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Posted by ブクログ
幾つになっても「好きなこと」に夢中になれるのは、本当に素晴らしいことだと感じました。
年齢やこれまでの経験、置かれている環境に関係なく、知りたいと思ったことを学び、仲間と一緒に挑戦していく姿がとても印象的でした。
何かを始めるのに「もう遅い」ということはない。好奇心を持ち続けることや、夢中になれるものを持つことが、人生を豊かにしてくれるのだと思います。
それぞれに事情や悩みを抱えながらも、自分の「やってみたい」という気持ちを大切にする登場人物たちに、自然と勇気をもらいました。
読み終えたあと、少しだけ新しいことを始めてみたくなるような、温かく前向きな余韻の残る作品でした。
Posted by ブクログ
各章でそれぞれ違う生徒や人物が主人公を務める連作短編っぽい作り。学園青春モノにアレルギーがあるのでじっくり根気よく取り組もうと思っていたのだが、定時制で年代も育った環境も違う登場人物達は、思いのほか背景がしっかり人格に反映していて魅力的だった。
主要人物は大人ばかりだが、雰囲気はYAなので、読みやすいと思う。
要素だけ見ると、青春モノらしい雑然とした会話や展開がありそうなものだが、良い意味で裏切られた。ストーリー、会話、科学のバランスが良く、全体的に無駄な表現がない作品という印象。
この本は、傷を舐め合ったり、薄っぺらい友情を見せつけてきたり、「ほらほら可哀想でしょ?」「共感できるでしょ?」と馴れ馴れしく話しかけてきたりはしない。ページを進むうちに、どこか理系らしい素っ気なさと、見た目ではわからない整頓された構成が浮き彫りになってきて、内面を知るたびに好きになる。そういう作品だ。
一話目から教室内の人々の背中や顔が見えるので、どんな人なのか知りたい、という欲求がわくのも良かった。
不良の子から話が始まるので、テンションがやや落ちたが、数ページで「こいつ頭悪くないやんけ!」となって、楽しく読めた。
ちょっとしたことで躓いて、やる前から色んなことを諦めるようになっちゃうの、あるよなあ……。大人がきちんと見てあげられればいいんだけど。
生徒達は皆何かを抱えていて、一見バラバラに見えるが、「学校に通いたい」という意思は同じ。登場人物達は現実の苦さも知りつつ、かなり前向きなので、安心して読んでいい。
それにしても……、モデルにした学校があるとなると、現実っていうのも案外捨てたもんじゃないなと思わされる。
誰かが一途に光に向かって走っていると、その背中に光を見てしまうなあ。なるほど、課題図書になるわけだ……。なんとも清々しく、手元に残しておきたい本の一冊。
Posted by ブクログ
75歳女性の読書友達の方から孫に読んでほしい本と言って紹介されて読んだ。
科学は一部のエリートだけのものではなく、ただ純粋に知を追求して学ぶことの魅力に気付いた人すべてに開かれているべきだという藤竹先生の静かだが揺るぎない信念に触れて何度も涙ぐみそうになった。
そこには年齢も性別も境遇も関係なく、ただ知りたい、学びたいという意欲を大歓迎する、上から目線ではなく一緒になって学ぼうとする、そんな先生に出逢えたこの定時制の学生は嬉しかっただろうなと思う。
本当はもっと学びたかった、学校に行きたかった、そん ないろんな思いを抱えてきた定時制の学生の一人一人のエピソードが涙ぐましい。集団就職のおじいちゃんが妻の代わりといって学び直す話は泣けた。
ある仮説を立て、それに向けて地味な検証作業を繰り返し、そこから生まれる結果から何が導き出せるのかを考察していき、そして自分なりの結論を導き出す。
自然科学の検証作業はある意味日常でも同じことが言えるのかもしれない。どんなに思った結果が出ない時でも我々は真摯に下へ下へと根を生やし続けることだ。それは地味な作業ではあるが楽しいと思える探求心やワクワクがあれば続けられる。もしかしたら大輪の花を咲かせるかもしれないと信じて。
藤竹先生の言う、自動では答えは出せません、何度もやみくもにいじくりまわして書いたり図を描いたりして、そうしてるうちに自分の思い通りに操る事ができる、という言葉に、ああわかった!っていう感動ってこうゆう事だよなと思いだした。
世の中で流行っている親ガチャという言葉はある意味で正しいが、しかしそれが全てではない。それぞれが抱えている様々な悩みやしがらみのある複雑な背景があっても、それでも藤竹先生のような信頼できる大人の導きで大きく人生が変わることだってありうるんだから。
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18 自動的には分からない。手を動かすんです。何度も何度も書く。やみくもにでも式をいじくりまわす。いろんな図をしつこく描いてみる。そうしているうちにわかったという瞬間が来ます。必ず。
38 ディスレクシア:文字情報のデコーディングが苦手なだけで情報の中身はちゃんと理解できる。つまり知能に問題はない。」失ったのは何年だろう?本当なら失わなくても良かった年月だ。
103 私たちは死にたくて手首を切っているんじゃない。消えて無くなりたいほどの辛さから解放されたくてリストカットに頼るのだ。切れば何とかその日はやり遂げる。腕の傷は一日一日どうにか生き延びてきたという足跡のようなものだ。
115 オポチュニティの轍。実際はNASAのオペレーターが取らせたものだろう。でもオポチュニティが長い首を振り返り自らの医師でシャッターを切ったようにしか思えなかった。それはこの子が異星の原野をたった一人で何年も旅してきた証。声明を感じさせるものが何一つない絶対的な孤独の中を懸命に生き延びてきた足跡。
193 火星のランパート・クレーターを実験室で再現するっていうのが科学部の記念すべき最初の研究テーマ。アンディ・ウィアーの「火星の人」
198 心の平穏を保てない荒んだ家などいたいはずがない。学校に行ったら行ったでなんで僕がこんなところにという学歴コンプレックスに襲われる。居場所を失いつつあった要を救ってくれたのが情報オリンピックだった
209 今って通信制の高校とかもいっぱいあるじゃないですか。なんでわざわざ定時制を選ぶんですかね? 単純に気てえからじゃねえの?学校にいい思い出なんか一個もなくても引きこもっていた時期があったとしてもさ、学校に行きたいって気持ちはきっとゼロにはなんねーんだよ。
213 重力可変装置、落ちる箱の中が火星重力になってる間にクレーターを作る。
217 最難関と言われる大学や医学部に毎年何十人も合格者を出すような高校がこの世には存在する、そんな世界がある事自体この4人は知らないかもしれない。学会に集まるのはそういう高校ですよと言っても4人はただぽかんとしているだけかもしれない。何の興味もわかないだろう。でももし誰かが実験のヒントを与えて呉れようものなら途端に目を輝かせるだろう。そこにはきっと自分の優秀さをしょうめいしたいというくだらない欲求はみじんもない。無性に羨ましくなった。
221 やっかいな実験程やる価値がある。
226 定時制高校に科学部を作りどんなことが起きるのかを何が生み出されるのかを観察する。あくまで自らの探求心を満たしたいがためのものだ。部員たちをモルモット扱いしていると言われたら首肯せざるを得ない。場合によってはただでさえ挫折の多い彼らの人生に余計な傷を負わせるだけになってしまいかねない。そのことを知りながら実験を続けている自分は冷酷な人間なのだろう。
227 進んで科学部に入ってくることは絶対ないような生徒に会えて声を掛ける。常識の枠の外に埋もれているアイデアを掘り起こしてくれるとしたら優等生よりむしろそうゆう生徒ではないかと考えた。真に価値ある問いはしばしば無知の中に生じる。
メンバーに多様性を与える事。均質な遺伝子をもつ生物集団が環境変化や感染症の流行で容易く全滅するようにメンバーが同じような能力しか持たないと困難を突破するすべを見出せずに立ち往生することが多い
俺はバカじゃねえ、怠けてたわけでもねえという嗚咽する彼を見た時に彼の中に誰よりも激しい「知」への渇望を垣間見た気がした。
237 特筆すべきはその優れた観察眼の方かもしれない。クレーターの周囲に広がる奇妙な地形に目を留めこれは何だろうと感じる力。なぜこうなっているんだろうと不思議に思う力。世界の細部に目を凝らす眼差しの熱さはセンスオブワンダー、自然の神秘に目を見張る感性と直結している。そしてそれは科学にとって何よりも大切なことだ。
242 疲れちゃったネ、お茶にしない・マハブランカ作ってきたから。こういうところもまたアンジェラの世間知が発揮されている。複数の人間がまとまって仕事をしていくには何が必要か、頭ではなく心と体が理解しているのだ。差し入れはもちろん彼女の大きな笑い声や能天気な発言、お節介や涙までもがチームの潤滑油となっている。彼女以外の三人しか部屋におらずどこかぎこちない空気が流れている時でも彼女が入ってきた途端に空気が一変する。
269 この国ではいつまでも化学はエリートと優等生のものだけなのだろうか。化学とは無縁に生きていた人たちが研究のインスピレーションを得るなど無理な話なのだろうか?
もしこの科学部が先生の実験なんだとしたら・・先生の仮説は何ですか?何か検証したくて実験したかったんじゃないですか?
「どんな人間でもその気にさえなれば、必ず何かを生み出せる。それが私の仮説です」
だったらそんなの実験じゃないです。観察する相手のことを信じてやる実験なんてないです。
この科学部があんたの実験かどうかだなんてどうでもいい。俺はただ俺たちの実験を続けたい。
275 彼らを見ているうちに大学院時代の恩師の言葉を思い出した。実験てのはね、想定外の結果が出てからが本番だよ。個々人がそれぞれに成長し互いの関係性おあらゆる意味で濃く深くしている。そのことが研究結果に影響している。その度合いは藤竹の想像をはるかに超えていた。そして周囲の変化、要や木内、マイまでもが科学部に関わってくれるとは予想だにしなかった。彼らが吹かせる風もまた部と部員たちの進む方向を変えていく。
そもそもなぜ彼らはコミットするのか?もしかしたら極めて個人的なはずのその気になるという現象は何らかの機序で回りに伝播するのかもしれない。
303 人生こそ自動的には分からない。自分の将来を一本道のように見通せる人はいません。誰しもがいるのはいつも窓のない部屋で目の前には扉がいくつもある。とにかくそれを一つ選んで開けてみるとまたそこには小さな部屋で扉が並んでいる。人生はその連続でしかない。
308 藤竹がたばこの煙を使って教室に青空を作った夜。あれから一年がたったなんて信じられない。学ぶことを知り本当の仲間というものを知り自分の中にあるいろんな感情を知ったこの日々をこの先決して忘れることはないだろう。
322 天文学みたいなスケールの世界に身を置いていると数百年とかもっと長い時間軸で物をみるしお金にならなくても平気だし何の役に立つの?という質問など傍から考えてもみないのが普通になる
損得関係なく面白いからやる、楽しいから知ろうとするとする姿が魅力的です。常に「信頼できる大人」の気配があるのが素晴らしい
顧問を務める先生が生徒のため、と上からではなく自分が好きで天文学をやっていてその姿に感化された子供たちが同じように楽しんでいるのが印象的でした。
率先して自分が夢中になる姿を見せる大人って子供にとっては大事な存在ですよ。
Posted by ブクログ
伊予原さんの小説を読むのは直木賞の「藍を継ぐ海」の続いて二作目。
面白かったぁ。定時制を舞台に人間模様を描くドラマや小説は色々あるし、さまざまな背景を持つ人間が集まってくるのでドラマにしやすい。ただこの舞台に火星の研究を持ってくるとは。突拍子もないミッションを縦軸にドラマが展開され最後は大団円。火星実験は完全な創作かと思いきやこれがなんと実話を元にしたストーリー!驚きました。
いろんな心に残るフレーズが散りばめてますが、「オポチュニティの轍」に出てきた火星探索機オポチュニティの話が好きで何度もそのくだりを読み返しました。
最後の巻末の辻村深月さんとの対談も面白かった。この小説の執筆エピソードの他に「藍を継ぐ海」の解説やエピソードを語ってくれたのは嬉しかった。満足度の高い一冊。
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