集英社文庫作品一覧

  • 草花たちの静かな誓い
    3.9
    ロサンゼルス在住の叔母の、突然の訃報。甥の弦矢が駆けつけると、27年前に死んだはずの叔母の一人娘が、実は死んだのではなく、当時からずっと行方不明なのだと知らされる。なぜ菊枝はそのことを長らく黙っていたのか。娘はいまどこにいるのか。弦矢は謎を追い始める――。生き別れた母子の運命を豊かに描き出す長編小説。
  • 社長室の冬(メディア三部作)
    3.2
    日本新報の記者・南康祐は、会社にとって不利益な情報を握る危険人物であるとみなされ、編集局から社長室へと異動させられる。その頃、新聞社に未来はないと判断し、外資系企業・AMCへの「身売り」工作を始めていた社長の小寺が急死する。九州に飛ばされていた新里が急遽東京に呼び戻され社長に就任するが、方々から徹底的な反発を受ける。外資との買収劇。不毛な社内抗争。紙かネットか。マスコミの存在意義――。新聞社の身売りを巡り、南が辿り着いた答えとは。
  • 雪炎
    4.6
    東日本大震災から一年。三基の原発が立地する北海道・道南市で市長選挙が始まった。元公安警察官の和泉は、「廃炉」を公約に掲げて立候補した旧友の弁護士・小島を手伝うことに。何百億円もの原発利権に群がり、しがみつく者たちの警察ぐるみの苛烈な選挙妨害に、和泉は公安警察時代の経験で対抗。しかし、ついには選挙スタッフが殺され……。「現実」を見つめ続ける馳星周の真骨頂、ここにあり!
  • 御家人斬九郎
    3.7
    本所に住む貧乏御家人・松平残九郎。表ざたにできない罪人の介錯を副業としていることから、ついたあだ名が「斬九郎」。腕はめっぽう立つのだけれど、酒と女、そして何より79歳になる美食家で大食漢な母親にはからきし弱い! ふつか酔いの今日も尻をたたかれ、依頼の仕事に駆けつける。江戸の町から東海道、京都まで、事件の裏の謎を解く短編10作と中編5作を収録した、型破りな傑作時代小説。
  • 故郷
    4.0
    NYの日本料理店で成功をおさめた芦田夫妻は、三十年ぶりに帰国。老後をふるさと若狭で暮らしたいと考えたからだった。だが、美しかった里は、原発銀座へと変容し、過疎化の問題を抱えていた。大自然につつまれて安らかに逝きたいと願う夫婦が、ふるさととの再会で見たものは――。急激に変貌する日本に戸惑いながらも、安息の地を探し求める一族の物語。
  • ザ・おんな刑事
    -
    豊満な乳房、すらりと伸びた脚、きわだつ美貌を見て、一瞬声をのむ乱交パーティーの男たち。怖いもの知らずな行動力をもつ女・関根悠乃は、警視総監直属の秘密捜査官。共産圏から西側に持ち込まれた化学殺人兵器の謎を追って、国際犯罪組織と対決するべく潜入捜査を開始するが…。ヨーロッパを舞台にして描く、雄大痛快アクション巨編。
  • 赤穂浪士 上
    -
    時は元禄14年。江戸城松の廊下において赤穂藩主・浅野内匠頭は、この間の無体な仕打ちに耐えかねて、高家・吉良上野介に斬りかかった。内匠頭は即日切腹、一方上野介には一切お咎めなしとの公儀裁定が下る。赤穂城内では国家老・大石内蔵助を中心に、強硬派と穏健派に分かれ大評定が繰り広げられる。他方、上野介と縁戚関係にある上杉家は累が及ぶのを畏れ、内蔵助に間者を差し向けた。
  • 青空の街
    3.7
    (自分には社長業なんか向いてない)大学を出ても親の後をつがず、守衛をしたり、タクシー運転手をしたり……。そもそも人生とは何だろうか。建設会社の社長を父に持つ成瀬弘は考える。若者らしく現代を生き抜こうとする弘と恋人キミ子。多彩で複雑な人間模様のなかに愛の哀しみと喜びと、明日への夢を爽やかな筆致で描く明朗青春編。
  • 蝶舞う館(東南アジア5部作)
    3.0
    ベトナム解放三十周年記念番組の収録中、日本の女性タレントが行方不明になった。番組関係者のもとに届いたのは、不当な弾圧を受ける少数民族モンタニャールの名を冠した組織からの犯行声明だった。不可解な要求にとまどいつつも救出に向かう男たち。だが、武装蜂起の予兆と見た公安部が組織壊滅に動き出し、凄絶な民族紛争に巻き込まれていく――。東南アジア5部作の掉尾を飾る傑作長編。
  • 猛き箱舟 上
    4.1
    1~2巻880円 (税込)
    あの「灰色熊(グリズリー)」のような男になりたい。香坂正次は胸に野心を秘め、海外進出日本企業の非合法活動を担うその男に近づいて行った。彼に認められた正次の前には、血と暴力の支配するアフリカの大地が開けた。その仕事は、砂漠の小さな鉱山を、敵の攻撃から守ることだった――人の世の地獄、野望と絶望を謳いあげた大ロマン。
  • 全一冊 小説 直江兼続
    4.2
    上杉景勝の家臣でありながらも、太閤秀吉より三十万石を賜った男・直江山城守兼続。主君・景勝との深い絆を胸に秘め、合戦の砂塵を駆け抜けた彼は、戦国乱世に勇名を馳せる。だが、己の歩むべき真の道を見いだした時、天下取りの争いに夢を託すのだった。米沢の名藩主・上杉鷹山が師と仰いだ戦国武将の、凛々たる生涯を描いたロマン大作。全一冊・決定版。
  • 全一冊 小説 上杉鷹山
    4.6
    九州の小藩からわずか十七歳で名門・上杉家の養子に入り、出羽・米沢の藩主となった治憲(後の鷹山)は、破滅の危機にあった藩政を建て直すべく、直ちに改革に乗り出す。――高邁な理想に燃え、すぐれた実践能力と人を思いやる心で、家臣や領民の信頼を集めていった経世家・上杉鷹山の感動の生涯を描いた長篇。全一冊・決定版。
  • 全一冊 小説 吉田松陰
    4.1
    外国の実情を知ろうと、アメリカ密航を企て、失敗した吉田松陰は萩の獄に幽閉された。しかし、出獄後は小さな私塾「松下村塾」で「誰でも持っている長所を引き出すのが教育である」という信念の下、高杉晋作、山県有朋、伊藤博文など、わずか2年半で幕末、維新をリードした俊傑を生み出した。「魂の教育者」松陰の、信念に基づく思想と教育観を感動的に描く長編。
  • 全一冊 銭屋五兵衛と冒険者たち
    -
    「海に国境はない」この言葉に動かされた加賀の豪商・銭屋五兵衛は、北方交易に情熱を注ぎ、金沢藩財政に大きく寄与した。五兵衛はその後干拓事業に絡み失脚、牢死するが、その遺志を継いだ大野弁吉がさらに事業を拡大する。幕末の激動期、国家に先んじて「国際化」の道を歩んだ男たちの冒険を感動的に描く。
  • チンギス紀 一 火眼
    続巻入荷
    4.2
    12世紀、テムジン(のちのチンギス・カン)は、草原に暮らすモンゴル族のキャト氏に生まれた。10歳のとき、モンゴル族を束ねるはずだった父イェスゲイが、タタル族に殺害されてしまう。テムジンのキャト氏は衰退し、同じモンゴル族のタイチウト氏のタルグダイとトドエン・ギルテが台頭、テムジンたちに敵対し始める。危機的な状況のもとで、テムジンは、ある事情から異母弟ベクテルを討ったのち、独りいったん南へと向かった……。草原の遊牧民として生まれ、のちに世界を震撼させることになる男は、はじめに何を見たのか? 人類史を一変させた男の激動の生涯、そこに関わった人間たちの物語を描く新シリーズ、待望の第一巻!
  • カッコウ、この巣においで
    4.3
    京都で孤独に作陶を続ける高義は、土を採りに入った山中で、傷だらけの少年と出遭う。少年は駆と名付けられ、いつしか師匠と弟子として、寝食を共にするように。親から愛されずに育った駆にとって、初めて手にした安穏だった。しかし、高義の実の息子で、確執の末に家を出て七年間音信不通だった充が帰ってきたことで、状況は一変する。さらに駆の行方不明だった母の消息が判明し、自分の過去を知ることになる。居場所を失いたくない駆の心は、徐々に暴走し始め……。果たして三人が一つの巣で暮らすことは叶うのか? 濃密な家族小説。
  • アフター・サイレンス
    4.3
    高階唯子は警察から依頼され、事件被害者やその家族のカウンセリングを行っている。彼女は様々な傷を抱えたクライエントと向かい合う。夫を殺されたのに自分こそ罰を受けるべきだという妻。誘拐犯をかばい嘘の証言をする少女。心の傷から快復したはずなのに、姉を殺した加害者に復讐した少年……。多くを語らないクライエントが抱える痛みと謎を解決するため、唯子は奔走する。絶望の淵で、人は誰を想い、何を願うのか。そして長い沈黙の後に訪れる、小さいけれど確かな希望――。80万部突破「MOMENT」シリーズ、ドラマ化で話題となった『dele』の著者が贈る、深く胸に響く物語。
  • マザリング 性別を超えて〈他者〉をケアする
    -
    「マザリング」とは性別を超え、ケアが必要な者に手を差しのべること――。産後うつに陥った人、流産を経験した人、産まないと決めた人、養子を迎えた人……。気鋭の映像作家が、自身の妊娠出産を端緒に、あらゆる弱者を不可視化するこの現代社会を問い直す。記録されてこなかった妊娠出産期の経験をすくいあげ、いまを生きる人々の声から、ケアをめぐる普遍的思考を紡ぐ。イケムラレイコ、イ・ラン、寺尾紗穂、ドミニク・チェンらへの取材も収録。社会に埋もれる「声なき声」に耳を傾け、手垢にまみれた「母」という概念を解きほぐし、未来へと繋ぐ圧巻のルポルタージュ・エッセイ!
  • 緩やかさ
    3.5
    20世紀末。パリ郊外の城に滞在するため車を走らせるクンデラ夫妻。速さに取りつかれた周囲の車は、まるで猛禽のようだ。クンデラは、18世紀の小説に描かれた、ある貴婦人と騎士が城に向かう馬車の旅、そしてその夜の逢瀬に思いを馳せる。一方、城では昆虫学会が開催されていて…。ふたつの世紀のヨーロッパの精神を、クンデラならではの、重さと軽さ、哲学と冗談、夢と現実世界が往来する。それまで母語であるチェコ語で書いていた小説を、初めてフランス語で執筆したことでも注目される作品。
  • 森まゆみと読む 林芙美子「放浪記」
    5.0
    昭和初期。自由を求め奔放に生きたひとりの女性の日記が出版されベストセラーとなった。それは林芙美子の「放浪記」。いま広く読み継がれている版は、後世の手が多く入り「成功者の自伝」と化していると指摘する森まゆみが、改造社版「原・放浪記」の生き生きとした魅力を紹介する。各章に鑑賞が入り、時代背景や芙美子の生涯についての解説も収録。林芙美子を知ろうとするならまず手に取るべき一冊。
  • 修羅走る 関ヶ原
    4.0
    時は慶長五年九月十五日。昨夜来の雨は上がれど、濃霧が立ちこめる関ヶ原。一大決戦の秋を迎えていた。未明、小早川秀秋の裏切りの気配を伝える密使が石田三成の下にやって来る。三成は裏切りに備え、万全を期す。一方、徳川家康は、豊臣恩顧の福島正則らの動向に不安を募らせる。東西両軍、命運を賭けた戦いの火蓋が切って落とされた! 日本史上最大、関ヶ原の合戦。その長い一日を描く戦国巨編。
  • リバー 上
    4.8
    1~2巻858~913円 (税込)
    群馬県桐生市と栃木県足利市を流れる渡良瀬川の河川敷で相次いで女性の死体が発見された。十年前の未解決連続殺人事件と酷似した手口に、街は騒然となる。同一犯か? 模倣犯か? かつて容疑をかけられた男。取り調べを担当した元刑事。娘を殺され、執念深く犯人捜しを続ける父親。若手新聞記者。一風変わった犯罪心理学者。新たな容疑者たち。事件を取り巻く人々の思惑が交錯するなか、十年分の苦悩と悔恨は、真実を暴き出せるのか――。人間の業と情を抉る無上の群像劇×緊迫感溢れる圧巻の犯罪小説!
  • 十三夜の焔
    4.0
    天明四年五月の十三夜。御先手弓組番方・幣原喬十郎は男女の惨殺体を発見する。傍らには匕首を手に涙を流す若い男が一人。喬十郎は咄嗟に問い質すが、隙をつかれて取り逃がす。その男は闇社会で名を轟かせる大盗一味の千吉だと判明。殺害された男の周辺を洗う中、再び遭遇するも、千吉は殺害を否定し、再び姿を眩ませる。十年後、喬十郎は、銭相場トラブルで一家を殺害された塩問屋の事件を追う過程で、両替商となった千吉(利兵衛)に出合う。火付盗賊改長官・長谷川平蔵に助言を仰ぐも、突然の裏切りに遭い、左遷されてしまう。悪事に立ち向かう喬十郎と、江戸の闇社会に生きる千吉。宿命的な敵対関係を描き出す、血湧き肉躍る時代小説。
  • 軍都の陽炎 軍靴と娼婦の記憶を旅する
    5.0
    横須賀、呉、佐世保など軍港、軍都には必ず色街があった。治安維持、兵の衛生管理など軍事上の役割を持ち、地域の財源としても機能していたが、その存在は歴史の陰に押しやられ、当時を知る人々の口も重い。昭和100年、戦後80年を迎えた今、戦争を戦場からではなく、銃後の視点から捉えたノンフィクション。こんな街にこんな過去が・・・。教科書には載らない生きた歴史。かつて確かに存在した人々の息遣いを、現地を歩き写真に収め、人の話を書き留めた旅の記録。
  • 選挙漫遊記
    4.3
    2020年3月の熊本県知事選挙から2021年8月の横浜市長選挙まで、新型コロナウイルス禍に行われた全国15の選挙を、丹念に取材した現地ルポ。「NHKが出口調査をしない」「エア・ハイタッチ」「幻の選挙カー」など、コロナ禍だから生まれた選挙ワードから、「スーパークレイジー君」「ふたりの田中けん」など、多彩すぎる候補者たちも多数登場! 文庫化にあたり新章「2024年東京都知事選挙」を書き下ろし。――選挙取材歴20年以上! 『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で第15回開高健ノンフィクション賞を受賞した著者による“楽しくてタメになる”選挙エッセイ。
  • 夢伝い
    3.0
    地球に近づいてきた惑星、現れた女遍路――。四国に戻って来た私は、40年前の午後を思い出していた(「送り遍路」)。自らの胎内で卵を孵すセグロウミヘビ。海洋生物マニアの男は「彼女」を手に入れてから生活が一変し・・・・・・(「卵胎生」)。未知のウイルス性感染症が蔓延した後、「新しい世界」の幕が開けた。男は都心から自然豊かな土地に移住を決め、恋人とはリモートで関係を深めていたが・・・・・・(「果てなき世界の果て」)など、昭和から現代までを舞台に、日常に潜む怪異や心理の歪みから生まれる怪奇を描いた全11話を収録。
  • 希望の海 仙河海叙景
    4.3
    大震災の前も後も、暮らしは続いてゆく。東北の港町に生きる人々の姿を通して紡がれる再生と希望の物語。三年前の秋、早坂希は勤めていた会社を辞めて仙河海市に戻ってきた。病弱の母親の代わりに、スナック「リオ」の切り盛りをしている。過去に陸上選手として活躍していた希は、走ることで日々の鬱憤や悩みを解消していたが、ある日大きな震災が起きて、いつも見る街並みが180度変わってしまう(「リアスのランナー」「希望のランナー」)他。――東北に生まれ、東北に暮らす直木賞作家の、「あの日」を描かない連作短編集。全10編。
  • 明日、世界がこのままだったら
    4.4
    目覚めると、世界に二人きりとなっていたサチとワタル。二人の部屋はいびつにくっつき、誰もいない街は静まり返っていた。そして不意に現れた管理人を自称する女に、ここは生と死の「狭間の世界」だと告げられる。二人の肉体は、今まさに死を迎えようとしている、と――。そのまま「完全なる死」を迎えるはずだった二人だが、奇跡的に現実世界へ戻るチャンスが訪れる。残酷な選択とともに。私は、俺は、何のために、誰のために生きるのか。生きることを真摯に見つめるエモーショナルな長編小説。
  • 家康が最も恐れた男たち
    4.6
    「遺訓の言葉はな、恐れた相手たちから学んだことよ」病床に伏す徳川家康は、遺訓を書き終えて側近の儒者・林羅山に告白する。自分は怖がりだったが故に、天下を取れたのだと――。信長、秀吉、利家、三成など、家康が出会った八人の武将たち。彼らの何に恐れ、何を学んだのか。天下統一を成し遂げるまでの半生を家康視点・時系列で追うことで彼の実像に迫る、連作短編集。2023年NHK大河ドラマの主人公、徳川家康をこれまでにない新たな切り口で描く、集英社文庫の家康小説第一弾!
  • 宴の前
    3.9
    隠された利権、過度な忖度、県民性の謎…。あらゆる選挙戦の中で最も闇が深いのは地方知事選だ! 知事の後継者が、選挙告示前に急死。後継候補を巡る争いに、突然名乗りを上げたオリンピックメダリスト、地元フィクサーや現職知事のスキャンダルを追う記者の思惑が交錯する。これまで四期連続当選してきた現職県知事・安川(76歳)は、今期限りでの引退を決める。後任については副知事の白井に任せるということで内々に話がまとまっていた。しかし、選挙告示の2ヶ月前に白井が急死し、次期知事候補は白紙に戻る。一方その頃、地元出身でオリンピックメダリストの中司涼子(42歳)が、突如知事選への出馬を表明する。マニフェストに「冬季オリンピックの誘致」を打ち上げ、一気に有力候補に躍り出る。混沌した様相はさらに加速し――。圧倒的な権力を持つ「地方の王様」を決める熾烈な争い。選挙小説の新機軸!
  • この恋は世界でいちばん美しい雨
    4.5
    駆け出しの建築家・誠と、カフェで働く日菜。雨がきっかけで恋に落ちた二人は、鎌倉の海辺の街で愛にあふれた同棲生活を送っている。家族のいない日菜に「夢の家」を建ててあげたい、そのために建築家として名を上げたいと願う誠だったが、ある雨の日、日菜と一緒にバイク事故で瀕死の重傷を負ってしまう。目を覚ました彼らの前に、“案内人”と名乗る喪服姿の男女が現れる。そして誠と日菜は、二人合わせて二十年の余命を授かり、生き返ることに。しかしそれは、互いの命を奪い合うという、あまりにも苛酷で切ない日々のはじまりだった――。この恋の結末に、涙せずにはいられない。『桜のような僕の恋人』の著者が贈る、胸打つ長編小説。
  • 空よりも遠く、のびやかに
    3.9
    桜舞う高校の入学式で、瞬は一目惚れをした。その相手、花音はトラウマを抱え引退した元ユース・クライマーだ。今は地学オリンピックを目指す花音に誘われるがまま地学部に入ったのに、ひょんなことから才能を見いだされた瞬はクライミングで五輪を目指すことに! しかし、世界は未知のウイルス蔓延に襲われ、五輪の中止が決まり……2人の夢は? さらに、淡い恋の行方は? 圧倒的青春小説!
  • 風に吹かれて、旅の酒
    3.5
    取材の旅から戻ったら、さあ趣味の時間だ。銀幕のスターの演技に酔い、女流浪曲師の口演にしびれ、旅先で買い求めた蒐集品の整理にいそしむ。ワタクシ、居酒屋のカウンターに座っているばかりではないのですぞ。でもそのおかげで「独自の視点から日本の食文化に貢献」と文化庁から表彰状をいただいたんですから、世の中捨てたものじゃありません。70歳を超えてなお充実の日々をつづったカラー文庫。
  • 婆娑羅太平記 道誉と正成
    4.7
    時は鎌倉末期。後醍醐天皇率いる軍勢が挙兵し、倒幕の機運が高まっている。強い者につく変節漢としてののしられても己の道を貫いた「バサラ大名」佐々木道誉。そして、天皇への忠節を貫いて華々しく散り、愛国の士としてもてはやされる「悪党」楠木正成。この国の未来を案じ、乱世を治めるべく闘った両雄の行く末は──。この国の礎が築かれた南北朝史に熱き一石を投じる大シリーズ、堂々開幕!!
  • 勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇
    4.6
    2006年夏、甲子園決勝再試合に日本中が沸いた。早実VS駒大苫小牧。しかも駒大は、北海道勢初の全国制覇を成し遂げて以降負け知らず、前人未到の三連覇に王手を掛けていた。チームを率いるのは35歳の香田誉士史。輝かしい実績とは裏腹に、何が彼を満身創痍に追い込み、表舞台から引き摺り下ろしたのか。高校野球史上最も有名な監督を追った渾身作。第39回講談社ノンフィクション賞受賞作。
  • 女優
    4.0
    【渡辺淳一文学賞創設記念電子化!】師の坪内逍遙たちと、日本に新劇の運動を起こした早稲田大学教授・島村抱月。彼らがはじめた演劇学校の一期生に合格した松井須磨子。彼によって内に秘めた非凡な才能を見出された彼女は、カチューシャを演じ、ノラを演じるごとに見紛うほど美しい女優へと化身していく。二人の間には愛が芽生え…。近代演劇の夜明け、スキャンダルな愛に一途に燃えた抱月と須磨子を描いた著者入魂の長編小説。
  • ツイン・アース
    3.7
    フィンランドでオーロラの観測をするアイノのもとに奇妙なメッセージが届いた。解析の結果、現れたのはインド洋沖のとある座標。意を決してそこに向かった彼女は水の球体に飲み込まれ、気が付くと別世界へ。そこは地球の双子星・Terra‐αだった――。大自然、移動する街、そして巨大な怪獣。少しずつ解き明かされる真実は、驚くべき事実へ。壮大なスケールで展開するエンタメSF小説!――「これは、宇宙と自然が怪獣を映す山海経的緩やかな物語」(落合陽一)。「宇宙時代の今、ともに生きる心をつなげていきたい」(山崎直子)
  • 私の家
    3.5
    祖母の法要の日、一堂に会した親戚たち。同棲していた恋人から家を追い出され、突然実家に帰ってきた娘、梓。元体育教師、「実行」を何よりも尊びながら、不遇な子供時代にこだわる母、祥子。孤独を愛するが、3人の崇拝者に生活を乱される大叔母、道世。死ぬまで自分が損しているという気持ちを抑えられなかった祖母、照。そして、何年も音信不通の伯父、博和。今は赤の他人のように分かり合えなくても、同じ家に暮らした記憶と共有する秘密がある。3世代にわたる一族を描き出す、連作短編集。
  • 義弟
    4.0
    人気弁護士の彩と義理の弟の克己は、本当の肉親以上に信頼し合っていた。ある夜、彩と不倫関係にあった男性が彼女の職場で突然死する。スキャンダルを恐れた彩に助けを求められた克己は事故死に偽装するが、夫の死を不審に思う妻が彩の事務所に相談しにやってくる。彩は克己の反対を押し切り、彼女の依頼を引き受けるが…。心の闇を抉り出す衝撃作。
  • 友罪
    4.5
    あなたは“その過去”を知っても友達でいられますか? 埼玉の小さな町工場に就職した益田は、同日に入社した鈴木と出会う。無口で陰のある鈴木だったが、同い年の二人は次第に打ち解けてゆく。しかし、あるとき益田は、鈴木が十四年前、連続児童殺傷で日本中を震え上がらせた「黒蛇神事件」の犯人ではないかと疑惑を抱くようになり――。少年犯罪のその後を描いた、著者渾身の長編小説。
  • 腐葉土(木部美智子シリーズ)
    4.1
    笹本弥生という資産家の老女が、高級老人ホームで殺害されているのが見つかった。いつもお金をせびっている孫の犯行なのか? そこに生き別れたもう一人の孫という男が名乗りでる。詐欺事件や弁護士の謎の事故死が、複雑に絡まりはじめ――。関東大震災、東京大空襲を生き延び、焦土の中、女ひとりでヤミ市でのし上がり、冷徹な金貸しとなった弥生の人生の結末とは。骨太ミステリーの傑作長編。
  • 事件は終わった
    3.2
    年の瀬に起きた痛ましい〈地下鉄S線内無差別殺傷事件〉。突然男は刃物を振り回し、妊婦を切りつけ、助けに入った老人を刺殺した。時は過ぎ、事件に偶然居合わせてしまった人々には、日常が戻ってくるはずだったが・・・。会社員の和宏は、一目散にその場から逃げ出したことをSNSで非難されて以来、日々正体不明の音に悩まされ始め・・・・・・(「音」)。切りつけられた妊婦の千穂は、幸いにも軽傷で済んだが、急に「霊が見える」と言い出して・・・・・・(「水の香」)。他全6編。事件が終わって始まった、少し不思議でかなり切ない〈その後〉を描く連作短編集。
  • 塩と運命の皇后
    3.8
    50年ぶりに湖の封印が解かれるとき、追放された悲劇の皇后の伝説が幕を開ける――。歴史収集の旅をする聖職者チーは、ある時立ち寄った湖のほとりで、ひとりの老女に出会う。亡き皇后の侍女だという彼女に導かれ、チーは皇后が幽閉されていた屋敷を訪れる。そこで老女は思い出の品々を手に語り始める。美しく残酷な真実と運命の物語を……。「あの方には異国風の美しさがあり、それはあたかも私たちには読めない言語のようだった。肩まで垂れた長い二本の三つ編みは墨汁のように黒く、顔は皿のように平らで、完璧に近い円形だった」――著者デビュー作にして2021年ヒューゴー賞受賞作。全2篇。
  • フィールダー
    3.8
    総合出版社・立象社で社会派オピニオン小冊子を編集する橘泰介は、担当の著者・黒岩文子について、同期の週刊誌記者から不穏な報せを受ける。児童福祉の専門家でメディアへの露出も多い黒岩が、ある女児を「触った」らしいとの情報を追っているというのだ。時を同じくして橘宛てに届いたのは、黒岩本人からの長文メール。そこには、自身が疑惑を持たれるまでの経緯が記されていた。消息不明となった黒岩の捜索に奔走する橘を唯一癒すのが、四人一組で敵のモンスターを倒すスマホゲーム。その仮想空間には、橘がオンライン上でしか接触したことのない、ある「かけがえのない存在」がいて・・・・・・。誰かを「愛でる」行為の本質を暴く傑作長編!
  • ラブカは静かに弓を持つ
    4.3
    少年時代、チェロ教室の帰りにある事件に遭遇し、以来、深海の悪夢に苛まれながら生きてきた橘樹は、ある日、勤務先の全日本音楽著作権連盟の上司の塩坪から呼び出され、音楽教室への潜入調査を命じられる。目的は著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむこと。橘は身分を偽り、チェロ講師・浅葉桜太郎のもとに通い始める。師と仲間との出会いが、奏でる歓びが、橘の凍っていた心を溶かしだすが、法廷に立つ時間が迫り・・・・・・。第6回未来屋小説大賞、第25回大藪春彦賞受賞、第20回本屋大賞第2位。大反響を巻き起こした、心に響く“スパイ×音楽”長編。文庫版特典スピンオフ短編も収録!
  • もろびとの空 三木城合戦記
    4.0
    東播磨の大名、別所家の本城である三木城。当主の長治は織田信長に反旗を翻すも、織田勢を率いる羽柴秀吉に攻められ、村人を巻き込んだ過酷な籠城戦が始まる。飢えに苦しむ領民は、究極の選択へと追い込まれ……。米十俵のために握った薙刀で、家族を守るため、戦う覚悟を決める娘。「死に損ない」と罵られ、次こそ死のうと敵を斬り続ける武士。「女らしさ」の呪縛に悩みながら、女武者組の先頭に立って陣頭指揮を執る別所家の妻。華々しい合戦絵巻の裏側に存在した、名もなき人びとのひたむきな生の物語。
  • 命とられるわけじゃない
    4.0
    父、愛猫に続いて、確執の深かった母を亡くした著者。その母の葬儀で、1匹の猫と出会う。小さなその猫が、止まっていた時間をふたたび動かし……。「譲れないことも、許せないことも、人生に一つか二つあれば充分」「どれほどしんどく思えても、生きてゆく途上で起こるたいていのことは、そう――とりあえず、〈命とられるわけじゃない〉のだ」など、経験からつむぎだされた優しい箴言も随所に。今がしんどい人、老いゆく心身に向き合う人、大切なものを失った人、親との関係に悩む人、そして猫を愛するすべての人に贈る1冊。愛らしい猫たちや美しい軽井沢の写真を、カラー口絵と本文にたっぷり収録!
  • 極悪児童文学 犬義なき闘い
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    時は2035年。6年前に新型殺人ウイルスが全世界を襲い、人口が激減。日本では、感染源の新宿がゴーストタウンと化し、大量の飼い犬が野良犬となった。人間の代わりに街を支配するようになった彼らは、犬種の垣根を越えて群れで活動するようになる。しかし、次第にファミリー同士の覇権争いへと発展し……。人間という絶対的なリーダーがいなくなった新宿で、血を血で洗う抗争の火蓋が切って落とされる。史上初、犬が主人公の任侠小説! 爆笑と感動の一冊!!
  • 空への助走 福蜂工業高校運動部
    4.0
    陸上部を引退したばかりの涼佳に告白してきた、頼りない後輩の柳町。東京の大学に通う元陸上部の先輩へ届かない恋心を抱いてきた涼佳だったが、走り高跳びに打ち込む柳町の成長を見つめるうちに、少しずつ心が揺れ動き……(「空への助走」)。福蜂工業高校バレー部のエースを狙う高杉と、尋慶女子高校テニス部エースで美人かつ勝気な赤緒。小柄で地味だが躍動感あるスポーツ写真を撮るはっち。中学時代から互いを認め合ってきた三人の友情と淡い恋を描く(「強者の同盟」)。他、それぞれの悩みを抱えながら部活に打ち込み、時にチームメイトとぶつかり、時に恋に揺れ動く高校生たちのまぶしい青春の日々を描く連作短編集。
  • オフマイク
    3.6
    継続捜査を担当する捜査一課特命捜査係の黒田は、二課の同期・多岐川から20年前の大学生自殺について聞かされる。その死が、大物政治家の贈収賄と関わっているかもしれないというのだ。聞き込みをするうちに、黒田はこの事件を「ニュースイレブン」の報道記者・布施も追っていることを知る。その布施の情報で、黒田は事件のカギとなる人物はITで財を成し、政界のフィクサーとして名を流す藤巻だと目算する。時を同じくして人気キャスターが突然失踪。接点の見えない自殺と失踪の背後にはテレビ業界や警察組織さえも迂闊に手を出せない、大きな闇が……。記者と刑事の異色コンビが活躍する大人気「スクープ」シリーズ第5弾!
  • 線量計と奥の細道
    3.8
    東日本大震災の翌年。著者は放射線量計を携え、芭蕉の『奥の細道』全行程約二千キロを辿る旅に出た。折り畳み自転車を漕いで行き、時には列車や車も利用。津波被害や放射性物質汚染を被った地域では、無言の奮闘を続ける人々に出会う。三百年前の俳諧紀行に思いを馳せつつ、放射線量を測って進む旅。被曝に怯えと逡巡や葛藤を抱きながら、“生きる”を考えた魂の記録。日本エッセイスト・クラブ賞受賞作。
  • 蝶のゆくへ
    3.7
    旧仙台藩士の三女として生まれた星りょう(後の相馬黒光)。その利発さから「アンビシャスガール」と呼ばれたりょうは、自分らしく生きたい、何事かをなしたいと願い、明治28年に東京の明治女学校へ入学する。女子教育向上を掲げる校長の巌本善治は「蝶として飛び立つあなた方を見守るのがわたしの役目」と、りょうに語りかけた。りょうが出会った、新しい生き方を希求する明治の女性たち。その希望と挫折、喜びと葛藤が胸に迫る感動の歴史長編。
  • レジェンド・ゼロ1985
    3.0
    米ソ冷戦が終盤を迎えた1985年。韓国との軍事演習を控えたアメリカの空母が、台風により日本海上で立ち往生していた。そこにソ連の爆撃機が接近。「一発も撃たせるな」。航空自衛隊の本庄らF-4パイロットが、にわかに訪れた第三次大戦の危機に立ち向かう。呼吸を忘れる圧巻の戦闘シーン。男たちの絆と矜持が、読む者の胸を震わせる。いま全てが伝説となる。
  • 町を歩いて、縄のれん
    3.7
    好きで始めた居酒屋探訪。さすがに昔のように毎晩通うことはなくなったが、馴染みの店はたくさんある。旅に出るのも億劫なときは近場を散歩。ふらりと入った店で掘り出し物を見つけたり。映画や演劇観賞は今でも一番の趣味。人生まだまだ楽しめそうだ──古希を迎えた著者が、日常にあるささやかな幸せをつづった「サンデー毎日」連載のエッセイに、美麗な写真を添えたオリジナルカラー文庫デジタル版。
  • よはひ
    4.0
    広大な砂漠で服役する囚人たち。この地で“三千二百年”の懲役を受けた男がいた。絶望的な状況で、彼が淡々と生き続けられる秘密とは?(「三千年生きる」)海辺の街でアンティーク・ボタンの店を営むジェリーは、ある夜、青いワンピースを着た半透明の少女と出会い……。(「四歳のピーコートのボタン」)おはなし好きの父と子が、伸び縮みする“時間”を旅する。27編から成る、ひとつの大きな物語。
  • 新版 悪者見参 ユーゴスラビアサッカー戦記
    5.0
    クロアチアの準優勝が世界を驚かせた2018年サッカーW杯ロシア大会。スイス対セルビア戦でコソボ移民の二人が見せた「鷲のポーズ」。さかのぼること20年、1999年のNATOによるユーゴ空爆にその端緒を探ることができる。当時、著者が身の危険を顧みず「世界の悪者」とされた旧ユーゴ紛争地を歩き、直に触れたすべてを綴った貴重な記録。執筆当時から現在までの空白を繋ぐ追章を加えた新版。
  • まぼろしの維新 西郷隆盛、最期の十年
    3.0
    首がない。それは西郷隆盛の遺骸だった――。維新の大業を成し遂げた西郷は鹿児島に帰郷していたが、社会の混乱が収まらず、弟・従道の説得により新政府に加わる。精力的に改革を進める西郷だったが、朝鮮との外交問題を巡って大久保らと対立。そして、明治十年の西南戦争に突入する。彼は自らの死と引き換えに何を得ようとしたのか。隆盛の後半生に焦点を絞り、西南戦争の全貌を活写する長編。
  • パーフェクトワールド 上
    4.0
    1970年。本土復帰を目前に控え、沖縄は混沌としていた。公安警察官・大城は、警察上層部よりさらに上――内閣総理大臣から直接の命を受け、沖縄に潜伏することに。時を同じくして、那覇では沖縄独立を目指す平良が、賢秀塾を率いる古謝賢秀の指示のもと、不穏な動きを見せ始めていた。大城は、円滑な返還を実現すべく、時に犯罪行為にも手を染め、諜報を進める。彼は、どこまで堕ちていくのか。連載から12年、幻のノワール巨編!
  • 明星に歌え
    4.2
    四国お遍路ツアーに参加した大学生の玲。7人の班で旅が始まる。天真爛漫な太陽、ひねくれた態度の剣也、誰とも打ち解けない花凜……。10歳以前の記憶がない玲だけでなく、それぞれが事情を抱えている様子。過酷な道中、予期せぬトラブルも生じ、離脱せざるを得ない者も。軋轢も和解もあり、やがて結束するメンバー。長い長い歩みの果てに、彼らを待っているものは。忘れられない青春群像小説。
  • 砂の王宮
    4.4
    戦後、復興へ向け活気に溢れる神戸の闇市で薬屋を営んでいた塙太吉。進駐軍の御用聞きをしている深町の戦略的な提案に乗り、莫大な儲けを手にする。その勢いで、スーパーマーケットを開業し、格安牛肉を武器に業績を飛躍的に向上させた。全国展開への道を順調に進むが、ある事件をきっかけに、絶体絶命の局面に……。日本が世界経済の中心に躍り出た激動の時代を支えた男を描く圧巻の経済小説。
  • 時限捜査
    3.6
    太陽の塔、USJなど、大阪の名所で連続爆破が発生。府警が混乱する現場に出動するなか、大阪駅で人質を盾にした立て籠もり事件が起こる。犯人は現金10億円と逃走用ヘリを要求。駅を封鎖した管轄署長の島村は、早急な解決を目指すが……。膠着した現場に、東京の神谷刑事から、驚愕の情報が入る。島村はある策を得て、巧妙に計画された犯罪に挑む! 「検証捜査」の魂を継ぐ警察小説。
  • 警察回りの夏(メディア三部作)
    3.8
    母子家庭の幼い姉妹が自宅で殺害される。死体発見時から母親が行方不明の為、母親犯人説が浮上。日本新報甲府支局の南は、本社への栄転を懸け、特ダネを狙って精力的に事件情報を収集。警察のネタ元から犯人の情報を掴み、紙面のトップを飾る記事を書いた。だが、それは大誤報となって……。巧妙な罠に翻弄されながらも、新聞記者としての矜持と野心の狭間で真実を追う男の闘い。長編ミステリー。
  • 文庫版 虚言少年
    4.2
    オヤジ臭く、自他ともに認める嘘吐きの内本健吾。モテたいのに女子ウケしないことばがりをし続け、味のある面白さを持つお坊ちゃまの矢島誉(ほまれ)。人心を掌握する術と場を読む能力に長け、偏った知識を持つ京野達彦。「馬鹿なことはオモシロい」という信条を持つ小学生男子三人組が繰り広げる、甘酸っぱい初恋も美しい思い出も世間を揺るがす大事件もないが、馬鹿さと笑いに満ちた日々を描く7編。
  • 壺中の回廊
    3.3
    関東大震災からの復興の兆しを見せる昭和五年、東京。歌舞伎の殿堂木挽座に“掌中の珠を砕く”という脅迫状が届く。皆が疑心暗鬼にかられるなか『忠臣蔵』に出演中の花形役者が毒殺される。江戸の狂言作者の末裔桜木は、築地署の笹岡と真相究明に乗り出す。容疑者は、役者、裏方、観客すべて。だが、嘘をつくのが商売の役者を相手に捜査は難航……。変革の時代を背景に描く歌舞伎バックステージミステリー。
  • 花のさくら通り
    4.1
    倒産寸前のユニバーサル広告社。コピーライターの杉山を始め個性豊かな面々で乗り切ってきたが、ついにオフィスを都心から、“さくら通り商店街”に移転。ここは、少子化やスーパー進出で寂れたシャッター通りだ。「さくら祭り」のチラシを頼まれた杉山たちは、商店街活性化に力を注ぐが……。年代も事情も違う店主たちを相手に奮闘する涙と笑いのまちづくり&お仕事小説。ユニバーサル広告社シリーズ第3弾。
  • 異形家の食卓
    3.8
    国際会議のため来日した、ゾエザル王国の外務大臣・ジュサツ。独裁国家に対する強い風当たりにもめげず、常に笑顔をたやさない彼を癒す、おぞましいストレス解消法。つぶれかけたフレンチ・レストランを救った、魅惑の食材の正体。一家団欒のテーブルで告白される、悪食の数々など、全11篇。異才が贈る、駄洒落×ホラー×グロテスクのフルコースを召し上がれ。
  • 決定版 評伝 渡辺淳一
    3.0
    札幌医科大学で学び、心臓移植問題を機に、整形外科医から文学の道へ進み、昭和・平成の時代、第一線の作家として活躍した渡辺淳一。谷崎・川端も書けなかった人間の《生》と《性》の本質を、自らの体験を冷徹に描くことで、文学の高みに到達した――。編集者として直木賞受賞の布石となる『花埋み』を書かせ、後に評論家として数々の名著を刊行する著者が、渡辺文学の全てを網羅する評伝決定版。
  • 黒塚 KUROZUKA
    3.9
    十二世紀末。鎌倉に追われる九郎坊と大和坊は、奥州の山中で妖麗な女が独居する藁屋に一夜の宿を請う。黒蜜と名乗る女は奥の間を覗かぬことを条件に逗留を許す。十九世紀、奥州山中の荒屋(あばらや)に宿を請うた男は、生首となって生きる九郎坊を奥の間に見る。さらに時代は流れ……九郎坊は高層ビルから廃墟と化した都市を見下ろしていた。永遠の命を生きる異形の者の、時空を超えて展開する愛憎と闘い。
  • ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ
    4.0
    「注文の多い料理店」や「風の又三郎」など、誰もが知っている名作童話から生まれる、誰も見たことのない新しい“ミヤザワケンジ”の文学。世界の終わりとはじまり、夢と現実、生と死。すべてが曖昧になった場所で織り成される24編が、あなたの感性にかつてないほどの衝撃を与える。異能の作家・高橋源一郎の手によって開かれる、賢治にも描けなかった賢治ワールド。最強トリビュートの決定版!
  • ごめん。
    4.2
    学生服専門の洋品店で働く吉本佑理(32歳)は、職場上司の無自覚なセクハラやパワハラに合いつつもなかば諦めも感じていた。ある日、例のごとく「きみ、彼女いないの? 吉本さんを誘ってあげたら」と言う部長に対し「無礼です」と言い切る出入りの配送業者、里村の自然なふるまいが佑理の心に飛び込んできた。その後デートを重ね次第に距離を縮める二人。そして、告白のタイミングでこれまで三、四人と付き合ってきたと言う里村に対し、佑理は今まで彼氏が一度もいなかったことを、勇気を出して告げる。すると里村は何も告げずに去ってしまう。フラれた。失意の佑理に里村から電話が。「ごめん、おれも付き合ったのは中学の時にひとりだけ。いまマンションの下にいるんだ。戻ってもいいかな」(第一話「ひとり道」)。あなたは“その言葉”を一日に何度、口にしますか? 様々なシーンのごめんで登場人物たちが少しずつ繋がってゆく、心温まる連作短編集。
  • ZOO 1+2
    5.0
    何なんだこれは! 天才・乙一のジャンル分け不能の傑作短編集「1」、「2」を合本版で。「1」は双子の姉妹なのになぜか姉のヨーコだけが母から虐待され――(「カザリとヨーコ」)。謎の犯人に拉致監禁された姉と弟がとった脱出のための手段とは?――(「SEVEN ROOMS」)など5編をセレクト。「2」は、目が覚めたら、何者かに刺されて血まみれだった資産家の悲喜劇(「血液を探せ!」)、ハイジャックされた機内で安楽死の薬を買うべきか否か?(「落ちる飛行機の中で」)など驚天動地の粒ぞろい5編に加え、幻のショートショート「むかし夕日の公園で」を特別収録。
  • 化身 上巻
    3.0
    1~2巻825~880円 (税込)
    人気の文芸評論家である秋葉大三郎は、妻子と別れ、史子という女性とつき合っていた。ある日、銀座のクラブで働く、遥かに若い霧子と運命の出逢いをする。鯖の味噌煮が好きだという初心な霧子が秘めた女としての蕾に心惹かれ、和の食や風物を教え、ともに旅をし、理想の女性として変貌させようとひたすら愛を注ぐ。そして彼女は大いに成熟していくのであった。華麗なる絵巻物のような男女小説の傑作。
  • 傀儡
    4.0
    鎌倉中期、執権・北条時頼が権力を振るう頃。仲間たちと唄や踊りの芸を売って自由に生きる傀儡女・叉香は、復讐のために鎌倉を目指す武士や、武士に家族を殺された瀕死の女、信仰の本質を追い求める西域から来た僧らと出会う。全く異なる境遇で生きる四人の男女の運命が、鎌倉で交錯する。仏教と武士道が権力と結びつき、大きな流れを形成していった歴史の分岐点を舞台に描かれる渾身の歴史長篇。
  • 三人のゴーストハンター 国枝特殊警備ファイル
    3.8
    普通の警備会社が恐れをなした怪異現象がらみの事件ばかりを扱う国枝特殊警備保障。生臭坊主・洞蛙坊、美貌の霊媒師・比嘉、反オカルト科学者・山県の三人が個々の特殊能力を発揮して、都市の魑魅魍魎に挑んでいく――。やがて彼らは、自分たちを結びつけた四年前の幽霊屋敷事件の真相に……! 異才、鬼才、天才の集結が生み出す三通りのマルチエンディング付きセッション・ノベル。
  • ラ・ロシュフーコー公爵傳説
    -
    「太陽も死もじっと見詰めることは出来ない」(『マキシム』)17世紀のモラリスト、ラ・ロシュフーコー。深く鋭いシニカルな人間洞察から生まれたその著書、『マキシム(箴言集)』は、今日まで広く読み継がれている。争乱の世紀に名門貴族として生まれ、戦闘と陰謀と恋愛に明け暮れた彼が、なぜ厭世的な思想を持つにいたったか? 波乱の生涯を、文明と歴史を軸に描く評伝小説。
  • 新選組裏表録 地虫鳴く
    4.1
    走っても走ってもどこにもたどりつけないのか――。土方歳三や近藤勇、沖田総司ら光る才能を持つ新選組隊士がいる一方で、名も無き隊士たちがいる。独創的な思想もなく、弁舌の才も、剣の腕もない。時代の波に乗ることもできず、ただ流されていくだけの自分。陰と割り切って生きるべきなのか……。焦燥、挫折、失意、腹だたしさを抱えながら、光を求めて闇雲に走る男たちの心の葛藤、生きざまを描く。
  • 新選組 幕末の青嵐
    4.4
    身分をのりこえたい、剣を極めたい、世間から認められたい――京都警護という名目のもとに結成された新選組だが、思いはそれぞれ異なっていた。土方歳三、近藤勇、沖田総司、永倉新八、斎藤一……。ひとりひとりの人物にスポットをあてることによって、隊の全体像を鮮やかに描き出す。迷ったり、悩んだり、特別ではないふつうの若者たちがそこにいる。切なくもさわやかな新選組小説の最高傑作。
  • 相剋の森
    3.9
    1~2巻825円 (税込)
    「山は半分殺してちょうどいい――」現代の狩人であるマタギを取材していた編集者・美佐子は動物写真家の吉本から教えられたその言葉に衝撃を受ける。山を殺すとは何を意味するのか? 人間はなぜ他の生き物を殺すのか? 果たして自然との真の共生とは可能なのか――。直木賞・山本賞受賞作『邂逅の森』に連なる「森」シリーズの第一弾。大自然と対峙する人間たちを描いて感動を呼ぶ傑作長編。
  • 萬葉集釋注一(集英社文庫版)
    -
    1~10巻825~1,155円 (税込)
    戦後の万葉研究の第一人者による、初めての個人全注釈の文庫版。隣接諸学との多様な交流の成果も踏まえた、現代万葉学の集大成。一群の詩の背景、状況をいきいきと語る歌群ごとの釈注。新鮮な感動を呼び起こす充実した内容。『万葉集』は、5世紀初頭から8世紀中葉まで、およそ350年にわたる4500余首の歌を収める。本書第一巻は、白鳳期(629~710年)、いわゆる万葉第一・二期の中核的古撰集である巻一と巻二とを収める。宮廷の儀礼・行幸などにまつわる「雑歌」(巻一)と、万葉びとの愛と死を奏でる「相聞」「挽歌」(巻二)とは、『万葉集』の基本的な三大部立で、以下の巻の規範となった。額田王、柿本人麻呂たちの作品が天皇の代ごとに配列され、躍動的な白鳳歴史絵巻を繰り広げる。【文庫版:リフロー型】
  • 落日はぬばたまに燃ゆ
    -
    現代社会は、人間らしく生きていけないのか!? 過酷な販売競争に生命を削ってきた製薬会社のプロパー・隅高志は、妻を亡くし息子とも断絶してしまった。定年前に退職をし、自由の身になった後、パリを訪れる。そこで一夜を共にした南本恵。交通事故で意識不明になり、そのまま帰国をしたことを聞いた隅高志は、異国に来ても心を癒せなかった恵と自らをダブらせ、探し始めるのだが――。生身の人間の葛藤を、正面から描く長編サスペンスの傑作。
  • 残像
    3.7
    愛なくばすべてはむなしきものを――人間はなぜ欲望の前に自らを喪失するのだろうか。憎み合う無軌道で冷酷な兄と気弱な世間体を気に病む父、その間にたって心をいためる清純な弘子……冷たい隙間風の吹く家族を描きわけて人間の愛憎と家庭の崩壊をあらわす問題作。
  • 果て遠き丘
    3.8
    世界中で自分だけが幸せでありたいと願う香也子、他人の愛を壊すことが楽しいゲームですらある香也子の熾烈な嫉妬心にもろくも崩れてゆく愛の数々……。北都旭川の残照にあざやかに浮かびあがる美貌の姉妹の愛のかたちと、人間の信頼を、痛烈なエゴイズムを描きながら謳いあげる長編。
  • 異聞 おくのほそ道
    3.0
    「西行法師の歌枕を訪ねたい」と告げ、弟子の曾良とみちのくへと旅立った松尾芭蕉。その旅には二人の同行者がいた!? 徳川光圀の家臣介三郎と、将軍綱吉の側用人柳沢吉保の密偵すまだ。光圀と吉保は共に芭蕉が相手方の密命を受けていると勘ぐっていた。そして、芭蕉にも、歌枕を訪ねる以外にある目的があった…。「おくのほそ道」をベースに、斬新な発想で描く時代長編。
  • 興亡三国志 一
    3.6
    後漢末、霊帝の時代。宦官達は帝を恣(ほしいまま)に操り、天下は麻の如く乱れていた。疲弊した民衆の一部は黄巾賊となって全国に蜂起。大軍を率いて首都洛陽に入った董卓が軍政の覇権を握ると、忽ち暴政の嵐が吹く。「乱世がくるぞ」若き曹操は身ぶるいしながら思った。この“乱世の英雄”曹操を中心に群雄たちが繰り広げる壮大な歴史ロマン「三好三国志」全五巻。
  • インターセックス
    3.9
    「神の手」と評判の若き院長、岸川に請われてサンビーチ病院に転勤した秋野翔子。そこでは性同一障害者への性転換手術や、性染色体の異常で性器が男でも女でもない、「インターセックス」と呼ばれる人たちへの治療が行なわれていた。「人は男女である前に人間だ」と主張し、患者のために奔走する翔子。やがて彼女は岸川の周辺に奇妙な変死が続くことに気づき…。命の尊厳を問う、医学サスペンス。
  • 金のゆりかご
    3.5
    タクシー運転手の野上雄貴は、GCS幼児教育センターから入社要請を受け、不審を抱く。GCSが発明した「金のゆりかご」と呼ばれる機械で育てられ、一時は天才少年ともてはやされたが、能力の限界を露呈し見捨てられた自分。真意を探るうち、子供が次々と精神に錯乱をきたした事件が浮かび上がる。やがて、ある母親が失踪、殺人が……。先端科学に切り込む新感覚ミステリー。
  • 骨の子供
    4.0
    小学5年生の佳夏は、一家で引っ越した地方都市で蛇に似た固有種“イビ”をじょっきんと切って軒先に吊るすという奇妙な風習に出会い面食らう。ある日の夜中、おぞましい化け物(イビラ)の声を聞き恐怖した佳夏は、「自分か妹の陽菜、どちらかを選べ」と迫られ、恐怖のあまり妹を差し出してしまう。翌朝、陽菜は姿を消し、再発見されたときにはその頬にイビラの顔が浮かび上がり、異常な食欲と奇行を見せ始める。果たして彼女たちは化け物に打ち克つことができるのか。田舎町に古くから伝わる習わしに翻弄される少年少女たちを描く恐怖の長編小説。
  • あかずの扉の鍵貸します
    3.7
    火事で家族を失った大学生の水城朔実(みずき・さくみ)は、自らを育ててくれた恩人に頼まれ、「幻堂設計事務所」、通称「まぼろし堂」を訪れる。あるじの幻堂風彦(げんどう・かざひこ)が案内してくれたのは、館内に迷路のように広がる部屋の数々。この「まぼろし堂」には、「あかずの間」を貸し出すというもう一つの顔があり、さらには訳ありげな下宿人たちを受け入れてもいて……。「秘密」を閉じ込める、金木犀香る北鎌倉の古い洋館を舞台に繰り広げられる、心あたたまるファンタジック・ミステリー。
  • 塞王の楯 下
    4.5
    太閤秀吉が病没した。押し寄せる大乱の気配。塞王・飛田源斎は、最後の仕事だと言い残し、激しい攻城戦が予想される伏見城へと発った。代わって、穴太衆・飛田屋の頭となった飛田匡介は、京極高次から琵琶湖畔にある大津城の石垣の改修を任される。立ちはだかるは、国友彦九郎率いる国友衆と最新の鉄砲。関ヶ原前夜の大津城を舞台に、宿命の対決が幕を開ける! 「最強の楯」と「至高の矛」――激突する二つの魂。その闘いの行き着く先は? 第166回直木賞受賞作品、下巻。
  • 塞王の楯 上
    4.3
    時は戦国。炎に包まれた一乗谷で、幼き匡介は家族を喪い、運命の師と出逢う。石垣職人“穴太衆”の頂点に君臨する塞王・飛田源斎。彼のように鉄壁の石垣を造れたら、いつか世の戦は途絶える。匡介はそう信じて、石工として腕を磨く。一方、鉄砲職人“国友衆”の若き鬼才・国友彦九郎は、誰もが恐れる脅威の鉄砲で戦なき世を目指す。相反する二つの信念の持ち主同士に対決の時が迫る! 「最強の楯」と「至高の矛」の対決を描く、究極のエンタメ戦国小説!! 第166回直木賞受賞作品、上巻。
  • ウィンズテイル・テイルズ 時不知の魔女と刻印の子
    4.2
    突如現れた漆黒のゴーレム〈徘徊者〉による侵略が続くこと百二十年。地球上のあらゆる文明が異界に呑み込まれ、大地の大半は無機質な石英と化していた近未来地球。うなじに特殊な刻印を持つ少年・リンディはこの日、町守見習いとして初めての仕事へ向かう。その眼前に、いきなり巨大徘徊者が――。失われゆく世界の最前線・ウィンズテイルで、人類を救うための最終決戦が始まり、世界を取り戻す鍵は、少年少女に託された! 大迫力のSF×バトルファンタジー!
  • マチズモを削り取れ
    3.8
    路上、電車、学校、オフィス、トイレなど、日本の公共空間にはびこる〈マチズモ=男性優位主義〉の実態をライターが徹底調査! ジェンダーギャップ指数、先進国でぶっちぎりの最下位――「関係ない」はもうありえない。夜道を歩くことの恐怖、通学・通勤中の痴漢被害、発言権を奪われる不条理……最も身近な日常の場面から、変わらないこの国の「体質」をあぶり出す!! 「大凡(おおよそ)日本に住む全(すべ)ての人に呼んでもらいたい一冊だ」(金原ひとみ)
  • 本日も晴天なり 鉄砲同心つつじ暦
    -
    時は幕末。江戸城下、大久保の地。長く泰平の世が続き、代々この地を守ってきた鉄砲同心たちは、火薬の原料を転用したつつじ栽培の内職に励み、家計の足しにするようになった。礫(つぶて)家の丈一郎も三十すぎだが、つつじ栽培の内職に専念する毎日。父の徳右衛門が老いても家督を譲らぬためと、小禄の家計を助けたいからだ。ある日、父を訪ねて同役だった貫田が来る。田安家家老の俳諧の会に入りたいから仲介してくれというのだが……。銃の代わりに鋏を握る丈一郎が、礫家を巻き込む様々な事件に果敢に立ち向かう。喧嘩も笑いも絶えない丈一郎一家の、温かな〈お江戸家族小説〉。
  • 隣はシリアルキラー
    3.6
    ぎりっ、ぎりっ。ぐし、ぐし。ざああああっ――。深夜2時20分、東京都大田区にある工場で働く神足友哉は、今日もアパートの隣室から聞こえてくる、何かを切断しているような不気味な物音で起こされた。ふと、隣人で外国人技能実習生の徐浩然が死体を解体する姿を妄想するが、近所で女性の遺体の一部が発見されたことで、それが現実味を帯びる。気になった神足は、真夜中に部屋から出た徐を尾行すると、想像を絶する恐ろしい展開に……。五感から震え上がるような体験を提供するホラーミステリー。
  • 櫓太鼓がきこえる
    4.3
    17歳の篤は高校を中退し、親との関係が悪化する中、現実から逃げ出すように叔父の勧めで相撲部屋に呼出見習いとして入門。関取はいないし弟子も少ない弱小部屋の朝霧部屋で力士たちと暮らすことになる。ベテラン呼出の進さんに教えを乞うが、引っ込み思案の篤は本番で四股名を間違えて呼ぶなど、しくじってばかり。焦りや葛藤を覚えながらも、日々土俵で声を張り、少しずつ成長していく。第33回小説すばる新人賞受賞作。選考委員を唸らせた、知られざる角界の裏方「呼出」に光を当てる、新しい相撲小説!
  • 至誠の残滓
    3.0
    幕末に死んだはずの元新撰組・原田左之助は、松山勝と改名して東京の片隅で古物屋を営んでいた。明治11年8月、彼のもとを警部補として新政府に仕える藤田五郎(斎藤一)が訪れた。「今頃何しにきやがった」――すると藤田は人買いなど悪事に手を染める元長州藩の士族を調べて欲しいと依頼した。新聞錦絵の記者をする高波梓こと山崎烝とともに調査を進めると、予想外な真相に辿り着く。細谷正充賞(21年)、日本歴史時代作家協会賞作品賞(22年)を受賞した文庫界の風雲児・矢野隆が新選組の生き残り3人の活躍を描く、エンタメ120%のノンストップ新撰組小説!
  • まいんち ゆずマン
    3.0
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 あの大人気キャラクター“ゆずマン”がついに漫画になった!――正義の味方を夢見る5歳児・ゆずマンとその周りの家族や友人たちの日常を描いた4コマ漫画に加え、コミックスだけで読める描きおろしストーリー漫画、北川にとってもレジェンド作家である尾田栄一郎氏・秋本治氏との豪華対談、そして漫画家・北川悠仁ロングインタビュー、メイキングやオフショットなど盛りだくさんの内容。文庫描き下ろしも収録! 両巨匠も驚いた北川の漫画への愛と情熱、ゆずマンの魅力がギュッと詰まったファン垂涎の一冊!
  • 『五足の靴』をゆく 明治の修学旅行
    3.5
    明治40年夏、与謝野鉄幹が北原白秋、木下杢太郎、平野萬里、吉井勇の若き四詩人を連れて九州を旅した。「五人づれ」という連名で「東京二六新聞」に連載された紀行文『五足の靴』には、その後活躍する詩人たちの才能の萌芽を見ることができる。2018年に世界遺産に指定された長崎、天草の地も踏んでいた彼らの足跡を、森まゆみが10年以上かけて歩き、追体験した詩情と旅情あふれるノンフィクションは、知られざる名著の解説書、歴史を体感できる旅へと誘う極上のガイドブックでもある。世界遺産(文化遺産)「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を巡る付録つき。
  • 絵金、闇を塗る
    3.7
    江戸末期に土佐に生まれ、幼少より絵の才能を発揮し、狩野派の技法を信じがたい短期間で習得した天才絵師、絵金。江戸で絵を学んで故郷に戻り、土佐藩家老のお抱え絵師となるも、とある事件により追放される……。狩野派を学びながらも独自の美を追究した絵金は、血みどろの芝居絵など見る者を妖しく魅了する作品を描いた。その絵に魅入られ、人生を左右された男たちの生きざまから、絵金のおそるべき芸術の力と、底知れぬ人物像が浮かび上がる、傑作時代小説。
  • 室町もののけ草紙
    4.0
    室町後期。政治に倦んだ将軍に代わり実権を握った正室、日野富子の心を支配していた思い。京の町が戦火に包まれた応仁の大乱を引き起こした山名宗全、細川勝元それぞれの事情。困窮の中、生き残りを懸けた絵師や猿楽師の情熱。時代が大きく変貌するとき、転機を迎えた人物は何を見て何を思ったのか。心情に寄り添ってドラマチックに描かれた連作歴史小説。室町の世のリアルを体感できる一冊。

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