
この亡くなった女性が、かなり個性的というか、とにかく強烈。彼女の自殺方法、生前の生活の様子は、まさに天才や異才の雰囲気を感じさせます。
以前、北村薫さんは宮部みゆきさんの『火車』を恋愛小説としても読める、と評したそうです。行方不明になった顔も分からない女性に、徐々に囚われ感情移入していく主人公は、一種の恋愛状態であると。
当時は、分かったような分からない感じだったのですが、この小説を読みようやく北村さんの言わんとするところが分かってきました。すでに亡くなった女性の行動に興味や共感を抱き、徐々に自分の理想を投影し囚われ始める。そしてその執着や行動の意味に主人公が気づいたとき……、まずこれがギアチェンジの第一段階。
彼女を再現するため、徐々に活動を活発化していく主人公ですが、その調査をやめるよう謎の脅迫者が出てきます。そこから徐々に亡くなった女性を探っていくミステリから、脅迫者は誰か、その目的は、というミステリも展開されていきます。
そうしたメインストーリーも面白いのですが、サブストーリーが面白いのも、この小説の魅力だと思います。主人公は調査の傍ら、自身が開発した人工知能を使った恋愛アプリをめぐるゴタゴタや、人工知能と将棋棋士の対決、いわゆる「電王戦」をめぐるゴタゴタにも巻き込まれていきます。
ここで社会が抱く人工知能のイメージや、あるいは個人が抱く人工知能のイメージも描かれて、無意識的に物語のテーマについてより深く考えるようになるのです。日々発展していく人工知能に希望をみるか、恐怖をみるか、友人とみるか、敵とみるか。
電王戦の話は長編のサブストーリーにするにはもったいなく感じる読み応えを、個人的には感じました。普通に棋士サイドの話も読んでみたい。
そして脅迫者の行為もエスカレートしていき、一方で主人公の調査もエスカレートしていき……、この辺の書き方もすごいなあ。主人公の執着具合や狂気の描き方が本当に秀逸で、なんだかダークヒーローの活躍を読んでいるような感覚を覚えていきます。ぶっちゃけ脅迫者よりも主人公の方が、怖いかもしれない……
そして、脅迫者の正体も分かり、主人公も危機を逃れ、ようやく人工知能作りも佳境に(ここまでのエピソードが濃厚なので、ここに至って、「あ、そういえば人工知能を作る話だった」と思い出しました……)
もうエピローグ的な感じだろうな、と思いながら読んでいたのですが、ここでさらにギアが入ります。「主人公、そこまでやるの……」と唖然とし「こいつ本気だな」と改めて物語に対し向き合わされ、気合いを入れ直し最後まで読み進めることができました。
ラストシーンも味わい深い……。ここに至って主人公のキャラクターの特異さの意味も分かった気がします。序盤を読んだ段階では、頭の良さを鼻にかけ、人生をバカにしている「イヤなやつ」という印象が強かったのですが、読み進めるにつれ、徐々にその感情は薄れてきて、そしてラストに圧倒されました。
解説の恩田陸さんも書かれているのですが、これは一種の青春小説でもあったわけですね。思わずスタンディングオベーションを送りたくなるような、そんなラストシーンだった気がします。
第36回横溝正史ミステリ大賞
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人工知能開発者が亡くなった人間を甦らせる道筋で恋をしてしまう話
面白かった
オーディブルで視聴
5つの季節に探偵は、を先聴いていたからより楽しめた
みどりの声が本作とは違ってて、そこも面白かった、5つの季節にこ声の方が私の印象と合ってる感じ
みどりはちょっとアホっぽい
hal誰なのか、などは結構読めし、こういうことか!みたいな解決パートくどいなとは思った
そして主人公がキショい
柳田はスキ
最後の目黒がスッキリしすぎてて嫌だった
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人工知能に縋る事は倫理観に触れるのだろうか。
人に与えられた期間楽しく過ごす手段として恋人を作ったり友人を作るのと同じなのではと思った。
ただ耳障りの良い言葉に慣れて社会不適合者になると話は変わるけど。何でも塩梅が大切。
そんな事を感じたお話でした。
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初逸木。少〜し読んだだけで、これは間違いなく面白いっ!と直感した本作。その結果……大当たりな作品でした(^^) ある(頭も性格もいい完璧な)男が、初めて愛した女性は残念ながらもう既に死んでいた——それを人工知能として蘇らせる話。究極の恋愛小説。星四つ半。
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ライトノベルのような昨日かなぁ〜と舐めてかかって読み始めたら,大パンチ喰らいました〜
すごく良かったです。
文章も上手でどんどん読み進めることができるし、ミステリー?サスペンス?な感じであっという間に作品にのめり込んでいました。
恋愛,青春,ミステリー、と三つのテーマが一つになった一つで3度美味しい作品でしたー!
若い子に読んで欲しいよ青春小説ですね!
アラフォーのおばさんんでもとっても楽しめました!
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6月の合同サイン会のサイン本の一つ。
若き天才的ゲームクリエイターの女性が,自分の作ったゲームと現実をリンクさせる仕掛けをして,ゲームに自分を殺させるという特殊な自殺を諮った。
晴というその女性は伝説化し多くのファンを生んだ。AIの研究者である主人公・工藤はAIのキャラクターと人間とのように会話できるシステムの開発者の一人だが,その発展形として死者をAIとして蘇らせるプロジェクトに携わることになる。プロトタイプとして蘇らせる対象となったのが晴である。有名人でもあったが謎の多かった晴を蘇らせるためのデータ収集は難航するが,工藤は次第にのめり込んでいく。工藤が最終的にたどり着いたのは...。という話。
なかなか面白かったし,AIのこともよく勉強してるとは思った。が,お約束としてIT関係にダメ出しをしておく。ITがテーマなのだから普通の作品と違ってリアリティはさらに重要となるはずだ。しかしIT企業のことはあまり良く分かっていないのかもしれない。ITを生業としている企業にあって,社内会議の資料を紙で配布するなどということはもう10年以上前からしていないはずだ。ペーパーレス化という言葉が一般に使われだしてからも久しい。更に笑えるのは,SNSで見つけた情報を保存するために加味に印刷して(ここまでは100歩譲るとしても),印刷された紙をスキャンしてPCに取り込むところ。ITを馬鹿にしてるのか。印刷する際にプリンタに出力するのではなくPDFに出力するなんてことはもう何十年も前から普通に行われているのですよ。印刷してスキャンなんて不毛なこと誰もしない。他にも細かいことを言い出すときりがない。AIについても微妙に勘違いしているところがあるように思う。
本筋と関係ないので書いておくと,AIチャットに背中を押されて,離婚したり,自殺したりということが起きて,裁判沙汰になるなんてことは今後起こりうるのだろうか。AIにはアルゴリズムはあるが,学習の結果AIモデルがどういう出力を出すかは基本的にブラックボックスなところがあって,事前に予想することは難しい。それについて企業が責任を負えるのか,負うべきなのかは今後,倫理関係を含めて議論が起こるところだろう。
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横溝正史ミステリ大賞受賞作だそうな
なるほどミステリちゃミステリやな。意外と読んだことないノリな気がしました。「i」からファンタジー要素抜いた感じ??(違ったらすみません…)。おもしろく読めました。
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人工知能とか、電子用語あちこちとか、新時代のミステリ。読むのを止められない。
雨のことは割と早い段階でわかるし、ハードボイルド的展開は中途半端な感じもするけど、読みやすい文体で爽やか。
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SF+ミステリー+恋愛。
しかしこのSF的な要素についてはかなりの現実味というか、現状AIの進化は驚くべきものがあるので、もうAIと恋愛をすることが不自然ではない時代が来るのでしょう。もしかしたら来ている???
既にこの世を去っている見知らぬ女性をAIとして復活させる。しかも彼女は世間を騒がせた犯罪者で、自らを標的として自殺を遂げている人物。これだけで既に面白い話になりそうだなと想像させますが、正直ここまでSFとミステリーに振ってくるとは思いませんでした。表紙からするともっと恋愛感動に大振りしてくるのかなと。
捻くれているうえに類まれなる頭脳を持っているが故に、生に倦んでいる青年が主人公ですが、すでに死んでいる女性を復活させる為に次第に感情が白熱してくる所が面白い。
そしてサブキャラにもなかなか面白い人物がいるので、一過性の容疑者では片づけられない魅力が有ります。
AIとの恋愛というのは単純に人柄やその雰囲気に魅力を感じるという事でしょう。そこには肉体的接触も金銭的な含みもない、純粋な存在への欲求であると言えるでしょう。
純粋な愛を結晶化させたものに人間が食い込むのは非常に難しいので、本当にAIの中から理想の存在を見つけた人には心からの祝福を送るしかないでしょう。不完全な我々には完全で理想的な受け答えをするAIに勝つ術はないでしょう。
恋愛とは言わなくとも、年を取って一人になってからAIが救いになる事は大いにあるかもしれません。
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三十路のおっさんの初恋から失恋までを長々と読ませられるこっちの気持ちも考えてくれよ……。
いやまぁしかし随分とひねくれた恋愛小説だこと。
そして驚愕のオチ!
まぁまぁ面白かった。
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AI技術により死んだゲームクリエイターを蘇らせようとするが、誰からか脅迫状が届く。
調査する過程がミステリっぽく面白い。また謎の人物が意外にもという感じだが無理矢理っぽい。時代に合わせた結果かな。
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自殺したゲームクリエイターの水科晴を人工知能として蘇らせようとする工藤。晴の過去を探るうち魅了され恋愛感情を抱く。誰かに命を狙われながらも調べることをやめない工藤。自分でも想像していなかった感情に囚われていくさまは狂気すら感じさせる。ゲームの世界とうまく絡めてあったり、人工知能の善し悪しなどもあってとても面白い。
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AIフリクトの開発者工藤賢は、亡くなった水島晴を再現するプロジェクトを進めることになる。
フリクトをめぐる訴訟があり、委託先から契約を解除され、自己資金で進めることになる。
ほとんど記録の残っていない晴のことを調べながら、晴を再現することに成功する。
話としては少しいらないのではというエピソードもある気がするが、全般おもしろい。登場人物にも魅力的な人がいる。主人公工藤は全て思い通りにでき、開発もできる頭脳を持つが、人間的にはあまり思い入れできるようなタイプではない。
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AIによる死者の再現
この骨組みに興味があった。ミステリー要素、恋愛の要素がスパイスになってとても楽しかった。たぶん、AIは背景であって主題は恋愛なんだろうなと思うんだけど、その筋に疎い私は、そこよりAI側に面白さを感じた次第。
AIと言っても背景レベルだから学術的ではないと思うし、ミステリー要素も実はあまり面白くないんだけど、とにかく一気読みしたのは事実。
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ストーリーは面白かったが、主人公の感情の変化にいまいち共感できず。
見ず知らずの人に惹かれるというのはわからなくはないが、愛までいくか?と気になってしまった。
結末は切ないが、途中途中で主人公の感情にもっと焦点を当てた表現なりストーリーがあれば、もっと色々な気持ちが湧き起こりそうな結末になったであろうに少し勿体なく感じた。
とはいえこちらはデビュー作ということなので、他の作品もぜひ読んでみたいと思う。
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――
……あまり強い言葉を遣うなよ、弱く見えるぞ。
死者の人工知能化、自ら作ったゲームの中で自殺したゲームクリエイター、囲碁AIと人間による対局…と並べてみると、なんとなく2010年代のSFとしてはよくある、部類になってしまうのかしら。
率直な感想としては、凡庸な天才だなぁ、という感じ。
要素が盛り沢山な割にストーリィも良くまとまっていて、伏線回収あり、どんでん返しありのサスペンス・ミステリとして面白く読める一冊ではあるのだけれど、ちょっと物足りないのはどの分野に関してもエキスパートではないんだろうなぁ、というところ。
あと、主人公が応援できない。これは重大。
いかにも現代的な天才、というか、現代で天才と評されやすいタイプ、というか。
これは全体的に、地の文が「言い過ぎ」なことも関係しているのだろうけれど、懇切丁寧に説明するところなどが主人公の性格も相俟って読者の知的レベルを軽んじているように感じられたり、あとは単純に口調が露悪的であったり。
これも現代的な部分なのかもしれません。強い言葉、直截的な言い廻しを遣えばキャラが立つか、場面が引き締まるかというとそうではなくて、単純にダサくなってしまう。
まぁそのあたりは好みの問題でしょう。
☆2.5
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主人公の思想が気持ち悪い・・・。
昔の偉人と話してみたい思いはあるので、
このアイデアはいつか実現してほしいです。
「人間は多彩だ。虹のように」
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ミステリ……の皮を被った本質は恋愛小説なのではないかと思います。
人工知能のモデル(故人)に惚れてしまった男と、亡くなったモデルの女性、そしてその恋人の関係を中心に描かれています。モデルの女性は亡くなっているので、最初から報われない恋なのですが。
主人公の男が本当に腹の立つやつで、斜に構えたプライド高くすかした男で最初は本当にイライラするんですが、恋をしてから少しずつ愛に狂っていき、人間味が出てきてよかったです。
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虹の一言に込められた想いは感じられた。でも使い方が気に入らない。この本に限らないんだけど、気に入らない。AI絡みのところは、そうね、できたら面白いなと思えたので、よかった。
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内容(「BOOK」データベースより)
2020年、研究者の工藤賢は死者を人工知能化するプロジェクトに参加する。モデルは美貌のゲームクリエイター、水科晴。晴は“ゾンビを撃ち殺す”ゲームのなかで、自らを標的にすることで自殺していた。人工知能の完成に向け調べていくうちに、工藤は彼女に共鳴し、惹かれていく。晴に“雨”という恋人がいたことを突き止めるが、何者かから調査を止めなければ殺す、という脅迫を受けて―。第36回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
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虹を待つ彼女/逸木裕
第36回横溝正史ミステリ大賞受賞作
6年前に劇場型自殺事件を起こして死亡した
ゲームクリエイター水科晴(はる)。
人工知能会話システムの開発者 工藤賢は、
システムの更なるユーザー開拓の一環として
晴の人工知能の開発に着手する。
晴の人工知能を作るために晴の情報を集める中、
過去を調べるなと脅迫状が届く。
なぜ晴は周囲を巻き込んで自殺をしたのか、
その本当の理由に迫る。
驚きのラストは切ないけれど清々しい。
Posted by ブクログ
SF色の強いミステリ。道具立てが多彩で死者を再現する人工知能開発の話を軸に、AI囲碁の対戦、主人公の人格の欠損など面白い部分が多い。
人工知能開発に必要な「晴」という自殺した女性の人格調査がメインとなってくる。この部分で調査を妨害する者の正体は意外に早くわかってしまう。早くわかりすぎて、ミスリードか?と訝しんでしまうくらい。この点はストレートだった。
晴の謎の行動については、ちょっと説明不足だと思う。
自殺の理由がいまいち分かり難い。
自分が同性愛であることを検証するなら、三か月男と付き合い、三か月女と付き合う対照実験実験が筋が通っているけど、それは物語の構成なので仕方ない。
ラストまでの流れは情緒的で、論理性の面でいまひとつすっきりしなかった。