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憂鬱な不採用通知、幼い娘を抱える母子家庭、契約社員の葛藤……。うまく喋れなくても否定されても、僕は耳を澄ませていたい――地球の中心に静かに降り積もる銀色の雪に。深海に響くザトウクジラの歌に。磁場を見ているハトの目に。珪藻の精緻で完璧な美しさに。高度一万メートルに吹き続ける偏西風の永遠に。表題作の他「海へ還る日」「アルノーと檸檬」「玻璃を拾う」「十万年の西風」の五編。(解説・橋本麻里)
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Posted by ブクログ
思いがけず良い本に出会った。主人公たちが抱える静かな絶望、人との出会いによって少しずつ見えてくる希望が美しかった。 どれも面白かったけど、3作目の伝書鳩のお話は、今まで全く知らなかった鳩の習性に目から鱗でした。鳩は「磁場が見える」なんて。私と同じ街中にいる鳩がそんなSFみたいな世界の中で生きている...続きを読むなんて、なんだか不思議。 2作目の「クジラたちは人間が想像できないような内向きの精神世界や知性を発達させてるのかもしれない」というのにもときめいた。 私が悩んだりしてるのは所詮「人間界」の中の常識基準で、もっともっと世界は広いし、奥深いと思うと、なんだかスッとする思い。 解説にて、「本作は科学とその制度の外部に置かれてきた女性への言及がある」ということが書かれていた。私は読んでいる間そのことに気づききれなかったので、はっとする思いでした。 研究とアルバイトを両立する優秀なベトナム人の留学生、電車内で子連れを迷惑がられるシングルマザー、赤の他人ながらそのシングルマザーを支えようとする博物館の非常勤職員。 女性の社会進出のあり方について火種になることが多い現在、あり方に正解なんてなくて、ただただ個々人が求める社会との携わり方が実現して欲しい。
好きです。 最近、伊予原さんの本ばかり夢中になって読んでいます。 科学とは縁遠いですが、とっても、その科学とヒトの内面の繋がりを、科学という小難しい部分をヒトに顕しているような。 わかりやすく、想像しやすく描写されていて、 わたしにも繋がるものがあるって気づいて。いや、わたしだけではなく、すべての人...続きを読むたちに。 最後は涙を流しながら読み終えました。
『八月の銀の雪』は、人生に行き詰まった人たちが、偶然の出会いによって救われていく物語。 地球の内側、クジラの生態、珪藻アートなど。自然科学の不思議で美しい世界に触れることは、人生を少しだけ豊かにしてくれます。 一つ一つかたちの異なる珪藻ガラスの美しさ。クジラたちが高い知能で何を思考しているのか。...続きを読むハトの帰巣本能は数百キロ先に放しても返ってくる。 それらはとても新鮮で、読者の私も登場人物たちと同じく、感心したり、感動したり、新しい知見を得られて楽しい読書でした。
幻想的な表紙に惹かれて購入。どのお話も科学チックで面白かった。きっとその専門か少し詳しい人じゃないと完全に理解できないような深いところまで描写されてて、作者の頭の良さというか、探求心というか、そういうものをすごく感じた。1話目のダメコンビニ店員だと思われていたベトナムの留学生が実は大学院で地震の研究...続きを読むをしてたというギャップと、そして第一話の主人公がちゃんと自分の進むべき道を再確認できたような結末が一番お気に入り。地球の中心に降る雪、なんてロマンチックな表現なんだろう。
短編集で面白かった。表題はベトナム人の留学大学院生。地球のコアについて。そのほかクジラの標本絵?を描く女性、伝書鳩のアルノー。今までどの本も科学系の題材を使った小説、くらいに思っていたが、立て続けに短編を読むと、科学的題材をどこまで小説にできるか実験というか論文でも読んでいる気になってきた。どれも手...続きを読む法が同じだからかもしれない。いや別にけなしているわけではないのだが。
伊与原さんの本を何冊か読みましたが、直木賞を受賞された「藍を継ぐ海」の雰囲気と似ていると思いました。 伊与原さんの本は地学、科学だけでなく、動物学、戦争を通しての平和学など、私が今まで知らなかったこと、興味がなかったものにまで目を向けるきっかけを作ってくれます。 「海へ還る日」と「十万年の西風」が...続きを読む好きです。 解説にて「月まで三キロ」以降より作品の方向転換があったとの事、どちらかと言うと最近のものを読んでいたので、次回はデビュー作なども読んでみたいと思いました。
伊与原新、短編集。 就職活動がうまくいかない大学生・堀川。ひとり娘・果穂を育てるシングルマザー。元劇団員の派遣社員・正樹… 生きることに辛さを抱えた人達。 ひととのつながりから、考え方を変え、ちょっと前向きになっていく。 堀川くんなんて、段ボールロボットの話を動画付きで、面接ですればいいのに。...続きを読むグエンの言うように。 正樹もレモン農家、継ぐんだろうな。 それぞれの話に繋がりはなく、どの話にも科学の話が違和感なく、盛り込まれている… どの科学の話もわかりやすくて、話を邪魔していない… 短編って、物足りなさを感じるので、苦手だったが、伊与原新の短編はいい。
伊与原新さんのハートウォーミングストーリーですね。短編集です。 生活に疲れ、生きる事の難しさを抱えている登場人物の出逢いと人間模様を、科学を交差させて描く再生のドラマです。 伊与原新さんは、科学を思考する人達に、科学を描くことの可能性を、この本でも証明されています。 曰く「科学者にはロマンチス...続きを読むトが多い」と言われますが、まさに科学は謎解きと奥の深い人間模様がありますね。 目次 八月の銀の雪 海へ還る日 アルノーと檸檬 玻璃を拾う 十万年の西風 表紙装画と表題が違いますね。装画は「海へ還る日」を表しています。 「月まで三キロ」から伊与原新さんの作風は、人間模様を主題に置かれるようになりました。それまでの「ミステリーに疲れた」と言われたようです。 伊与原新さんの文章は、心に沁みますし、何と言っても科学の魅力を醸し出して描かれますから、独特の文学があります。謎解きも、顔を覗かせるストーリーもあり、飽かずに愉しく読み進めます。 これからが楽しみですね(=゚ω゚=)
就活、家族、故郷…。向かうべき先や帰るべき場所を失ったとき、自分は戸惑い、立ち尽くしてしまうかも知れない。それでも、自分以外の他者と触れ合うことで、自分を形作る輪郭とその奥深くに眠る「核」を呼び起こし、再び前に踏み出すことができる。 伊与原さんの作品は、そんな変化の激しい時代への科学がもたらす処方箋...続きを読むと言えるでしょう。 どんな状況にあっても、前に踏み出す原動力は「自然の摂理を明らかにしたい」という好奇心。 10億年も前から地球の中心に積もる、鉄の雪。自分の中にも芯があるとしたら、そこにも何か降り積もっているだろうか。少しずつでも、芯は大きくなっているだろうか。 行先に迷ったとき、自らに問いかけたい一節です。
伊与原新さんのお話は なぜか心に スーッと染みてくる 少しずつ少しずつ 五つの短編 ひとつひとつに すぐそこに溢れている 日常がある 本当の人々の心がある 迷子の伝書鳩と ふるさとのレモンの箱 心が揺れ動く 誰もが抱く人生の 悔いと、これから さまざまな思いを 掘り起こしてくれる 愛の詰まった文...続きを読む章に また、してやられた!
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八月の銀の雪(新潮文庫)
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伊与原新
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