いちばん好きな小説たちに食い込んでくる短編集
「二人」の表現できない人間関係がたまらなく好きなひとにはぶっ刺さる斜線堂さんの世界観!!
特に好きな最初の短編2つをざっくりネタバレありで↓
◯ミニカーだって一生推してろ
売れない地下アイドルの「赤羽瑠璃(ばねるり)」は初めてエゴサで自分に言及していた
...続きを読むグループのファンねるすけを見つける。(このときはまだ「ばねるり」の愛称じゃなくて「赤羽瑠璃は黒の衣装の方が似合う」とただのいちグループのファンでいるところもエモい)
ねるすけのSNS上での反応をバネに、「たった一人に無限の重みを載せて、瑠璃は荒野を行く」とトップアイドルへの道を上り詰めていく、ばねるりサイドでの歪んだ愛情のお話。
ばねるりは、ねるすけのおうちにストーカーするくらい推しているのに、ねるすけはそれに気づかずどこまでも清く正しく「推し」ているこのギャップ
ばねるりは、めるすけの一番になりたいけれど、めるすけはみんなにとってばねるりが一番になってほしい。
小さい頃に集めたミニカーはいつのまにか手元から消えていくけれど。ミニカーだって一生推してろ、と握手会の最中に笑顔の裏で思っているばねるりちゃんが愛おしい。
◯君の長靴でいいです
天才デザイナー灰羽妃楽姫(きらき)と、カメラマン妻川との関係。きらきのためにガラスの靴を用意し、似合う花を見つけ、パリへ一緒に行き…いつか結ばれると思っていた相手が結婚するという。(相手が「松永良子」といういたって平凡な名前なのもまたいい)
シンデレラは舞踏会なんかにいかずに町内会で夫を見つけてもよかったのに、という発想が斜線堂さんらしくて大好き
1話目のばねるりは夢から醒めないことを選んだけれど、2話目のきらきは、「ガラスの靴じゃなくて、長靴でいいから私のことを選んでほしかった」と最後に幕引きを選びます
きらきを選ばなかった妻川をガラスの靴でぶん殴って颯爽と都会の街に消えていくきらきがかっこいい。舞踏会は終わらない。
2021年の小説に遅ればせながら2024年にハマったわけですが、
TwitterはXになり、福井へは新幹線で行けるようになり、1400円でハードカバーが買えていた頃が信じられず…。