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初対面で彼女は、ぼくの頬をなめた。29歳の営業マン・伊藤俊也は、ネットで知り合った「ナギ」と会う。5歳年上のナギは、奔放で謎めいた女性だった。雑居ビルの非常階段で、秘密のクラブで、デパートのトイレで、過激な行為を共にするが、決して俊也と寝ようとはしない。だがある日、ナギと別れろと差出人不明の手紙が届き……。石田衣良史上もっとも危険でもっとも淫らな純愛小説。
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Posted by ブクログ
水は器によって形を変えるし、手でつかもうとすればこぼれてしまう。 つかめそうでつかめない、だけど確かに“そこにある”もの。 俊也がナギに感じた想いもそう。 それは「恋」なのか、「憧れ」なのか、「依存」なのか…はっきりわからない。 でもたしかに彼は惹かれ、心を動かされていく。 水=「ラベルでは定義で...続きを読むきない愛や欲望」の象徴。 水は抱えようとした途端にこぼれてしまう。 でも人は、手に入らないもの、形のないものでも、それでも「抱こうとする」。 ナギへの想い、自分を見つめ直す苦しさ、愛することの儚さ…… そういう全部が、まさに「水を抱こうとする行為」なんだと思う。 水=「叶わない、でも捨てられない想い」
石田衣良の十八番、過激な性に溺れる恋愛小説。臨場感と細かい描写のおかげで、最後まで飽きずに読めた。実際にTwitterとかを除くとそういう人たちは腐るほどいるわけで、誰もが胸の内に孕んでいる異常性をこれでもかと突き付けられる作品だった。
やっぱり石田衣良さんは綺麗。 人間の奥底から湧く力と 汚いエネルギーさえも綺麗に見える。 どん底に落ちたことのある人にしか わからないことって絶対あるから、 なんだか少しナギの気持ちが分かる。 けどそんなこと言うとこの世の中では 大批判でしょうから、言えませんけどね
ついさっき読み終わった。 途中、中だるみのような部分や無駄だなぁと思われる箇所があったり結末がちょっと陳腐な印象を受けたが、俊也やナギの生きた世界に本気で入り込んだことがない人間が書くことの限界というものがそこには感じられた。 自分には俊也の気持ちもナギの気持ちも分かる。現実にナギのような女性に出会...続きを読むったら、自分も彼女を心から愛することになるだろうと思った。
石田衣良作品は久しぶり。娼年シリーズは鮮烈であったが、本作も負けずとも劣らずな骨太な作品。 端から見ると絶対に恋愛対象とならないような女性に強烈に惹かれていく描写が印象的で、強引さが感じられないのも石田衣良ならではの筆致によるものなのだろう。 性的な描写はさすがと唸るばかりだが、主人公の俊也が一...続きを読む人でいる時の心情描写は、「面白い」よりも「勉強になる」という感じであった。 他の石田衣良の同ジャンルの作品も漁りたい。
[2016年22冊目] 清浄な表の生活と、淫猥な裏の生活の間を行き来する興奮と葛藤とスリルを描いた作品。 わかりやすく伝わるセクシーな表現と展開のスピード感で、ページ数を思わせぬ読み方をさせるのが石田衣良流。最後のページをめくるまで結論を焦らされ、大変満足。 話の設定こそありきたりなものの、人間が...続きを読む情欲の深さで葛藤する姿を見るのが好きな人はハマる一冊。 個人的には島波院長が一番いい味を出している。 彼の一言がこの本を表しているので一部抜粋。 『多くの男たちは、女性の魅力を取り違えている。…問題はその女性のなかにどれほどの欲望と熱量が潜在しているか。その欲望がどんな形でねじれ、表現されるときにどんな歪みを生むのか。 異性としての女性のおもしろさは、そこにある。』
【水を抱いたことがない人には必要がない物語】 この話を薄っぺらいと言うのは、きっとこれがフィクションだと言える幸せな人なんだろうと思う。私はちょっと前まで水を抱きしめようと四苦八苦していた。彼は水を抱くことを諦めていないようだけど、私は草臥れて手を伸ばすのをやめてしまった。 この作品の官能的なシ...続きを読むーンになんの魅力があるだろうか。それこそ私にはわからなかった。ただ、やはりわかりやすくセックスは心の近くにある。確かに様々なデリケートな話題を作中では荒っぽく扱っている。けれどそれこそ作者の強い意思を感じた。あくまでも主観ではあるが、震災に対して、セックスに対してもう少し違ったアプローチをしてもいいのではないだろうか。そう問われている気がした。彼と別れて私は1度も異性と二人きりの食事をしていない。異性に見せるための洋服を買っていない。異性を笑わせるためのプレゼントを買っていない。だからなに?と別にそれの何が悪いと思う自分もいる。だけど、虚しいさみしい辛いと泣いてる自分もいる。 弱い人だとありきたりな人だと笑われるかもしれない。読み終わってそんな自分が変わるわけでもない。だけど、不毛だとわかりきった悩める夜を明かした人だけが(明かさない方が断然幸せだと思うけど)、得られる何かがこの本には詰まってると思う。
官能小説か、純愛小説か?
こんな壊れた女性は実際いないよなぁと思いつつ、いたらいたで主人公のようにはまっていきそうな気もする。確かに刺激の少ない日常の繰り返しの中で、ナギのような女性が突如現れたら理性も羞恥心も捨てて男も壊れてしまうかもしれない。こういうぶっ飛んだ女性も個人的に嫌いではない。中盤からはストーカーの正体やナギの...続きを読む秘密、主人公の仕事の成否など気になって気になって読むスピードが加速する。
ネットで知り合った妖艶で魔性な女性に耽溺していく男。 快楽、痴情、背徳、過激、抑圧、煩悶、寛容。 登場人物が愛おしく切ない。 共感度高い一冊。
・清純な女性は地球上に存在しない。いむも得するよう計算している女を清純とか清楚なんていわない。 ・男は地位と金、女は若さと処女性 ・金も地位も手に入れた年寄りはなにより若さと健康が欲しい 登場人物から発せられる鋭い切り口は斬新で印象的でした。
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