国内小説 - 新潮社 - 新潮文庫作品一覧

  • 肖像彫刻家(新潮文庫)
    4.2
    芸術家の道を諦めた中年バツイチの正道。心機一転、八ケ岳山麓に移住するが、本場イタリア仕込みの腕を振るった女神像は、あらぬ場所に置かれてしまう。それでも注文には心を込めリアルな彫像を造った。だが耳を疑うことが起きた。喋るというのだ、肖像が……。古刹の訳あり仕事から、亡き両親の像、大胆な裸体彫刻まで、珍現象が巻きおこす人間模様をからりとしたユーモアで笑い飛ばす傑作。(解説・鵜飼哲夫)
  • 歩道橋シネマ(新潮文庫)
    3.5
    1巻781円 (税込)
    それは他愛のない噂だった。その日、その時間にその場所に行けば、かつて大事にしていた記憶に出会えると――。郷愁と不思議に彩られた表題作。学園のおぞましい秘密「球根」。偶然出会った光景が物語を生成する「皇居前広場の回転」。ある青年の死をめぐる驚愕の真実が明かされる「降っても晴れても」。憧憬、恐怖、諧謔、戦慄、衝撃、恍惚……あらゆる感情が押し寄せる小説の奇跡、全18話。
  • ボダ子(新潮文庫)
    3.1
    35歳で起業し、年商十億円を超える会社の社長となった大西浩平。だが、事業の成功の裏にあった家族を顧みない生活は、娘の境界性人格障害(ボーダー)の発症へとつながる。自傷行為を繰り返す娘につきっきりの生活により、事業は破綻。そして浩平は、東日本大震災の復興事業に起死回生をかけて、娘と元妻とともに被災地へと向かうが――。山本周五郎賞候補となった、実体験に基づく衝撃作。
  • あなたの右手は蜂蜜の香り(新潮文庫)
    3.3
    1巻781円 (税込)
    私があなたを、檻から助け出す。どんなことをしてでも、必ず――。幼い私を守った銃弾が、あなたからお母さんを奪った。あの日から、あなたの声が聞こえる。「ここからだして、かえりたい」。人生のすべてを懸け、血のにじむ努力を重ね、ついにあなたのそばに辿り着いた雨子は、その唯一つの願いを叶えられるのか。真っ直ぐな想いに言葉にできない熱い涙がこみ上げる。少女(あたし)と子熊(あなた)の、愛の物語。(解説・藤田香織)
  • 妻と女の間(上)(新潮文庫)
    完結
    -
    全2巻781円 (税込)
    年下の研一の積極的な愛に、自らも惑溺していく未亡人安澄と、研一に思慕を寄せながら、母との秘密を知って衝撃を受ける娘耀子。夫の浮気に悩む優子と妻としての安穏な生活にあきたりない乃利子。そして妻子ある男との恋に奔る英子。――恋に悩み愛に苦しむ女たちの内面の屈折と感情の交錯を描きつつ、既成の枠ぐみに縛られない現代の愛と性を摸索して、読者の深い共感を誘う長編。
  • 鬼憑き十兵衛(新潮文庫)
    3.9
    寛永十二年、熊本藩主・細川忠利の剣術指南役を務める松山主水大吉が暗殺された。主水の隠し子・十兵衛は父を襲った十五人の刺客を続けざまに斬り裂く。二階堂平法秘伝の技〈心の一方〉によって。僧形の鬼・大悲を連れ、父の暗殺を企てた者への復讐を誓う十兵衛。だが、金色の髪に深い海のような瞳をもつ少女と出会い……。時代伝奇小説の新たな傑作! 日本ファンタジーノベル大賞2018受賞作。(解説・前島賢)
  • 君たちに明日はない(新潮文庫)
    3.8
    「私はもう用済みってことですか!?」リストラ請負会社に勤める村上真介の仕事はクビ切り面接官。どんなに恨まれ、なじられ、泣かれても、なぜかこの仕事にはやりがいを感じている。建材メーカーの課長代理、陽子の面接を担当した真介は、気の強い八つ年上の彼女に好意をおぼえるのだが……。恋に仕事に奮闘するすべての社会人に捧げる、勇気沸きたつ人間ドラマ。山本周五郎賞受賞作。
  • ひとつむぎの手(新潮文庫)
    4.3
    大学病院で激務に耐えている平良祐介は、医局の最高権力者・赤石教授に、三人の研修医の指導を指示される。彼らを入局させれば、念願の心臓外科医への道が開けるが、失敗すれば……。キャリアの不安が膨らむなかで疼く、致命的な古傷。そして緊急オペ、患者に寄り添う日々。心臓外科医の真の使命とは、原点とは何か。リアルな現場で、命を縫い、患者の人生を紡ぐ熱いドラマ。傑作医療小説。
  • 出版禁止 死刑囚の歌(新潮文庫)
    4.2
    千葉県柏市で6歳と4歳の姉弟が誘拐され、無惨な姿で発見された。犯人は死刑判決を受け、やがて刑は執行されたが、最後まで動機は不明だった。事件から22年後。東京都向島で凄惨な一家三人殺傷事件が発生する。殺害されたのはなんと柏の事件の……。共通する手口、戦慄の短歌、消えたM子。本当の鬼畜は誰なのか。虚実が複雑に絡みあい、逆転また逆転そして絶句。あなたは今度も騙される!(解説・前川裕)
  • 文字渦(新潮文庫)
    3.9
    1巻781円 (税込)
    「昔、文字は本当に生きていたのじゃないかと思わないかい」。始皇帝の陵墓づくりに始まり、道教、仏教、分子生物学、情報科学を縦横に、変化を続ける「文字」を主役として繰り広げられる連作集。文字を闘わせる遊戯に隠された謎、連続殺「字」事件の奇妙な結末、本文から脱出し短編間を渡り歩くルビの旅……。小説の地平を拓く12編、川端康成文学賞・日本SF大賞受賞。(解説・木原善彦)
  • 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)(新潮文庫)
    完結
    4.2
    全2巻781~880円 (税込)
    高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす〈僕〉の物語、〔世界の終り〕。老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた〈私〉が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する〔ハードボイルド・ワンダーランド〕。静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。
  • カタストロフ・マニア(新潮文庫)
    3.0
    治験のアルバイトに参加したミロク(26)が病院で目を覚ますと、地上から人の姿が消えていた――。コロナ質量放出が地球規模の大停電を引き起こし、ライフライン停止、原発危機、新型ウイルスによる感染症の蔓延が同時発生。あっというまに近代文明は失われ、人工知能が新世界の構築を推進している。人類はこのまま滅びゆくしかないのか? 前代未聞の大淘汰に、一人のゲーマーが立ち向かう。宮内悠介氏との刊行記念対談も収録。(解説・小島秀夫、どぶろっく 江口直人、ゴールデンボンバー 歌広場淳、吉川浩満)
  • 鬼絹の姫―ソナンと空人2―(新潮文庫)
    3.6
    1巻781円 (税込)
    弓貴滅亡の危機を救ったソナンは、新たな名「空人」と領地・輪笏を与えられ、妻ナナや家臣らと旅立つ。赤く輝く花に彩られた美しい大地、だがそこは財政難にあえぐ貧しい場所でもあった。輪笏を立て直すため、空人は生き急ぐかのように奔走し、領民の心を動かしてゆく。数々の策が実を結び始めたころ、都に呼ばれた空人。そこで、予想外の事実を告げられ――。流転のファンタジー大作、第2巻。
  • 祇園白川 小堀商店 レシピ買います(新潮文庫)
    3.4
    1~2巻781~825円 (税込)
    祇園の名店『和食ZEN』の奥にある秘密の扉。『小堀商店』の入り口だ。ZEN店長の淳(じゅん)、売れっ子の芸妓(げいこ)ふく梅、市役所勤務の伊達男木原の三人は、食通として名高い百貨店相談役、小堀善次郎の命を受け、とびきりのレシピを買い取るため、情報収集に努めている。そして今日も腕利きワケありの料理人が現れて――。京都と食を知り尽くす著者が描く、最高に美味しくてドラマチックなグルメ小説。
  • 7番街の殺人(新潮文庫)
    3.0
    駆け出しの舞台役者・三枝彩乃は公演の稽古に励む毎日だったが、ある晩、母が急病で倒れてしまう。手術は成功したものの、今度は父が不倫相手と出奔。入院費と生活費を稼ぐべく女優・中原真知子の付人として働き始めた彩乃は連続ドラマの撮影に同行する。予定のロケ地が工事で使えず、新たに撮影場所に決まったのは、21年前に祖母が殺害された団地だった――。一気読み必至の青春ミステリー!(解説・大矢博子)
  • 英雄の条件(新潮文庫)
    3.7
    失踪したスポーツ医師が残した一冊のノート。そこには、日米野球界の英雄・津久見浩生(つくみひろお)の薬物使用が示されていた。高潔な元スター選手のスキャンダルに日米メディアの執拗な追及が始まる。疑惑を否定せず、最愛の妻にも沈黙を貫く彼の真意とは――。真相を追うフリースポーツ記者、裏工作を企む巨大代理人(エージェント)企業。人間の強さと弱さの極限を描いた熱くスリリングなエンターテインメント長編。(解説・池上冬樹)
  • 繭(新潮文庫)
    3.3
    美容師の舞は、結婚して一年になる夫に対し暴力を振るう自分を止められずにいた。ある晩、彼への暴力から逃れるように家を出ると、店の客である希子と遇う。同じマンションの住人と知り、二人は交流を重ねるが、希子は舞の夫のある秘密を抱え、舞に近づいていた。白壁の棲家で紡がれる歪(いびつ)な愛の支配にもがきながら、やがて渾然一体と追い詰められる女たち。怒濤の展開に息をのむ、衝撃の物語!(解説・文月悠光)
  • たんぽぽ団地のひみつ(新潮文庫)
    3.8
    1巻781円 (税込)
    取り壊しが決まった団地に暮らす祖父を訪ねた六年生の杏奈。そこはかつてドラマ『たんぽぽ団地のひみつ』のロケ地だった。夢の中で主演の少年、ワタルくんに出会ったことをきっかけに、杏奈と祖父、そして住民たちは、団地をめぐる時空を超えた冒険に巻き込まれて――。大人たちが生きた過去への憧憬と、未来へ向かう子どもたちへの祝福に満ちたミラクルストーリー。『たんぽぽ団地』改題。
  • 地下水路の夜(新潮文庫)
    3.8
    銀座の地下を流れる水路で、絵本を読み聞かせる美女に出会った少年の日。あれは全部、夢だったのか? 本を人生の友とする男の芳しき幻想譚(「地下水路の夜」)。死んだ少女に捧げる奇妙な言辞。そのリフレインが巻き起こす摩訶不思議な出来事とは(「朗読者」)。源氏物語、ギリシャ神話、夢十夜。短編の名手が古今東西の名作と共に、あなたを不思議な世界へと誘う。全ての本好き(ブッキッシュ)に贈る12の物語。
  • 一人っ子同盟(新潮文庫)
    3.8
    1巻781円 (税込)
    ノブとハム子は、同じ団地に住む小学六年生。ともに“一人っ子”だが、実はノブには幼いころ交通事故で亡くなった兄がいて、ハム子にも母の再婚で四歳の弟ができた。困った時は助け合う、と密かな同盟を結んだ二人は、年下の転校生、オサムに出会う。お調子者で嘘つきのオサムにもまた、複雑な事情があって――。いまはもう会えない友だちと過ごしたあの頃と、忘れられない奇跡の一瞬を描く物語。
  • 失格社員(新潮文庫)
    3.5
    1巻781円 (税込)
    嘘つき社員に傲慢部長、モーレツ執行役員にゴマスリ常務──不祥事の元凶がオフィスにはあふれている! サラリーマンが守るべき掟を「モーセの十戒」に擬えて、コミカルにシニカルに描く。秘かに転職を目論む銀行員の心の内は……「二神に仕えるなかれ」、セクハラ対策を担当していながら、生保の中堅幹部はなぜセクハラに陥ったのか……「汝、姦淫するなかれ」など、傑作十篇収録。
  • メガバンク絶体絶命(新潮文庫)
    4.1
    日本最大のメガバンクを喰らい尽くす、魔の「T計画」が発動! TEFG銀行は絶体絶命の危機に陥った。総務部長としてこの難局に挑む二瓶正平。そして、頭取の椅子を捨て相場師として生きていた桂光義が、義と理想のために起(た)つ。史上最大の頭脳戦がここに始まった。経済の巨龍・中国の影。謀略 vs. 戦略。マネーを知り尽くす著者にしか描けなかった、痛快無比の金融エンターテインメント。
  • 欲望
    3.9
    三島由紀夫邸を寸分違わず模倣した変奇な館に、運命を手繰り寄せられた男女。図書館司書の青田類子は、妻子ある男との肉欲だけの関係に溺れながら、かつての同級生である美しい青年・正巳に強くひかれてゆく。しかし、二人が肉体の悦びを分かち合うことは決してなかった。正巳は性的不能者だったのだ――。切なくも凄絶な人びとの性、愛、そして死。小池文学が到達した究極の恋愛小説。
  • すずの爪あと―乃南アサ短編傑作選―
    3.9
    一つになれない家族を猫だけが見つめ続けた――「すずの爪あと」。不倫に倦んで故郷に帰った女が癒やしを求めたのは――「秋旱」。幼時の事故で嗅覚を失った男が、ある女と出会って――「向日葵」。かつての恋人に書き続けたメールの思わぬ行方――「Eメール」。すれ違い、交錯する男女や家族の想いを、美しい風物とともに丁寧に描き出した11篇。珠玉のベスト短編集、第三弾。
  • 櫻守
    4.1
    1巻781円 (税込)
    丹波の山奥に大工の倅として生れ、若くして京の植木屋に奉公、以来、四十八歳でその生涯を終えるまで、ひたむきに桜を愛し、桜を守り育てることに情熱を傾けつくした庭師弥吉。その真情と面目を、滅びゆく自然への深い哀惜の念とともに、なつかしく美しい言葉で綴り上げた感動の名作『櫻守』。他に、木造建築の伝統を守って誇り高く生きる老宮大工を描いた長編『凩』を併せ収める。
  • メガバンク最終決戦
    3.9
    日本最大のメガバンクであるTEFG銀行。ディーラーとして名を馳せた桂光義は専務の地位にいた。ある日、盤石なはずの銀行は国債暴落を機に巨大負債を抱え、一夜にして機能不全に。暴落した株に群がるハイエナの如き外資ファンドや混乱に乗じて巨利を貪ろうと暗躍する政財官の大物たち――。桂は総務部の二瓶正平と共に生き残りを懸けた死闘に挑む。『メガバンク絶滅戦争』改題。
  • 水を抱く
    3.8
    初対面で彼女は、ぼくの頬をなめた。29歳の営業マン・伊藤俊也は、ネットで知り合った「ナギ」と会う。5歳年上のナギは、奔放で謎めいた女性だった。雑居ビルの非常階段で、秘密のクラブで、デパートのトイレで、過激な行為を共にするが、決して俊也と寝ようとはしない。だがある日、ナギと別れろと差出人不明の手紙が届き……。石田衣良史上もっとも危険でもっとも淫らな純愛小説。
  • 本にだって雄と雌があります
    4.0
    本も結婚します。出産だって、します。小学四年生の夏、土井博は祖父母の住む深井家の屋敷に預けられた。ある晩、博は祖父・與次郎の定めた掟「書物の位置を変えるべからず」を破ってしまう。すると翌朝、信じられない光景が――。長じて一児の父となった博は、亡き祖父の日記から一族の歴史を遡ってゆく。そこに隠されていたのは、時代を超えた〈秘密〉だった。仰天必至の長編小説!
  • いちばん長い夜に
    4.0
    ペットの洋服作りの仕事が軌道に乗ってきた芭子と、パン職人の道を邁進する綾香。暗い場所で出会い、暗い過去を抱えながら、支え合って生きてきた。小さな喜びを大切にし、地に足のついた日々を過ごしていた二人だったが、あの大きな出来事がそれぞれの人生を静かに変えていく。彼女たちはどんな幸せをつかまえるのだろうか――。心を優しく包み込む人気シリーズ、感動の完結編。
  • アスクレピオスの愛人
    3.7
    感染症の最前線で働く、WHOのメディカル・オフィサー、佐伯志帆子。世界中を飛び回るその凛々しい姿は、後進の医師や医学部に通う一人娘の憧れの的であった。だが仕事を離れた彼女は、奔放に恋を楽しむ、どうしようもなく妖艶な女――。医術の神・アスクレピオスに、数多の男たちに、狂おしいほど求められる美しき女神が、本当に愛したのは……。林真理子が初めて挑んだ医療小説。
  • ライオンハート
    3.7
    1巻781円 (税込)
    いつもあなたを見つける度に、ああ、あなたに会えて良かったと思うの。会った瞬間に、世界が金色に弾けるような喜びを覚えるのよ……。17世紀のロンドン、19世紀のシェルブール、20世紀のパナマ、フロリダ。時を越え、空間を越え、男と女は何度も出会う。結ばれることはない関係だけど、深く愛し合って――。神のおぼしめしなのか、気紛れなのか。切なくも心暖まる、異色のラブストーリー。
  • 夜のピクニック
    4.2
    1巻781円 (税込)
    高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて、歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために――。学校生活の思い出や卒業後の夢など語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。
  • ボクの町
    3.9
    警視庁城西署・霞台駅前交番に巡査見習いとして赴任した高木聖大は、研修初日から警察手帳に彼女のプリクラを貼っていたことがバレるような、今風のドジな若者。道案内、盗難届の処理、ケンカの仲裁などに追われるが、失敗の連続でやる気をなくしていた。が、所轄の同期見習いが犯人追跡中に大ケガを負ったことで俄然、職務に目覚める。聖大の成長をさわやかに描くポリス・コメディ!
  • 疫病神
    4.0
    建設コンサルタント・二宮啓之が、産業廃棄物処理場をめぐるトラブルに巻き込まれた。依頼人の失踪。たび重なる妨害。事件を追う中で見えてきたのは、数十億もの利権に群がる金の亡者たちだ。なりゆきでコンビを組むことになったのは、桑原保彦。だが、二宮の〈相棒〉は、一筋縄でいく男ではなかった――。関西を舞台に、欲望と暴力が蠢く世界を描く、圧倒的長編エンターテインメント!
  • 蒼き狼
    4.0
    1巻781円 (税込)
    風の如く蹂躙せよ。嵐の如く略奪せよ。世界史上未曾有の英雄、成吉思汗即位八百年! 遊牧民の一部族の首長の子として生れた鉄木真=成吉思汗(テムジン=チンギスカン)は、他民族と激しい闘争をくり返しながら、やがて全蒙古を統一し、ヨーロッパにまで及ぶ遠征を企てる。六十五歳で没するまで、ひたすら敵を求め、侵略と掠奪を続けた彼のあくなき征服欲はどこから来るのか?――アジアの生んだ一代の英雄が史上空前の大帝国を築き上げるまでの波瀾に満ちた生涯を描く雄編。
  • 眼の壁
    3.8
    白昼の銀行を舞台に、巧妙に仕組まれた三千万円の手形詐欺。責任を一身に背負って自殺した会計課長の厚い信任を得ていた萩崎は、学生時代の友人である新聞記者・田村の応援を得て、必死に事件の真相を追う。二人は事件の背後にうごめく巨大な組織に立ち向かうが、手がかりは次々に消え去ってしまう…。複雑怪奇な社会の裏に潜む悪の実体をあばき、鬼気迫る追求が展開するベストセラー。

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  • 王妃マリー・アントワネット(上)
    3.9
    1~2巻781円 (税込)
    美しいブロンドの髪とあどけない瞳を持つ14歳の少女が、オーストリアからフランス皇太子妃として迎えられた。少女はやがて、ヴェルサイユに咲いた華麗な花と呼ばれ、フランス最後の王妃として断頭台に消える運命にある……。フランス革命を背景に、悲劇の王妃の数奇な生涯を、貧しい少女マルグリット、サド侯爵、フェルセン、ミラボーなど多彩な人物を配して綴る、壮大な歴史ロマン。
  • 彼の生きかた
    4.3
    〈俺は人間の世界が嫌や。言葉も不自由やし……俺もお前たちの中に入りたいわ〉 ドモリで気が弱いために人とうまく接することができず、人間よりも動物を愛した福本一平は、野生の日本猿の調査に一身を捧げる決意をする。しかし、猿の餌づけに精魂をかたむける彼の前には、大資本が、無理解な人間たちが立ちふさがる。一人の弱い人間の純朴でひたむきな生きかたを描く感動の長編。

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  • 地の骨(上)
    -
    1~2巻781円 (税込)
    大和大学教授の稲木は、バーのマダム啓子との情事の後で入試問題草案を紛失した。前代未聞の不祥事の処理に奔走する専務理事一派に対し、執拗なまでに真相を追求する反主流派の川西教授。草案は美貌の事業家楢沢莢子から無事稲木のものに届けられたが、稲木は彼女への愛に溺れてゆく。一方、川西は啓子との浮気旅行を夢見て、その資金を作るために裏口入学を斡旋する……。

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  • ひとごろし
    3.6
    藩中きっての臆病者と評判をたてられた若侍が、それを逆用し奇想天外な方法で誰も引受け手のなかった上意討ちを果すまでを描いた「ひとごろし」、“無償の奉仕”という晩年最大の命題をテーマに著者の人間肯定がみごとに定着した「裏の木戸はあいている」をはじめ、戦前の作品から最晩年の表題作まで、“武家もの”“岡場所もの”“こっけいもの”等々の代表的短編10編を収める。

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  • 大炊介始末
    4.2
    自分の出生の秘密を知った大炊介が、狂態を装って藩の衆望を故意にうらぎらねばならなかった悲劇を描く表題作。自分たちはおたふくであるときめこんでしまっている底抜けに明るく情味豊かな姉妹の物語「おたふく」。奇抜な視点と卓抜な文体で「剣聖」宮本武蔵を描き、著者の後半期の出発点となった意義深い作品「よじょう」など。さまざまな傾向の短編から代表作10編を選りすぐった。

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  • 仇討検校(新潮文庫)
    値引きあり
    3.3
    1巻770円 (税込)
    鍼灸道を確立し、五代将軍綱吉の御殿医にまで登りつめた鍼聖・杉山検校。じつは、贋者だった!? 一度でも人を斬り殺したものは、血塗られた仇討の連鎖からは逃れられないのか。怨念の呪縛に囚われ、自らを偽り、仕込み杖を携え盲目を装い、因果の大渦から逃げ続けた恩讐の彼方に、その目が見たものは――。目眩くほど壮絶な八十五年の生涯を描く、一気読み必至の大作。『見返り検校』改題。(解説・細谷正充)
  • ナニワ・モンスター(新潮文庫)【電子特典付き】
    値引きあり
    3.5
    1巻770円 (税込)
    浪速府で発生した新型インフルエンザ「キャメル」。致死率の低いウイルスにもかかわらず、報道は過熱の一途を辿り、政府はナニワの経済封鎖を決定する。壊滅的な打撃を受ける関西圏。その裏には霞が関が仕掛けた巨大な陰謀が蠢いていた――。風雲児・村雨弘毅(ドラゴン)府知事、特捜部のエース・鎌形雅史(カマイタチ)、大法螺吹き(スカラムーシュ)・彦根新吾。怪物達は、この事態にどう動く……。海堂サーガ、新章開幕。※【電子版あとがき】をはじめ、ストーリー上の出来事が一目でわかる【桜宮年表】や【作品相関図】、小説・ノンフィクション作品の【海堂尊・全著作リスト】、小説作品の【「桜宮サーガ」年代順リスト】など数々の電子版特典を巻末に収録!
  • 笹舟日記
    -
    きょうだいの4人までも自殺や失踪で失った血の悲劇を背負いながらも、心ゆたかに生きようとする著者が、四季折々の日常の光景と、それによって呼び起される切実な過去の記憶との響きあいの中に、生活というものの深い味わい、生命のよろこびと哀切さを、ていねいに紡ぎだして心温まる連作掌編集。
  • 予定日はジミー・ペイジ
    3.8
    流れ星を見つけたとき、あ、できたかもと思った。初めての妊娠。でも、「私、うれしくないかもしれない」。お腹の生命も大事だけど、生活って簡単に変えられないよ。ひとり驚喜する夫さんちゃんを尻目に、頼りなくも愛おしい妊婦マキの奮闘が始まる。目指すは、天才ロック・ギタリストの誕生日と同じ出産予定日! 笑えて、泣けるマタニティ小説。著者描き下ろしイラスト多数収録。
  • 月曜日の朝・金曜日の夜
    4.0
    1巻770円 (税込)
    中央線に乗って国立駅から東京駅まで通う。沿線に展開する四季折々の風景、車内にみる世相百態など、通勤電車の心とその表情を捉えた「月曜日の朝」。週末にホッと一息ついて行きつけの止り木でピーナツを噛み、寿司屋の床几でコハダをつまむ。わが街のやすらぎの風情を描く「金曜日の夜」。ひとつひとつの挿話に季節感が刻みこまれ、日常生活を再発見する新しい歳時記。
  • 長い橋(上)
    -
    1~2巻770円 (税込)
    暴走族、不純異性交遊、窃盗、そして売春…。保護司・田村雪枝が保護観察に当たることになった17歳の木崎すみれは、中学時代から数々の非行を重ねていた。ありのままの自分を曝けだし、無心になって更生を助ける雪枝の情熱が、すみれの頑なな心に触れたかに見えた直後、昔の不良仲間の事件に巻き込まれた彼女は、突如行方を絶った。その日から、雪枝の長い苦難の旅がはじまった。
  • 軍艦長門の生涯(上)
    4.3
    1~3巻770~814円 (税込)
    総排水量4万3千トン、40サンチ砲8門搭載、最高速力26.7ノット。世界最大・最強・最高速の戦艦としてその威容を誇った軍艦長門は、帝国海軍の栄光と矛盾を一身に背負って激動の大正・昭和期を生きた。連合艦隊が壊滅し、ただ一隻生き残った長門を、敗戦後待ちうけていたのは劇的な終焉……。一隻の軍艦の生涯を通して今よみがえる、“あの時代”の日本と日本人の一大スペクタクル!
  • 地獄は一定すみかぞかし 小説 暁烏敏
    3.0
    1巻770円 (税込)
    下咽頭癌で声を失った「私」はある日、炎天下の路上で『歎異鈔』の一節「地獄は一定……」が耳の奥に響くのを聞いた。これを機に、仏教近代化の旗頭だった破格の念仏僧・暁烏敏の著書に接し、たちまち魅了される。ところが、発声教室で知り合った同病の湯浅よね子は、暁烏を称える「私」との筆談に、なぜか顔を曇らせて……。著者自らの苛烈な闘病を通して問う、信仰の赤裸々な姿。
  • アラビアン・ナイト 艶笑傑作選
    -
    原名はアラビア語でアルフ・ライラ・ワ・ライラ、千夜一夜物語と呼ばれる。ペルシアからアラビア回教圏に広まりながら、次第に数を増していった多種多様な民間説話集である。本篇は原典に忠実なマルドリュス版により、本民話集中の花ともいうべきエキゾティックな代表的恋愛物語五篇を選び、天馬空をゆく機知とともにここにあふれる官能的な肉感美を玩味していただきたいと願う。
  • 千輪の華
    -
    安易な同棲の果ての心中未遂……。男の裏切りによって痛切な恋の破局を経験した真野祥子は二十五歳のOL。放心の日々のなか、ふとしたことから女花火師・立花薫を知った。一筋縄では行かない職人たちを率いる男まさりの薫の生き方に惹かれた祥子は、下働きとして住み込み、汗と土にまみれながら新たな人生をひたむきに歩みはじめる。夜空を彩る一瞬の華麗なきらめきを夢見て――。
  • シュンポシオン
    4.0
    ギリシア・ローマ古典学の教授宮沢明は数年前に交通事故で妻を失っているが、避暑地で会った知的な和泉聡子に強くひかれ、二人は美しく愛しあっている。そして、現役を退いた老カップルやユニークな学生ペアのそれぞれの愛のかたち……。21世紀に入って10年がすぎた夏の日の避暑地=半島の海辺にある別荘に集う数組の男女の、優雅な〈饗宴=シュンポシオン〉と〈愛=エロス〉の時間を描く長編恋愛小説。
  • なごり歌
    3.6
    昭和48年、小学校3年生の裕樹は県境に建つ虹ヶ本団地に越してきた。一人ぼっちの夏休みを持て余していたが、同じ歳のケンジと仲良くなる「遠くの友だち」。あなたの奥さまは、私の妻なんです――。お見合い9回の末やっと結婚にこぎつけた仁志が、突然現れた男にそう告げられる「秋に来た男」。あのころ、巨大団地は未来と希望の象徴だった。切なさと懐かしさが止まらない、連作短編集。
  • ふたつめの庭
    4.0
    1巻770円 (税込)
    保育園に〈平穏な一日〉なんてありません! 25歳の保育士・美南(みなみ)は、次々と起きる不思議な事件にふりまわされる日々。妻と娘が姿を消したと園児の父親が駆け込んできたり、園内に不審な足跡を見つけたり。解決のヒントは、えっ、絵本のなか!? 謎を解くべく奔走するうち、男手ひとつで園児・旬太(しゅんた)を育てる隆平に心惹かれて……。大人も子どもも一緒に大きくなる、恋と謎と成長の物語。
  • 死の島(上)
    4.3
    1~2巻770円 (税込)
    冬の朝、薄気味の悪い夢からさめた相馬鼎は創作ノートを繰りながら机の上に掛けられた絵を眺める。彼は300日前に展覧会場でみたその「島」という作品にひきつけられ、作者の萌木素子を尋ねる。暗い蔭をたたえた被爆者の彼女は、あどけなく美しい年上の相見綾子と二人で住んでいる。相馬が勤務先の出版社について間もなく、広島の病院から二人が心中したという報せをうける……。
  • 窓を開けますか?
    3.5
    私、岸森亜希子、三十二歳のOL。“極楽とんぼ”と言われながらも、自分のタイムテーブルに従って楽しく生きているうちに、自然にハイ・ミスとなってしまった。恋人はもちろんいるけれど、オトナの女ともなれば、すんなりゴールインとはいかぬ事情があるのだ……。結婚へのあこがれと不安が交錯する、さまざまな独身女性の心の窓の風景を、ペーソスとユーモアで描く長編小説。
  • 星と舵
    -
    海、空、風、雲、星……どこまでもはてしない海原をかきわけて、昼も夜もひた走る女体のようなヨットの、消え残る白い航跡。太平洋横断ヨットレースに全身全霊を賭けた一人の若者が、苦闘と孤独のはてに、ついに獲得した栄光とは? 鮮烈果敢な青春の冒険と爆発する性のうねりを活写して、海への浪漫的な陶酔と、ヨットへの文学的な讃歌とをひとつに結実させた、世評高い長編小説。
  • 亀裂
    5.0
    “現代”の象徴ともみられる、重く混沌とした“亀裂の世界”にその身を横たえようとしながら、にもかかわらず、決して“亀裂それ自体”にはなりえない青年作家・都築明を中心に、“亀裂の世界”に棲む人々――若い拳闘家・神島、女優・泉井涼子、少年テロリスト、右翼ボス・高倉、殺し屋・浅井といった面々の愛欲、権勢欲、物欲、殺人などを描き出して、挑戦にみちた問題作。
  • 明日のマーチ
    4.3
    解雇。それは張り紙一枚の出来事だった。ある日突然、僕らは年収200万円の生活からも見捨てられた。どうしよう。どこに行って、何をする?──歩く。それが、僕らの決断だ。クビを切られたカメラ会社がある山形から、東京へ。600キロ。4人で始まった行進は、ネットを通じて拡散し、メディアを賑わし、遂には政府が動き出す。僕らの青春を等身大(ありのまま)に描いた、傑作ロードノベル。
  • 武打星
    3.8
    1巻770円 (税込)
    武打星=アクション・スターのこと。世界中を熱狂させたブルース・リーに憧れた青年、長岡誠は、大学卒業後、徒手空拳で香港に渡った。少年時代から続けてきた空手を活かし、アジアの新たな武打星となるために――。猥雑で魅力的なこの都市で、誠は時に喜び、時に苦悩しながら、栄光への階段を一歩ずつのぼってゆく。ストーリーテラー・今野敏の魅力が弾ける、痛快エンタテインメント。
  • 千日紅の恋人
    3.6
    宗像時子は父が遺した古アパート、扇荘の管理人をしている。扇荘には様々な事情を抱えた人たちが住んでおり、彼女はときには厳しく、ときには優しく、彼らと接していた。ある日、新たな入居者が現れた。その名は有馬生馬。ちょっと古風な好青年だった。二度の辛い別離を経験し、恋をあきらめていた時子は、有馬のまっすぐな性格にひかれてゆく。暖かで、どこか懐かしい恋愛長篇。
  • われらの狂気を生き延びる道を教えよ
    3.8
    外部からおそいかかる時代の狂気、あるいは、自分の内部から暗い過去との血のつながりにおいて、自分ひとりの存在に根ざしてあらわれてくる狂気にとらわれながら、核時代を生き延びる人間の絶望感とそこからの解放の道を、豊かな詩的感覚と想像力で構築する。『万延元年のフットボール』から『洪水はわが魂に及び』への橋わたしをなす、ひとつながりの充実した作品群である。
  • 日常生活の冒険
    4.0
    たぐい稀なモラリストにして性の修験者斎木犀吉――彼は十八歳でナセル義勇軍に志願したのを手始めに、このおよそ冒険の可能性なき現代をあくまで冒険的に生き、最後は火星の共和国かと思われるほど遠い見知らぬ場所で、不意の自殺を遂げた。二十世紀後半を生きる青年にとって冒険的であるとは、どういうことなのであろうか? 友人の若い小説家が物語る、パセティックな青春小説。
  • あ・うん
    3.3
    喧嘩をしても、まるで「あ・うん」の狛犬のように息が合い離れない男の友情――門倉修造と水田仙吉は、20年来の友達だが、見かけも気性も財力も正反対ときている。門倉は仙吉の妻の秘めたる色香をひそかに愛している。そんな大人の関係を不思議な思いで見ていた仙吉の娘さと子の恋人に召集令状がきた……。昭和10年代の愛しい一途な日本人像を浮彫りにする著者最後のTVドラマ。

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  • ラスト ワン マイル
    4.1
    1巻770円 (税込)
    本当に客を掴んでいるのは誰か──。暁星運輸の広域営業部課長・横沢哲夫は、草創期から応援してきたネット通販の「蚤の市」に、裏切りとも言える取引条件の変更を求められていた。急速に業績を伸ばし、テレビ局買収にまで乗り出す新興企業が相手では、要求は呑むしかないのか。だが、横沢たちは新しい通販のビジネスモデルを苦心して考案。これを武器に蚤の市と闘うことを決意する。

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  • 氷原・非情のブリザード
    -
    明治45年、木造帆船で南緯80度を越えた白瀬隊長の英雄物語「氷原」、昭和35年、昭和基地で遭難した福島隊員の悲劇「非情のブリザード」等の極地小説。地震の前日に現われる発光現象と地震の関係を調査する学者と、虹と地震の関連性を研究する在野の篤学者との相克「虹の人」、イタイイタイ病をはじめカドミウムによる公害病を告発した「神通川」他、「火山群」「三つの石の物語」「風の墓場」「春紫苑物語」「高原の憂鬱」の、自然に挑む人間を捉えた全9編。

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  • 望郷
    -
    昭和20年11月、沢田冬明は北朝鮮の丘の上から家族たちと引きはなされ、ソ連軍の捕虜となる。2カ月後、中共軍の技術者として職を得る。中共と国府が争う極限状況下、遠く妻子を思い、心の荒廃した人たちの間で、ひとり誠実に生き抜く……。表題長編および、その連作『豆満江』『夕日』の自伝的作品3編をはじめ、戦争の深い傷跡を小説化した著者の戦争文学全6編を収録する。

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  • 東京の人(第1)
    -
    1~3巻759円 (税込)
    妻の敬子と別れ、慕いよるみね子にも背を向けて孤独の世界へ身を沈めていく島木俊三。青年医師・田部昭男との恋愛に走る敬子。一組の中年夫婦を軸に、愛ゆえに異常な一面を抱きつつそれぞれが孤独の中に生きている人びとを描く長編。月丘夢路、左幸子、滝沢修ら主演により映画化され話題を呼んだ。

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  • 天授の子
    -
    川端康成は、2歳から14歳までに、両親と姉と祖父母とを亡くし、天涯の孤児の感情を知った。養女を迎える話に、著者の孤独な少年時代を回顧する「故園」、上洛する古人の旅の心情を描く「東海道」、養女の民子への慈しみと戦後まもないペンクラブの活動を綴る「天授の子」など4編を収録する。1968年、日本で最初のノーベル文学賞を受賞した著者の、魂の奥の奥にふれる貴重な作品集。

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  • 永遠の都1―夏の海辺―
    -
    1~7巻748~902円 (税込)
    元海軍軍医の時田利平は、大正2年、三田綱町に開業。外科医の名声と妻菊江の実務で、時田病院は驚異的に拡張している。昭和10年、利平の長女で3人の男児の母親の初江は一高生の甥と密通し、次女夏江は陸軍中尉・脇敬助との結婚を諦めた…。
  • 少年―ある自伝の試み―
    -
    私とは一体何者なのだろうか? 現在の私と少年時の私とはどのように関わっているのだろうか?――大正時代、東京・渋谷に少年時代を送った著者が、過去のさまざまな経験の全像を文献や証言によって詳細に検証しつつ、《過去》の持つ意味を探る。キリスト教体験・恋愛と性・学校生活と交遊・読書体験などを、渋谷の町の変遷を背景に回想し、少年の精神の形成を辿った自伝長編。
  • アラスカ物語
    4.4
    明治元年、宮城県石巻町に生れた安田恭輔は15歳で両親を失う。外国航路の見習船員となり、やがてアラスカのポイントバローに留まった彼はエスキモーの女性と結婚してアラスカ社会に融けこんでいく。食糧不足や疫病の流行で滅亡に瀕したエスキモーの一族を救出して、アラスカのモーゼと仰がれ、90歳で生涯を閉じるまで日本に帰ることのなかったフランク安田の波瀾の生涯を描く。

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  • 先導者・赤い雪崩
    4.7
    上越国境を縦走する女性4人と男性リーダーのパーティーが遭難死に至る経緯をとらえ、極限状況における女性の虚栄心、嫉妬心などを克明に心理描写した『先導者』。南アルプスを背景に女性をめぐる二人の若者の争いを描く『赤い雪崩』。ヨーロッパ・アルプスの悲運のガイドを描く『嘆きの氷河』など、山でおこる人間ドラマと自然の厳しさを雄渾な文体で綴る全8編を収録する。

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  • 男子の本懐
    4.3
    緊縮財政と行政整理による〈金解禁〉。それは近代日本の歴史のなかでもっとも鮮明な経済政策といわれている。第一次世界大戦後の慢性的不況を脱するために、多くの困難を克服して、昭和五年一月に断行された金解禁を遂行した浜口雄幸と井上準之助。性格も境遇も正反対の二人の男が、いかにして一つの政策に生命を賭けたか、人間の生きがいとは何かを静かに問いかけた長編経済小説。

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  • やぶからし
    3.7
    生れついての放蕩がやまずに勘当され、“やぶからし”と自嘲するような前夫のもとに、幸せな家庭や子供を捨ててはしる女心のひだの裏側を抉った表題作。美しい妹の身勝手さに運命を変えられた姉が、ほんとうの幸福をさがし求めるまでを抑制された筆でたどった『菊屋敷』。ほかに、『避けぬ三左』『孫七とずんど』『山だち問答』『「こいそ」と「竹四郎」』『ばちあたり』など、全12編を収める。

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  • 公孫龍 巻一 青龍篇(新潮文庫)
    5.0
    1~2巻737円 (税込)
    中国戦国時代、人質として周から燕に送られることとなった十八歳の王子稜(りょう)。父赧王の燕王宛ての書翰に、己を殺すようにと書かれているのを知った稜は愕然とする。王宮内の陰謀に巻き込まれたことを悟った稜は、山賊の襲撃から救った強国趙の幼き二公子の求めに応じ、商人「公孫龍(こうそんりょう)」として趙の都邯鄲(かんたん)を目指すことに。群雄割拠の乱世に颯爽と現れた青年の成長を描く波乱万丈の大河歴史小説開幕。
  • 密会(新潮文庫)
    3.9
    ある夏の未明、突然やって来た救急車が妻を連れ去った。男は妻を捜して病院に辿りつくが、彼の行動は逐一盗聴マイクによって監視されている……。二本のペニスを持つ馬人間、出自が試験管の秘書、溶骨症の少女、〈仮面女〉など奇怪な人物とのかかわりに困惑する男の姿を通じて、巨大な病院の迷路に息づく絶望的な愛と快楽の光景を描き、野心的構成で出口のない現代人の地獄を浮き彫りにする。(解説・平岡篤頼)
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)
    4.2
    ある日突然現われた父親と名のる男が、奇怪な魚に生れ変り、それまで何の変哲も無かった街が水中の世界に変ってゆく「水中都市」、コモン君が、見馴れぬ植物になる話「デンドロカカリヤ」。安部短編作品の頂点をなす表題二作に、戯曲「友達」の原型となった「闖入者」や「飢えた皮膚」など、寓意とユーモアあふれる文体の内に人間存在の不安感を浮び上がらせた初期短編11編を収録。(解説・ドナルド・キーン)
  • けものたちは故郷をめざす(新潮文庫)
    4.0
    ソ連軍が侵攻し、国府・八路軍が跳梁する敗戦前夜の満州。敵か味方か、国籍さえも判然とせぬ男とともに、久木久三は南をめざす。氷雪に閉ざされた満州からの逃走は困難を極めた。日本という故郷から根を断ち切られ、抗いがたい政治の渦に巻き込まれた人間にとっての、“自由”とは何なのか? 牧歌的神話は地に堕ち、峻厳たる現実が裸形の姿を顕現する。人間の生の尊厳を描ききった傑作長編。(解説・磯田光一)
  • 壁(新潮文庫)
    4.2
    ある朝、突然自分の名前を喪失してしまった男。以来彼は慣習に塗り固められた現実での存在権を失った。自らの帰属すべき場所を持たぬ彼の眼には、現実が奇怪な不条理の塊とうつる。他人との接触に支障を来たし、マネキン人形やラクダに奇妙な愛情を抱く。そして……。独特の寓意とユーモアで、孤独な人間の実存的体験を描き、その底に価値逆転の方向を探った野心作。(解説・佐々木基一)
  • 果ての海(新潮文庫)
    -
    階段の下で息絶えた男。愛人の鶴野圭子は、全てを捨てて逃げることを決めた。出会い系で知り合った元ホストの鈴木の伝手で整形し、美貌と偽名を携え福井の芦原(あわら)温泉へ。だが仲居やコンパニオンとして働く中で厄介な人間関係に巻き込まれ、頼りの鈴木も音信不通となった。東尋坊での自死が頭をよぎるが、圭子には生きて逃げ続けなくてはならない理由があり――。女の生き様を描く傑作サスペンス。(解説・原武史)
  • 土佐くろしお鉄道殺人事件(新潮文庫)
    -
    JR土讃線・土佐くろしお鉄道を、高知から宿毛(すくも)まで走る特急「あしずり九号」。その車内でコロナ担当大臣が毒殺された。この殺人を発端に、各地で事件が続発する。しかし、被害者に世直しを求める手紙を送る容疑者には常に確実なアリバイがあった。手紙と姿を見せない犯人との関連性は? 捜査を進めるほどに深まっていく謎に、十津川警部はどう立ち向かうのか。「地方鉄道」シリーズ、最後の事件。
  • 破天荒(新潮文庫)
    -
    1巻737円 (税込)
    スクープ連発の若き業界紙記者がいた! 高校中退ながら、石油化学新聞社に入社した杉田亮平は、生意気といわれようが、言いたいことを言うのが信条。その圧倒的な取材力に、大手経済紙も高級官僚も驚愕した。企業トップと堂々と渡り合い、誰よりも早く情報を掴み、ダイナミックな経済の現場に立って、亮平は日本経済の真ん中を駆け抜ける。人間ドラマを見つめてきた著者の自伝的経済小説。(解説・加藤正文)
  • 江戸の空、水面の風―みとや・お瑛仕入帖―(新潮文庫)
    3.5
    大好きだった兄の長太郎を亡くしたお瑛も、今は成次郎と夫婦になり幸せに暮らしていた。そんな時、圭太という男が現れる。料理茶屋『柚木』の新しい奉公人だ。何くれとなくお瑛を助けてくれた女将のお加津は、優しくて手際のよい圭太を褒めちぎる。でも、何かおかしい……お瑛の胸はざわついた。お加津さんは何を考えているの? お瑛は猪牙舟を大川に漕ぎだしていく。好評「みとや」シリーズ!(解説・細谷正充)
  • 草原のサーカス(新潮文庫)
    4.3
    大手製薬会社に勤める姉の依千佳(いちか)と、人気アクセサリー作家の妹の仁胡瑠(にこる)。それぞれの道で成功を掴んだ姉妹は、やがて日本を揺るがす治験データ捏造事件、そしてハラスメント騒動を引き起こす。たった一度でも踏み外せば、容易(たやす)く切り捨てられる世の中で、私たちは何を「正しさ」の指標にできるだろう。「間違えた」後も続く自分の人生と、傷ついた心への向き合い方を渾身の力で問う長編小説。(解説・芦沢央)
  • やがて訪れる春のために(新潮文庫)
    4.4
    入院中の祖母から、庭の様子を見てきてほしいと頼まれた村上真芽(まめ)。彼女が目にしたのは、荒涼とした景色だった。花が咲き誇った庭に、しっかり者の祖母に、いったい何が起きたのか? 庭を復活させようとする真芽は、怪しげな隣人や家の売却計画など様々な困難に直面するが、幼なじみたちの力を借りながら奮闘する。バラ、クレマチス、ミントなど植物が彩る庭を舞台に描く、あなたのための物語。(解説・岩田徹)
  • 八月の銀の雪(新潮文庫)
    4.0
    憂鬱な不採用通知、幼い娘を抱える母子家庭、契約社員の葛藤……。うまく喋れなくても否定されても、僕は耳を澄ませていたい――地球の中心に静かに降り積もる銀色の雪に。深海に響くザトウクジラの歌に。磁場を見ているハトの目に。珪藻の精緻で完璧な美しさに。高度一万メートルに吹き続ける偏西風の永遠に。表題作の他「海へ還る日」「アルノーと檸檬」「玻璃を拾う」「十万年の西風」の五編。(解説・橋本麻里)
  • 真夜中のたずねびと(新潮文庫)
    3.3
    言葉を失った震災孤児の少女アキ。空き家を転々とする中で、彼女は占い師の老婆と出会い、共に暮らすことに。少女を「天使」と呼ぶ老婆は言った――ある岩穴に封印したそれをとってきて欲しい、と。探し辿り着いた場所で、アキは死者の声を聞く……。平穏な日々を突如として切り裂く、災害、事故、そして底知れぬ悪意。人探しの探偵へと成長したアキに導かれ、真夜中に呑まれた者たちの現代奇譚。(解説・朝宮運河)
  • 邦人奪還―自衛隊特殊部隊が動くとき―(新潮文庫)
    4.3
    20XX年平壌でクーデターが勃発、北朝鮮軍部はムスダンリからミサイル発射を企んでいた。米国は自国保護のためピンポイント爆撃へと動き出す。だがその標的近くで日本人拉致被害者6名が生存していることが発覚。日本政府は邦人奪還のため自衛隊特殊部隊の投入を決断するが……。海上自衛隊特別警備隊の創設者が、政府の動きや作戦行動を完全シミュレーション。驚愕のドキュメントノベル。(対談・かわぐちかいじ)
  • 月桃夜(新潮文庫)
    4.3
    薩摩の支配下にあった奄美。孤児のフィエクサは、父を失った少女サネンと兄妹の契りを交わす。砂糖作りに従事する奴隷のような身分の二人だが、フィエクサは碁を習い才覚を発揮、サネンは美しい娘に成長する。しかしサネンが薩摩の役人から妾に所望され、過酷な運命が動き出す――。濃厚な花の匂いの中、無慈悲な神に裁かれる禁断の絆。魔術的な魅力に満ちたファンタジーノベル大賞受賞作。(解説・吉田伸子)
  • 約束の果て―黒と紫の国―(新潮文庫)
    3.7
    「私たちのこと、忘れないでね」――そのとき、風が吹いた。大地に咲く紫の花が、一斉に空へと舞い上がる。かつて黄金の草原で、少年が少女に誓った約束が、五千年の時と遥かなる距離を越え、いま果たされる。偽史と小説――父から託された奇妙な古文書に秘められた謎。壙(こう)とジ南、史伝に存在しない二つの国を巡る、空前絶後のボーイ・ミーツ・ガール。日本ファンタジーノベル大賞受賞作。(解説・杉江松恋)
  • 名残の花(新潮文庫)
    4.0
    ご一新から五年。花見客で賑わう上野の山に、かつて南町奉行を務め、「妖怪」と庶民から嫌われた鳥居耀蔵の姿があった。失脚し、二十三年の幽閉の末に耀蔵が目にしたのは変わり果てた江戸の姿。明治を、「東京」を恨み、孤独の裡に置き去られていた男の人生は、金春座の若役者・滝井豊太郎と出会ったことで動き始める。時代の流れに翻弄されながらも懸命に生きる人々を描く感涙の時代小説。(解説・末國善巳)
  • 婚約のあとで(新潮文庫)
    3.6
    晴れて婚約したのに結婚をためらい始めた波。秘密の恋に大胆に身を任せてゆく碧。男性との関係を仕事のステップアップにつなげる真理。三世代同居家族の中の専業主婦、優美。障害があるゆえに自立を求めて結婚に踏み切れない宙……。姉妹、友人、仕事仲間としてリンクする七人。恋愛、結婚、仕事、家庭をめぐって揺れる彼女たちの、それぞれの心情と選択をリアルに描き出した連作集。(解説・瀧井朝世)
  • きみはポラリス(新潮文庫)
    3.6
    どうして恋に落ちたとき、人はそれを恋だと分かるのだろう。三角関係、同性愛、片想い、禁断の愛……言葉でいくら定義しても、この地球上にどれひとつとして同じ関係性はない。けれど、人は生まれながらにして、恋を恋だと知っている――。誰かをとても大切に思うとき放たれる、ただひとつの特別な光。カタチに囚われずその光を見出し、感情の宇宙を限りなく広げる、最強の恋愛小説集。(解説・中村うさぎ)
  • 俺たちは神じゃない―麻布中央病院外科―(新潮文庫)
    3.9
    剣崎啓介は腕利きとして知られる中堅外科医。そんな彼が頼りにするのが松島直武だ。生真面目な剣崎と陽気な関西人の松島。ふたりはオペで絶妙な呼吸をみせる。院長から国会議員の癌切除を依頼された剣崎は、松島を助手に得意なロボット手術を進める。だが、その行く手にはある危機が待ち受けていた――。現役外科医が総合病院で日夜起こるドラマをリアルに描く、医学エンターテインメント。
  • 手のひらの楽園(新潮文庫)
    4.0
    父のことは知らない。物心つく前に死んだらしい。長崎県の離島・松乃島で母子家庭に育った友麻は、本土にある私立夕陽ノ丘高校エステ科に進学するため島を離れた。その数日後、母は失踪した。帰省の折に予期せぬ出会いから母の秘密を知り、足下がぐらりと揺れる友麻。だが厳しい現実を突きつけられても友麻は自分を信じ友人に支えられ歩んでいく。繊細な十代の姿を描き出す、感涙の青春小説。(解説・栗田有起)
  • 放浪大名 水野勝成―信長、秀吉、家康に仕えた男―(新潮文庫)
    3.7
    1巻737円 (税込)
    十六歳での初陣から七十五歳で参陣した島原の乱まで六十年、戦国の乱世を鑓一本で駆け抜けた水野勝成。刈谷城城主の父から勘当された勝成は、豊臣秀吉から知行を授かるが、諍いを起こし逃亡するはめに。西国を放浪する勝成は、佐々成政、黒田孝高、小西行長ら名だたる武将に仕えるが……。敵から「鬼日向」と恐れられた勝成が、福山藩十万石開祖の名君として称えられるまでを描く歴史小説。(解説・木村行伸)
  • いもうと(新潮文庫)
    3.9
    本当に、一人ぼっちになっちゃった……。大好きな姉・千津子に続いて母も亡くし、父は別の家庭へ。高校を出て就職し、中堅社員として働く実加の前に突然現れたのは、見知らぬ女の子だった! 『ふたり』から11年、27歳の実加は危うい恋に吸い寄せられ、社の一大プロジェクトに奮闘、果ては結婚式場まで探す羽目に! そして、ある夜、懐かしい姉の声が再び――。姉妹小説の金字塔、奇跡の続編。(解説・中江有里)
  • きもの(新潮文庫)
    4.1
    1巻737円 (税込)
    明治時代の終りに東京の下町に生れたるつ子は、あくまできものの着心地にこだわる利かん気の少女。よき相談役の祖母に助けられ、たしなみや人付き合いの心得といった暮らしの中のきまりを、“着る”ということから学んでゆく。現実的で生活に即した祖母の知恵は、関東大震災に遭っていよいよ重みを増す。大正期の女の半生をきものに寄せて描いた自伝的作品。著者最後の長編小説。(解説・辻井喬)
  • かがやき荘西荻探偵局(新潮文庫)
    4.0
    1~2巻737円 (税込)
    西荻窪のシェアハウスで暮らす、葵、美緒、礼菜。お金も色気もないアラサー女子三人組が、探偵やるなら滞納家賃は相殺という話に飛びついた。杉並大豪邸の事件、深夜に回る洗濯機の怪、週末だけの秘密ミッション、「西荻向上委員会」からきた紳士……。謎解きは時々ぐだぐだ酒宴と化すけれど、あれ? 解決のヒントが! ゆるめな推理が心地よいミステリー。『かがやき荘アラサー探偵局』改題。(解説・香山二三郎)

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