木内昇の一覧
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ユーザーレビュー
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幕末を扱う作家の中で、私の好きな作家の一人で、久しぶりに読んだ作品であったが、本作品も面白く読めた。明治維新という史実から見れば、負け組であるが、生き様では決して負けていないという者に焦点を当て、颯爽と描くところが著者の作風の一つであると考えるが、これが大いにな発揮されている本作品と思う。
Posted by ブクログ
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江戸を舞台にした奇譚集だが、何だか一話完結の短編で終わらせるのがもったいないような、物語の魅力をぎゅっと濃縮した7篇が収録されている。
例えばラストの「夜番」は、憑き物を見ることができるすっとぼけた感じの主人公の男と、一膳飯屋のお運びをする肝っ玉姐さんのキャラクターが印象的だ。掛け合い漫才のようなや
...続きを読むり取りも楽しいし、どこか江戸っ子の人情を感じることができる展開もいい。この二人が様々な事件を解決していく形の連作短編にでもすれば、楽勝で一冊本ができそうなほど面白い設定なのに、惜しげもなく一本の短編でスパッと完結させているところが実に潔いと思った。
個人的には読後の切なさが際立つ「蛼橋」が一番好きだけど、どの作品も高いレベルでハズレは無い。途中までは何となく市井の人々の人情を味わう趣向なのかなと読者に思わせておいて、「幼馴染み」のようなちょっとテイストの異なる一篇をスパイスのように効かせているあたりも上手いなあと。
本作と似たような奇譚集としては戦前を舞台にした『よこまち余話』があるけど、一篇一篇の密度の濃さとバラエティの豊かさから、個人的にはこちらのほうが好みかな。
Posted by ブクログ
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攘夷の嵐が吹き荒れる中、欧米列強の開港圧力が高まる幕末に外交の礎を築いた幕臣たちの物語。
主人公田辺太一は、鼻っ柱の強い若者。長崎の海軍伝習所から江戸に戻り、新設された外国局で、いつも機嫌が悪く、皮肉屋の奉行・水野忠徳の下、横浜開港事務に関ることになる。水野や岩瀬忠震、小栗中順、渋沢栄一といった傑出
...続きを読むした家人と交わり、持ち前の波乱を厭わない推進力や主張力を生かしながら太一は成長していく。
だが、腰が定まらない幕府、薩長のしたたかで、不穏な動きに翻弄され、受難の道を歩む。
長崎海軍伝習所で西欧の航海術や兵学をじかに学んだ太一は、日本を豊かにするためには、国を開いて異国の知恵や技術を取り入れるべきだと考えていた。その上で、この国の岐路を異国に委ねず、迎合もするべきでないという確固たる持論を持っていた。
しかるに、なかなか、外国に渡って見聞を広める機会に恵まれず、外国人の領有に対抗するため、小笠原島開拓に派遣されたり、ようやくの渡仏でも横浜鎖港交渉を命ぜられたりと意に反することばかり。
慶応3年(1863年)のパリ万博に出展した幕府の派遣施設に随行した際も、薩摩藩が幕府を出し抜いてフランスと結託、出展していた。抗議も実らず、苦悩しながら帰国の途につくが、そこで、大政奉還の報に接する。
そんな失敗の繰り返しを指南書にして、それが勝麟太郎に認めらたり、日頃厳しい兄の孫次郎がひそかに感心していたりと、太一の国を思う一貫した姿勢を評価する人物も多く登場する。
全体を通して、太一の進歩的な考え方や外国との交渉論理の組立てに合理性を覚え、自分が納得する人生を貫く姿に清涼感を感じた。
幕末の歴史を楽しみながら勉強することができたし、幕臣の会話の中に現代にも通じる処世術が盛り込まれていたのも面白かった。
Posted by ブクログ
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江戸物短編集
この世のものとあの世のものとどちらのものともわからない者たちのおはなし。
木内さんの作品はいつも情景と人々が生き生きと描きかれていて、その景色、町の色やにおいまで細かに想像させてくれる。
どのお話も心にしみる。
Posted by ブクログ
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良かった〜!建築に詳しい訳では無いけど明治時代の近代化遺産等は見るとテンションあがるので、読んでいて楽しかった♡
妻木頼黄(つまきよりなか)という名前は知らずに読み始めたが、明治時代のものすごいエネルギーが感じられた。
天涯孤独の身で17歳で単身渡米、建築を学ぶ為、日本に戻り、工部大学校に入るが、卒
...続きを読む業1年前に、再度アメリカのコーネル大学に留学する。江戸の美しい町並みを愛した妻木は、欧化一辺倒の風潮に反発。西欧の技術を取り入れながらも日本の風景に溶け込む建築を目指す。それこそが江戸の再興、さまざまな建物をつくりながら、国の大事を決める国会議事堂の建設を目指す。
建築家というものがまだまだ認知されていなかった時代に留学しながら学ぶ若き才能たち。辰野金吾をはじめ、さまざまな有名建築家が登場する。
妻木は職人たちにも気を配り、彼らと共にいい仕事をする事に心掛ける。職人たちにも敬語を使い、情報交換を重ねて、その力を引き出していく。
独立する才能がありながらも大蔵省のお抱え建築家として奮闘する妻木には夢があった。その夢が何十年もたってようやく再び姿を見せた時、妻木には時間がなかった。最後を託す技術者の事も考える妻木。
読んでいる間、次々と出てくる有名な建物や橋の名前にワクワク、関東大震災にドキドキ、国会議事堂はどうなるのかハラハラ、などなど。読み終えるのがもったいなかった。
Posted by ブクログ
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