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夜の教室で科学に挑む、大ヒットドラマ原作 定時制高校の科学部に集った年齢も経歴もバラバラの生徒たち。すれ違いながらも壮大な“実験”にぶつかっていく彼らを描く青春小説。 単行本 2023年10月 文藝春秋刊 文庫版 2026年3月 文春文庫刊 この電子書籍は文春文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
75歳女性の読書友達の方から孫に読んでほしい本と言って紹介されて読んだ。 科学は一部のエリートだけのものではなく、ただ純粋に知を追求して学ぶことの魅力に気付いた人すべてに開かれているべきだという藤竹先生の静かだが揺るぎない信念に触れて何度も涙ぐみそうになった。 そこには年齢も性別も境遇も関係なく...続きを読む、ただ知りたい、学びたいという意欲を大歓迎する、上から目線ではなく一緒になって学ぼうとする、そんな先生に出逢えたこの定時制の学生は嬉しかっただろうなと思う。 本当はもっと学びたかった、学校に行きたかった、そん ないろんな思いを抱えてきた定時制の学生の一人一人のエピソードが涙ぐましい。集団就職のおじいちゃんが妻の代わりといって学び直す話は泣けた。 ある仮説を立て、それに向けて地味な検証作業を繰り返し、そこから生まれる結果から何が導き出せるのかを考察していき、そして自分なりの結論を導き出す。 自然科学の検証作業はある意味日常でも同じことが言えるのかもしれない。どんなに思った結果が出ない時でも我々は真摯に下へ下へと根を生やし続けることだ。それは地味な作業ではあるが楽しいと思える探求心やワクワクがあれば続けられる。もしかしたら大輪の花を咲かせるかもしれないと信じて。 藤竹先生の言う、自動では答えは出せません、何度もやみくもにいじくりまわして書いたり図を描いたりして、そうしてるうちに自分の思い通りに操る事ができる、という言葉に、ああわかった!っていう感動ってこうゆう事だよなと思いだした。 世の中で流行っている親ガチャという言葉はある意味で正しいが、しかしそれが全てではない。それぞれが抱えている様々な悩みやしがらみのある複雑な背景があっても、それでも藤竹先生のような信頼できる大人の導きで大きく人生が変わることだってありうるんだから。 ----------------------------- 18 自動的には分からない。手を動かすんです。何度も何度も書く。やみくもにでも式をいじくりまわす。いろんな図をしつこく描いてみる。そうしているうちにわかったという瞬間が来ます。必ず。 38 ディスレクシア:文字情報のデコーディングが苦手なだけで情報の中身はちゃんと理解できる。つまり知能に問題はない。」失ったのは何年だろう?本当なら失わなくても良かった年月だ。 103 私たちは死にたくて手首を切っているんじゃない。消えて無くなりたいほどの辛さから解放されたくてリストカットに頼るのだ。切れば何とかその日はやり遂げる。腕の傷は一日一日どうにか生き延びてきたという足跡のようなものだ。 115 オポチュニティの轍。実際はNASAのオペレーターが取らせたものだろう。でもオポチュニティが長い首を振り返り自らの医師でシャッターを切ったようにしか思えなかった。それはこの子が異星の原野をたった一人で何年も旅してきた証。声明を感じさせるものが何一つない絶対的な孤独の中を懸命に生き延びてきた足跡。 193 火星のランパート・クレーターを実験室で再現するっていうのが科学部の記念すべき最初の研究テーマ。アンディ・ウィアーの「火星の人」 198 心の平穏を保てない荒んだ家などいたいはずがない。学校に行ったら行ったでなんで僕がこんなところにという学歴コンプレックスに襲われる。居場所を失いつつあった要を救ってくれたのが情報オリンピックだった 209 今って通信制の高校とかもいっぱいあるじゃないですか。なんでわざわざ定時制を選ぶんですかね? 単純に気てえからじゃねえの?学校にいい思い出なんか一個もなくても引きこもっていた時期があったとしてもさ、学校に行きたいって気持ちはきっとゼロにはなんねーんだよ。 213 重力可変装置、落ちる箱の中が火星重力になってる間にクレーターを作る。 217 最難関と言われる大学や医学部に毎年何十人も合格者を出すような高校がこの世には存在する、そんな世界がある事自体この4人は知らないかもしれない。学会に集まるのはそういう高校ですよと言っても4人はただぽかんとしているだけかもしれない。何の興味もわかないだろう。でももし誰かが実験のヒントを与えて呉れようものなら途端に目を輝かせるだろう。そこにはきっと自分の優秀さをしょうめいしたいというくだらない欲求はみじんもない。無性に羨ましくなった。 221 やっかいな実験程やる価値がある。 226 定時制高校に科学部を作りどんなことが起きるのかを何が生み出されるのかを観察する。あくまで自らの探求心を満たしたいがためのものだ。部員たちをモルモット扱いしていると言われたら首肯せざるを得ない。場合によってはただでさえ挫折の多い彼らの人生に余計な傷を負わせるだけになってしまいかねない。そのことを知りながら実験を続けている自分は冷酷な人間なのだろう。 227 進んで科学部に入ってくることは絶対ないような生徒に会えて声を掛ける。常識の枠の外に埋もれているアイデアを掘り起こしてくれるとしたら優等生よりむしろそうゆう生徒ではないかと考えた。真に価値ある問いはしばしば無知の中に生じる。 メンバーに多様性を与える事。均質な遺伝子をもつ生物集団が環境変化や感染症の流行で容易く全滅するようにメンバーが同じような能力しか持たないと困難を突破するすべを見出せずに立ち往生することが多い 俺はバカじゃねえ、怠けてたわけでもねえという嗚咽する彼を見た時に彼の中に誰よりも激しい「知」への渇望を垣間見た気がした。 237 特筆すべきはその優れた観察眼の方かもしれない。クレーターの周囲に広がる奇妙な地形に目を留めこれは何だろうと感じる力。なぜこうなっているんだろうと不思議に思う力。世界の細部に目を凝らす眼差しの熱さはセンスオブワンダー、自然の神秘に目を見張る感性と直結している。そしてそれは科学にとって何よりも大切なことだ。 242 疲れちゃったネ、お茶にしない・マハブランカ作ってきたから。こういうところもまたアンジェラの世間知が発揮されている。複数の人間がまとまって仕事をしていくには何が必要か、頭ではなく心と体が理解しているのだ。差し入れはもちろん彼女の大きな笑い声や能天気な発言、お節介や涙までもがチームの潤滑油となっている。彼女以外の三人しか部屋におらずどこかぎこちない空気が流れている時でも彼女が入ってきた途端に空気が一変する。 269 この国ではいつまでも化学はエリートと優等生のものだけなのだろうか。化学とは無縁に生きていた人たちが研究のインスピレーションを得るなど無理な話なのだろうか? もしこの科学部が先生の実験なんだとしたら・・先生の仮説は何ですか?何か検証したくて実験したかったんじゃないですか? 「どんな人間でもその気にさえなれば、必ず何かを生み出せる。それが私の仮説です」 だったらそんなの実験じゃないです。観察する相手のことを信じてやる実験なんてないです。 この科学部があんたの実験かどうかだなんてどうでもいい。俺はただ俺たちの実験を続けたい。 275 彼らを見ているうちに大学院時代の恩師の言葉を思い出した。実験てのはね、想定外の結果が出てからが本番だよ。個々人がそれぞれに成長し互いの関係性おあらゆる意味で濃く深くしている。そのことが研究結果に影響している。その度合いは藤竹の想像をはるかに超えていた。そして周囲の変化、要や木内、マイまでもが科学部に関わってくれるとは予想だにしなかった。彼らが吹かせる風もまた部と部員たちの進む方向を変えていく。 そもそもなぜ彼らはコミットするのか?もしかしたら極めて個人的なはずのその気になるという現象は何らかの機序で回りに伝播するのかもしれない。 303 人生こそ自動的には分からない。自分の将来を一本道のように見通せる人はいません。誰しもがいるのはいつも窓のない部屋で目の前には扉がいくつもある。とにかくそれを一つ選んで開けてみるとまたそこには小さな部屋で扉が並んでいる。人生はその連続でしかない。 308 藤竹がたばこの煙を使って教室に青空を作った夜。あれから一年がたったなんて信じられない。学ぶことを知り本当の仲間というものを知り自分の中にあるいろんな感情を知ったこの日々をこの先決して忘れることはないだろう。 322 天文学みたいなスケールの世界に身を置いていると数百年とかもっと長い時間軸で物をみるしお金にならなくても平気だし何の役に立つの?という質問など傍から考えてもみないのが普通になる 損得関係なく面白いからやる、楽しいから知ろうとするとする姿が魅力的です。常に「信頼できる大人」の気配があるのが素晴らしい 顧問を務める先生が生徒のため、と上からではなく自分が好きで天文学をやっていてその姿に感化された子供たちが同じように楽しんでいるのが印象的でした。 率先して自分が夢中になる姿を見せる大人って子供にとっては大事な存在ですよ。
伊予原さんの小説を読むのは直木賞の「藍を継ぐ海」の続いて二作目。 面白かったぁ。定時制を舞台に人間模様を描くドラマや小説は色々あるし、さまざまな背景を持つ人間が集まってくるのでドラマにしやすい。ただこの舞台に火星の研究を持ってくるとは。突拍子もないミッションを縦軸にドラマが展開され最後は大団円。火星...続きを読む実験は完全な創作かと思いきやこれがなんと実話を元にしたストーリー!驚きました。 いろんな心に残るフレーズが散りばめてますが、「オポチュニティの轍」に出てきた火星探索機オポチュニティの話が好きで何度もそのくだりを読み返しました。 最後の巻末の辻村深月さんとの対談も面白かった。この小説の執筆エピソードの他に「藍を継ぐ海」の解説やエピソードを語ってくれたのは嬉しかった。満足度の高い一冊。
伊与原新さんの理系派小説。 NHKドラマは飛び飛びで見ていて、改めて読んでみるといろんな発見がありました。 高校の頃にこういう先生に出会えたらよかったな。 大阪の定時制高校にヒントを得たノンフィクション的な要素もあり、定時制に通う学生ひとりひとりが抱える背景の深刻さにもリアリティを感じます。 そ...続きを読むれでも、もしかすると自分の第一歩が、この宇宙につながっているとすれば、こんなに夢のあることはないですね!
いくつになっても、学ぶことはできる。また、あらゆる事情があって学べない人もいるけど、手を差し伸べる人がいれば戻れる場所がある。戻れる場所がどんな人にも届く社会であって欲しい。涙が出た。続編も読みたい。
序盤、苦手なやさぐれ主人公でクライム&バイオレンスで挫折しかけたけど本筋が始まったら面白すぎて一気読みしてしまった
本作は以前からタイトルだけは知っていたが、読んだことはなく。 ネトフリで、NHKドラマを見かけて、観てみたら、ものすごく面白くて感動した。 これは、原作も読んでみたい!と、手に取ったのがこの本。 原作とドラマは、少し違っていたが、やはり感動する小説だった。 自分は、家庭の事情で合格をしたのに大学に...続きを読む行かれなかった。 代わりに、働きながら大学の通信教育部で大卒資格をとった。 昼間の普通の大学生には「通信教育部なんて」と、馬鹿にされながらスクーリングに通ったなー。 この本を読みながら、そんな昔のことを思い出した。 通信教育部にも、さまざまな年齢の方がいた。 この定時制のように。 学ぶことはいつでもできるし、学ぶことは楽しい。 小説の中の彼らは、この経験を轍にして、いろいろな未来を見ることができる。 なんだか、羨ましくなってしまった。 あとがきで、モデルとなった学校があるのを知り、指導をしていた3人の先生に拍手をしたくなった。 モデルの方々は、小説のようなタイプではなかったかもしれない。 けれど、学生たちの未来を大きく開いたのは一緒だろう。 良い小説だったなー。。
「オポチュニティの轍」の画像を検索して見た。 藤竹先生の話を聞いた後だと何だかすごく哀愁を感じる。 知識が増えると同じものでも見え方が変わる。 火星探査機オポチュニティが自分の歩いてきた道を振り返って撮影した写真。15年間もたった一人で写真を撮り続けた火星探査機が、ただの機械とは思えなくなる。 知る...続きを読むことって楽しいんだと改めて思わせてくれる一冊。 我が家の高2息子、通っている高校に定時制があるし、 中学生の頃から理科の先生になりたいと言っている。この本めちゃくちゃ刺さるのでは。
様々な背景と事情の中で定時制高校に通う人たちが、教師の導きで科学部の一員となり、教室で「火星のクレーター」を再現する実験にぶつかっていく物語。 とてもいいお話だった。 昔々、高校生の頃、私が通っていた学校にも定時制の課程があり、2年生の時には同じ教室を使っていた。 ある朝、黒板に「ちゃんと掃除をす...続きを読むるように!」みたいなことが書いてあり、ほとんど掃除のようなことをしていなかった私たちは教室がきれいだったのは定時制の人たちが掃除していたお陰だったことに気づかされ、それからはしっかり掃除をして帰るようになったのだった。 そこから私たち全日制と定時制の人たちとの黒板を介した交流が始まって……みたいな佳い話にはならなかったのだが(ならんかったんかい!?)、まあ、純で素直な高校生だった時代のお話。 物語の中で、ペンケースを盗られたと思い込んだ全日制の女子が黒板に暴言を書いたり同じ席の昼夜の生徒間で机の中にメモを入れてやり取りをする場面を読んで、そんな昔を思い出した。 なので、古き時代に生きた私の感覚だと、定時制と言えば、何らかの事情で進学せずに働いている人が学びに飢えて通ってくるというイメージだったのだが、この本を読めば、『授業中のリスカなんてありふれてるし、暴行事件も多い』とか『虐待を受けていたり、育児放棄に近い状態で育ったりした子どもたちが毎年何人も入ってくる』など書いてあって、世の中が変わったことを今更ながらに知った。 そんな高校の4人の生徒、なにをやっても負のスパイラルから抜け出せない不良の岳人、夫と二人で料理店を切り盛りするフィリピン人のアンジェラ、起立性調節障害を抱え保健室登校を続ける佳純、かつて中学を出てすぐに集団就職で上京してきた長嶺。 章ごとにそれぞれが定時制に通ってくる背景が知れていく。高校に通えず働くしかなかった長嶺とその妻の学び直しの話にグッとくる。 生徒たちの身上と科学知識が溶け合って進む話は山あり谷あり、分かり易い展開だしちょっときれいすぎる感じもするが、ぶつかり合いながらも少しづつ前に進んでいく姿にはとても好感。最後の学会でのプレゼンの場面にはじんわりと感動が広がる。 作者さんのあとがきを読んで実話を下敷きにした話だということに驚いたが、『定時制の一年次というのは毎年、混乱のうちに終わってしまう』と言われるような環境でも、人間の可能性を信じて仕掛けた教師の方々を素晴らしいと思った。 本筋とはあまり関係ないのだが、、、第一話には、またしてもディスレクシアが登場。今年読んだ本だけでも3例目。こういうことを通してこの障害に対する理解が広がり、努力していないと決めつけられる人が少しでも少なくなると良いなと思った。 オポチュニティの轍、なかなか味わい深い絵面。
読み終えて、いちばん強く感じたこと。 人は、人との出会いでしか変われない。そんな気がしました。 舞台は、新宿にある都立高校の定時制。それぞれに事情を抱えた生徒たちが科学部に集まり、「火星のクレーター」を再現する実験に挑む物語です。 理系科目がずっと苦手だった自分には、読み始める前、正直なところ身...続きを読む構えがありました。けれど読み進めるうちに、それは科学の話である以上に、人と人との物語だと気づかされていきました。 不器用にぶつかり合いながらも、少しずつ前を向いていく登場人物たち。その姿を追ううちに、こちらまで静かに背中を押されているような感覚になりました。 学ぶということが、人をこれほどまでに輝かせるのだということ。何度も、ぐっとくる場面がありました。 気力が湧かないな…ってときにも、そっと寄り添ってくれる作品です。
ドラマ版の予告を見て面白そうで購入。 文系だけど、実験シーンなんかも面白く読めた。 こういう話、もっと読みたい。 個人的に読んでいて心が苦しくなったのはオポチュニティの轍だけど、1番心に残ったのもこの話。 3ヶ月のはずが15年頑張った、オポチュニティの轍。 願いと祈りを込めずにはいられなかった。
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