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Posted by ブクログ
岩手の農芸高校を舞台に、宮沢賢治の世界観と自らのルーツを探っていく一夏を描いた作品です。
物語は、東京から転校生がやってきたところから回り出す。主人公は小さい頃から花巻の伝統芸能である鹿踊りに熱を入れてきた高校二年生の壮多。この夏も八月に行われる全国高校総合文化祭への出場を目指して練習に取り組んでいる最中だった。そんなところにやってきた転校生の深澤は、壮多から見れば妙に鼻につく男で、幼馴染の七夏には近付けたくない。そう思っているのに、イギリス海岸へ深澤を案内することになったところから事態は動き始め、そこで出会った先輩と深澤、七夏は地学部を立ち上げることに。怪我で鹿踊り部の練習に参加できなくなった壮多も深澤の動きを警戒するために地学部に参加することにするのだが、しばらく様子がおかしかった七夏がある日を境に姿を消してしまう。原因が深澤にあるのではないかと疑う壮多だが――。
読み終わって、私まで岩手から三陸を旅したような気分になりました。私は、宮沢賢治の作品をそこまで多くは知りません。有名な『銀河鉄道の夜』、『よだかの星』、小学校の教科書に載っていてやけに印象に残っているクラムボンの『やまなし』くらいはすぐに思い浮かびますが、それ以外の作品やイーハトーヴについて、あまり深く考えたり触れたりはしてきませんでした。けれど、この作品を読めば、宮沢賢治に興味を持たざるを得ません。そして岩手にそんな宮沢賢治のゆかりの地がそんなにもたくさんあるのだということも、初めて知りました。宮沢賢治の作品についても、宮沢賢治本人についても、そして地学のことについても…大変勉強になりました。
地学や天文学というのは、本当に果てしない、遥か彼方と今を繋ぐ学問なんだなと改めて感じるとともに、宮沢賢治は物語を通してその架け橋をかけてきた人なのだなとも思いました。宮沢賢治と岩手、イーハトーヴの考察に出てきた地名、どれもにわくわくとしながら読むことができました。
夏の地学部の巡見旅行、これだけの長期間の遠征旅行ともいう計画を学校の部活動で認めてくれるとは、凄い話だなと思いましたが、それだけの期間をかける価値がある活動だったのだろうと読みながら感じました。どこを、どんなルートで進んでいったのか想像しながら読むのは楽しかったです。最後、全員無事に帰って来れて本当によかった。彼らがいつか、今回辿り着けなかった場所に再び立つ日のことを想像すると、そこでどんな話をするのだろうと思ったりします。
一人ひとりの青春と、『銀河鉄道の夜』と、若さとエネルギーが凝縮された素晴らしく透明度の高い物語だったように感じました。
またゆっくり読み返したいです。
Posted by ブクログ
この本を見つけたのは偶然東小金井の尾花屋という可愛い古本屋さんでした。お嫁さんと孫2人と買い物の途中立ち寄った先で見つけました。あゝ私に見つけて欲しく一番上にさりげなくおかされていたんだね。宮沢賢治は私の中で一番好きかもな作家であり何回でも再読しては又違う想像しては楽しんでいる。
伊与原新初めて読む作家ですが「青ノ果テ」なんて素敵な言葉!賢治が創る造語はとても綺麗で中でも薤露青は想像力が掻き立てられますね。七夏は絵に描くつもの夜になりかけの空の深い青が中々決まらないと言うと文緒は薤露青ですねとすぐ答える。いったいどんな色なんだろうか?そしてカンパネルラが死なない銀河鉄道の夜を一回読んでみたいものですね。
花巻農芸高校地学部の夏先輩と転校生と三人で自転車旅に出る壮多!突然姿を消した七夏。彼等は見たことの無い景色をいくつも見て繰り返す季節をいくつも経て今は想像も出来ない場所に辿り着き夏は又何度もやって来る。青はまだまだ果てないのだ。
Posted by ブクログ
花巻農芸高校という、宮沢賢治が教えた学校をモデルにした物語。深澤という転校生はなぜ花巻に来たのか、主人公壮太の幼なじみ、七夏を知っているのか、地学部に入って何がしたいのか。
高校生にしては宮沢賢治や地学に知識がありすぎる三井寺や文緒という脇役に助けられながら謎解きが始まる。七夏はどこかに行ってしまい、壮太は怪我で鹿踊りのレギュラーからハズれ、才能ある他の部員の存在に怯える。自分には鹿踊りしかないのか、花巻に残るという選択肢しかないのか。そんな中、イーハトーブとはどこか、銀河鉄道の夜の舞台はどこか、地学部3人の巡見の旅が始まる。
個人的には三井寺部長が、伊与原作品での舞台回し役である博学オタクで、読んでいて安心する。高校生とは思えない落ち着き、実は車椅子の弟がいて、自分が自由に石掘りをしていることに少し罪悪感を抱いているけれど常に笑顔という、なんと素敵なキャラ。
物語は、ジョバンニとカンパネルラ、ザネリのその後を想像させるような設定で胸が詰まるが、どんな人もザネリにもカンパネルラにもなりえる、そこをどう納得して生きていくか。なくなってしまった人の記憶が薄れる時に自分も記憶と再度思い出したときの記憶ともうごちゃ混ぜになって何が真実だったか、声はどんなだったか思い出せないと思う時があるが、その記憶を覚えていない人にとってそのなくなった人の存在を確かめる方法はあるのか。そんな切ない足掻きも描かれていた。また地方に住まう高校生としての虚いというか、いつか都会に出るのか、自分はここに残るのかという決断を高校で決めなければいけないというところに同じ地方のものとして共感しつつ、鹿踊りという心の拠り所を再発見できた壮太が羨ましくもあった。
Posted by ブクログ
個人的に今まで読んだ本で最高の一冊。
宮沢賢治の作品に出る“イーハトーブ”がどこか。
それを高校生達が旅で辿る話。「銀河鉄道の夜」の内容が頻出するので、銀河鉄道の夜を読んだばかりだったのが、作品を理解するのにはかなりのアドバンテージでした。
そして、地元岩手が作品の舞台のため、出てくる地名も分かるし、後半のクライマックスシーンの登山の場面も登ったことのある山だし。
土地勘は無くてもいいだろうけど、「銀河鉄道の夜」は読んでからが一番いいですね。
銀河鉄道の夜を読み、その中で「あれってどういうこと?」と言う疑問を感じていた人には、その解釈の一つが書かれていて、最高に楽しめた一冊でした。
伊与原新さん、最高!と思えた一冊でした。
Posted by ブクログ
高校の地学部といえば、伊与原氏の鉄板ネタか。今回は宮沢賢治へのオマージュと言うべき作品だった。素人の集まりからの地学部と言いながら、天文、地学、土木などの専門的な話がてんこ盛りになるのはお決まりコース。それを宮沢賢治と花巻というお話のベースがあるから、もうついていくのもやっとだけど、これが楽しかった。
銀河鉄道の夜も一応は読んだことがあるはず。しかしこんな奥深いストーリーがあったとは。また何バージョンもあったのではという説、この辺りはミステリー作家の心をくすぐるようなネタだったのかもしれない。
ラストに解き明かされる謎の数々。深澤が持っていたノート、銀河鉄道の夜の別稿、姿を消した七夏の行方。純粋な推理小説ということでもないから、謎解きの楽しみみたいなことは不要。高校生たちの話はまたその先に続いていくでいい。
花巻、盛岡、小岩井、鱒沢。名前は知っていても行ったことがあるのは出張での盛岡くらい。地学部の巡検のようなことは無理にしても、夢を追いかけるような旅はしてみたくなった。
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小説・文芸
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