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森田みどりは、高校時代に探偵の真似事をして以来、人の〈本性〉を暴くことに執着して生きてきた。気づけば二児の母となり、探偵社では部下を育てる立場に。時計職人の父を亡くした少年(「時の子」)、千里眼を持つという少年(「縞馬のコード」)、父を殺す計画をノートに綴る少年(「陸橋の向こう側」)。〈子どもたち〉をめぐる謎にのめり込むうちに彼女は、真実に囚われて人を傷つけてきた自らの探偵人生と向き合っていく。謎解きが生んだ犠牲に光は差すのか。痛切で美しい全5編。
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Posted by ブクログ
前作よりも間違いなくこのシリーズ、磨きがかかっている。 好みの問題と言われればそこまでなのだが、ビターな味わいといい、日常の謎の延長線にありそうな作風といい、ハードボイルド(それでいてステレオタイプになっていない)な描写といい、何もかもがぴったり揃うパズルのピースを揃えたかのようで最高なのだ。 短編...続きを読む集だが連作のような雰囲気があるし、何よりトリックと人がきっちり描けている。ミステリというと大掛かりなトリックだけが独り歩きしがちだが、本作は事件を起こす「ひと」にも焦点が当てられている。これはいい。最高などという言葉ではもったいないぐらいだ。
探偵事務所の探偵さんが主人公の短編集 一つの謎にのめり込んでしまうタイプの主人公が、バラバラのピースを集めて、一気に真相へ間合いを詰めていく感じがぞくぞくする。 前作があるようなので読んでみたい。 ひさびさに魅力的な探偵さんに出会えた。
森田みどりは、二児の母で複数の部下も持つ中堅の私立探偵。家族を大切にしつつも、出会った相手の素性を執拗に追い求めてしまう好奇心旺盛な性分が故に、深みにハマってしまうこともしばしば。彼女が巡り合った少年達の内側に迫る連作短編集。 「時の子」 時計師親子の物語。 私も腕時計をオーバーホールに出したこと...続きを読むがある。安くはない金額だったが、精緻極まりない時計を扱う時計師の緻密な技能には払って然るべき費用だったかなと。本書も、時計さながらの緻密な伏線が紐解かれた後の意外性が冴え渡る。 「縞馬のコード」 “千里眼を持つ”という謎めいた少年に引っ張られてグイグイ読ませる。 みどりの心理描写(下記)に大共感。子育てにも部下との関係にも活かせそうな金言だ。 「人を動かすとは、言葉を見つけることだと思う。ひとりひとりに違う言葉が必要で、それは時期によっても違う。正しい言葉を注意深く見つけ続けていかないと、やがて話すら通じなくなる。」 「陸橋の向こう側」 父親の殺人を図る少年と、それをなんとか食い止めたいみどり。“文通”で互いの心理を探り合うプロットが良い。「人間は書くことで思考を整理できる」というのも共感。だから私もレビューを書くのだ。 「太陽は引き裂かれて」 クルド人問題を扱ったセンシティブな社会派ミステリ。国を持たない民族の苦しみを考えさせられた。海に囲まれた自然が豊かな日本は、本当に豊かな国なのか?地政学はいずれ読書で学びたい興味あるテーマ。 「探偵の子」 自分に似て好奇心旺盛な子供に振り回され葛藤するみどり。親子愛に包まれたあたたかみのあるストーリー。親はいつまでたっても子供の事が心配。でもきっと大丈夫。うんうん。 「六色の蛹」「明智恭介の奔走」「僕は化け物きみは怪物」など、今年はミステリ短編集の良作が多かったが、その中でも本書は一推しだ。伏線を巧みに織り交ぜた謎解きと人間ドラマが実に上手く融合している。鋭い洞察力を持ちつつ根底には人として•母親としての優しさを持ち合わせる森田みどりは魅力的な探偵だ。謎が解けた後はハートウォーミングな心地良い読後感に満たされた。 また気になる作家さんが増えてしまった(嬉しい悲鳴)。 週刊文春ミステリーベスト10 16位 本格ミステリ・ベスト10 12位 SRの会ミステリーベスト10 4位 ミステリが読みたい! 20位 リアルサウンド認定国内ミステリーベスト10 1位 本格ミステリ大賞 受賞 《榊原(森田)みどりシリーズ》 1.星空の16進数 2.五つの季節に探偵は 3.彼女が探偵でなければ
連作集。全5篇。作中で時は2022年の夏から2024年の夏に向け流れていて、その時々の時事問題が各作品に取り入れられ、かつ、主人公であるみどりさんとその夫、そして二人の子供の成長が感じられるようになっている。巻末の参考文献一覧をみると、クルド人についての文献が圧倒的に多く、それらの文献の知見が活用...続きを読むされた『太陽は引き裂かれて‐2024年 春』(pp181-270)はたしかに見事なんだけど、好みだったのは巻頭に置かれた『時の子‐2022年 夏』(pp5-68)。この連作集のテーマ(時間・周縁を生きる人びと・家族のあり方)が一番自然に描かれているように感じた。ついこの間、ある古本屋さんのエッセイで、本への書き込みはやめてほしい・本を大切にしてほしいという記述を読み首を傾げたばかりなので、みどりさんの子供・理の本の読み方(p330)には笑っちゃうと同時に共感しちゃった。そう、本って、ページを折ったり線を引いたりしながら読みこんでいくものだ。
私立探偵の連作短編シリーズ2作目。主人公は2児の母の顔を持つ一方、真実を求めることに執着する性分であり、この危なさが本作の肝と言えます。端正な文体と言葉選びのセンスの良さで読ませる力があります。ただ、結末の方は(狙いは分かるものの)ピンとこない話もありました。未読の1作目も読んで、著者やみどりについ...続きを読むて理解を深めようと思います。
止まらない好奇心が事件を解決する 探偵みどりの第2弾。 帯の「本格ミステリ大賞受賞」に惹かれ手に取ったが、まさかの前段があるなんて、そちらも読まねば。 でも、前段がなくとも本著は本著として読めました。 探偵という職業で、2児の母である主人公みどり。 自らの好奇心を満たさずにはいられず、家庭を顧み...続きを読むないとしばしば自らの習性に嫌悪する。だが、だからといってその習性や探偵という職業を辞めることは出来ない。 ただひたすらに真相を追い求める根っからの探偵。 まさしく、彼女が探偵でなければ…何を探偵というのか。はたまた彼女のような者こそ探偵でなければならないのか。 何かを追い求めること、大なり小なりあるし、それに対する葛藤もある。けれど、「自分はそれを求める習性があるのだ」と受け入れ、進むという選択しか私にはないし、それでいいと思える一冊だったなと。
父が社長を務める探偵会社"サカキエージェンシー"で女性探偵として活躍する森田みどりを主人公にした二作目。 二作目も面白かった。 前作の一話目で、十六歳の高校生だったみどりも、結婚し、2人の子どもをもち、"女性探偵"としても確実にキャリ...続きを読むアを積み、メディアにも取り上げられるようになっている。そんななか、今作でみどりが関わるメインとして置かれていたのがかつての自分と同じような"子ども"であった。相手が子どもだからであろうか、それともみどりが夫や子どもという大切な存在を得たからであろうか、今作では前作よりも、みどりが"真実を暴く"ことに対して罪悪感を抱き、思い悩んでいるところが深く描かれていたように思う。 "真実を暴く"ことを業とし、それがただ正しいこと、正義であるかのように振る舞う他の作品の"探偵"像。もちろん、それらの"探偵"も魅力的ではあるが、時に暴かれた方に同情の余地がある場合はそちらに感情移入し、"探偵"に対して反感を抱くこともある。 そんななか、みどりのような"探偵"像がすごく新鮮で、魅力的に感じた。
第25回2025年本格ミステリ大賞受賞作品と言うことで読みました。 夫と子持ちの女性探偵。なかなかなかった設定でしたが、今までの探偵もののように、現実離れしていなくて逆に良かったです。 読み終わってから、前作『五つの季節に探偵は』(榊原みどりが高校2年生)があったことを知り、しまった...と思いまし...続きを読むたが、今からでも読んでみたいと思います。 探偵の子...良かったので、次作は森田理のその後を読みたいです。探偵の子の探偵の子がどう成長するのか...気になる。
探偵ものでも静かというかやはりビターな感じでジワジワと続きを読んで見たくなる味わいがある。前作も森田みどりも始めてだが今までの過程が知りたくなった。
森田みどり。今回も、感情、私情にとらわることなく真実をつきとめることに一直線。 歳を重ね大切な家族ができても、彼女 は 探偵でなければいけない使命のようだ。 このシリーズまだまだ続いてほしい。事件までいかず探偵が活躍できる範疇なのですが、ホー、と楽しませてくれる謎解きが心地良い。 理くんが、お母...続きを読むさんと同じ仕事で活躍する日が訪れるのかも。
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彼女が探偵でなければ
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逸木裕
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